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はじまり
説明会します!②
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さて、ここまでの説明で私にかけられた呪いが何かわかっただろうか?え?わからない?
では引き続き説明をしよう。
ピデン公国の公族達、その血縁者はある呪いを受けている。
それは【興奮すると獣化する】呪いだ。
この世界には獣人なんてものはいない。だからこそ、人間が獣になるなんて事は森にしかできない芸当なのだ。何故なら守り手が森を守るために獣の形になる実例がそれを証明している。
ではなぜ呪われたのか。繰り返すが、結論は先祖のポカだ。
ピデン公国は島国だ。
前の世界で馴染みがある日本が真ん中に位置した世界地図にて公国と神秘の森の位置関係を説明すると、地図の真ん中が神秘の森。地図の1番左端っこがピデン公国だ。
森が中心にて大きな円を描いて位置し、その周りに陸続きで大地が広がり、所々に川や湖、海などを挟んでという感じだ。
地球に比べればおそらく海の面積は狭い。だが、島国は我が国以外にもいくつか存在している。
そもそも今説明している地図内容も衛星から撮った写真をもとにしているわけではないため、推定の域を出ないことを前もってお伝えしておく。
さて、我が公国は森から遠く離れた位置にある。そのため神秘の森へ行くには最短でも1年かかる。
魔道具で栄えた世界であっても前の世界よりも交通手段は発展していないため、車や飛行機なんてものはない。故に移動には時間がかかるのだ。
この世界にやってくる伴侶の知識にも限界があるのだろう。私だって車が動く仕組みや飛行機が飛ぶ仕組みを詳しく学んだことはない。
知らないものを作ろうとする発想と気力は、知っているものを作るよりも根気がいるのだから仕方がない。
と、いう事で我が国は森からかなり離れている国なのだ。
森から距離がある国は国同士での結びつきを重視する。そして、ピデン公国は今は無きツニーグ王国の属国だった。
今から300年前。建国200年を迎えていた頃、公族にとても美しい公女アンジェリカがいた。そしてツニーグ王国のマシュー王太子が公女に一目惚れ。婚約し、結婚することになった。
しかし、結婚してしばらくすると王太子妃になったアンジェリカの肩に模様が現れ始めた。そう、守り手になる目印の模様だ。
両国は悩んだ。森に向かうにも公国から海を渡った先にあるツニーグ王国からでも約一年はかかる。しかしながらマシューはアンジェリカ以外とは婚姻したく無いと言うし、結婚してから何ヶ月も経っているため子供を孕っている可能性がある。
王国に王子は1人。王女はいない。国王も年老いてきている。
公王側には公子が3人いたが公女は1人。そして島国を魔獣から守るために必要な同盟(婚姻)をなくしたく無い。
両国にとって、アンジェリカを森に差し出すのはマイナスしかなかった。
そして、両国は決めた。守り手になれという森の意志は無視しようと。
森から離れている両国では森の恩恵を国民含めあまり認識できていなかったことから、そのような決断に至った。
森の意志を無視するなんていう前代未聞な事をしでかし、本来なら森に着くはずの一年後のある日。
両国に森からの鉄槌がくだった。
それが獣化する呪いだった。
どんな獣になるのかは人それぞれだったが、呪いが発動するのは4歳になってからだった。
何故その年齢からなのか。私は森の配慮な気がしている。理由は前世で[人間は3歳までに脳の大部分が出来上がる]と学んだ記憶があるからだ。【三つ子の魂百まで】なんて諺もある。いろいろな感情を学び、個人を形成するために必要な期間はすくすくのびのび育って欲しい。そんな慈悲があったのではないか?と考えているため、森の配慮なのではないかと勘繰りしている。結局は神のみぞ知るならぬ、森のみぞ知るなため本当の理由はわからない。
