【完結】守り手になるので呪いを解いてください!

あさリ23

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まだ旅は途中

笑顔がいっぱい

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 次の日。宿に泊まって一晩過ごした私達は再び施設へとやってきた。理由は報酬の受け取りのためだ。

 受付にサシャさんはいなかったが、別の事務員お姉さんに声をかけて中に案内してもらった。姿が見えない事に少しだけガッカリした。

 別に会えなくて寂しいとかじゃない!寂しくなんてないんだから!

 案内されたのは説明会をした部屋と同じ場所だ。中に入り先に目に入ったのはローテーブルに置かれたキラキラと光る魔石達だった。
 
 うひょおおお!っと声が出そうになるのを抑えつつ、私はソファーに座った。ベルナールは相変わらず肩乗りだし、ケアレブはケージポーチでブーブー寝息を立てて寝ている。とりあえずケイレブをテーブルの上に置いて、ライウスさんを待つ間、私はニマニマとしながら魔石を眺めた。

 置かれていたのは大きめの魔石5つと、中ぐらいの魔石が1つ。私が拾ったのは5つだが、もう1つはおそらく吸収ゴブのだろう。

 左から順に青、紫、桃、赤、黄、緑の色をして光っていた。

 魔石の色と属性の種類は同じ場合もあれば違う場合もある。そのため見た目だけではどんな魔石なのかはっきりとはわからない。

 この世界の魔石自体がある意味魔法を込められた石のようなものなので、どんな属性なのかは《鑑定》する必要がある。鑑定も鑑定の魔石を利用した魔道具を使って行うのだが、その鑑定をするのにも属性によっては時間がかかる。

 昨日すぐに報酬がもらえなかったのも、この魔石達の属性を鑑定してもらっていたからだった。

「うふふふ、うふふふ。どんな子が来るかしら」

『この大きさですと、珍しい属性の可能性はありますね』

「そうおもう?楽しみだなぁ」

『まあ、私に言ってくださればすぐに鑑定して差し上げたのに』

「え!?」

 ベルナールの爆弾発言に驚いていると、部屋のドアがガチャリと音を鳴らして開いた。そしてライウスさんともう1人小柄で可愛らしい女性が一緒に入ってきた。

「待たせたな」

「待ちました!もう目の前にある魔石が早く欲しくて涎が垂れました!」

「はっはっはっ。焦るな焦るな。全部やるから」

「うひひ、6つももらえるだなんて、えへへ!」

 デレデレッとしながら魔石を眺めていると、「プッ」と吹き出すような笑い声が聞こえてきた。音の方向へ目線を向ければ、ソファーに座るライウスさんの後ろに待機しているあの女性が肩を振るわせながら笑っていた。

「ああ、紹介がまだだったな。こいつは第1部隊隊長のダイアナだ。今回の討伐に参加できず、ずっと裏方の仕事ばかりでな。元々体を動かすのが好きなやつだから不満が溜まりに溜まってた所で、昨日やっと討伐が終わり通常業務に参加できるようになったところだ」

 女性は笑うのをやめると、真面目な顔になって姿勢を正した。

「ダイアナです。この度はゴブ討伐お疲れ様でした。私もやっと討伐任務に参加できます。感謝いたします」

「あ、エヴィです。報酬目的ですので…お気にならさらず」

 私がいえいえっと首を振って返事をすれば、ダイアナさんはジロッとライウスさんに目線を向けてフンッと鼻を鳴らした。

「私の見た目が幼く、しかも女であるからという理由で業務から外され不満しかありませんでしたが…。閣下、彼女が囮になるなら私でも良かったのでは?!」

「いやいや、お前が囮とか無理だろう」

「ええ!?飛んで火に入るゴブのアホでしょう?自動的に的がくるんですよ?最高じゃないですか」

「ほら、それだ。囮のくせに狩りに夢中になって動くだろ。いくら力量があってもそれじゃダメだ」

「むむむむ」

 ダイアナさんは見た目によらず戦闘狂のようだ。艶々の茶色の髪を今は一つに結んでいる。キラキラうるうるの緑の瞳で顔立ちは幼く見える。私よりも背が低そうだし、黙っていれば可愛らしい幼女に見えなくもない。これが合法ロリというやつでしょうか!

 私の欲望が少し反応しそうになるが、ベルナールがそれを引き戻すように私の髪の毛をクチバシで啄んだ。

『ご主人様、ベル君の方が可愛いでしょう?』

「そ、それは!もちろん」

 嫉妬したような声色に私はドキッとしつつベルナールの頭を撫でた。その間に向かい側の大人の意見交換も終わったようだ。

 本題に入るためにライウスさんが咳払いをしてから説明を始めた。

「よし、本題に入るぞ。この魔石は全部エヴィさんのものだ。鑑定した結果、ほぼ全て珍しい属性だった」

「え、本当ですか!?」

 なになに!?どんなやつ!?っと興奮している私にダイアナさんが一枚書類を手渡してきた。それを受け取り内容を確認すると、下記の通りのことが書いてあった。

【解除:青】
【変形:紫】
【浮遊:桃】
【記録:赤】
【阻害:黄】
【吸収:緑】

「ふわあああ!?吸収以外見たことない!!!」

「そうだろう。俺も長年この仕事をしているが、この大きさのものを見るのも初めてだし、この種類の属性を見るのも初めてだ。かなり希少なのもだろう」

「ニポニテ支部の記録を調べましたが、吸収以外の属性は記録にありませんでした。他の拠点や国の記録を調べればまた違った結果が出るかもしれませんが、本来なら国に寄贈し場合によっては宝物庫で眠ってしまう等級のものでしょう」

「お、おお、おおお」

 ダイアナさんの説明を聞いて私はキラキラと瞳を輝かせた。

(ここにきてあの契約書が効力を発揮したというわけですね!じゃなかったら取り上げられてた可能性もあったのかも!)

