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幸せを世界に
お祝い
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「ハンナさん!重いものはあまり持っちゃダメって言われてるじゃないですか!」
「大丈夫よ。これくらい」
「ダメですって。僕が持ちますから!」
アイザックさんたちからハンナさんが懐妊したと連絡が来た実の2月後半。兄さん達の結婚式(家族でのお祝い会)が実の3月第3土の日。そして今日は実の3月第2土の日。僕とオリーはアイザックさんの屋敷でハンナさんとアイザックさんの結婚祝いに駆けつけていた。
なんと、2人は妊娠が分かってすぐにハンナさんの一族に連絡して婚姻届を出していたのだ。前々から書類は用意していたらしく、もう提出するだけだったそうだ。ハンナさんの一族からは安定期に入って子供が確実に生まれるまではと渋られたそうだが、ハンナさんが何十年もアイザックさんと一緒になれなかったことの恨み辛みを泣きながら話したことで、一族の当主が折れたそうだ。
と、いうことでハンナさんはさっさとアイザックさんの屋敷に住まいを移して住み着いている。そして、待ちに待った新婚生活にハンナさんは張り切って…
「あああああ。だから、少しは大人しくしてください!」
「病気じゃないのだから、寝てばっかりは暇なのよ」
「妊娠は確かに病気ではないですが、だからといって無理していいわけじゃないですよ!お薬だって使えないし、普段より病気になりやすいんですから!それに時々お腹が痛いとか言ってるじゃないですか!それも赤ちゃんがまだお腹で落ち着いてなからって聞いてますよ!いい加減大人してくてください!」
「だってぇぇぇぇ」
「だってじゃありません!おくるみでも作ってのんびりしてください」
「裁縫は得意じゃないの…」
「じゃあ、頑張って練習してください。不恰好でも子供は母親が一生懸命作ったものは嬉しいのですから。さーさー。ベッドに戻った戻った」
「ブーブーブーブー。皆んなしてそればかり」
医者から高齢での出産であること含めて、妊娠が継続するかわからないと言われているため、流産を防ぐため今はまず安静にしろと言われているにもかかわらずハンナさんは重い洗濯物をもったり、立ち仕事を長時間しようとしたりと動き回ってしまうのだ。
元気が有り余っているハンナさんはアイザックさんが仕事している時は、学園まで連れてこられ学園長室または僕たちの職場で監視されている。休日になると家のことをしなければと、動き始めるためアイザックさんや屋敷の使用人(年配)で止めてはいるが、手が足りなくて引き止められない。
と、いうことで僕とオリーがハンさんを見張っている任務をアイザックさんから承ったのだった。オリーはアイザックさんを手伝って子供部屋を整え、僕は主にハンナさんの監視。そして今は動き始めようとしたハンナさんをベッドに押し込んだところだ。
「はぁ。まだ実感がないわ。このお腹に赤ちゃんがいるなんて」
「つわりもないですもんね」
「そう!でもコッテリしたものは食べる気にならないわね。さっぱりしたものが美味しいわ。生の魚介を食べられないのは残念だけど」
「妊娠中は味が濃いもの、生モノ、お酒、お茶など普段食べていたものが制限されちゃいますからね。でも、それも子供のためですよ。ハンナさんが何か病気になったら子供にも影響が出るんですから」
「分かってるわよ。妊娠中に飲めるお茶があってよかったわ。なかったら白湯ぐらいしか飲めないもの。でも時々揚げた芋が食べたいのよね」
「時々ならいいんじゃないですか?芋にかける味付けを薄くしたりしたら」
「そうよね?今日の夕飯にばあやに頼もうかしら」
ばあやとは屋敷に長年勤めている平民の使用人のことだ。コックも数人雇っているが、ハンナさんは最近ばあやが作る料理が好きで夕飯だけ作ってもらっているそうだ。しかし休みの日もあるため、ばあやがいない日はコック長が作った食事を食べている。
