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私はチクチクと毛糸を編みながらも意識はモヤモヤと同じところを行き来していた
ティア、、ティアって誰?
いやでも、、こんな、明らかに私を意識したものを依頼してくるかしら?
いやいやでも、、
夢にまで出てくる人というのは一体なんなんだろう
なんでもない人を夢に見る事なんてないはずだ、、それはきっと、、きっと、特別な人、、
手元に視線を落としてまた考え込む
私のこと、憎からず思っているはずだわ、、
そうじゃなかったら、、
こんなブランケットいらないはずだもの
編みかけのものを掲げるようにして眺める
鏡越しでも私の髪とよく似た色だ
それに布だって、、
明らかに私を意識しているはず
まるで恋人同士が、お互いを意識したアクセサリーを付け合うかのような
そんな意味合い以外に考えられるだろうか?
それでも私の知識は本から得たものだけだから、、
確信めいた自信は湧いてこない
レストは、、本の賢者は何百年も前の人なはずだ、、
もし仮に、そのティアという人が彼の恋人や、、ましてや奥さんだったとして
生きている可能性というのはあるのだろうか
そこまで考えてブンブンと頭を振る
私ったら、、なんて最低な考えなの!!
死んでたらいいだなんて、、!
さすがにそうは思っていないけれど、、その発想そのものが出た自分に驚く
そして手を止めて肩に触れる
「私の犯罪って、、なんなんだろう」
私は、レストの事が好きだ、、たぶん、、
でもだからこそ、だ
ずんっとのしかかる現実から目が逸らせなくなる
「レストは、、これを知ったらどう思うのかしら」
あの朗らかな笑顔はもう見られなくなるのかしら?
もしも、、拒絶されたら、、
そう思うと胸が張り裂けそうになる
記憶がない、、
だからどこか他人事のように思っていた
それに、誰と関わりがあるわけでもない自分はこれがあったところで困るような事は特段起きなかった
でも確かに体に刻まれている罪の証に、、途端に追い詰められる
ギュッと作りかけのブランケットを握りしめる
「悩んでたって、解決するものでもないわね」
彼にこれを渡す時、その真意を聞いてみよう
そしてもし
もし彼が私と同じ想いを抱いてくれているなら
この背中についても、話せたらいいな
そう思いながらまた黙々と編み物を続けた
ー
ーー
ーーー
ーーーー
あっという間に数日が過ぎ、残るはメインの刺繍のみだ
もちろん、毎日レストのところに数時間だけ通い、魔法の本を借りたり
新たにこの国の歴史についての本を用意してもらったりした
「最近は、あまり長い時間いてくださらないのですね?」
ある日、数時間で切り上げて戻ろうとするとそう言われ
「その、ブランケットを早くお渡ししたくて、、!」
と答えてしまった
それからというもの、彼は毎日ソワソワと私の事を見ている
「そんなに楽しみですか?」
「えぇ、もちろん、
ステラが私の為に時間を割いてくれていると思うと尚の事、、楽しみで仕方ありません」
そうニコリと笑いかけられると恥ずかしいやら嬉しいやらで何も返せなくなってしまった
ただでさえ終日なんの予定もないのに
好きという意識を持ってからなんだかいたたまれないのもありレストのところにいる時間を減らし、、
その結果ブランケット作りにたっぷり時間を割いている
そうしてどんどんと完成に近づき
もう手を加えられるところは殆どなくなってしまった
変にこれが完成したら想いを明かそうなどと決めてしまったせいで
完成を先延ばししたい気持ちが生まれ
自分のブランケットを作った時と違いあちこちに妙な趣向を凝らしてしまっている
銀の刺繍糸でレースを編んで、縁につけてみたり、、
まるでセーターのように色々なアラン模様のパターンを編み分けして全体に入れてみたり、、
それでも、もうついに完成してしまう
そうして残すは最後の仕上げ、、
メインとなる刺繍を中心に入れれば完成だ
