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大学で人気の爽やかイケメンはヤンデレ気味のストーカーでした

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 憂鬱だ。この授業はいつも憂鬱だ。この教授は名前を覚えるのが苦手で、出席簿順に座るように指定している。だから仲のいい美幸と同じ授業を取っているのに、この授業だけは離れ離れだ。

 そして憂鬱な原因はもう一つ。毎回隣に座る男の存在だ。周りからの視線も痛いし、生きた心地がしない。

 講堂に入るとすでに着席している軽くウェーブがかかった茶髪を見つけてため息をついた。

美歌みか、ファイト」

「うん…後でおいしいご飯食べようね」

 講堂の出入り口で美幸と別れて、女性の位置に向かった。すでに突き刺さる視線にため息をつきまくりながら、私は所定の席に座った。

 鞄を開けて教科書を出していると、色気のある低い声で左横から声をかけられた。

「ねぇ、上坂さん」

「なに、上杉くん」

 学年学部問わずに大人気の爽やかイケメン上杉光輝はなぜか私によく話しかけてくる。チラッと目線を向けると、可愛い八重歯がチラリと見える笑顔で私に微笑んでいた。

「何かよう?」

「今日暇?」

「バイト」

「…あのバイト?いつもの時間まで?その後は居酒屋?」

「そう」

 上杉くんはニンマリ笑って私にしか聞こえない小さな声で呟いた。

「じゃ、後で指名で予約いれよーっと」

 この授業が憂鬱な理由がもう一つあった。この男は私のバイト先に偶然現れ、それからこの授業で出勤を確認すると、ワザワザ指名してくる事だ。

 言わなければいい。そう思うだろう。私も一度そう思って、言わなかったことがあった。しかし、そのバイトに向かうと、次の私の出勤予定日全部、枠組み一杯にこの男1人の予約で埋め尽くされていた。

 これはこれで恐ろしかった。そもそもこの男は爽やかさを売りにしているから、近寄ってくる女性たちに分け隔てなく優しい。いつも両手に持ちきれないほどの花を抱えている。つまり女にも苦労していないはずなのだ。

 なのにだ。居酒屋と空き時間にメンズエステでバイトして生活費を稼いでいる私の常連になっている。美幸は私がエステでバイトをしている事は知らない。居酒屋だけバイトしていると思っている。

 18で大学に入って、現在21歳。メンズエステの仕事は20から始めて1年経つ。そしてこの男の相手をしているのも約1年。始めた頃からのお客だった。

[俺だけの専属にならない?]

 授業が始まってから左隣からメモが私のノートの上に置かれた。置いた人物は、左隣の無駄に爽やかな男だ。私はメモに[意味不]とだけ書いて、サッと突き返した。

 そもそもこの男は私の出勤日に枠組みいっぱいに予約をしてくる。だから私はこの男以外の男性をほとんど相手してなかった。ある意味専属である。

[仕事以外でも会おうよ]

 また再びメモがノートの上に置かれた。私はハァっとため息をついてから[ほっといて]と書いて突き返した。

 その後は特に絡まれる事はなく、淡々と授業を受けて美幸と合流して昼食を食べた。夕方までの授業を受け終わると、憂鬱な気分になりながら仕事場に向かった。

「おはよーござまーす」

「お、蜜柑ちゃん来たね。今日もお得意様、出勤時間めいっぱいでご指名だよ」

「はぁぁい…」

「いつもの施術ブースつかってね」

「はぁぁぁぁい」

 事務所に着いてすぐに、予約表を渡された。私は奴の偽名である[山本]という文字を眺めて、もう一度ため息をついた。

 私はロッカーで、仕事着に着替えて予約時間前にマッサージ用のベッドをアルコール消毒したり、オイルを用意していると予約時間になったので山本を迎えに行った。

「よろしく」

「はい」

 無駄に爽やかな笑顔のバスローブ姿の山本を個室に案内すると、通い慣れている山本は入ってすぐに紙パンツ一枚でベッドの上にうつ伏せ寝転がった。

「じゃ、180分コースで、延長30分ですね」

「よろしく。終わったら居酒屋も行こうかな」

「……」

 この男はある意味、私のストーカーだ。居酒屋も梯子で時折やってくる。正直、どうしてここまで私に執着するのか全くわからない。でも特に手を出されることもないし、変なことをされることもないし、害はないのでほったらかしにしていた。