呪いを受けた時点で4歳以上の場合はその日から呪いが施行された。
花を見て興奮して変化する者もいれば、空の美しさに感嘆しそれが興奮とみなされて変化する者もいれば…。どんな感情で得た興奮で変化するのか、人それぞれ違うため当初はかなり混乱し、呪われた者たちは疲弊したらしい。
ただ一つだけ。共通して変化する興奮があった。
それは異性に対して感じた性的な興奮に関してだった。
しかも、この興奮に関しては何故か血縁者同士ならば問題なかった。
なぜ血縁者だけなのか。その理由も全くわかっていない。
森は慈悲深いのか、残酷なのか…。
王族、公族と血の繋がりがある人間全てが呪いを受けた。血の繋がりが薄い血縁者は獣化する時間が短く、国王、公王並びにその家族は獣化して元に戻るまでに最大で2日かかる者もいるなど人によって効果時間は様々だった。
性的に興奮すれば、呪われしものは等しく獣になる。そんな状態で番って子孫を残すのはなかなか難しい。まあ、変化した獣の形態とお相手の変態度によってはできるかもしれないが…。
生殖行為は許され子孫を残す事は可能だったが、血の繋がりがない異性に対して興奮すれば獣化する。
血の繋がりない人物と性行為をする場合は、生殖器を押し当て体液を受け取る。性器だけ露出して体を布で覆うなどしてお互いに触れ合いはせず、ムラムラさせないようにしなければならない。
だが、男性側は興奮しなければ出すものも出せない。故に血縁者にある程度やる気にしてもらってから、布に覆われた女性を相手にするのが通例となった。
前世で50年ほど生きた記憶がある私からすれば、突っ込んで終わりだなんて…味気ない。しかも、呪われる前は普通の人たちと同じように性行為をしていた人達からしたら尚更だろう。
そう思った祖先達が少なからず多かったのだろう。
閨事には血の繋がりがある異性または部外者の同性を伴って行うようになった。そして、最後は獣化しない同士で行う行為に溺れた。
この世界はわりと発展していても、前世の世界には遠く及ばない。しかも避妊の観念はあまりなく、外に出せばいいぐらいの認識だ。
前世の知識がある私がその場にいたら「外に出しても妊娠する時はする。避妊具開発!」と叫んでいたことだろう。
だが、当時そんな知識がある人がいるはずがなく…。
ちなみに避妊薬だと使われている薬は確かにあるが、本当に避妊できるのか。私からしたら正直怪しいと思ってしまう代物だ。
さて、話を戻そう。
彼らは徐々に血縁同士で婚姻し、子孫を残すようになった。そもそも近親婚に対しても否定的な考えはあまりなかったようだ。王家、公家の血を絶やさぬために従兄弟同士で婚姻することが多かったのもその起因だろう。
近親婚を繰り返すようになったことで、子供の出生率と生存率が低くなった。時折血のつながりはあるが遠縁にあたる人物と婚姻することがあったが、血はなかなか薄まることはなかった。
年月が経つにつれ子孫が少なくなると、兄弟姉妹として生まれた場合、異性同士は婚約者として扱われるようになった。
そして生まれてくる子供の知能が徐々に低くなっていった。
国を治める者が馬鹿では国が滅びる。
ツニーグ王国はピデン公国と違って他国との境目が陸続きであったことから領土争いの戦争になり滅んだ。
ピデン公国は島国であり、他国との交流を減らしたことで今まで生存することができた。ありがとう、海よ。
ここまでの説明でなんとなく気がついただろうか。
私が結婚する相手は双子の兄であり呪いが複雑化して人化できないケイレブだ。
ケイレブは生まれた時から狼の姿だった。いや正確には生まれ出た瞬間に狼になったが正しい。どんな獣になるのかは4歳になるまでわからないはずなのだが、彼は呪われてから初の異例な存在となった。
私が一緒に生まれなければ、正直伴侶探しは難航したかもしれない。
