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第16話
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「離したくないなぁ…」
「フィリオスさん…」
「やっと想いが伝わったんだ。そう思うと、君に触れたままで居たいって思ってしまって」
フィリオスはソファに深く腰掛け、自分の両足の間にシェリルを座らせていた。シェリルの腰に腕を回し、きつくない程度に抱き締めて彼女の肩に自分の頭を擦り付ける。
フィリオスの髪の毛が自分の頬に触れくすぐったいのと、余りにもストレートにフィリオスが欲を呟くものだから、思わずシェリルは「ふふ」と笑ってしまった。
その様子を見てフィリオスは眉を顰める。
「シェリルはそうは思ってくれない?」
「いえ、私も離れ難く思ってはいます。…ですが、さすがに心臓がもたない気もしてしまって」
頬を赤く染め俯くシェリルに、フィリオスが「はぁ」と溜息をついた。
「可愛いなぁ。好きな人の仕草は何でも可愛く見えて困るね」
「そ、そうですか…?」
可愛いなどと言われてシェリルが対応に困っている様もまた、フィリオスには可愛く思えて仕方なかった。
夕食は先程フィリオスの部屋で済ませ、その場に姿を現したファルマとリーナに二人の関係の変化を伝えると、リーナが涙を流しながら喜んでくれ、シェリルがつられて泣いてしまうという事があった。
ファルマはその様子を微笑ましく見つめてくれ、リーナとシェリルが泣き止んだ頃にリーナを連れて部屋を退出してしまった。
本来なら、この後は湯浴みがあるのでシェリルも部屋に戻るのだが、気を利かせてくれたのか「リーナがまたお迎えに上がります」と言い残し二人だけにしてくれた。
「シェリルは温かいね」
「フィリオスさんも温かいですよ」
更に、ぎゅ、とフィリオスが抱き締めた後、少しシェリルの身体の向きを変えさせ二人の視線が合う体勢になった。
フィリオスがシェリルを見つめるがシェリルは気恥ずかしくて視線を逸らしてしまった。それをフィリオスがシェリルの顎を指で掬いフィリオスの方に顔を向けさせた。
「俺を見て」
「…見つめられると、恥ずかしい、です」
「うん、解ってる。だけどシェリルの瞳が見たい。俺を見ているシェリルが見たい」
そう言いながら、フィリオスはシェリルの唇に自分の指で触れる。柔らかく、温かい。
ふにふにとシェリルの唇を指で堪能した後、シェリルの唇に自分の唇を重ねた。
長く、長く唇を重ね合わせる。
シェリルの息が漏れた時に、そっと唇を離し、そしてまた重ねる。
何度も重ね合わせ、フィリオスの鼓動が速くなる。鼓動の速さと同じように、唇に触れるのも速くなっていった。
「…んっ、もう、ダメです」
シェリルが耐え切れなくなって顔を逸らした。
「しっ、心臓がっ。もの凄くて」
真っ赤になったシェリルがあまりにも可愛くて。フィリオスはまたシェリルの肩に自分の頭を擦り付ける。
「…ごめん、もう止まらなかった」
フィリオスが顔を上げ、シェリルに許しを請うように見つめる。
「きょ、今日はこれで部屋に戻ります…ごめんなさい」
「ん、解った」
「あ、あのっ、嫌って…いう訳では、決して…ないです、よ」
「…シェリル」
「でっ、でも、慣れてなくて…ですね、頭の中がいっぱいになってしまって」
「うん」
「だから、その…。今日は、ここまでで…」
「…うん」
「あの、ちゃんと嬉しいです」
「はは」
「わっ、笑わないで…」
「ごめんごめん、違うよ。そういう笑いではなくて、俺も嬉しいから」
「…はい」
「俺こそごめん、急がせるつもりはないんだ。ちゃんと俺たちのペースで、お互いを知っていければ」
「はい」
「今日凄く嬉しかったから、舞い上がってるんだ」
「私も凄く嬉しくて、幸せです」
「俺もだよ、シェリル」
シェリルの目に涙が溜まる。フィリオスが目元の涙を拭ってやった。
「本当に泣き虫だな…」
フィリオスの顔が少し困り顔で。それでも、どこか嬉しそうで。