 私は温めたオイルを大きな背中に垂らしてゆっくりリンパを流し始めた。

「あー…きもちい…」

「………」

「んっ…もう少し強くて…ぁっ」

「…………」

「あー、そこそこそ、ううううー」

 この男はいちいち反応を示してくる。「んっ」とか「いてて」とかならまだいい。無駄にうるさいのだ。

 無駄に煩いイケメンと個室で2人っきり。私の手が動くたびにグチュっと音がしたり、お尻の付け根を触るとビクビクっとやつが震えたり…

 私は1年で無になりながら施術をすることを覚え、ひたすら無言で施術していた。

「次、仰向けでおねがします」

「はーい」

 間延びした声で返事をすると、山本は仰向けになった。この状態が私は一番嫌だった。なぜならコイツは股間をいつも膨らませているからだ。

「ではデコルテから始めます」

「はーい」

 私は山本の頭の方へ移動すると、椅子に座って鎖骨から胸元にかけて施術し始めた。

 山本は目を開けてじーっと私を見つめながら、いつもニコニコと微笑んでいる。今日はそれにプラスして声をかけてきた。

「ね、マジで俺の専属にならない?」

「………」

「蜜柑の手が気持ちよくてさ……だめ?」

「二つ掛け持ちして仕事してないと無理なの」

 冷たくあしらいながら声をかけ、施術していると私に向かって3本指を立ててきた。

「この仕事やめて、専属になるなら…一回につき、これでだめ?」

「…30000?」

「そう。俺以外の男の体触るのとか許せないし」

 提示された金額は高額だった。ここで働き、居酒屋で働いていてもせいぜい学校終わりの5.6時間だ。ここは、コイツが毎回訪れるから歩合の店でも給料は出ている。しかし、提示された金額は一回ではもらえない。

 私は少し迷いながら足の施術を始めた。山本は視線をこちらに向けたまま話を続けた。

「場所は俺の部屋ね。実はさ、蜜柑の部屋の隣に部屋を借りたんだ」

「は!?」

 私は驚きすぎて手を止めて山本を見つめた。確かに先週末、隣に誰か引っ越してきたような気配はしていた。

 山本はニヤニヤ笑いながら話を続けた。

「専属になってくれるなら、部屋がいるなぁって思って。隣なら居酒屋終わってからとかでもいいよね」

「よくない。無理、立ち仕事の後は疲れる」

「じゃあ、休日の居酒屋のバイトが始まる前までとかは?」

「………」

 居酒屋は夜しかやっていない。土日祝日出勤にしても、働く時間は同じだ。休日の日中は勉強したり家のことをしたり、買い物したりとプライベートを楽しんでいる。エステの仕事は平日しかしていないからだ。

 うーんっと悩んでいると、山本は後一押しと思ったのか、さらに話を続けた。

「機材も道具も全部用意する。蜜柑は体一つでくればいいからさ」

「……いつも思うんだけど、そのお金どこから出てるの?」

 鼠蹊部を触りながらチラリと目線を向けると、少しだけ興奮したような顔でこちらをみながら奴は答えた。

「あれ?しらない?俺大企業の社長の息子。金ならあるよ」

「……しらなかった」

「有名だと思うんだけどなぁ」

「アンタに興味ないし、噂話も聞かないことにしてるから」

「あー、それはそれで寂しいけど、その塩対応がいいよね」

「うるさい」

 一通り終わる頃には、190分すぎていた。延長があるからあと20分。何をしようかと考えていると、山本は起き上がって勝手にうつ伏せになった。

「背中もっと」

「はいはい」

 指示されたとおりに背中を触っていると、山本は少しだけご機嫌な声で話してきた。

「ここは来月まだ入れてないよね?ってことは…今月で辞めるってことで」

「いや、待って?私オッケーしてないよね?」

「え?でもお金欲しいでしょう?」

「うっ…」

 確かにお金は欲しい。学費は親が払ってくれるが、家賃光熱費食費など1人で暮らすためのお金は出してもらえていない。お金はあるにこしたことはない。私はフーッとため息をついてから、山本に声をかけた。

「わかった。来月からね」

「やった!じゃあ、連絡先交換」

「…それは今度。とりあえず来月の第一土曜日で」

「じゃあ10時に隣にきて。203号ね」

「はいはい」

 あっという間に20分が終わり、山本をシャワー室に送り出して私は片付けをして事務所に向かった。

「店長、すみません。来月なんですけど…」

「ん?どうした?」

「他にいい仕事が見つかったので、今月で辞めたいんですが…」

「急だね、まぁ、構わないよ?山本さんは大丈夫なの?」

「あの人は問題ないです」

「ならこちらも大丈夫。蜜柑ちゃんは山本さんしか相手してないしね」

「デスヨネ」

 すんなりと辞めることが決まって、あははっと乾いた笑いをしながら着替えて次の仕事場に向かった。

 宣言通り、上杉くんは居酒屋に来ていた。かなり上機嫌でお酒を飲んで、お客できている女性にナンパされ、そして2人ほど女性を引き連れて帰っていった。

(毎回持ち帰りしてるし、女には本当困ってないよね)

