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1、お金のため 奏side

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「君、ホントに可愛いね、はぁはぁ…」


気持ち悪いおじさんの息の下でことが終わるのをじっと待っている。

痛くても嫌がっちゃダメだ…
もし、逃げたりなんかしたら…お金が貰えなくなるかもしれない…
今の痛みよりもお金が貰えなかった時に与えられる罰の方がよっぽど痛い。
今さえ我慢したら…大丈夫…大丈夫………………



プルルルル…プルルルルルル……………


「うるせぇな!!今イイとこなんだよ!!」


プルルルルルル………プルルルル………

何度無視しても鳴り止まない着信音に痺れを切らした頃、

ピンポーン  ドンドンドン、
「すみません、警察です。すみません、いらっしゃいますか?」


「は?!警察?…お前通報したか?」

鋭い目で睨まれ必死に首を横に振った。

「しゃぁねえ、居留守使ってる方が変に誤解される。
ちょっと出てくるけど変なまねすんじゃねぇぞ?」

男は服を来て、俺に毛布を掛けてからドアを開けた。


「はい、なんですか?」

「夜中にすみません、警察です。こちらに福田奏くんはいらっしゃいますか?」

「福田奏?…知らないが、」

「そんなことはないと思いますが、奏くんの持ってる携帯のGPSがここだって示してるので。
もしここじゃないって言うなら家の中見せてもらってもいいですか?」

「そ、それは……もし居たら…」

「もし居たら、状況によってはあなたには署まで来ていただくことになりますね。」

「……」

「では、失礼します。」

1人の警察は男を見張り、もう1人の警察は部屋の中に入ってきた。

入ってくる足音に気づき震える手で毛布を掴み身体を隠した。


「奏くん?いるかな?警察です。大丈夫だから出ておいで、」


静かに隠れているつもりだったのに近づいてくる気配に怯え呼吸が上手くできなくなってきた。

はぁ……はぁ…はぁはぁはぁはぁはあはあはあはあ…

「奏くん?!大丈夫、ゆっくり深呼吸しようね。
大丈夫、大丈夫だよ…」

口元にタオルを押し付けられる、呼吸ができずパニックになった。

「大丈夫だよ、絶対治るからな。ゆっくり呼吸しような、俺に合わせれるか、」

時間はかかったが、少しずつゆっくり深呼吸することができるようになった。


「落ち着いたかな?ちょっとだけ身体見てもいいかな?」


…やっぱり…この人もか…
僕は膝をつき警察官のあそこを触った。

「え?…奏くん、そんなことしなくていいよ。
ごめんね、誤解させちゃったね。怪我してないか身体を見たいんだけどいいかな?見せたくないとこは見せなくていいから、いい?」

僕は静かに頷いた。

「布団めくるね、」

布団をめくられ傷や痣だらけの肌があらわになった。
いつも裸を見られているから恥ずかしさはなかった。
でも、今更怪我なんて見てどうするんだろう。

「この傷どうしたの?あの男にやられたのか?」

違う…首を横に振り否定した。

「ちょっとごめんね、」

ビクッ

不意に後ろの穴を触られ驚いた。
警察官の指にはローションが付いていた。

「これは?あの男か?」

もしそうだって言ったら今日の分のお金くれなくなっちゃうかな…

「そうか、もう大丈夫だからな。」

色々考えているうちにあの男がやった事になってしまった。
僕が言ったってことになるのかな…
そしたら…今日のお金…


「先輩、こいつ署まで連れて行きますね。」

「あぁ、頼む。こっちはこっちでやるわ。」

「俺は1回しかアイツとやってねぇ!しかも中出ししてねぇ!だから犯罪じゃねえ!離せよ!」

男は叫んでいたが警察官に連れて行かれた。
僕も帰りたい…

「奏くん、もうすぐしたら車が来るからそれで一緒に行こうね。」

車?どこに行くの?
僕も捕まっちゃうのかな…それでもいいか。
もうお家帰らなくてよくなるのかな…なんて…そんなわけないか…


「大丈夫?」

心配してくれているのは分かるけど怖くて一定の距離を保っていた。
未だに震えは治まっていない。

警察官も気を使ったのか無理に関わろうとせずそっとしておいてくれた。

ピンポーン
「警察です。」

女性の警察官だった。
優しい笑顔で話しかけてきた。
だが僕にとって男も女も同じ怖いものは怖い。

また呼吸が荒くなる僕の体に男の警察官は温かいタオルを当てた。

「ごめんね、怖いよね。でも拭いて綺麗にしようね。
このままだと気持ち悪いでしょ?できるだけ早く終わらすからね。」

そう言いあっという間に綺麗になった。
新しい服を着せてもらい、この家を出た。





警察署に着くと椅子に座らされ飲み物が出てきた。

あ、さっきの男の警察官…
「奏くん、大事な話があるんだ。落ち着いて聞いてほしい。いいかな?」

静かに頷いた。

「奏くんのお父さんとお母さんの事なんだけどね。…
実はさっき交通事故で2人とも亡くなったんだ。」

亡くなった…
それってどういう事?


「それでね………………」

それから警察官は僕のこれからの事とか教えてくれた。
でも、全然頭に入って来なかった。

亡くなったって…死んだってこと?

なんで?…どういうこと?






訳が分からないまま気付いたらお通夜や葬式が行われてた。
当然僕も出席していた。
でも、全然覚えていない。頭がずっとぼーっとしている。
涙すらも出てこない。

普段なら人が近づいてきたら怯えているのに今は恐怖すら感じなかった。全ての思考が停止しているような感じだ…
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