双子だからなのか私が獣化した姿も狼だった。しかも、変化を促す興奮判定感情が【幼い子供達と触れ合う事】だった。2歳で前世の記憶を思い出し、心が大人だったからだろうか。幼い子供たちと触れ合うのがとても楽しかった私にとっては、この事はかなりショックだった。
と、いうわけで。大人達は私たちが獣同士であれば形態が同じゆえに番わせることが可能だと判断し、4歳で私たちは婚約した。
獣の姿でつがった場合、生まれてくる子供は獣かもしれないにもかかわらず…。
正直言って、私以外の公族の人たちは少しだけ…お頭が弱い。いや、少しでは無い人もいるが…。
私が生まれた時点で、ピデン公国はいつ滅んでもおかしく無いくらい貧しかった。そして公族はいつしか公国を存在させるために、生かされているような存在になっていた。
ただし、国民からはなぜか人気があった。貧しさから国外へ逃げ出す人々も多かったが、最後まで残っていた人々はモフモフが好きな人が多いのかもしれない。いや、そうに違いない。
だからなのか最近の公族達の中には、獣になる自分を曝け出す事を嫌悪しない者が一定数いる。ウサギやネコなど可愛らしい姿ならば周りからチヤホヤされるからだ。確かに可愛いかもしれないが、前世の猫やウサギにないものがついてる(角とか…)ため、無ければもっと可愛いのを知っている私は少し残念でならない。
ケイレブは呪いの複雑化が原因なのか、獣化している体の大きさが人一倍大きい。一般的な狼よりも体格が大きい彼は幼い子供達から大人気であり、一緒に場外を歩けばちびっ子ホイホイと化す。
男女問わず抱きつかれるケイレブを、私はいつも悔しい思いで見つめている。私だってムチムチほっぺでぽっこりお腹の可愛い子達と遊びたい!
が、子供達と遊んでハァハァ興奮したらどうなるのか分かっている私は遠くから眺めるしかできないでいる。ぐすん。悲しいかな、私が獣化すると最大で2日間も狼なのだ。
国の運営をほぼ私1人で担っている手前、人語を話せない狼の姿になるわけにはいかなかった。
そう私は国を運営する立場なのだ!えっへん。
そうなった理由はお察しいただけるとは思うが、要約すると周りの大人には期待できないと確信したからだ。
このままではせっかく生まれた国がなくなるのも目に見えていたし、元来世話好きな性格だった私はなんとかしたいと考えた。そして5歳になった頃から書庫に入り浸り、本を読み漁って知識を得た。
周りの人々からは『天才だ!』『ピデン公国の誉だ!』だなんて言って煽てられる。
家族からは『そんなことしなくても誰かがしてくれるよ?』なんて言葉を投げかけられる。
当初はイライラする事も多かったが、自分でできることが増えてくると言い返すこともできるようになった。そして少しずつ私の意思が尊重されるようになった。
ちなみに、兄であるケイレブと意思疎通できるのは私だけだ。双子だからなのかわからないが…。
そして彼も割と知能が高く、私の話をよく聞いてくれる相棒になってくれた。7歳の頃には2人で書庫に入り浸ってた。
自国の教師をつけてもらったが、正直言って彼らより本から得られる知識の方が数段上だった。他国から教師を呼ぶにはお金がなさすぎたため、私たちはひたすら本を読んだ。
そして、8歳になる頃には難しい本を1人で読めるようになっていた。
そこからは国を立て直すべく、幼いながらも頑張って働いた。そして、国の運営は徐々に私の手に移行して行った。
さらには、私は魔道具作りにどハマりした。魔道具を作るにあたって私が欲しいと思う魔石がいつもすぐに手に入るラッキー!な事も多いし、私以外が同じように作ると作動しない魔道具もあったりしたが、機械を使って暮らす便利さを知っていた私にとって今の現状が不便で仕方なかったのだ。作り始めたきっかけは、便利道具が欲しいよ!マルエモン!つまり、そゆことだ。
が、見事に沼にハマってしまった私は、国にいる魔術師達と一緒に誰でも使える便利道具を開発した。それを他国に出荷することで利益を得たのだ。もう、ウッハウハ!