このメインは、、レストに決めてもらおう
引き立てるための刺繍を周りに施し終え、私は絵本を開く
今週中にはもう完成しそうだ
絵本の中で、レストは相変わらず机に向かいペンを走らせている
私に気がついて朗らかに笑う彼にドクンと心臓が跳ねる
直視できない
そそくさとレストに近づき胸に抱いた図案の本を差し出す
「ブランケットの真ん中に、大きく刺繍を入れようと思っているのですが、、希望はありますか?」
ぱらりといくつかいいなぁと思ったページを捲る
「そうですね、、あ、これはどうでしょう?」
そう言ってレストは胸元からカチャリと一つアクセサリーを外す
渡されたのは銀狼の横顔を縁取ったようなブローチだった
「家紋、ですか?」
「、、、えぇ、ステラにこれを入れてもらえれば少しは愛着が湧くかなと思いまして」
そう眉を下げながら微笑む
私はどう反応したらいいか分からずもう一度家紋を見下ろす
「貴女に、打ち明けなければいけない事があります、、でも、、もう少しだけ待っていただきたいのです」
そうかけられた声に顔を上げる
なんだか怯えるような、切実な表情に私は頷く
「分かりました、私も、、」
そう言って口を噤む
「、、大丈夫です」
無理しないでと気遣われ私はまた家紋に目を落とした
彼の打ち明けたい事、というのはこれに関係する事だとなんとなく思った
家紋が出てくるなんて、、
それはもう、自分がプログラムされた絵本の住人ではないと言っているようなものだ
パンッとレストが空気を打ち消すように手を叩く
「すみません、なんだか少し暗い空気にしてしまいましたね」
勤めて明るい声色を出しているのがわかる
「あぁ、そうだ!魔法は使えるようになりましたか?」
その言葉に私はドキリと肩を揺らす
「、、、おや?」
私の反応に彼は首を傾げる
「それが、、毎日練習しているのですがなぜか、、何も出来なくて」
色々と手伝ってくれている彼になんだか申し訳なくなる
私の言葉にレストはキョトンとする
「それは、、おかしいですね
貴女の魔力量なら何も出ないなんて事はあり得ないのですが、、」
その言葉に私は少しだけ安堵する
魔力量が少な過ぎて、という訳ではないのか、、よかった
レストは私の後ろに回り込むと囁くように耳元に顔を寄せる
「体全体に魔力が循環するのをイメージして下さい」
正直ドキドキでそれどころではないのだが、
そう言われてなんとか目を瞑る
体を血液のように、、魔力が循環するイメージ
ポカポカと体が温かくなり体を巡る魔力を感じる
「失礼します」
レストが後ろから包み込むように私の左手と、右肩に手を添える
「、、、おや?」
数秒そうしているとレストが不思議そうに声を上げた
「おかしいですね、なんだか堰き止められているような、、確認しますね」
そう言ってとんっと触れられた場所が明らかに例の、、奴隷紋が刻まれている場所で
私はハッとする
「レスト、待ってください!」
慌てて目を開けてギョッとした
まるで投影するかのように私の肩から紋様が浮かび上がり空中に表示されていた
「これは、、」
レストの顔がみるみる険しくなる
「あの、騙していたわけではないんです、、ただ、、」
言い出せなくて、、
そう言葉を続けたかったがレストの顔を見ていられなくなり俯く
「暫くの間、、こちらには来ないで頂いてもいいですか?」
その言葉にドキリと心臓が跳ねた
「、、、は、い、、」
なんとかそう返事をするのでいっぱいいっぱいだった
やっぱり、失望したのだろうか
怖くて顔を見る事もできない
そろそろと絵本に手を伸ばす
視界が涙で歪む
「、、失礼します」
最後に一度、レストがとんっと肩に触れる
ズキリという痛みが走り私に奴隷紋の存在を再確認させる
その瞬間ぽたりと涙が一粒落ちた
「、、さようなら」
私の言葉に何かを考え込んでいるように顎に手を当てて俯いていたレストが顔を上げる
私の顔を見て驚いたような表情の彼を最後に私は絵本をパタリと閉じた
ティア、、ティアって誰?