 そんなことを考えながら居酒屋での仕事を終えて帰路についた。



 それから同じように繰り返し過ごして、約束の翌月土曜日になった。9時ごろに隣の扉が開いた音がしたため、私はのんびりと用意をして10時にインターフォンを鳴らした。

「あ、ようこそ。上坂さん。あ、蜜柑の方がいい?」

「…呼びたい方で」

「じゃ蜜柑で。俺のことは…光輝って呼んで」

「……ここだけなら」

「いいよ、それで」

 部屋の中に入ると、ワンルームで同じ間取りなのに内装がオシャレだった。モノトーンで統一され、シンプルだけどそれがまたオシャレだった。

「あ、マッサージ台も買ったから」

 折り畳み型のマッサージ台を空きスペースに置くと、光輝はいそいそと服を脱ぎ始めた。

「あ、それ、制服ね」

 壁に吊るされている服を見て私はヒクヒクと口の端を動かした。

「まって、これ…制服?ただのセクシーランジェリーじゃない!?」

「そうとも言うよね]

 光輝はオイルなどを用意してから、真っ裸でマッサージ台にうつ伏せになった。

「ほら、早く。そこで着替えて。俺見てないから」

「うっうう」

 専属とかいうのは早まったかもしれない。私は店と同じように施術すると思っていたけど、個人的にするってことは…雇い主はコイツだ。コイツの意向に沿ってやらなければならない。

 ため息をついて、渋々服を脱いで黒レースのブラとショーツを履いた。どこでカップ数を知ったのかしらないけど、D65でサイズもぴったりだった。

 不思議に思いながらも、着替え終わると用意されているオイルを温めてから光輝の背中に塗り始めた。

「うう、これこれ。いいよね」

「どうも」

 いつもと同じように背中をしてからお尻周りをしようと手を伸ばすが、丸見えのお尻にそっと目を逸らしながら手を動かした。ふくらはぎまで行なって仰向けになるように伝えようとするが、今起きたら何が見えるか思い出して私は固まってしまった。

「仰向けだよね」

「いや、まって!アレ、あるでしょ。何かで隠して…」

「やだよ」

 光輝はそのまま仰向けになると、ドーンっと硬くなっているモノや曝け出してしまった。私は思わずクルリと背を向けてしまった。

「…今日はいつもよりたくさん触ってもらおうかなぁ」

「まって、それはエステには含まれないよね」

「個人だから含まれます。はい、まずは頭の上にくるやつからね」

 ううっとなりながらも渋々光輝の頭に回って椅子に座るとデコルテを触り始めた。

「おっぱい押し当てて」

「……うっうう」

 言われたとおりに光輝の頭に胸を押し当てて触っていると、嬉しそうな声で囁いてきた。

「あー、いいね」

「…恥ずかしい」

「俺は最高に気持ちがいいよ」

 ふふと笑う光輝は本当に嬉しそうで上機嫌だった。デコルテが終わって足に移って太ももを触って脛を触っていると、光輝はニヤニヤと笑い始めた。

「真ん中もね」

「……やだよ」

「だめ」

「うっうう」

 鼠蹊部を触りつつスルッと硬くなったモノを握ると、光輝はとても嬉しそうに微笑んだ。

「あー、ぬるぬるしてるから滑りがいいのもあるけど、蜜柑が俺のを触ってると思うだけでイキそう」

「なんでもいいから早くして!」

 あまり手元は見ないようにしながら握って上下に動かしていると、光輝は上半身を起こして私を抱き寄せた。

「あー、むり。もうむり」

 光輝はそのまま私の背中にあるフォックを外して、ブラを取り外してしまった。

「やっ!なに!」

「惚れた女に触られたらもうむり」

「な、なに…や、なんか顔怖い!」

 硬いモノから手を離して胸元を隠しながら、ギラギラと私を狙うような目で見つめてくる光輝から逃げようと私は動いた。でもすぐに捕まって、光輝は私を軽々と持ち上げてマッサージ台の上に押し倒した。