なぜそんな発想が!まるで伴侶様のようではないか!
なんて言われた時はギクリとしたが、読み耽った本にアイディアがあったんだと話を流してしまえばそれで済んだ。
そっかー、さすが我が国の誉!で終わらせてくれる家臣達はほんと…チョロ…げふげふ。
そして、お金が手元に入り始めた頃に国内の道路整備や環境整備に着手。
この頃には既に13歳になっており、今の宰相であるグレイソンが18歳で宰相補佐になっていた。
彼は本当に頭が良くて、そしてかっこよかった。青い瞳は空のように澄んでいるし、キャラメル色の長い髪は美味しそう。黙っていると冷たい人に見られやすいが、微笑む時はいつも優しい。ニコッとされれば幼い私はキュンキュンした。
だが、彼は公族と血の繋がりがない。でも私の初恋の相手。性的な興奮を感じてしまいかねない人物だ。
残念なことに彼は女に興味がない男色家だった。正直勿体無い存在だ。それを知ってしまった私の心はブロークンハートだ。パリパリに砕けた。
結局甘酸っぱい恋はすぐに終わってしまったが、切り替えの早い私の心はすぐに彼を同僚または同士、友人枠へ切り替えた。彼を右腕として一緒に働くのはとても楽しかった。そう、とても楽しかった。
内政チートで国を発展させ、徐々に住みやすい国に作りかえる。15歳になる頃には海の向こう側にある国と変わらないほどの財力を持つようになった。
やりたい放題好き放題しながらも、なんとか国を復興し、女王になった暁には近親婚の廃止!(ケイレブには悪いが初夜以降は体の関係を持つつもりはなかった)
そして一族が滅ばない様に子供をたくさん産むぞ!子種だけもらうのは悲しいけど、血を薄めなきゃ!あわよくば呪いもなくなってくれないかなぁ!
女同士でウフフするのもいいかも?同性愛者が語る同性の素晴らしさに感化されちゃおうかなぁ!
異世界の記憶があるのはきっと家族を守り、国を守るためなんだ!ヒャッハー、やったるでぇ!
なんて思ってずっと生きてきた。
では引き続き説明をしよう。
ピデン公国の公族達、その血縁者はある呪いを受けている。
それは【興奮すると獣化する】呪いだ。
この世界には獣人なんてものはいない。だからこそ、人間が獣になるなんて事は森にしかできない芸当なのだ。何故なら守り手が森を守るために獣の形になる実例がそれを証明している。
ではなぜ呪われたのか。繰り返すが、結論は先祖のポカだ。
ピデン公国は島国だ。
前の世界で馴染みがある日本が真ん中に位置した世界地図にて公国と神秘の森の位置関係を説明すると、地図の真ん中が神秘の森。地図の1番左端っこがピデン公国だ。
森が中心にて大きな円を描いて位置し、その周りに陸続きで大地が広がり、所々に川や湖、海などを挟んでという感じだ。
地球に比べればおそらく海の面積は狭い。だが、島国は我が国以外にもいくつか存在している。
そもそも今説明している地図内容も衛星から撮った写真をもとにしているわけではないため、推定の域を出ないことを前もってお伝えしておく。
さて、我が公国は森から遠く離れた位置にある。そのため神秘の森へ行くには最短でも1年かかる。
魔道具で栄えた世界であっても前の世界よりも交通手段は発展していないため、車や飛行機なんてものはない。故に移動には時間がかかるのだ。
この世界にやってくる伴侶の知識にも限界があるのだろう。私だって車が動く仕組みや飛行機が飛ぶ仕組みを詳しく学んだことはない。
知らないものを作ろうとする発想と気力は、知っているものを作るよりも根気がいるのだから仕方がない。
と、いう事で我が国は森からかなり離れている国なのだ。
森から距離がある国は国同士での結びつきを重視する。そして、ピデン公国は今は無きツニーグ王国の属国だった。
今から300年前。建国200年を迎えていた頃、公族にとても美しい公女アンジェリカがいた。そしてツニーグ王国のマシュー王太子が公女に一目惚れ。婚約し、結婚することになった。
しかし、結婚してしばらくすると王太子妃になったアンジェリカの肩に模様が現れ始めた。そう、守り手になる目印の模様だ。
両国は悩んだ。森に向かうにも公国から海を渡った先にあるツニーグ王国からでも約一年はかかる。しかしながらマシューはアンジェリカ以外とは婚姻したく無いと言うし、結婚してから何ヶ月も経っているため子供を孕っている可能性がある。
王国に王子は1人。王女はいない。国王も年老いてきている。
公王側には公子が3人いたが公女は1人。そして島国を魔獣から守るために必要な同盟(婚姻)をなくしたく無い。
両国にとって、アンジェリカを森に差し出すのはマイナスしかなかった。
そして、両国は決めた。守り手になれという森の意志は無視しようと。
森から離れている両国では森の恩恵を国民含めあまり認識できていなかったことから、そのような決断に至った。
森の意志を無視するなんていう前代未聞な事をしでかし、本来なら森に着くはずの一年後のある日。
両国に森からの鉄槌がくだった。
それが獣化する呪いだった。
どんな獣になるのかは人それぞれだったが、呪いが発動するのは4歳になってからだった。
何故その年齢からなのか。私は森の配慮な気がしている。理由は前世で[人間は3歳までに脳の大部分が出来上がる]と学んだ記憶があるからだ。【三つ子の魂百まで】なんて諺もある。いろいろな感情を学び、個人を形成するために必要な期間はすくすくのびのび育って欲しい。そんな慈悲があったのではないか?と考えているため、森の配慮なのではないかと勘繰りしている。結局は神のみぞ知るならぬ、森のみぞ知るなため本当の理由はわからない。
呪いを受けた時点で4歳以上の場合はその日から呪いが施行された。
花を見て興奮して変化する者もいれば、空の美しさに感嘆しそれが興奮とみなされて変化する者もいれば…。どんな感情で得た興奮で変化するのか、人それぞれ違うため当初はかなり混乱し、呪われた者たちは疲弊したらしい。
ただ一つだけ。共通して変化する興奮があった。
それは異性に対して感じた性的な興奮に関してだった。
しかも、この興奮に関しては何故か血縁者同士ならば問題なかった。
なぜ血縁者だけなのか。その理由も全くわかっていない。
森は慈悲深いのか、残酷なのか…。
王族、公族と血の繋がりがある人間全てが呪いを受けた。血の繋がりが薄い血縁者は獣化する時間が短く、国王、公王並びにその家族は獣化して元に戻るまでに最大で2日かかる者もいるなど人によって効果時間は様々だった。
性的に興奮すれば、呪われしものは等しく獣になる。そんな状態で番って子孫を残すのはなかなか難しい。まあ、変化した獣の形態とお相手の変態度によってはできるかもしれないが…。
生殖行為は許され子孫を残す事は可能だったが、血の繋がりがない異性に対して興奮すれば獣化する。
血の繋がりない人物と性行為をする場合は、生殖器を押し当て体液を受け取る。性器だけ露出して体を布で覆うなどしてお互いに触れ合いはせず、ムラムラさせないようにしなければならない。
だが、男性側は興奮しなければ出すものも出せない。故に血縁者にある程度やる気にしてもらってから、布に覆われた女性を相手にするのが通例となった。
前世で50年ほど生きた記憶がある私からすれば、突っ込んで終わりだなんて…味気ない。しかも、呪われる前は普通の人たちと同じように性行為をしていた人達からしたら尚更だろう。
そう思った祖先達が少なからず多かったのだろう。
