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幸せを世界に
それから(最終話)
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立て続けにお祝いが続いて、あっという間に穫れの1月になった。
フロラさん達からは毎月連絡が来ている。悪阻は一時期酷かったが、治ってからモリモリとご飯を食べて元気だとか。お腹を蹴り始めたとか。寝てるとお腹を蹴られて起こされるから男の子かな?とか。
僕とオリーは子供の成長を近くで見られない分、ハンナさん達の子供を、少しだけ自分たちの子供に投影して可愛がった。
ルイスさんへはハンナさんが安定期になった頃に子供を孕ったことを伝え、計画書を送った。研究の成果が出たことを喜んでくれ、王国に戻ってから症例をもう何組か増やすために候補者を絞っていると言う連絡がきた。
成功例を何件か確認してから、流通や販売をする。それが陛下が出した結論だったそうだ。
そのかわり大規模な事業になるため、薔薇を育てる土地や施設。ジャムや砂糖漬けを作る、魔道具を作る、警備など人件費。必要になるもの全てを国が主導で行ってくれることになった。
僕とオリーは作られる施設の所長兼特別顧問としめ、より簡易的にならないかを研究。そして、国からは〈子供育成促進大臣〉とかいう新しい役職を僕達2人が承ることになった。役職手当もつくし、研究施設での給料も出る。かなり破格の待遇で僕は気後れしたが、オリーからしたら足りないくらいらしい。
これからフィレント王国が受ける恩恵に比べたら僕達のお金なんて少ないそうだ。
たしかに、世界に流通させる。しかも王国でしか生産できない。莫大なお金が動くことは間違いない。
でもそれは他国から狙われる可能性もあるし、逆に抑止力になる。世界で唯一という諸刃の剣ではあるが、陛下は聖女マイカの為にと国を挙げて盛り上げることを決めたそうだ。
僕達の後任も決まった。アイザックさんの知り合いで魔道具の研究をしている人だそうだ。既婚者だが、現在の学園ならばと奥様に許可を得て新学期から僕達の代わりに務めてくれるそうだ。
平和な一日がどんどん過ぎ去って、穫れの2月になって、すぐに穫れの3月になった。
今日は卒業式。僕とオリー、そしてペネロペさんが学園から離れる日になった。
「先生!次はいつ帰ってきます?」
「うーん。来月にはフィレント王国に移動をして、子供が産まれたらこちらに戻ってハンナさんの子供が産まれるのを見届けてだから…その間に一度は帰ろうかな」
「そっかぁ。あ、もう先生って呼べないのか。アシェル兄さんオリバーおじさん」
「…おい」
「オリバーおじさんオリバーおじさん!ああいい響き!」
「やめろ!俺も兄さんにしろ!」
「えええ」
「君たちは相変わらずだね」
卒業式前に僕達3人は今日で最後になる職場の部屋の中で話をしていた。ペネロペさんはギリギリまでこの部屋にいたいと駄々をこねた。自分の教室に戻らなきゃいけない時間になるまで、僕達3人は楽しく会話をして過ごした。
卒業式。前回はオリーに抱っこされていたが今回はちゃんと先生らしく出席できた。
見覚えがある生徒達が巣立っていく姿を見ると、少し胸が熱くなる。僕がこの学園に来たのは2年程だけど、ここに来てから沢山の出来事があって変化があったからだ。
(ああ。僕が僕でいいって思えたきっかけの場所とお別れか)
しんみりとしながら卒業生達が卒業式が終わったから友人同士で別れを惜しんでいる姿を眺めた。
「泣きそうな顔だな」
僕の隣にいたオリーは心配そうな顔で僕の顔を覗き込んだ。僕はハッとなってオリーに目線を向けた。
「僕が僕でいいと思えた場所から離れると思うと、ちょっと寂しくて」
「なるほど。今日の夜は寂しくないように沢山抱いてやる」
オリーは優しく微笑むと僕の頭に口付けを落とした。僕はそれにくすぐったさを感じながら、一つの欲望をオリーに伝えた。
「…最近オリーを抱けてないな。今日は僕の日でもいい?」
僕がニヤっと笑ってオリーに提案すると、オリーは口をへの字にして不服そうになった。
「……1回だけな」
「3回ぐらい」
「1回」
「じゃぁ5回」
「っ!増えてるぞ!」
「だって僕だって抱きたい」
オリーのお尻を撫で撫でと触るとオリーは顔を真っ赤にしてプイッと顔をそらした。その様子がまた可愛くて可愛いて愛おしい。
