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いざ、フィンなんとか王国へ

アレックス・アガルム②(アレックス視点)

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 母は僕を産んですぐに亡くなった。父は仕事で家にあまり帰らない。そんな家庭環境で育った。話す相手は乳母や使用人、家庭教師ぐらいだったためとても人見知りになった。

 魔力量は王国一保有していた。そのためか13歳で体の成長が止まった。身長は13歳の時点で周りより少し大きかった筈なのに、徐々に抜かされていった。

 声変わりが始まる前に止まってしまった体は、ヒョロヒョロと頼りない体だ。それでも精通は終わっていたことはまだよかったのかもしれない。

 18歳の時。第二騎士団団長に任命された。最年少らしい。容姿のせいで周りから小馬鹿にされるのが嫌で、魔法を使うことに熱中していたらそんな地位についていた。

 父は本腰を入れて婚姻先を探すようになった。今までこの見た目と体つきで、申し込みをした全ての令嬢達から断られていた。

 こんな僕でいいと言ってくれる、物好きな人はいないとどこか諦めていた。

 ある日、父が探してきた候補者の釣書を渡された。

 ヴィクトリア・キャンベル子爵令嬢。
 社交会でも自由奔放で男女問わず恋人が途切れない、そんな噂がある女性だった。僕の相手は変わった相手じゃないと無理なのかもしれないと父が考えた結果だった。

 会ってみて、彼女は僕の容姿を舐めるようにみてから妖美な笑みを浮かべて「ロッテとエリーも一緒ならいいわよ」と言ってきた。

 父はこんな僕でも結婚してくれる相手且つ近頃は子供が産まれにくく側室を迎える家が多いこともあって彼女の意見に大賛成した。キャンベル子爵も嫁にも行かず奔放に遊んでいた娘が片付くと乗り気で、あれよあれよという間に僕たちは結婚した。

 正直この結婚は僕が添え物だ。恋人同士の彼女達の間に僕が添えられただけ。妻達は僕を可愛がってくれるが、僕に対してだけ愛情はなかった。だから僕も妻達に友情以上の気持ちは抱けなかった。

 夜も仰向けに寝てれば何もしなくても全て終わる。僕自身、肉欲があまりない。でも刺激されれば反応はするので、何もしなくてもこの享楽的な夜が終わる日々を受け流していた。

 そんな生活を続けていたある日、子供ができないことが王家含め上位貴族で問題になった。

 僕たちは特に子供は欲しくなかった。お互いに愛情があるわけでもないし、妻達も自分たちで精一杯で小さな命を育てる気すらなかった。だから、僕はずっと子供ができなくて安堵していたのだ。添え物が増えなくて済むから。
 
 しかし、聖女が降臨するとになった。周りはお祭り騒ぎで喜んでいるが僕はそれを冷めた目で見ていた。

 聖女が降臨した日。部屋に集められて父と座って待ってる間、僕は周りが期待に満ちた様子で話してるのをボーッと眺めていた。

 聖女が入ってきたときも、フードの向こうから時折見るぐらいで特に興味もわかなかった。ぱっと見た限り、顔立ちも平凡だし、体つきもちょっとムチッとしてる。ただ胸はすごく柔らかそうだなってだけ思った。

 対面して会話した時も、人見知りが発動して体が震えた。順番が発表されて3番目であることを知った僕は、最後でよかったのにとさえ思った。

 帰宅後に、妻達に子供が増えることを伝えた。授かる方法が秘匿されるという部分にヴィッキーは興味津々だった。3人とも子供が生まれてくることよりも、その過程について面白がってどんな方法なのか、楽しそうに有る事無い事話している様子を見て、生まれてくる子供は僕が責任持って育てなければならないことに不安を感じた。

 それでも王家主導で動いているこの案件に対して、否とはいえない。僕は面談日すらも逃げ出したくて仕方なかった。

 候補者達は一ヶ月、順番に聖女マイカ様のお相手をすることになったため、1日の最後に候補者で情報共有することになった。

 1日目が終わったアーサー殿下からマイカ様は婚姻し、夫と子供がいることが候補者達に伝えられた。そのことにはびっくりした。僕も未婚だと思っていたからだ。

 2日目が終わったルーヘン様からは夫と子供を大切に想っている様子が伝えられた。子供に愛情持って接している母親という存在を僕は知らない。少しだけ母親という存在に興味を抱いた。

 意を決して会いにいったマイカ様は、とても胸が強調されたドレスを着ていた。あの柔かそうな盛り上がった肌を見て、僕は人見知り以外にも恥ずかしさを覚えた。

 とても気さくに話してくれたマイカ様は僕たち夫婦について質問され、興味津々なのか前のめりになって聞いてきた様は、フードの向こうからでも胸の谷間が見えてしまい、体がホワホワした。多分顔も赤くなったと思う。

 子作りについて質問したら、一般的ではないと返答が来た。寝てるだけではないのかとぽろりと言葉が出てしまったら、マイカ様に口を押さえられてしまった。また…至近距離で胸が見えた。そのまま手を伸ばして、触りたい衝動を覚え恥ずかしくなった僕はまた顔が赤くなってたに違いない。

 マイカ様はよく笑う人だ。庭で花の水やりをしてほしいと言われて、水を魔法で出して一面の花々に水をあげた時は手を叩いて喜んで褒めてくれた。こんな簡単な魔法で褒められて、なんだかむず痒くなった。

 マイカ様と過ごす時間は楽しかった。時々近寄られた時に見えてしまう胸元に目がいって恥ずかしくなる事はあったが、マイカ様は特に気にしてないようだった。

 マイカ様の子供はあの胸から乳をもらっていたのだろうか。そう思うととても羨ましい。

 僕は父親になれるかはわからないけれど、マイカ様が産んでくれる子供は大事にしてみたい。いや、大事に育てよう。

 だから次会う時は少しだけ抱きしめてもらえないだろうか。あの柔からそうな体で包まれたら自信が持てるかもしれない。

 でも本音では、僕がマイカ様の子供になりたい。
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