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いざ、フィンなんとか王国へ

聖女の慈悲

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・聖女は神と同等の存在である
・聖女の滞在期間は3年。役目を終えると国を去る
・聖女は純白の魔力色を持ち、漆黒の魔力色を持つ者との間に子供を授けることができる
・今回は件の男性達の子供のみ出産する
・出産方法並びに生殖方法は件の男性にのみ伝えられ、秘匿とする
・子供をもうける順番は聖女の意思により決まる


 リチェ様と話していた内容を思い出しながら、契約書に書かれていた内容と話しながら思いついた内容を含めて話した。リチェ様に話しながら目配せをするが、付け加えた内容に異論はないようで穏やかな瞳でこちらを見つめてきている。特に問題はなさそうである。

 話終わった後に王様含めた男性達を観察する。王様は目瞑りながら顎に手を当て考える様子をみせている。周りの男性達は王様の様子を伺いながら、隣同士で話し合いを始め場が騒然としだした。

「なるほど。それが聖女の慈悲か。一つ聞くが、漆黒の魔力色は純白の魔力色が相手でなければ子供が出来ないということか?」

「はい。神よりそのように伺っております」

「そうか…」

 王様は右隣の男性に目配せをすると、男性はコクリと頷いた。男性の反応を確認したあと、王様が周りの男性達にも目配せするとと各それぞれの男性も頷いた。

「あい、わかった。ではさっそく漆黒の魔力色を持つ者との面談の場を設けよう。聖女様もついて早々疲れているだろう。部屋を用意してあるので、準備ができるまでそこで待っていてくれ」

「わかりました」

「陛下。私が聖女様をご案内してよろしいでしょうか?」

 シャルムがスッと立ち上がり胸に右手を当て王様に向かって少し頭を下げた。

「うむ。お前に任せよう。頼んだぞ」

「御意に」
 
 そう言ってシャルムは私の椅子を引くために後ろにまわって声をかけてきた。

「聖女様、ご案内いたします」

「はい」

 立ち上がりやすいようにシャルムに椅子を後ろに引かれ立ち上がると、シャルムから差し出された手を取って部屋から出た。リチェ様は私の肩に乗ってくる。自分で歩く気は無いようだ。

 道すがらすれ違う人々に恭しく頭を下げられる。動きやすそうな服装をしてる人は侍従や侍女だろうか。シーツのようなものを持って歩いている人、カートを押してティーセットを運んでいる人など王城にはさまざまな人が働いているようだ。

 王城の敷地内であるが、色とりどりの花が咲いている庭園を抜けた先に真っ白な二階建ての建物が現れた。

「こちらが聖女様が滞在中に住んでいただく離宮でございます。神託をいただいてすぐに整えましたので、何か不備がございましたら侍女にお伝え下さい。快適に過ごせるよう取り計います」

「わかりました。この建物だけお城から少し離れているのですね」

「はい。この建物は何代も前の王が寵妃の為に作った離宮でして、現在は王族達の憩いの場として使われております」

 説明を受けながら離宮に入った。真っ赤な絨毯が廊下に敷き詰められている。廊下にある調度品も装飾が豪華で高価な物であることが見てとれた。

 あの壺いくら位するのかな、割ったらどうしよう心配だなと思いながら廊下を歩く。歩きながら内装を観察していると、白いコック服をきた料理人と思われる人が出入りしている部屋があった。キッチンか食堂だろうか。この一つの離宮は家としての設備も整っているようだ。

 シャルムがある扉の前に立ち止まると、そっと扉を開けた。中を覗くとソファーなどの家具が置かれている。リビングだろうか。

 手を引かれながら中に入ると部屋の1番奥にあるソファーに座るように促された。ソファーを含む家具はシンプルなデザインで、落ち着く雰囲気だ。座面の布地を触るとかなり触り心地がいい。良い布が使われているようだ。

「では聖女様。侍女にはお茶の用意を頼んでおきますので、しばしここでお寛ぎ下さい」

 恭しく頭を下げたシャルムはそう言って部屋から出て行った。リチェ様はシャルムが出ていくとすぐにピョンっと隣に飛び降りた。

『もう!王様のマイカさんに対しての態度。偉そうにしてー!』

「この国で1番偉いし、私は特に気にならないからそんなに怒らないで」

 リチェ様は尻尾をバシバシとソファーの座面に打ちつけて苛立ちを隠そうともしなかった。リチェ様の頭を撫でながらモフモフの癒しは最高だわっと和んでいるとコンコンっとノックが聞こえた。入室を許可する声かけをするとティーセットが乗ったカートをひく黒色のワンピースに白いエプロンを着た、侍女と思われる茶髪の女性が中に入って来た。

「聖女様。お初にお目にかかります。この離宮の侍女長となりました、マリアと申します。聖女様が滞在される間のお世話を担当させていただきます。何かございましたら、私にお申し付け下さい」

「マリアさんですね。よろしくお願いします」

「聖女様。私のような使用人に敬称も丁寧に話していただく必要もございません。マリアとお呼びください」

「わ、わかった。では、マリア。よろしくね」

「はい。早速お茶のご用意をさせていただきます」

 マリアは一礼すると、ティーポットに茶葉を入れお湯を注いでお茶の用意を始めた。芳醇な香りが部屋の中に充満する。マリアも顔立ちが整っている。この世界の人間は皆美形なのだろうか。マリアの薄い青色の瞳もとても綺麗だ。

 マリアはこちらの視線に気にも止めずテーブルにティーカップを置くとお茶菓子が入った皿を隣に置いき、準備が終わるとドアの近くに立った。

 カップを手に取りお茶を一口飲む。アールグレイのような味わいだ。とても美味しいお茶に癒され、ホッと息をついた。隣に座っているリチェ様はマリアをじっと見つめてから話しかけて来た。

『心の中で考えれば会話ができます。返答は声に出さないで下さいね。真っ黒達にしか教えないって言ったのは何か理由があったんですか?』

『あー。あれね。あれは長々話しても当事者は真っ黒さん5人だからあの場で話さなくていいかなって思っただけ。秘密にするのは変に噂が広まるのが嫌だっただけだよ』

『なるほど。じゃ、真っ黒達がきたら会話する部屋には防音魔法しっかりかけますね。民を信じてないわけじゃないですが、マイカさんを護る役目は私の仕事ですからね』

 リチェ様はえっへんっと猫の体で胸を張った。仕草がいちいち可愛い。ふふっと笑みをこぼしてながらゆっくりお茶を楽しんだ。
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