60 / 136
60、ただいまの返事
しおりを挟む
空side
玄関に入ると足が動かなくなった。
「空くん?」
神山先生の声が聞こえるのに返事ができない…
『なんで生きてる、死ねよ、早く死ねよ。』
父さんの声が聞こえる…
目の前が真っ暗で立っていられなくなった。
しゃがみこんで耳を塞いでも父さんの声はだんだん大きくなるばかり、
もう嫌だ!!…もう…許して…助けて…助けて!!
いやだ!!い゛や゛だ!!ああああああ゛あ゛あ゛あ゛―
「…空くん!!帰ってきて!!空くん!!」
「はっ!…はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「空くん、先生のこと分かる?」
「…神山先生…」
「はぁ、良かった。もう大丈夫だよ。」
「う゛ぅうう…」
力いっぱい神山先生の服をつかんで泣きじゃくった。
不安に押しつぶされそうなこの心をどうやったら楽にできるのかが分からずただ泣くしかできなかった。
「ひっ、ひっ、」
「大丈夫、大丈夫だよ。怖かったんだね。」
「ちょっと落ち着いた?これ飲める?」
陽ちゃんがリビングから飲み物を持って来てくれた。
たくさん泣いて汗もかいて喉がからからになっていた。
「甘い…」
「スポーツドリンク、美味しい?」
「うん、美味しい。」
「良かった。リビング行けそう?」
あ、まだここ玄関か…
リビング…何があるんだろう…ベランダとかあるのかな…
「行けそうになったら、俺と一緒に行きます。
それまでここにいても良いですか?」
無意識に神山先生の服をまた握ってしまっていた。
「分かりました。
冷えるのでブランケット使ってください。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、俺は城崎先生とリビングで待ってますね。
なんかあったら呼んでください。
空、ゆっくりでいいからな。」
「うん、」
「リビング怖い?」
「…うん…」
神山先生は僕を抱きしめながら聞いてきた。
「何が怖い?」
「…ベランダ…とか…」
「ベランダかぁ、そっか、他には?」
「…コード…」
「コード?コンセントの?」
「うん、コード…苦し…から…あとタバコ…とか…」
「そっか、ちょっと待ってね」
神山先生はスマホを取り出し電話をした。
誰かに用事かな?
「あ、名取先生ちょっと質問があって、家の間取りなんですけど、リビングからベランダって見えますか?…
あ、なるほど、…はい、…他にはコンセントとかのコードなんですけど…あ、そうです。…はい…分かりました。
あともう一つ質問で先生って確かタバコ吸わないですよね?…はい、分かりました。ありがとうございます。失礼します。」
「陽ちゃん?」
「うん、俺もこの家来たの初めてだから知らなくて。
ベランダは見えるけど、カーテンしてあるってそれでも怖かったら寝室にいても良いよって、
あとコードは見えないようにはしてあるって。
ここにはコードで首を絞める人はいないからね。って言っても怖いものは怖いよね。」
「見えなかったら…大丈夫かもしれない…でも…思い出すのが怖い…」
「そっか、そうだよね。…
あとタバコだけど、3人ともタバコ吸わないからそこは大丈夫だと思うよ。
ゆっくり気持ち整理したら良いからね。
今日もしリビング行けなくても一緒にここで寝てまた明日一緒に頑張ろう。」
「うん…」
玄関前の廊下は冷たくて寒いけど、神山先生は文句一つ言わずずっと付き合ってくれた。
もうすぐ4時になる…
「リビング…行きたい…」
廊下には慣れて神山先生と普通にお話ができるようになった。
「うん、行ってみようか。手繋ぐ?」
「うん、」
僕は行くことを決めたが不安で神山先生の手を強く握った。
「行こっか、ドア開けるよ。」
ドアが開いた瞬間足がすくむ感じがしたが、
陽ちゃんと城崎先生の姿が目に入り安心した。
あの家とは違うんだ…
「おかえり、」
陽ちゃんが僕に言ってくれた。
おかえりなんて言ってもらえたのいつぶりだろう。
嬉しくて、気づけば涙が頬を伝っていた。
「えっ?夕紀どうした?怖いか?」
「ちがっ、違う…嬉しくて…おかえりって言ってくれたのが嬉しくて…う゛うぅ」
「今日からここは空の家だよ。だから、おかえり。」
陽ちゃんが優しく抱きしめてくれた。
「ただいまぁ…ひっく、うぅ、ひっく…」
さっきまでリビングが怖くて不安でいっぱいだったことが嘘のように今は心の中がぽかぽか温かいものでいっぱいになっていた。
玄関に入ると足が動かなくなった。
「空くん?」
神山先生の声が聞こえるのに返事ができない…
『なんで生きてる、死ねよ、早く死ねよ。』
父さんの声が聞こえる…
目の前が真っ暗で立っていられなくなった。
しゃがみこんで耳を塞いでも父さんの声はだんだん大きくなるばかり、
もう嫌だ!!…もう…許して…助けて…助けて!!
