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妊婦には優しく

第3回妊婦なう②(Alex)

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『マイカさん。3回目で慣れた感じになってますが…。今日産まれそうですよ』

「…ぅぶっ!?…なんですと!?」

 自室のソファーでのんびりお茶を飲みつつ、お腹の上にリチェ先生を乗せて妊婦検診をしてもらっていた私はびっくりしてお茶を吹き出しそうになった。

『ちょっと、毛にかかったじゃないですか』

 距離が近かったリチェ様はお茶がかかったことをぷりぷり怒りながら毛繕いを始めた。私のお腹の上で優雅にだ。

「え、えーと。ごめんね?それで、なんだって?」

『だから、今日産まれます』

「…早くない?」

 のんびりと返答するリチェ様に戸惑いながら私は質問した。今回で3回目だし、いつ頃産まれるかは何となくわかってきた。前例ではあと二週間後ぐらいだったはずだ。

『前より早いですが…ちゃんと成熟してますし、産まれても問題ないと思いますよ』

 リチェ様がそう答えると、お腹の子供も返答するようにポコっと蹴ってきた。

「な、なるほど…君はもう父上と母上に会いたいのか」

 私の声かけに反応する様にポコンポコンっとお腹が反応した。

「そっか。わかったよ!じゃ、さっそく…リチェ様!準備して」

『はーい』

 私たちが話してる間にマリアが部屋にやってきていた様で、話は聞きました!っとこちらに声をかける前に素早く準備を始めた。本当気がきく人だ。リチェ様はフラフラっと扉から出て行ってルーを連れて帰ってきた。

「マイカ様。アガルム様には連絡いたしました。しかし、来れても1時間後になるそうです」

「そっか。間に合えば立ち会えそうだね」

 よっこらせっと立ち上がって私はルーに微笑んだ。

「今回は寝室で産んでみようかな」

「では、寝室に向かいましょう」

 ルーに手を引かれてゆっくり歩く。こうしてお腹の大きな私を手を引くルーはいつも穏やかな笑みを浮かべている。

 ルーにヘッドボードに枕を敷き詰められたベッドに上がって、枕を背もたれにて上半身を起こした状態で座った。

「お腹は辛くないですか?」

「うん、このベルトのおかげかな。かなり安定してるの」

「ふふっ。そうですか。では、痛くなるまで…」

 ルーはベッドサイドに座って私の頭を撫で始めた。

 とても穏やかな時間だ。リチェ様もマリアも気を利かせて寝室には入ってこない。

 しばらく二人の時間を楽しんでいるとチリチリとお腹に痛みの波がやってきた。

「うっ…痛くなってきた…」

「はい。まだアガルム様が来られるまで…時間がありますが、どうしますか?」

「…アレクにポロリ見られたら怒るでしょ」

「はい、もちろん」

 ルーはニッコリ微笑んで立ち上がると寝室からでて行って2人を呼んできた。

『産みます?』

 ぴょんっとベッドに上ってリチェ様は私の足元で首を傾げながら話しかけてきた。

「うん。ポロリ終わったあたりにアレクが来れる様にしたいな」

「かしこまりました」

 マリアは寝室から出てタオルを持って寝室に現れると私の左横に控えた。

 ルーは私の右横で手を握ってきている。

 リチェ様は私に両膝を曲げるよう指示して股を開かせ、股の間からお腹に前足を乗せてきた。

『シュッといきまーす』

 リチェ様が「ニャー」っとマリアに聞こえる様に鳴いたあと、私は目を瞑った。前回同様に瞼の向こうが明るくなってからお腹から無くなった感覚になった。

「オギャー」

 目を開けると光に包まれてプカプカ赤子が泣きながら浮いており、マリアが素早くタオルに包んでいた。私は渡されてすぐに飲ませられる様に左胸元を開けて、抱き上げてすぐに乳首を口元に持っていった。

「あれ?…うーん、飲みたくない?」

 光はおさまった。しかし、ツンツンっと乳首で口元を突くが泣いてはいるが、なかなか口に含まなかった。

「うーん…あ!父上はお乳のんでネンネしたらお迎えに来るよ」

 私が優しく語りかけるとやっと乳首を口に咥えて母乳を飲み始めた。

「そうか。父上がいなくて不安だったんだね」

 悪いことしたなぁっと思いながら赤子を観察した。タオルを捲ると見えたの男の子のシンボルだった。髪の毛は少し濃いめの茶色、瞳はアレクとそっくりだった。

「君は父上とそっくりだよ」

 赤子はそれを聞いて母乳を飲みながら嬉しそうに目を細めた。なんて可愛いのだろう。

 そう思って見つめていると、口から乳首を離してウトウトしだしたためゲップをさせて胸元を整えてから寝かしつけるために再度抱っこした。

「父上はもうすぐくるよ」

 そう語りかけていると寝室の扉が開いて、慌てたようにアレクが入ってきた。

「あ、きたよ。父上。僕産まれましたよー!」

 アレクに赤子の気持ちを伝えるように私が話しかけながら笑いかけると、ホッとした顔をした後にヨロヨロっと近寄ってきてタオルに包まれた赤子の顔を覗き込んだ。

「…ぼ、ぼく…?」

「うん。僕。男、父上」

 クスクスっと笑いながらアレクに赤子を手渡すと、恐る恐るとした手つきで抱きとめた。

「…そっか…。僕、父上になったんですね」

「そうだよ。これから頑張らなきゃね」

「はい」

 愛おしそうに赤子に微笑みながら頷くとアレクは私を見つめてきた。

「マイカ様。ありがとうございました。本当に…本当に…。僕を男に、父にしてくれて…。感謝してもしきれません」

「ふふっ。男にしただなんて…なんかちょっと大袈裟じゃない?これから大変だと思うけど…何かあれば相談してね」

「はい。では…みんな待ってるので」

「うんうん。気をつけてね!まだ起きてるみたいだから、寝るまでたくさん話しかけてあげてね」

「はい」

 アレクは頭を下げて微笑むと大事そうに赤子を抱えて寝室から出ていった。

「はぁぁ…また一人卒業した」

「お疲れ様でした」

 ルーは私の横でやりとりを微笑みながら見ていたようだ。

『マイカさん、戻しますね』

「お願いね」

 リチェ様が前足を置いて光に包まれると体が元に戻った。ふうっと息をついてボーッとしている間に、マリアとリチェ様は部屋から出て行っていた。

「後二人かぁ…」

「しばらくはまた…ゆっくりいたしましょうね」

「うん。ルー…ちょっと寝るね」

「はい」

 ルーは枕を外して私が寝やすいように整えてくれた。私は仰向けになって、ウトウトとしながらルーの手を握った。

「一緒に寝よ」

「………仕方がないですね」

 ふうっと何か堪えたものを吐き出す様に息を吐いてからルーは私の隣に潜り込んで抱きしめてくれた。

「おやすみなさい」

 ルーの体温に癒されて、私はゆっくりと眠りに落ちた。
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