いやでも、、こんな、明らかに私を意識したものを依頼してくるかしら?
いやいやでも、、
夢にまで出てくる人というのは一体なんなんだろう
なんでもない人を夢に見る事なんてないはずだ、、それはきっと、、きっと、特別な人、、
手元に視線を落としてまた考え込む
私のこと、憎からず思っているはずだわ、、
そうじゃなかったら、、
こんなブランケットいらないはずだもの
編みかけのものを掲げるようにして眺める
鏡越しでも私の髪とよく似た色だ
それに布だって、、
明らかに私を意識しているはず
まるで恋人同士が、お互いを意識したアクセサリーを付け合うかのような
そんな意味合い以外に考えられるだろうか?
それでも私の知識は本から得たものだけだから、、
確信めいた自信は湧いてこない
レストは、、本の賢者は何百年も前の人なはずだ、、
もし仮に、そのティアという人が彼の恋人や、、ましてや奥さんだったとして
生きている可能性というのはあるのだろうか
そこまで考えてブンブンと頭を振る
私ったら、、なんて最低な考えなの!!
死んでたらいいだなんて、、!
さすがにそうは思っていないけれど、、その発想そのものが出た自分に驚く
そして手を止めて肩に触れる
「私の犯罪って、、なんなんだろう」
私は、レストの事が好きだ、、たぶん、、
でもだからこそ、だ
ずんっとのしかかる現実から目が逸らせなくなる
「レストは、、これを知ったらどう思うのかしら」
あの朗らかな笑顔はもう見られなくなるのかしら?
もしも、、拒絶されたら、、
そう思うと胸が張り裂けそうになる
記憶がない、、
だからどこか他人事のように思っていた
それに、誰と関わりがあるわけでもない自分はこれがあったところで困るような事は特段起きなかった
でも確かに体に刻まれている罪の証に、、途端に追い詰められる
ギュッと作りかけのブランケットを握りしめる
「悩んでたって、解決するものでもないわね」
彼にこれを渡す時、その真意を聞いてみよう
そしてもし
もし彼が私と同じ想いを抱いてくれているなら
この背中についても、話せたらいいな
そう思いながらまた黙々と編み物を続けた
ー
ーー
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あっという間に数日が過ぎ、残るはメインの刺繍のみだ
もちろん、毎日レストのところに数時間だけ通い、魔法の本を借りたり
新たにこの国の歴史についての本を用意してもらったりした
「最近は、あまり長い時間いてくださらないのですね?」
ある日、数時間で切り上げて戻ろうとするとそう言われ
「その、ブランケットを早くお渡ししたくて、、!」
と答えてしまった
それからというもの、彼は毎日ソワソワと私の事を見ている
「そんなに楽しみですか?」
「えぇ、もちろん、
ステラが私の為に時間を割いてくれていると思うと尚の事、、楽しみで仕方ありません」
そうニコリと笑いかけられると恥ずかしいやら嬉しいやらで何も返せなくなってしまった
ただでさえ終日なんの予定もないのに
好きという意識を持ってからなんだかいたたまれないのもありレストのところにいる時間を減らし、、
その結果ブランケット作りにたっぷり時間を割いている
そうしてどんどんと完成に近づき
もう手を加えられるところは殆どなくなってしまった
変にこれが完成したら想いを明かそうなどと決めてしまったせいで
完成を先延ばししたい気持ちが生まれ
自分のブランケットを作った時と違いあちこちに妙な趣向を凝らしてしまっている
銀の刺繍糸でレースを編んで、縁につけてみたり、、
まるでセーターのように色々なアラン模様のパターンを編み分けして全体に入れてみたり、、
それでも、もうついに完成してしまう
そうして残すは最後の仕上げ、、
メインとなる刺繍を中心に入れれば完成だ
このメインは、、レストに決めてもらおう