「ま、まって…」

「待てない。やっぱ触られたら止まんないや。店でお願いしなくてよかった」

 光輝は私の両腕を掴んで、マッサージ台に押し付けると露わになった胸元を舐め始めた。

「ぁっ…まっ…て」

「乙女は取られてるのはムカつくけど、これから先は俺の専属なら許せる」

「ぁっぁ…ちょ、何して…んん!すわな…いでぇ」

「んちゅっ…無理。やっと手に入ると思うと、無理」

 光輝は私の胸元にたくさんの赤い痕をつけながらドンドン頭を肩に下げていった。両手を拘束していた手は片手は胸を揉んで、もう片手はショーツをずり下げていた。脱がされないように足で抵抗していたが、男の力には敵わなくて呆気なく脱がされてしまった。

「はぁはぁ…蜜柑の匂い…」

 私の股を大きく広げると、股間に顔を埋めて光輝はウットリとし始めた。私は両手が自由になったこともあり、光輝の頭を引き剥がそうと手を伸ばした瞬間に蜜壺を勢いよく吸われてしまった。

「あっあああ、やだ…そんな、きたな…い」

「ジュッ…汚くない」

「あっあっあっ…やぁ、舌がっ…あっあっ」

「美味しい…めっちゃ美味しい」

 光輝は音を立てながら私の蜜を啜り、舐め、赤く熟れた突起を舐め回した。久々の快感が気持ちよくて、私は抵抗する力も無くなって快感に酔い始めた。

「ジュッ…はぁはぁ」

「んっんん…あ、待って、それはダメ、生はダメ!!!」

「嫌」

 股を広げられてスキンもつけていない硬いモノを当てられて現実に戻ってきた私は抵抗したが、ズブっと先端が差し込まれてしまった。

「あああ!」

「はぁ…生の蜜柑最高…きもちぃ」

 どんどん奥に入ってきた硬いモノは私の弱い場所を探すかのように動き始めた。

「あっあっ…ゃめ…だめ…ああ」

「でもめっちゃ吸い付いてるよ?やっぱ俺ら相性いいね。触られてる時から思ってた」

「ああああ、やん、そこ…あっああ」

「ここ?ここか、覚えた。他はどこかなー」

 光輝はどんどん私の弱い場所を探り当て、弱い場所を重点的に刺激してきた。

「はぁぁん…ぁっぁっ…やぁ…きもち…んっんん」

「いつもおすまし…塩対応、っ…蜜柑は…くっ、快感に弱いのか。まじで俺、好み」

「あっあっ、やっ…イッく…イッ…あっああ」

「俺も、中に出すよ」

「あっ!それは…だめ、やっああああ、あっああ!はげし、やっ、あああああ!」

 止めようとするが、どんどん激しく腰を振られてしまい、私は快感の絶頂に達してビクビクと体を震わせた。光輝はそのまま奥に差し込んでドクドクと熱い精を私の注ぎ込んでいた。

「ぁっああ、やだ…生で中に出すとか……まって!今日ダメ!!!」

「うん。排卵日近いもんね。知ってる。でも俺のにするし、孕ませるから」

「やっ、まって…硬くしないで、あっあっ、やっ、やぁっ…ああ」

「好きすぎて、俺、蜜柑のことならなんでもっ…知ってるから」

「あっああ、あっん…んんっんああ」

「もう離さないから。永久専属に、指名だから」

「んっああ、やぁ、またイッちゃ…ああっああっあっあああ!」

 激しく刺激されて私はまた絶頂に達して、ガクガクと体を震わせた。光輝はまだ硬いままだ。そのまま私を抱き上げて近くのベッドに繋がったまま移動すると、光輝は私を四つん這いにさせて激しく腰を振り始めた。

