ホントの気持ち

85、膝の上の可愛さ

名取side
探検してから少し落ち着いたようには思えるが、ずっと俺の服を掴んでいる。

まぁ、すぐには安心できないよな。
ある程度時間はいるか、


今は俺の上で肩に頭を置いてぼーっとしている。
こう見ると小さいし体重も軽いな…
そう思い空の頭に手を置く。

「…？」

上目遣いでこちらを見る空に何もないよ～っと頭を撫でると目を細めて擦り寄ってくる。
どこでそんなの覚えてきたのw
可愛いな、





ﾋﾟﾛﾝ
メールかな？携帯に目をやると神山先生からだった。

『空くんの様子どうですか？心配です。
名取先生も無理してませんか。
何かあったら連絡してきてください。

キッチンの棚にマシュマロ置いているので良かったらおやつに食べてください。』

優しいな、空は良い人と繋がれたんだな。

『ありがとうございます。
私は大丈夫です。
お気遣いありがとうございます。
空も今は少し落ち着いています。
昼食のスープも完食できました。
家中を探検したり、空の思ってることも聞くことができました。

マシュマロいただきます。
ありがとうございます。

空が先生に会いたがっていて、できれば明日お願いしたいのですがご都合大丈夫ですか。』



ﾋﾟﾛﾝ   送信すれば直ぐに返信が来た。

『落ち着いてるみたいで良かったです。
お家の探検もできたなんて空くん凄い頑張ったんですね。

明日大丈夫です！9時でいいですか？
空くんが会いたがってくれてるんですか嬉しいです！』


『頑張ってました。明日褒めてやってください。

9時でよろしくお願いします。
空にも伝えておきます。』


ﾋﾟﾛﾝ
『きっと凄い勇気がいることですもんね、いっぱい褒めますね！

9時了解です。

今から授業なのでこれで失礼します。』


仕事の合間を縫ってメールをしてくれてたんだ、本当に空のこと思ってくれてるんだなぁ。


「お仕事？」

「ん？お仕事じゃないよ。神山先生とメールしてたの。明日来てくれるって、」

「本当？何時？？」

さっきまでウトウトしてたのはどこへやら、神山先生の名前を聞いた途端この反応、ちょっと妬けるな～

「9時だよ。嬉しい？」

「うん！嬉しい！」

「そっか、良かったな。」

空の笑った顔を見て俺も自然と口角が上がる。


「そうだ、神山先生がマシュマロ食べていいよって、食べる？」

「いいの？」

神山先生から許可が出てるのに俺に許可を取ろうとする空を見てなんとも空らしさを感じる。

「いいよ。」

「食べたい。」

「取ってくるからここで待ってられる？」

「ぇ…」

俺の服を持つ手に力が篭もる。
服を持って安心できるなら安いものだ。でもずっと持っているのは難しい。
少しずつ離れることに慣れなければならない。
どれだけ短い時間でも離れること自体が不安なんだろう。
けれど、今後のことを考えて

「じゃあこれ預かっててくれる？」

「服？」

「そ、俺の服。これ持ってちょっとだけ我慢できる？すぐ戻って来るから。」

「………わかった…」

着ていた上着を渡し、マシュマロと飲み物を取りに行く。

できるだけ早く戻ってきたつもりだったけど、服を握りしめた空の目には涙が溜まっていた。

「空、ただいま。」

声をかけた途端涙がこぼれた。
優しく抱きしめさっきと同じように膝に乗せる。


「マシュマロ…」

ふふっ、落ち着いて一言目がそれかよ。
本当に好きなんだな。
空の好きなプレーンのマシュマロを口元に持っていくと小さな口が開いた。

「美味しい？」

「うん、おいしい」

幸せそうに答える空に見とれていると、
俺の口元にもマシュマロがやってきた。
パクッと食べるとじっと見つめられる。

「美味しいよ。」

「ふふっ」

この不意に来る可愛さがたまらなくなるんだよな。
甘やかしたくなってしまう。