引き立てるための刺繍を周りに施し終え、私は絵本を開く
今週中にはもう完成しそうだ
絵本の中で、レストは相変わらず机に向かいペンを走らせている
私に気がついて朗らかに笑う彼にドクンと心臓が跳ねる
直視できない
そそくさとレストに近づき胸に抱いた図案の本を差し出す
「ブランケットの真ん中に、大きく刺繍を入れようと思っているのですが、、希望はありますか?」
ぱらりといくつかいいなぁと思ったページを捲る
「そうですね、、あ、これはどうでしょう?」
そう言ってレストは胸元からカチャリと一つアクセサリーを外す
渡されたのは銀狼の横顔を縁取ったようなブローチだった
「家紋、ですか?」
「、、、えぇ、ステラにこれを入れてもらえれば少しは愛着が湧くかなと思いまして」
そう眉を下げながら微笑む
私はどう反応したらいいか分からずもう一度家紋を見下ろす
「貴女に、打ち明けなければいけない事があります、、でも、、もう少しだけ待っていただきたいのです」
そうかけられた声に顔を上げる
なんだか怯えるような、切実な表情に私は頷く
「分かりました、私も、、」
そう言って口を噤む
「、、大丈夫です」
無理しないでと気遣われ私はまた家紋に目を落とした
彼の打ち明けたい事、というのはこれに関係する事だとなんとなく思った
家紋が出てくるなんて、、
それはもう、自分がプログラムされた絵本の住人ではないと言っているようなものだ
パンッとレストが空気を打ち消すように手を叩く
「すみません、なんだか少し暗い空気にしてしまいましたね」
勤めて明るい声色を出しているのがわかる
「あぁ、そうだ!魔法は使えるようになりましたか?」
その言葉に私はドキリと肩を揺らす
「、、、おや?」
私の反応に彼は首を傾げる
「それが、、毎日練習しているのですがなぜか、、何も出来なくて」
色々と手伝ってくれている彼になんだか申し訳なくなる
私の言葉にレストはキョトンとする
「それは、、おかしいですね
貴女の魔力量なら何も出ないなんて事はあり得ないのですが、、」
その言葉に私は少しだけ安堵する
魔力量が少な過ぎて、という訳ではないのか、、よかった
レストは私の後ろに回り込むと囁くように耳元に顔を寄せる
「体全体に魔力が循環するのをイメージして下さい」
正直ドキドキでそれどころではないのだが、
そう言われてなんとか目を瞑る
体を血液のように、、魔力が循環するイメージ
ポカポカと体が温かくなり体を巡る魔力を感じる
「失礼します」
レストが後ろから包み込むように私の左手と、右肩に手を添える
「、、、おや?」
数秒そうしているとレストが不思議そうに声を上げた
「おかしいですね、なんだか堰き止められているような、、確認しますね」
そう言ってとんっと触れられた場所が明らかに例の、、奴隷紋が刻まれている場所で
私はハッとする
「レスト、待ってください!」
慌てて目を開けてギョッとした
まるで投影するかのように私の肩から紋様が浮かび上がり空中に表示されていた
「これは、、」
レストの顔がみるみる険しくなる
「あの、騙していたわけではないんです、、ただ、、」
言い出せなくて、、
そう言葉を続けたかったがレストの顔を見ていられなくなり俯く
「暫くの間、、こちらには来ないで頂いてもいいですか?」
その言葉にドキリと心臓が跳ねた
「、、、は、い、、」
なんとかそう返事をするのでいっぱいいっぱいだった
やっぱり、失望したのだろうか
怖くて顔を見る事もできない
そろそろと絵本に手を伸ばす
視界が涙で歪む
「、、失礼します」
最後に一度、レストがとんっと肩に触れる
ズキリという痛みが走り私に奴隷紋の存在を再確認させる
その瞬間ぽたりと涙が一粒落ちた
「、、さようなら」
私の言葉に何かを考え込んでいるように顎に手を当てて俯いていたレストが顔を上げる
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