「あっあっあっ、やぁ、これ、だめぇぇぇえ」

「バックが好きなんだ」

 肌と肌がぶつかる音や粘着質な音を響かせながら、私はまたさらに快感に溺れた。どんどん高まっていく快感は私をすぐに絶頂へと誘った。

「あっあっ、イッ…あっああ!やぁぁ、激しっ…あっあっ、あっあっ、ああああん」

「うっ、締め付けやばっ…出すよ」
 
 私が体を震わせて達していると、中の締め付けに耐えられなかった光輝は奥の入り口にゴリゴリと先端を押し当てながらドクドクと熱い精を注いだ。

「はぁはぁ…美歌、俺と結婚して」

「…まっ…なに…え」

「オッケーするまで、ヤルから」


 その後、光輝は抜かずに2回中に出した。最後は記憶がなくて、何かに対して「うん」をずっと繰り返し言っていた気がする。

 抱き潰されて、動けない私の代わりに光輝はバイト先に電話して勝手に休みを取っていた。

 気がついて起きた頃には、私の名前の欄だけ空欄の婚姻届を持った光輝が、ニコニコと私にペンを差し出してきた。

「やっと捕まえた。ずっと俺のものにしたくて、したくて、たまんなかった。美歌。さっきプロポーズの返事で〈うん〉って言ったよね?サインするよね?」

「………」

「中出し4回したし、孕んでるかもね」

「…………」

「大丈夫!大学は一緒に卒業しよう?就職活動もしなくていいから。てか、院に行くつもりなんでしょう?結婚しても通えるから大丈夫!俺も一緒に行くね。子供が生まれても、ちゃんとやりたいことさせてあげるよ」

「………嫌って言ったら?」

「うーん、監禁かな」

 光輝の言葉にゾワっときたものが体を駆け巡った。目は笑っていないし、声も低いし、本気に感じた。

(初めから仕組まれてた気がする。ああ、お金に目が眩んだのがそもそもの間違いだった)

 後悔しながらも、力が入らない右手でペンを握って光輝を見つめた。

「結婚したら…」

「講義以外はずっと一緒。バイトもやめてね?あとここの部屋は二つとも退去して、買ってあるマンションに移動ね。子供ができてもいいように家政婦さんも雇ってあるから。あ、入籍後に美歌のご両親に挨拶だね。俺の親はもう美歌のこと気に入っててさぁ、大丈夫だから。結婚式は1年後かな。子供ができたら半年後。もう会場はどちらの場合でもできるように押さえてあるから。あ、ドレスは勝手に選んだけどいいよね?招待客はちょっと多いけど、美歌はニコニコしてるだけでいいから。他に聞きたいことは?」

「………今のところないです」

「じゃ、書いてね?」

 私は震える手で名前を書くと、光輝はニンマリと笑って届け出を眺めた。

「時間外で出してくるよ。今日が大安でよかったねぇ。あ、美歌は寝てていいから」

 光輝は服を着て、ルンルンで部屋から出て行った。私は疲れてパタリとベッドに倒れ込んだ。

「もしかしてエステのお客がアイツが初めてだったのは……いや、まさかね?」

 はははっと乾いた笑いをしながら、私はもう一度寝ることに決めた。

 大学で人気の爽やかイケメンは、ヤンデレ気味のストーカーだった。でもなんだかんだで、すぐに受け止めてしまった私はアイツに惹かれていたのだろうか。

 グルグルと頭の中で考え事をしていると、いつの間にか私は眠っていた。

 そして次起きた時には、左手の薬指に大きなダイヤがついた指輪とシンプルだけど小さなダイヤが埋め込まれた銀の指輪がついていた。もちろん、光輝の左薬指にも銀色に光るものがあった。

「やっと手に入れた。俺の美歌」

「いつから私のこと狙ってたの?」

 ベッドで向かい合うように横向きに寝転がって、私に腕枕をしながら抱きついている光輝に疑問に思っていることを聞くと、ニンマリと笑って返答してきた。

「合格発表の日に一目惚れして、入学式にはすでに手に入れようと計画してた」

「………20まで接触なかったよね」

「うん。その間にいつの間にか乙女が無くなってたのはイライラしたなぁ。付き合ってすぐに許すとかダメだよー。ムカついて、男はフルボッコにしちゃった」

「ええええ!まさか付き合って3日の元彼が急に別れを告げてきたのって…」

 私の質問に、光輝は何も答えずにニコニコと笑うだけだった。

「は、ははは…そうですか。ちなみに、いつも女の子侍らせてたし、お持ち帰りもしてたのは?」

「美歌を満足させるスキル向上と持ち帰るのを見た時の美歌の顔がすごくよかったから」

「顔?」

 なんのこっちゃっと首を傾げると、光輝はニヤニヤと笑った。

「連れ帰るの見るたび、悲しそうな顔してたの無意識?無意識なんだ。ってことは、やっぱり美歌…俺のこと好きでしょ?」

 光輝は嬉々として話して私をギュウと抱きしめた。私はハァァっとため息をついてから濁して返答した。

「さあね」



 なんだかんだで執着されるのも悪くないと思っている私は、すでに絆されているようだ。好きとかはまだわからないけど、なんだかんだでこのまま好きになりそうな気がしていた。

 旨い話には裏がある。確認することが大事だ。

 今後は考えなしで動くのはやめようと心に決め、抱きついている光輝の温もりを感じた。

 
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