「大丈夫、一緒に幸せになるんだから」
そう言って、シェリルの手を強く握り締めた。
「フィリオスさん…」
「やっと想いが伝わったんだ。そう思うと、君に触れたままで居たいって思ってしまって」
フィリオスはソファに深く腰掛け、自分の両足の間にシェリルを座らせていた。シェリルの腰に腕を回し、きつくない程度に抱き締めて彼女の肩に自分の頭を擦り付ける。
フィリオスの髪の毛が自分の頬に触れくすぐったいのと、余りにもストレートにフィリオスが欲を呟くものだから、思わずシェリルは「ふふ」と笑ってしまった。
その様子を見てフィリオスは眉を顰める。
「シェリルはそうは思ってくれない?」
「いえ、私も離れ難く思ってはいます。…ですが、さすがに心臓がもたない気もしてしまって」
頬を赤く染め俯くシェリルに、フィリオスが「はぁ」と溜息をついた。
「可愛いなぁ。好きな人の仕草は何でも可愛く見えて困るね」
「そ、そうですか…?」
可愛いなどと言われてシェリルが対応に困っている様もまた、フィリオスには可愛く思えて仕方なかった。
夕食は先程フィリオスの部屋で済ませ、その場に姿を現したファルマとリーナに二人の関係の変化を伝えると、リーナが涙を流しながら喜んでくれ、シェリルがつられて泣いてしまうという事があった。
ファルマはその様子を微笑ましく見つめてくれ、リーナとシェリルが泣き止んだ頃にリーナを連れて部屋を退出してしまった。
本来なら、この後は湯浴みがあるのでシェリルも部屋に戻るのだが、気を利かせてくれたのか「リーナがまたお迎えに上がります」と言い残し二人だけにしてくれた。
「シェリルは温かいね」
「フィリオスさんも温かいですよ」
更に、ぎゅ、とフィリオスが抱き締めた後、少しシェリルの身体の向きを変えさせ二人の視線が合う体勢になった。
フィリオスがシェリルを見つめるがシェリルは気恥ずかしくて視線を逸らしてしまった。それをフィリオスがシェリルの顎を指で掬いフィリオスの方に顔を向けさせた。
「俺を見て」
「…見つめられると、恥ずかしい、です」
「うん、解ってる。だけどシェリルの瞳が見たい。俺を見ているシェリルが見たい」
そう言いながら、フィリオスはシェリルの唇に自分の指で触れる。柔らかく、温かい。
ふにふにとシェリルの唇を指で堪能した後、シェリルの唇に自分の唇を重ねた。
長く、長く唇を重ね合わせる。
シェリルの息が漏れた時に、そっと唇を離し、そしてまた重ねる。
何度も重ね合わせ、フィリオスの鼓動が速くなる。鼓動の速さと同じように、唇に触れるのも速くなっていった。
「…んっ、もう、ダメです」
シェリルが耐え切れなくなって顔を逸らした。
「しっ、心臓がっ。もの凄くて」
真っ赤になったシェリルがあまりにも可愛くて。フィリオスはまたシェリルの肩に自分の頭を擦り付ける。
「…ごめん、もう止まらなかった」
フィリオスが顔を上げ、シェリルに許しを請うように見つめる。
「きょ、今日はこれで部屋に戻ります…ごめんなさい」
「ん、解った」
「あ、あのっ、嫌って…いう訳では、決して…ないです、よ」
「…シェリル」
「でっ、でも、慣れてなくて…ですね、頭の中がいっぱいになってしまって」
「うん」
「だから、その…。今日は、ここまでで…」
「…うん」
「あの、ちゃんと嬉しいです」
「はは」
「わっ、笑わないで…」
「ごめんごめん、違うよ。そういう笑いではなくて、俺も嬉しいから」
「…はい」
「俺こそごめん、急がせるつもりはないんだ。ちゃんと俺たちのペースで、お互いを知っていければ」
「はい」
「今日凄く嬉しかったから、舞い上がってるんだ」
「私も凄く嬉しくて、幸せです」
「俺もだよ、シェリル」
シェリルの目に涙が溜まる。フィリオスが目元の涙を拭ってやった。
「本当に泣き虫だな…」
フィリオスの顔が少し困り顔で。それでも、どこか嬉しそうで。
「大丈夫、一緒に幸せになるんだから」
そう言って、シェリルの手を強く握り締めた。
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