「沢山抱いてあげるね」
「ちっ。仕返しは倍だからな」
「それはそれで楽しみだな」
僕はオリーの腕を引っ張って前屈みにさせると、チュッと音を立ててオリーの唇に口付けを落とした。
「ヒュー」
「先生達もお幸せにぃぃ!」
「見せつけんなー!」
生徒達がまだいる場所で口付け合うと、それを見た生徒達が冷やかしのような声を出した。僕はニッコリ微笑んで、周りからの声に少しびっくりしてるオリーにもう一度唇へ口付けを落とした。
そして唇を離してから、それを眺めた生徒達にニッコリ微笑んだ。
「君たちも幸せにね。僕はとっても幸せだよ」
オリーを煽るようにお尻を撫でながら話していると、周りからは「まさか上と下が逆だったのか!」「いや、そんなはずは!」とかザワザワと場が騒がしくなった。
その様子を遠くからアイザックさんとお腹の大きなハンナさんは眺めて呆れたような顔になり、ペネロペさんは顔を赤らめて何かブツブツ呟いていた。
イーサンは唯一の恋人であるエラさんの腰を抱いて僕達の様子を微笑ましく眺め、エラさんはイーサンのお尻を撫でて何かをイーサンに囁いていた。
僕が僕であるために関わった人たちに見送られて、僕とオリーは学園から卒業した。
ーーー5年後ーーー
「とーさまぁ、とーさまぁぁ」
「どうしたの?」
「うっ。小鳥さんに木の実をあげてたら、リスさんがそれを取ったの!せっかく集めて小鳥さんにあげてたのに…」
「ふふ。そっか。エスメは小鳥さんにあげたかったんだね。でもリスさんもエスメの集めた木の実が欲しかったんだよ。だから意地悪じゃないと思うよ?」
「…そっかぁ。じゃあもう少したくさん集めてみんなで仲良く食べてもらえばいいね!皆んなでいただきますするの」
「うんうん。エスメは優しいね」
僕は5歳になる愛娘の頭を撫でた。黒髪に青い瞳。僕とオリーの色を受け継いだ娘は顔立ちはオリーに少し似ている。つまり現時点でとても美人なのだ。
可愛い娘が研究施設に隣接した森で小鳥やリスなのどの小動物と戯れている姿はまるで天使のようだ。オリーはその姿を映像保存に収めて、お城での仕事をしているときや出張へ行く時に持ち歩いている。どこへ行っても子供の自慢をしているそうだ。
「とーさま。おとうさまはいつ帰るの?」
「んー、明日の赤の2時には帰ってくるかなぁ。沢山お土産を買ってくるって言ってたよ」
「やったぁぁ!」
娘と手を繋いで研究施設に向かって歩く。娘はオリーが買ってくる世界中のお菓子に夢中だ。
オリーは魔道具を広めるために出張という名目で世界を飛び回っている。あと5年ほどはこの生活が続く予定だ。荊棘の魔法は今もお互いにかかっている。研究室と屋敷、離れの行き来だけ許可を得ている状態だ。僕の行動範囲は狭くはあるが、特に問題はなかった。離れは研究施設ができてからは僕の趣味の部屋になっている。寛ぎ空間があるから窮屈に感じないのかもしれない。
ある程度広め終わったら、腰を落ち着けて研究に力を入れる予定なのだ。僕はその間にも花を育て、人を育て、より良いもの生み出せないかを研究している。
「ルイスお祖父様が、ご飯を一緒って言ってたよ」
「ああ。じゃあクリスお兄様にも会えるね」
「うん!クリスお兄様に会うの楽しみ!あ、でもエリンちゃんにもライアンくんにも会いたいなぁ。次はいつ行くの?」
「うーん。エスメが6歳になったらかな」
「…まだまだ先だぁ。うー。早く会いたいな」
エリンちゃんはアイザックさん達の子供の名前、ライアンくんは兄さん達の子供の名前だ。
歳が近い3人は仲良しだ。年下のライアンくんは年齢のわりにしっかりしているし、エリンちゃんは少しおませだ。うちのエスメは少しばかりおっとりしているため、3人で一緒にいるといい塩梅のようだ。
エスメのことをエリンちゃん達が引っ張って、大人の真似をしたエリンちゃんをライアンくんが意地悪を言ってからかってエスメが仲裁したり。
仲良し3人組は親の魔法を使って手紙のやりとりをしている。
親達はそれを微笑ましく見ているのだが、僕は一つだけ懸念していることがあった。
(ライアンくんとエスメがもし恋人になった時にどう説明しようかな)
エスメはフロラさん達の子供を僕達が引き取っていることになっている。でも、本当は僕とオリーの血を継いでいるからライアンくんとはイトコになる。結婚できないわけではないが……
「あ、お祖父様!」
エスメはある人物を見つけると僕の手を離して駆け出した。白薔薇の花畑を抜けて研究施設の出入り口にやってきた銀色に光る髪を靡かせたルイスさんに向かって抱きついた。
「迎えに来ましたよ」
「えへへ。お祖父様はいい匂い。好きぃ」
薔薇達もルイスさんを歓迎してユラユラと花を動かした。
『会いたかった会いたかった』
そんな声を聞きながら僕はルイスさんとエスメに近寄って声をかけた。
「今日も白薔薇達は元気ですよ」
「ふふ。温室の子達からここの子達のことは聞いています。なかなか会いに来れなくてすみません」
『大丈夫!』
「だ、そうですよ」
「時々水やりに来ますからね。ああ、そうだ。ノルは明日帰るのですよね?」
「はい。でも1ヶ月後にはまた出張です」
「ええ、また行くの?寂しい…」
エスメと手を繋いでルイスさんと3人で並んで馬車に向かって歩いて会話をした。白薔薇達は僕達を優しく見守っている。
これから先の未来はまだわからない。でも、人の可能性は無限大だ。人の縁の広がりも無限大。
なんとかなる。異端と言われ差別された僕がなんとかなってるのだから。
僕は小さな手を握りながら今の幸せを神に感謝した。
ーーーーー
最後まで読んでくださりありがとうございます。少し中途半端な終わり方になりましたが、この物語はこれにて完結となります。
聖女が残した慈悲が世界に広がる話で、アシェルとオリバー含め皆が幸せになるようにハッピーエンドを目指しました。
少しばかり展開が早くて申し訳ないです。
男女の絡みもあって恋愛ジャンルでもいいのかな?と思いましたが、オリバーのことを考えるとアシェルはどうしても男性でないとダメだったので、男性同士の恋愛ということでBLになりました。
シャルム家について少し気になる方は、前作のルイスの話を見ると伴侶への執着っぷりが少しわかると思います。
あまり前作のことを絡ませないように描くの難しく…申し訳ないです。
駆け足ですが完結できてホッとしております。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
あさリ23
フロラさん達からは毎月連絡が来ている。悪阻は一時期酷かったが、治ってからモリモリとご飯を食べて元気だとか。お腹を蹴り始めたとか。寝てるとお腹を蹴られて起こされるから男の子かな?とか。
僕とオリーは子供の成長を近くで見られない分、ハンナさん達の子供を、少しだけ自分たちの子供に投影して可愛がった。
ルイスさんへはハンナさんが安定期になった頃に子供を孕ったことを伝え、計画書を送った。研究の成果が出たことを喜んでくれ、王国に戻ってから症例をもう何組か増やすために候補者を絞っていると言う連絡がきた。
成功例を何件か確認してから、流通や販売をする。それが陛下が出した結論だったそうだ。
そのかわり大規模な事業になるため、薔薇を育てる土地や施設。ジャムや砂糖漬けを作る、魔道具を作る、警備など人件費。必要になるもの全てを国が主導で行ってくれることになった。
僕とオリーは作られる施設の所長兼特別顧問としめ、より簡易的にならないかを研究。そして、国からは〈子供育成促進大臣〉とかいう新しい役職を僕達2人が承ることになった。役職手当もつくし、研究施設での給料も出る。かなり破格の待遇で僕は気後れしたが、オリーからしたら足りないくらいらしい。
これからフィレント王国が受ける恩恵に比べたら僕達のお金なんて少ないそうだ。
たしかに、世界に流通させる。しかも王国でしか生産できない。莫大なお金が動くことは間違いない。
でもそれは他国から狙われる可能性もあるし、逆に抑止力になる。世界で唯一という諸刃の剣ではあるが、陛下は聖女マイカの為にと国を挙げて盛り上げることを決めたそうだ。
僕達の後任も決まった。アイザックさんの知り合いで魔道具の研究をしている人だそうだ。既婚者だが、現在の学園ならばと奥様に許可を得て新学期から僕達の代わりに務めてくれるそうだ。
平和な一日がどんどん過ぎ去って、穫れの2月になって、すぐに穫れの3月になった。
今日は卒業式。僕とオリー、そしてペネロペさんが学園から離れる日になった。
「先生!次はいつ帰ってきます?」
「うーん。来月にはフィレント王国に移動をして、子供が産まれたらこちらに戻ってハンナさんの子供が産まれるのを見届けてだから…その間に一度は帰ろうかな」
「そっかぁ。あ、もう先生って呼べないのか。アシェル兄さんオリバーおじさん」
「…おい」
「オリバーおじさんオリバーおじさん!ああいい響き!」
「やめろ!俺も兄さんにしろ!」
「えええ」
「君たちは相変わらずだね」
卒業式前に僕達3人は今日で最後になる職場の部屋の中で話をしていた。ペネロペさんはギリギリまでこの部屋にいたいと駄々をこねた。自分の教室に戻らなきゃいけない時間になるまで、僕達3人は楽しく会話をして過ごした。
卒業式。前回はオリーに抱っこされていたが今回はちゃんと先生らしく出席できた。
見覚えがある生徒達が巣立っていく姿を見ると、少し胸が熱くなる。僕がこの学園に来たのは2年程だけど、ここに来てから沢山の出来事があって変化があったからだ。
(ああ。僕が僕でいいって思えたきっかけの場所とお別れか)
しんみりとしながら卒業生達が卒業式が終わったから友人同士で別れを惜しんでいる姿を眺めた。
「泣きそうな顔だな」
僕の隣にいたオリーは心配そうな顔で僕の顔を覗き込んだ。僕はハッとなってオリーに目線を向けた。
「僕が僕でいいと思えた場所から離れると思うと、ちょっと寂しくて」
「なるほど。今日の夜は寂しくないように沢山抱いてやる」
オリーは優しく微笑むと僕の頭に口付けを落とした。僕はそれにくすぐったさを感じながら、一つの欲望をオリーに伝えた。
「…最近オリーを抱けてないな。今日は僕の日でもいい?」
僕がニヤっと笑ってオリーに提案すると、オリーは口をへの字にして不服そうになった。
「……1回だけな」
「3回ぐらい」
「1回」
「じゃぁ5回」
「っ!増えてるぞ!」
「だって僕だって抱きたい」
オリーのお尻を撫で撫でと触るとオリーは顔を真っ赤にしてプイッと顔をそらした。その様子がまた可愛くて可愛いて愛おしい。
「沢山抱いてあげるね」
「ちっ。仕返しは倍だからな」
「それはそれで楽しみだな」
僕はオリーの腕を引っ張って前屈みにさせると、チュッと音を立ててオリーの唇に口付けを落とした。
「ヒュー」
「先生達もお幸せにぃぃ!」
「見せつけんなー!」
生徒達がまだいる場所で口付け合うと、それを見た生徒達が冷やかしのような声を出した。僕はニッコリ微笑んで、周りからの声に少しびっくりしてるオリーにもう一度唇へ口付けを落とした。
そして唇を離してから、それを眺めた生徒達にニッコリ微笑んだ。
「君たちも幸せにね。僕はとっても幸せだよ」
オリーを煽るようにお尻を撫でながら話していると、周りからは「まさか上と下が逆だったのか!」「いや、そんなはずは!」とかザワザワと場が騒がしくなった。
その様子を遠くからアイザックさんとお腹の大きなハンナさんは眺めて呆れたような顔になり、ペネロペさんは顔を赤らめて何かブツブツ呟いていた。
イーサンは唯一の恋人であるエラさんの腰を抱いて僕達の様子を微笑ましく眺め、エラさんはイーサンのお尻を撫でて何かをイーサンに囁いていた。
僕が僕であるために関わった人たちに見送られて、僕とオリーは学園から卒業した。
ーーー5年後ーーー
「とーさまぁ、とーさまぁぁ」
「どうしたの?」
「うっ。小鳥さんに木の実をあげてたら、リスさんがそれを取ったの!せっかく集めて小鳥さんにあげてたのに…」
「ふふ。そっか。エスメは小鳥さんにあげたかったんだね。でもリスさんもエスメの集めた木の実が欲しかったんだよ。だから意地悪じゃないと思うよ?」
「…そっかぁ。じゃあもう少したくさん集めてみんなで仲良く食べてもらえばいいね!皆んなでいただきますするの」
「うんうん。エスメは優しいね」
僕は5歳になる愛娘の頭を撫でた。黒髪に青い瞳。僕とオリーの色を受け継いだ娘は顔立ちはオリーに少し似ている。つまり現時点でとても美人なのだ。
可愛い娘が研究施設に隣接した森で小鳥やリスなのどの小動物と戯れている姿はまるで天使のようだ。オリーはその姿を映像保存に収めて、お城での仕事をしているときや出張へ行く時に持ち歩いている。どこへ行っても子供の自慢をしているそうだ。
「とーさま。おとうさまはいつ帰るの?」
「んー、明日の赤の2時には帰ってくるかなぁ。沢山お土産を買ってくるって言ってたよ」
「やったぁぁ!」
娘と手を繋いで研究施設に向かって歩く。娘はオリーが買ってくる世界中のお菓子に夢中だ。