いやだ!!い゛や゛だ!!ああああああ゛あ゛あ゛あ゛―
「…空くん!!帰ってきて!!空くん!!」
「はっ!…はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
「空くん、先生のこと分かる?」
「…神山先生…」
「はぁ、良かった。もう大丈夫だよ。」
「う゛ぅうう…」
力いっぱい神山先生の服をつかんで泣きじゃくった。
不安に押しつぶされそうなこの心をどうやったら楽にできるのかが分からずただ泣くしかできなかった。
「ひっ、ひっ、」
「大丈夫、大丈夫だよ。怖かったんだね。」
「ちょっと落ち着いた?これ飲める?」
陽ちゃんがリビングから飲み物を持って来てくれた。
たくさん泣いて汗もかいて喉がからからになっていた。
「甘い…」
「スポーツドリンク、美味しい?」
「うん、美味しい。」
「良かった。リビング行けそう?」
あ、まだここ玄関か…
リビング…何があるんだろう…ベランダとかあるのかな…
「行けそうになったら、俺と一緒に行きます。
それまでここにいても良いですか?」
無意識に神山先生の服をまた握ってしまっていた。
「分かりました。
冷えるのでブランケット使ってください。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、俺は城崎先生とリビングで待ってますね。
なんかあったら呼んでください。
空、ゆっくりでいいからな。」
「うん、」
「リビング怖い?」
「…うん…」
神山先生は僕を抱きしめながら聞いてきた。
「何が怖い?」
「…ベランダ…とか…」
「ベランダかぁ、そっか、他には?」
「…コード…」
「コード?コンセントの?」
「うん、コード…苦し…から…あとタバコ…とか…」
「そっか、ちょっと待ってね」
神山先生はスマホを取り出し電話をした。
誰かに用事かな?
「あ、名取先生ちょっと質問があって、家の間取りなんですけど、リビングからベランダって見えますか?…
あ、なるほど、…はい、…他にはコンセントとかのコードなんですけど…あ、そうです。…はい…分かりました。
あともう一つ質問で先生って確かタバコ吸わないですよね?…はい、分かりました。ありがとうございます。失礼します。」
「陽ちゃん?」
「うん、俺もこの家来たの初めてだから知らなくて。
ベランダは見えるけど、カーテンしてあるってそれでも怖かったら寝室にいても良いよって、
あとコードは見えないようにはしてあるって。
ここにはコードで首を絞める人はいないからね。って言っても怖いものは怖いよね。」
「見えなかったら…大丈夫かもしれない…でも…思い出すのが怖い…」
「そっか、そうだよね。…
あとタバコだけど、3人ともタバコ吸わないからそこは大丈夫だと思うよ。
ゆっくり気持ち整理したら良いからね。
今日もしリビング行けなくても一緒にここで寝てまた明日一緒に頑張ろう。」
「うん…」
玄関前の廊下は冷たくて寒いけど、神山先生は文句一つ言わずずっと付き合ってくれた。
もうすぐ4時になる…
「リビング…行きたい…」
廊下には慣れて神山先生と普通にお話ができるようになった。
「うん、行ってみようか。手繋ぐ?」
「うん、」
僕は行くことを決めたが不安で神山先生の手を強く握った。
「行こっか、ドア開けるよ。」
ドアが開いた瞬間足がすくむ感じがしたが、
陽ちゃんと城崎先生の姿が目に入り安心した。
あの家とは違うんだ…
「おかえり、」
陽ちゃんが僕に言ってくれた。
おかえりなんて言ってもらえたのいつぶりだろう。
嬉しくて、気づけば涙が頬を伝っていた。
「えっ?夕紀どうした?怖いか?」
「ちがっ、違う…嬉しくて…おかえりって言ってくれたのが嬉しくて…う゛うぅ」
「今日からここは空の家だよ。だから、おかえり。」
陽ちゃんが優しく抱きしめてくれた。
「ただいまぁ…ひっく、うぅ、ひっく…」
さっきまでリビングが怖くて不安でいっぱいだったことが嘘のように今は心の中がぽかぽか温かいものでいっぱいになっていた。
10
お気に入りに追加
376
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる