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いざ、フィンなんとか王国へ
エリオット・ルーヘン②(エリオット視点)
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「お帰りなさい。早かったですね」
マイカ様との1日が終わり、屋敷に帰ると愛する妻が出迎えてくれた。
「ああ、ただいま。キティはまだ起きてたのか」
「だって、聖女様と1日一緒にいたのでしょう?どんなお話したのか気になったのですもの」
うふふっと笑いながら、正室のキティは私の右腕に絡みついてきた。
「特に問題なく終わった」
「まぁ!エルったら。そのこわぁいお顔のままお話してきたのですね」
「聖女様は特に何も言われなかった。問題ない」
「もう、ダメですよ。聖女様は赤ちゃんを授けてくださるのよ?私たちの長年の夢を叶えてくださる。もっとニコニコ笑って良い印象を持たれるようにしないと!」
キティは私の眉間をツンツンっと指で突いて微笑んできた。その指を掴んで体をかがめ、お喋りな口を塞ぐように唇に口付ける。顔を離してキティを見つめると、顔を真っ赤にしていた。
「エルはすぐそうやって誤魔化すんだから」
真っ赤な顔のまま、ふんっと鼻を鳴らして拗ねている様子がとても愛らしい。そんなことを思いながら妻に手を引かれて寝室に向かった。
そしてマイカ様と話した事やマイカ様の身の上について、2人で眠らず朝まで会話した。次に会う時にはどんな事を話そうか、マイカ様と会う日を楽しみにしている自分がいた。
私とキティはお互いが15歳の時に出会った。
キャサリン・リード伯爵令嬢。父親であるリード伯爵は商才にたけ、いくつもの事業を成功させたことで有名だった。その恩恵とキティの魔力量に目をつけた両親が見つけてきた婚約者だった。
その頃の私はただその日を生きて、親に言われたまま言われたことをする人形のような人間だった。婚約者ができたと伝えられても何も感じなかった。
しかし初めてキティに会った時は、そんな私でも感じた事がない感情に体が動かなくなった。薄緑の瞳にふわふわした赤茶色の髪の毛を持った少女が目の前に現れた瞬間、心臓が今までまで一番大きな音を出して鳴ったのだ。
今思えばあれは一目惚れだったのだとわかるが、あの頃の私は知らない感情に戸惑っていた。近寄るだけでドキドキする気持ちが何か病気なのではないかと悶々としていたため、あまり近寄らないようにキティを避けていた。
しかしキティは持ち前の明るい性格で根気よく接してくれた。
また、頭に虫がついてびっくりして、慌てふためいてよろけて転けたり。魔力量はあるがコントロールが苦手なため、水魔法を出して全身ずぶ濡れになったりとキティは何か必ず騒動を起こした。
キティを見ているだけで、生活に彩りが宿った。
徐々に自分の感情と向き合い、受け入れた頃にはキティを愛する1人の男になった。キティは私を人形から人間にしてくれたのだ。
結婚したのは23歳の時。もっと早く結婚したかったが、リード伯爵がキティを手放すのを渋ったのだ。婚約を結んでおいて今更ではあるが、結婚を許してもらえるよう、認められようと私は努力した。結果、認められたのがその頃だった。
結婚してからは毎日が幸せだった。子供もいずれできるであろうと2人で子供が産まれたら何をさせたいか、何をしてあげたいかなど、寝る前に話すようになったのは結婚して10年経った頃だった。
しかし望んでもなかなか恵まれない。キティも徐々に暗い影を落として落ち込む様子が見られた。私は両親や王家から側室を娶るように言われ続けたが、キティ以外の妻を娶るなんて考えられず全て拒否していた。
そんな私にキティが双子を紹介してきたのは、結婚して24年経った47歳の頃だった。キティの遠縁の親戚で産まれた時から妹のように可愛がっていた双子達だった。
双子達ソフィアとステファニーはまだ17歳だった。まだまだ幼い2人だが、キティは若い母体であれば子供ができるかもしれないと考えたようだ。
ソフィーとステフィーはキティを母親のように慕っていた。何をするにもついて回り、まるで親鳥の後ろをついていく雛鳥のようだった。
紹介されて一年後の48歳の時。双子が18歳になってから婚姻を結んだ。
初夜の日。私は双子達に2人一緒に私を部屋に迎えるように伝えた。双子達は少し怯えたような顔を見せたが、慕うキティの願いである子供を産む目的のため嫁いできたことを理解しており、伝えた通りに準備して待っていた。
私はキティ以外の女性を抱くつもりはない事、キティとの子供ができるのを望んでいる事、白い結婚のままうら若き時間を過ごすことになること。いずれ子供ができれば離縁し、婚姻先を斡旋することを伝えた。
双子達は初めは悩んだ様子であったが、親のように慕うキティと共に過ごせるならば、それでも良いと承諾した。キティには知らせないように、そして双子達を私自身の娘のように大事に想っている事を伝え部屋を後にした。
その後キティとは毎日一緒に眠るが、時折双子の元へ向かうように言われ、指示に従うように見せかけ私は執務室の簡易ベッドで眠った。使用人や双子達と口裏を合わせて閨を共にしているかのように工作し続けた。
そんな生活を10年続けた。双子達でも子供ができない事をキティは気にしているようだった。
私はこのまま子供ができなくてもいい、キティと2人で仲良く過ごせればそれでいいと思っていた。だが、彼女は小さき命を腕に抱きたいと願っている様子が年々増してきているようだった。
このままではキティの精神が病んでしまう。そう悩み始めた頃に王家や他の家でも後継が生まれない事でひと騒動起きた。
王家主導で様々な文献を調べ、学者を招いて助言をもらったりと、考えられる自分たちでできる事を試したが実は結ばれなかった。
このままではキティが壊れてしまう。キティがいない生活なんて想像もしたくない。気が狂いそうだった。
神頼みしかないと言い出した陛下に対しては、自分より先に気が狂ったのだろうかとさえ思った。
しかし、神は私たちを見捨てなかった。シャルム神官長が三日三晩の祈祷が終わった後も毎日祈祷していた事は知っていた。彼が一週間祈祷を続けていたある日。リーン神より神託がおりたのだ。
連絡を受けて王城内は騒然とした。感情を一定に保っているアーサー殿下もいつもよりも興奮しているように見受けられた。そして私も、キティを失う可能性が無くなるかもしれないと期待して歓喜した。
現れた聖女マイカ様は、天上から降りてきた女神ようだった。神秘的な衣を身に包み、凛とした姿で部屋に入ってきた時は後光さえも見えた気がした。
そして、彼女はやはり女神だったのだ。私たちに子供を授けてくれる。キティの願いを叶えてくれる唯一の希望。
順番なんて何番目でもいい。3年なんて私からしたら瞬く間に終わる年月だ。
ああ、キティの為なら女神にこの身を捧げても許してもらえるだろうか。
キティへの愛とは違った、神への愛をマイカ様に対して抱いている。
女神に愛を捧げたい。この気持ちはいったいなんという感情なのだろう。
マイカ様もまた私のことを人間に変えてくれる存在なのかもしれない。
マイカ様との1日が終わり、屋敷に帰ると愛する妻が出迎えてくれた。
「ああ、ただいま。キティはまだ起きてたのか」
「だって、聖女様と1日一緒にいたのでしょう?どんなお話したのか気になったのですもの」
うふふっと笑いながら、正室のキティは私の右腕に絡みついてきた。
「特に問題なく終わった」
「まぁ!エルったら。そのこわぁいお顔のままお話してきたのですね」
「聖女様は特に何も言われなかった。問題ない」
「もう、ダメですよ。聖女様は赤ちゃんを授けてくださるのよ?私たちの長年の夢を叶えてくださる。もっとニコニコ笑って良い印象を持たれるようにしないと!」
キティは私の眉間をツンツンっと指で突いて微笑んできた。その指を掴んで体をかがめ、お喋りな口を塞ぐように唇に口付ける。顔を離してキティを見つめると、顔を真っ赤にしていた。
「エルはすぐそうやって誤魔化すんだから」
真っ赤な顔のまま、ふんっと鼻を鳴らして拗ねている様子がとても愛らしい。そんなことを思いながら妻に手を引かれて寝室に向かった。
そしてマイカ様と話した事やマイカ様の身の上について、2人で眠らず朝まで会話した。次に会う時にはどんな事を話そうか、マイカ様と会う日を楽しみにしている自分がいた。
私とキティはお互いが15歳の時に出会った。
キャサリン・リード伯爵令嬢。父親であるリード伯爵は商才にたけ、いくつもの事業を成功させたことで有名だった。その恩恵とキティの魔力量に目をつけた両親が見つけてきた婚約者だった。
その頃の私はただその日を生きて、親に言われたまま言われたことをする人形のような人間だった。婚約者ができたと伝えられても何も感じなかった。
しかし初めてキティに会った時は、そんな私でも感じた事がない感情に体が動かなくなった。薄緑の瞳にふわふわした赤茶色の髪の毛を持った少女が目の前に現れた瞬間、心臓が今までまで一番大きな音を出して鳴ったのだ。
今思えばあれは一目惚れだったのだとわかるが、あの頃の私は知らない感情に戸惑っていた。近寄るだけでドキドキする気持ちが何か病気なのではないかと悶々としていたため、あまり近寄らないようにキティを避けていた。
しかしキティは持ち前の明るい性格で根気よく接してくれた。
また、頭に虫がついてびっくりして、慌てふためいてよろけて転けたり。魔力量はあるがコントロールが苦手なため、水魔法を出して全身ずぶ濡れになったりとキティは何か必ず騒動を起こした。
キティを見ているだけで、生活に彩りが宿った。
徐々に自分の感情と向き合い、受け入れた頃にはキティを愛する1人の男になった。キティは私を人形から人間にしてくれたのだ。
結婚したのは23歳の時。もっと早く結婚したかったが、リード伯爵がキティを手放すのを渋ったのだ。婚約を結んでおいて今更ではあるが、結婚を許してもらえるよう、認められようと私は努力した。結果、認められたのがその頃だった。
結婚してからは毎日が幸せだった。子供もいずれできるであろうと2人で子供が産まれたら何をさせたいか、何をしてあげたいかなど、寝る前に話すようになったのは結婚して10年経った頃だった。
しかし望んでもなかなか恵まれない。キティも徐々に暗い影を落として落ち込む様子が見られた。私は両親や王家から側室を娶るように言われ続けたが、キティ以外の妻を娶るなんて考えられず全て拒否していた。
そんな私にキティが双子を紹介してきたのは、結婚して24年経った47歳の頃だった。キティの遠縁の親戚で産まれた時から妹のように可愛がっていた双子達だった。
双子達ソフィアとステファニーはまだ17歳だった。まだまだ幼い2人だが、キティは若い母体であれば子供ができるかもしれないと考えたようだ。
ソフィーとステフィーはキティを母親のように慕っていた。何をするにもついて回り、まるで親鳥の後ろをついていく雛鳥のようだった。
紹介されて一年後の48歳の時。双子が18歳になってから婚姻を結んだ。
初夜の日。私は双子達に2人一緒に私を部屋に迎えるように伝えた。双子達は少し怯えたような顔を見せたが、慕うキティの願いである子供を産む目的のため嫁いできたことを理解しており、伝えた通りに準備して待っていた。
私はキティ以外の女性を抱くつもりはない事、キティとの子供ができるのを望んでいる事、白い結婚のままうら若き時間を過ごすことになること。いずれ子供ができれば離縁し、婚姻先を斡旋することを伝えた。
双子達は初めは悩んだ様子であったが、親のように慕うキティと共に過ごせるならば、それでも良いと承諾した。キティには知らせないように、そして双子達を私自身の娘のように大事に想っている事を伝え部屋を後にした。
その後キティとは毎日一緒に眠るが、時折双子の元へ向かうように言われ、指示に従うように見せかけ私は執務室の簡易ベッドで眠った。使用人や双子達と口裏を合わせて閨を共にしているかのように工作し続けた。
そんな生活を10年続けた。双子達でも子供ができない事をキティは気にしているようだった。
私はこのまま子供ができなくてもいい、キティと2人で仲良く過ごせればそれでいいと思っていた。だが、彼女は小さき命を腕に抱きたいと願っている様子が年々増してきているようだった。
このままではキティの精神が病んでしまう。そう悩み始めた頃に王家や他の家でも後継が生まれない事でひと騒動起きた。
王家主導で様々な文献を調べ、学者を招いて助言をもらったりと、考えられる自分たちでできる事を試したが実は結ばれなかった。
このままではキティが壊れてしまう。キティがいない生活なんて想像もしたくない。気が狂いそうだった。
神頼みしかないと言い出した陛下に対しては、自分より先に気が狂ったのだろうかとさえ思った。
しかし、神は私たちを見捨てなかった。シャルム神官長が三日三晩の祈祷が終わった後も毎日祈祷していた事は知っていた。彼が一週間祈祷を続けていたある日。リーン神より神託がおりたのだ。
連絡を受けて王城内は騒然とした。感情を一定に保っているアーサー殿下もいつもよりも興奮しているように見受けられた。そして私も、キティを失う可能性が無くなるかもしれないと期待して歓喜した。
現れた聖女マイカ様は、天上から降りてきた女神ようだった。神秘的な衣を身に包み、凛とした姿で部屋に入ってきた時は後光さえも見えた気がした。
そして、彼女はやはり女神だったのだ。私たちに子供を授けてくれる。キティの願いを叶えてくれる唯一の希望。
順番なんて何番目でもいい。3年なんて私からしたら瞬く間に終わる年月だ。
ああ、キティの為なら女神にこの身を捧げても許してもらえるだろうか。
キティへの愛とは違った、神への愛をマイカ様に対して抱いている。
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