オリーは魔道具を広めるために出張という名目で世界を飛び回っている。あと5年ほどはこの生活が続く予定だ。荊棘の魔法は今もお互いにかかっている。研究室と屋敷、離れの行き来だけ許可を得ている状態だ。僕の行動範囲は狭くはあるが、特に問題はなかった。離れは研究施設ができてからは僕の趣味の部屋になっている。寛ぎ空間があるから窮屈に感じないのかもしれない。
ある程度広め終わったら、腰を落ち着けて研究に力を入れる予定なのだ。僕はその間にも花を育て、人を育て、より良いもの生み出せないかを研究している。
「ルイスお祖父様が、ご飯を一緒って言ってたよ」
「ああ。じゃあクリスお兄様にも会えるね」
「うん!クリスお兄様に会うの楽しみ!あ、でもエリンちゃんにもライアンくんにも会いたいなぁ。次はいつ行くの?」
「うーん。エスメが6歳になったらかな」
「…まだまだ先だぁ。うー。早く会いたいな」
エリンちゃんはアイザックさん達の子供の名前、ライアンくんは兄さん達の子供の名前だ。
歳が近い3人は仲良しだ。年下のライアンくんは年齢のわりにしっかりしているし、エリンちゃんは少しおませだ。うちのエスメは少しばかりおっとりしているため、3人で一緒にいるといい塩梅のようだ。
エスメのことをエリンちゃん達が引っ張って、大人の真似をしたエリンちゃんをライアンくんが意地悪を言ってからかってエスメが仲裁したり。
仲良し3人組は親の魔法を使って手紙のやりとりをしている。
親達はそれを微笑ましく見ているのだが、僕は一つだけ懸念していることがあった。
(ライアンくんとエスメがもし恋人になった時にどう説明しようかな)
エスメはフロラさん達の子供を僕達が引き取っていることになっている。でも、本当は僕とオリーの血を継いでいるからライアンくんとはイトコになる。結婚できないわけではないが……
「あ、お祖父様!」
エスメはある人物を見つけると僕の手を離して駆け出した。白薔薇の花畑を抜けて研究施設の出入り口にやってきた銀色に光る髪を靡かせたルイスさんに向かって抱きついた。
「迎えに来ましたよ」
「えへへ。お祖父様はいい匂い。好きぃ」
薔薇達もルイスさんを歓迎してユラユラと花を動かした。
『会いたかった会いたかった』
そんな声を聞きながら僕はルイスさんとエスメに近寄って声をかけた。
「今日も白薔薇達は元気ですよ」
「ふふ。温室の子達からここの子達のことは聞いています。なかなか会いに来れなくてすみません」
『大丈夫!』
「だ、そうですよ」
「時々水やりに来ますからね。ああ、そうだ。ノルは明日帰るのですよね?」
「はい。でも1ヶ月後にはまた出張です」
「ええ、また行くの?寂しい…」
エスメと手を繋いでルイスさんと3人で並んで馬車に向かって歩いて会話をした。白薔薇達は僕達を優しく見守っている。
これから先の未来はまだわからない。でも、人の可能性は無限大だ。人の縁の広がりも無限大。
なんとかなる。異端と言われ差別された僕がなんとかなってるのだから。
僕は小さな手を握りながら今の幸せを神に感謝した。
ーーーーー
最後まで読んでくださりありがとうございます。少し中途半端な終わり方になりましたが、この物語はこれにて完結となります。
聖女が残した慈悲が世界に広がる話で、アシェルとオリバー含め皆が幸せになるようにハッピーエンドを目指しました。
少しばかり展開が早くて申し訳ないです。
男女の絡みもあって恋愛ジャンルでもいいのかな?と思いましたが、オリバーのことを考えるとアシェルはどうしても男性でないとダメだったので、男性同士の恋愛ということでBLになりました。
シャルム家について少し気になる方は、前作のルイスの話を見ると伴侶への執着っぷりが少しわかると思います。
あまり前作のことを絡ませないように描くの難しく…申し訳ないです。
駆け足ですが完結できてホッとしております。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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作者さん、お疲れ様です(*'▽'*)
とても楽しませてもらいました♡
これからも
応援してます(*´꒳`*)♡
感想ありがとうございます。
読みにくい点もあったと思いますが、最後まで読んでくださりありがとうございました。