閨事には血の繋がりがある異性または部外者の同性を伴って行うようになった。そして、最後は獣化しない同士で行う行為に溺れた。
この世界はわりと発展していても、前世の世界には遠く及ばない。しかも避妊の観念はあまりなく、外に出せばいいぐらいの認識だ。
前世の知識がある私がその場にいたら「外に出しても妊娠する時はする。避妊具開発!」と叫んでいたことだろう。
だが、当時そんな知識がある人がいるはずがなく…。
ちなみに避妊薬だと使われている薬は確かにあるが、本当に避妊できるのか。私からしたら正直怪しいと思ってしまう代物だ。
さて、話を戻そう。
彼らは徐々に血縁同士で婚姻し、子孫を残すようになった。そもそも近親婚に対しても否定的な考えはあまりなかったようだ。王家、公家の血を絶やさぬために従兄弟同士で婚姻することが多かったのもその起因だろう。
近親婚を繰り返すようになったことで、子供の出生率と生存率が低くなった。時折血のつながりはあるが遠縁にあたる人物と婚姻することがあったが、血はなかなか薄まることはなかった。
年月が経つにつれ子孫が少なくなると、兄弟姉妹として生まれた場合、異性同士は婚約者として扱われるようになった。
そして生まれてくる子供の知能が徐々に低くなっていった。
国を治める者が馬鹿では国が滅びる。
ツニーグ王国はピデン公国と違って他国との境目が陸続きであったことから領土争いの戦争になり滅んだ。
ピデン公国は島国であり、他国との交流を減らしたことで今まで生存することができた。ありがとう、海よ。
ここまでの説明でなんとなく気がついただろうか。
私が結婚する相手は双子の兄であり呪いが複雑化して人化できないケイレブだ。
ケイレブは生まれた時から狼の姿だった。いや正確には生まれ出た瞬間に狼になったが正しい。どんな獣になるのかは4歳になるまでわからないはずなのだが、彼は呪われてから初の異例な存在となった。
私が一緒に生まれなければ、正直伴侶探しは難航したかもしれない。
双子だからなのか私が獣化した姿も狼だった。しかも、変化を促す興奮判定感情が【幼い子供達と触れ合う事】だった。2歳で前世の記憶を思い出し、心が大人だったからだろうか。幼い子供たちと触れ合うのがとても楽しかった私にとっては、この事はかなりショックだった。
と、いうわけで。大人達は私たちが獣同士であれば形態が同じゆえに番わせることが可能だと判断し、4歳で私たちは婚約した。
獣の姿でつがった場合、生まれてくる子供は獣かもしれないにもかかわらず…。
正直言って、私以外の公族の人たちは少しだけ…お頭が弱い。いや、少しでは無い人もいるが…。
私が生まれた時点で、ピデン公国はいつ滅んでもおかしく無いくらい貧しかった。そして公族はいつしか公国を存在させるために、生かされているような存在になっていた。
ただし、国民からはなぜか人気があった。貧しさから国外へ逃げ出す人々も多かったが、最後まで残っていた人々はモフモフが好きな人が多いのかもしれない。いや、そうに違いない。
だからなのか最近の公族達の中には、獣になる自分を曝け出す事を嫌悪しない者が一定数いる。ウサギやネコなど可愛らしい姿ならば周りからチヤホヤされるからだ。確かに可愛いかもしれないが、前世の猫やウサギにないものがついてる(角とか…)ため、無ければもっと可愛いのを知っている私は少し残念でならない。
ケイレブは呪いの複雑化が原因なのか、獣化している体の大きさが人一倍大きい。一般的な狼よりも体格が大きい彼は幼い子供達から大人気であり、一緒に場外を歩けばちびっ子ホイホイと化す。
男女問わず抱きつかれるケイレブを、私はいつも悔しい思いで見つめている。私だってムチムチほっぺでぽっこりお腹の可愛い子達と遊びたい!
が、子供達と遊んでハァハァ興奮したらどうなるのか分かっている私は遠くから眺めるしかできないでいる。ぐすん。悲しいかな、私が獣化すると最大で2日間も狼なのだ。
国の運営をほぼ私1人で担っている手前、人語を話せない狼の姿になるわけにはいかなかった。
そう私は国を運営する立場なのだ!えっへん。
そうなった理由はお察しいただけるとは思うが、要約すると周りの大人には期待できないと確信したからだ。
このままではせっかく生まれた国がなくなるのも目に見えていたし、元来世話好きな性格だった私はなんとかしたいと考えた。そして5歳になった頃から書庫に入り浸り、本を読み漁って知識を得た。
周りの人々からは『天才だ!』『ピデン公国の誉だ!』だなんて言って煽てられる。
家族からは『そんなことしなくても誰かがしてくれるよ?』なんて言葉を投げかけられる。
当初はイライラする事も多かったが、自分でできることが増えてくると言い返すこともできるようになった。そして少しずつ私の意思が尊重されるようになった。
ちなみに、兄であるケイレブと意思疎通できるのは私だけだ。双子だからなのかわからないが…。
そして彼も割と知能が高く、私の話をよく聞いてくれる相棒になってくれた。7歳の頃には2人で書庫に入り浸ってた。
自国の教師をつけてもらったが、正直言って彼らより本から得られる知識の方が数段上だった。他国から教師を呼ぶにはお金がなさすぎたため、私たちはひたすら本を読んだ。
そして、8歳になる頃には難しい本を1人で読めるようになっていた。
そこからは国を立て直すべく、幼いながらも頑張って働いた。そして、国の運営は徐々に私の手に移行して行った。
さらには、私は魔道具作りにどハマりした。魔道具を作るにあたって私が欲しいと思う魔石がいつもすぐに手に入るラッキー!な事も多いし、私以外が同じように作ると作動しない魔道具もあったりしたが、機械を使って暮らす便利さを知っていた私にとって今の現状が不便で仕方なかったのだ。作り始めたきっかけは、便利道具が欲しいよ!マルエモン!つまり、そゆことだ。
が、見事に沼にハマってしまった私は、国にいる魔術師達と一緒に誰でも使える便利道具を開発した。それを他国に出荷することで利益を得たのだ。もう、ウッハウハ!
なぜそんな発想が!まるで伴侶様のようではないか!
なんて言われた時はギクリとしたが、読み耽った本にアイディアがあったんだと話を流してしまえばそれで済んだ。
そっかー、さすが我が国の誉!で終わらせてくれる家臣達はほんと…チョロ…げふげふ。
そして、お金が手元に入り始めた頃に国内の道路整備や環境整備に着手。
この頃には既に13歳になっており、今の宰相であるグレイソンが18歳で宰相補佐になっていた。
彼は本当に頭が良くて、そしてかっこよかった。青い瞳は空のように澄んでいるし、キャラメル色の長い髪は美味しそう。黙っていると冷たい人に見られやすいが、微笑む時はいつも優しい。ニコッとされれば幼い私はキュンキュンした。
だが、彼は公族と血の繋がりがない。でも私の初恋の相手。性的な興奮を感じてしまいかねない人物だ。
残念なことに彼は女に興味がない男色家だった。正直勿体無い存在だ。それを知ってしまった私の心はブロークンハートだ。パリパリに砕けた。
結局甘酸っぱい恋はすぐに終わってしまったが、切り替えの早い私の心はすぐに彼を同僚または同士、友人枠へ切り替えた。彼を右腕として一緒に働くのはとても楽しかった。そう、とても楽しかった。
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やりたい放題好き放題しながらも、なんとか国を復興し、女王になった暁には近親婚の廃止!(ケイレブには悪いが初夜以降は体の関係を持つつもりはなかった)
そして一族が滅ばない様に子供をたくさん産むぞ!子種だけもらうのは悲しいけど、血を薄めなきゃ!あわよくば呪いもなくなってくれないかなぁ!
女同士でウフフするのもいいかも?同性愛者が語る同性の素晴らしさに感化されちゃおうかなぁ!
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なんて思ってずっと生きてきた。
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