上 下
40 / 70
いざ、フィンなんとか王国へ

私が決めたのは(α)

しおりを挟む
「私はやっぱり…夫と子供が1番なの…。でも、あの夢の中の私もきっと私…。だけど…」

「だけど?」

「子供は産む。でも、現実では…できない。それに、夢の中でエッチするのも……ルー以外は無理…」

 私の声はだんだん小さくなっていった。最後の言葉はこの女神に届いただろうか。リチェ様に恐る恐る目線を向けると、リチェ様はにっこり微笑んでいた。

「マイカさんの愛する人だけ、という気持ちはとても素晴らしい。ルイスも貴方の愛する人になってしまったのですね。しかし、現実の夫への操をたてたい。しかしこの世界に来て好意を抱いたルイスへも、この世界での操をたてたい。と、いうことですね」

「うん…優柔不断って思う?」

「私は思いませんよ」

「うん…」

「ではマイカさんの夢の記憶はどうしますか?」

「ルーだけ覚えておきたい」

「なるほど。では、私から提案です。私の世界にいられるのは3年。そして、それはルイスと一緒にいられる時間もそれだけしかないという事です」

「うん」

「ですので、先程の提示したお話をルイスを対象にして考えてみては?という提案です」

「えっと、つまり?」

 リチェ様の話がよく掴めなくて、私は首を傾げて話しかけた。

「では質問です。ルイスと夢の中での性行は覚えていたいのですよね?では3年の間、夢の中でルイスとだけは恋人、夫婦のように関係を築く。心の触れ合いも肌の触れ合いもできる。そういった事はしたくはないですか?」

「え!?」

「だって3年しかありませんよ?」

「でも。子供を妊娠してる時があるでしょう?その…肌を重ねる…のは…」

「夢は精神世界。もちろん夢の世界ではお腹は大きくありませんし、現実の胎児にも影響はないよう手配しますよ」

「う…うーん」

「では、どうですか?ルイスと夢の中だけでも夫婦のように過ごしたくないですか?」

 私は俯きながら考えた。夢の中だけ…口づけたり、抱きしめ合ったり、愛しあったり…過ごしてみたい。でもふと考えたことも含めてリチェ様に伝えた。

「過ごしたい…。でも、それって精神的浮気な気がする」

「ふふ。そう言うと思ったので、もう一つ質問です。元の世界に帰った時、ここの記憶はどうしますか?」

「えっ」

「マイカさんが望むなら、ルイスと夢で過ごしたことも私の力で消せますよ。もちろんここの世界のこと全て」

「すべて…」

「それでもいいと言うならば、ルイスに思い出を残して去る事もできるのでは?」

「でも。ルーは覚えてて、私は忘れてるんでしょう?それって…とても…残酷じゃない?ルーに対して」

「ではルイスがそれを望んだら、そうしますか?」

 うぐっと私は言葉に詰まった。まだ恋なのか愛なのかわからないけれど、私の心は夫に向けるように彼に気持ちを向けたいとは思っている。ここが現実ではないと思ったことで芽生えてしまった気持ち。気持ちを育てる育てないにしろ3年しかないのか…。うーっと唸りながら私は言った。

「ルーが…私と思い出が欲しいなら…それもいいけど。もし、ルーがそれを選択したら…ルーとの思い出を私も忘れたく…ないかも」

「元の世界で苦しくなりません?」

「大丈夫…たぶん。元彼か…何かだと思うことにする」

「ふふふ。まぁ、私はどっちでもいいんです。記憶の件はまた考えが変わったら教えてくだいね」

「わかった」

 私はコクンっと頷いた。元の世界の夫に会ったとき、私はどんな顔で会うのだろう。本当に、いいのだろうか。悶々とするけれど、でも、ルーに芽生えた気持ちも大切にしたかった。

「ではでは。話をまとめますよ?」

「うん」

「子作り方法は当初の予定通り。夢の記憶はルイス以外消す。そして、夢の中でルイスと夫婦のように過ごす」

「うん。あの質問なんだけど…」

「はい?何か違いました?」

「いや、それはあってるの。あのルーと現実で抱きしめあったりキスしたら…どう思う?」

「おそらく、そのまま襲われますね」

「うぐっ」

「ルイスも男ですよ?それに、彼も夢だから止めることができる衝動というものがあると思いますしね」

「えとあと、順番なんだけど」

 私はぽりぽりと頬をかいてリチェ様を見つめた。

「面談の順番でもいいかなって思って」

「なるほど。理由を聞いても?」

 リチェ様はテーブルのティーセットを指を鳴らして消すと、世界に渡る前に作っていた契約書をどこからか取り出してテーブルに広げていた。

「えと、アートは私への好意は聖女としてという目線があると思うの。本人は違うって思ってても、多分根っこは王子様なんだと思うの。国のためなら何でもできる人。だからこそ、1番初めに子供が必要だと思ったの。アート、多分1番以外だと暴走しそうだし」

「ふむふむ」

「エリオは、私のことを以前のルーのように少し神格化しちゃってて。そんな私と抱き合ったことで、神格化した私との行為に溺れてるだけだと思うんだ。だから早めに子供を授けて、奥さんと子育てしだしたら、きっと一時的なあの欲望はなくなると思うの。美味しいけど、なくても生きて行ける。お菓子みたいな存在なんだと思うから」

「なるほど」

「アレクは、そうね。あの家は少し子供を育てる環境かどうか心配だからって理由でリオより先にって感じ」

「アレクは性格的な問題ではないと言うことですね」

「うん。次にリオは…犬になる!ってなってるから大丈夫だとは思うけど、あの心が落ち着いたまま奥様方との関係を改善しておいて欲しいから下から二番目にした感じかな」

「ダリオンは性格と環境ですか」

「最後にルーは…今奥さんと関係を修復し始めるみたいだし、あと…最後…まで接する日が欲しいから…かな」

「はい、わかりました。マイカさんの気持ちの通りに」

 ニコッと笑ったリチェ様は契約書に書き足していたようで、内容確認のために私に差し出してきた。私は内容をみて間違いがないことを確認すると、一つ頷いてリチェ様に契約書を返した。

「では、今日のうちに発表しますか?あと2回彼らと交流ありましたけど」

「うん。もう今から起きたら伝えようかな。5人が納得するなら、子供も…明日からでもいいよ」

「では、それは真っ黒達に気持ちを聞いてみましょうか」

「うん」

「ではそろそろ、目覚めましょう」

 リチェ様がそう言うと、私はふわっと意識を飛ばした。


「人間とは複雑です。マイカさんが私の世界で楽しく暮らせるならば、私は何でもしましょう」

 リチェ様は私が消えた空間でポツリと呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

腹黒王子は、食べ頃を待っている

月密
恋愛
侯爵令嬢のアリシア・ヴェルネがまだ五歳の時、自国の王太子であるリーンハルトと出会った。そしてその僅か一秒後ーー彼から跪かれ結婚を申し込まれる。幼いアリシアは思わず頷いてしまい、それから十三年間彼からの溺愛ならぬ執愛が止まらない。「ハンカチを拾って頂いただけなんです!」それなのに浮気だと言われてしまいーー「悪い子にはお仕置きをしないとね」また今日も彼から淫らなお仕置きをされてーー……。

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

処理中です...