 興奮して涎が止まらない私にライウスさんがニヤッと笑ってから、自身の懐に手を入れ小袋を取りだした。そしてテーブルの上に置き、私に袋の中身を確認するように手で指示しながら話しかけてきた。

「これは俺たちからの餞別だ。森への旅はまだ続くだろう?まあ、感謝の気持ちだと思って受け取ってくれ」

 袋の紐を解けば、中に入っていたのは共通通貨の金貨だった。

「ぬえ!?」

 入っているのは結構な代金だった。正直旅路のお金に困っているわけではない。国を建て直しておいたおかげで旅費の工面に苦労はしなかったからだ。

 だが今目の前にある金額は平民ならば1年は遊んで暮らせるほどの金額だ。

「こ、こんなに??」

「ああ。しかもな、これは全隊員からだ。自主的に寄付を募って集めたものでな、金貨に両替する前はもっと量があったんだぞ。流石に持ち歩くのは大変だろうと思って、金貨に両替してその量だ」

「い、いつのまにお金を…」

「そりゃ、昨日の宴会の時に決まってるだろ」

 ワッハッハと笑っているライウスさんの後ろにいるダイアナさんへ目線を向ければ、彼女はニコッと微笑んでから頷いた。

「昨日は2番と3番に押し付けられた事務処理でお会いできませんでしたが、うちの隊員がお世話になりました。毛皮の魅力を語る奴と剣技の魅力を語る奴と話が噛み合わない報告を受けましたが…。参加できなかったことが残念でなりません」

「だから今日は休みでも連れてきてやったじゃないか」

 上司であるライウスさんに対して強気なダイアナさんは、やれやれといった様子の彼に対して負けないほどの圧のあるニコニコの笑顔で話を続けた。

「ええ、ええ。もし、お声かけ頂けなければ勝手について来ましたけど」

「だと思ったから呼んだんだ」

「さすが、よくわかっていらっしゃる」

 ウンウンッとダイアナさんは頷いて満足げだ。ライウスさんはこの話は終わったとばかりに話題を変えて話しかけてきた。

「さて、このあとはどうするつもりだ?すぐに出発するのか?」

「え?えーっと。そうですね…うーん」

 考えながらも金貨の入った袋をありがたく頂戴し、収納ポーチに詰め込みつつ、目の前にあるキラキラの魔石達を見つめていれば、頭の中に色々とアイディアが浮かんできた。

 ムクムクと発明意欲が湧いてくる。それを察知したのかベルナールが話しかけてきた。

『しばらく休みなく移動する予定ですし、せっかくの魔石を眠らせるのも勿体無いですね。ご主人様、幾つか作製してから出発されてはいかがですか?』

「そ、そう?い、いいかな?えへ、えへへ!」

 さっきまで寝ていたはずのケイレブは起きて来たのか、少しは話を聞いていたようだ。欠伸をしながら心配そうに顔で話してきた。

「ガウ?ガウガウ(いいのか?こいつバカになると1週間は引きこもるぞ)」

『それくらいならば問題ないでしょう。それに、ご主人様の案が成功すれば移動時間も短縮できるはずです』

「本当?作っていい!?」

「ガウガウ(まっ、俺はなんでもいいよ)」

「じゃあ、1週間後に出発です!!!」

  旅の仲間からの許可がおり、やったーっと両手をあげてライウスさんに滞在期間を伝えれば、彼はニヤッと笑った。

「ずっと宿に泊まるのも金銭的な面も含めて大変だろう。よければ、ここに泊まらないか?エヴィさんが魔道具を作っている間、ケイレブさん達は暇なら訓練に参加して遊んでくれてもいいしな。飯や風呂の心配はするな。宿舎には全部揃ってるからな。世話係もつけてやる」

「いいですね!そうしましょう!」

「では、別棟の貴賓室を使えるように整えてきますね」

「ああ、頼む。では、君達は部屋の用意が済むまで俺とここで待とうか」

 ダイアナさんはペコリと頭を下げると部屋から出て行った。ライウスさんは別の隊員を呼んで私達にお茶やお菓子を出させ、甘いものを食べて満足そうな私を見ながら用意が終わるまで会話をした。

 主に旅立ってからの話だ。

 私は次から次へと話をした。ライウスさんはニコニコしながらウンウンと頷いて話を聞いたり、時折質問も交えながら話を聞いてくれる。

 私はまるで久しぶりに会う祖父に学校で何をしているのかを報告する子供のように話をした。

 準備ができたと報告が入るまで、私はずっと話を続けた。ライウスさんはずっと優しく微笑んでいた。
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