今日はばあやがいる日なのか、ハンナさんはベッドに寝そべって青色の小鳥を伝達魔法で出すとばあやに向かって連絡をしていた。僕はベッドサイド近くの椅子に座って、本を読みながらハンナさんの話し相手兼監視をしている。
「そうだわ。来週は屋敷に来れないのよね」
「はい。兄が結婚するんです。結婚祝いももう買いましたよ。僕の実家は小さくて、子供が産まれたりと家族が増えると一緒に住めないので、兄夫婦はしばらく両親達とは別に暮らすんです。なので、僕からは時刻魔道具です。オリーはなぜが媚薬を買ってました…」
「あははははは。新婚に媚薬って…ふふふ」
「実兄の閨事情なんて考えたくないのに…。どう考えても夜がんばってねって感じですよね」
「そうよね。ふふふふ。ついでに精力増強の食べ物も贈りなさいよ」
「アイザックさん達の時はアイザックさんのお疲れ具合が気になって贈っただけで、まだまだ元気な兄さん達にあげるのはちょっといやらしい気がします!」
「あはははは。あ、私たちにも祝いの品ありがとうね。すごく嬉しいわ」
ハンナさんは部屋に飾られた真っ白な薔薇を眺めてニッコリと微笑んだ。僕とオリーは2人から魔道具とジャム、砂糖漬けを返してもらった。そして結婚祝いに保存魔法を施した白薔薇を2本送ったのだ。
いつまで咲き続けるかは正直言ってわからない。保存魔法がかかってはいるが、加工されたと認識されるのかがわからないからだ。それでも2人に花を贈ったのは魔道具を回収したときに少し寂しそうな顔をしていたからだ。
「互いの愛ね。私とアイザックの愛でできた我が子へ送るにも最適だわ」
「オリーが1本より2本がいいって。3本が俺たちが送る本数じゃないってうるさかったので」
「ふふ。意外と細やかな知識を持ってるわよねオリバーちゃんって」
「そうですね。おそらくお父様が知識欲のある方だからだと思います。親に似たんですよ」
「ふふふ。この子もきっと私やアイザックの何かを受け継ぐのよね。魔力色は黒にさらに近寄ってしまうけど…でも、2人の研究が世界に広がれば私たちのように悩むこともないわね。本当に…奇跡のような研究を実らせてくれてありがとう」
ハンナさんは寝ながら僕を見つめて優しく微笑んだ。僕はその視線を受け止めて、小さく首を横に振った。
「僕たちだけじゃ、成し遂げられませんでした。神の祝福があって、その祝福を守ってくれた人がいて、僕たちを信じて待っててくれた人がいたからです。僕たちは用意されたものを具現化しただけで…」
「それでも具現化するために頑張ってくれたのは2人よ。もっと誇っていいのよ」
「……」
「もう!真面目なんだから!聞き分けがない子とおしゃべりしてても楽しくないわ!動いてアイザック達のところに行こうかしら」
「あわわわ!もうさっき散歩は行ったのですからしばらくは大人しくてください!」
起きあがろうとするハンナさんを慌てて押さえつけてベッドに寝かせると、ハンナさんは僕の手を握って微笑んだ。
「じゃあ、もっと誇りを持って。自信を持って。オリバーちゃんだけでは成し遂げられなかったはずよ。貴方がいたから、2人だったからよ」
「……はい」
「ふふ。今日もお泊まりしてく?」
「あ、その予定です」
「そうだと思って用意はしてあるわ。夕飯までまだ時間があるわね…刺繍でもしようかしら」
ハンナさんは上半身を起こしてヘッドボードに背もたれた。僕は起き上がるのを手伝って背中にたくさんのクッションを入れてから途中で止まっている刺繍を手渡した。
「それ、なんですか?白い丸…」
「白薔薇よ!」
「…ばら…」
裁縫が苦手はハンナさんの刺繍はとても下手だ。でも子供を思って一針一針指している姿はとても幸せそうだった。僕はその姿を眺めてから椅子に座って本の続きを読み始めた。
「大丈夫よ。これくらい」
「ダメですって。僕が持ちますから!」
アイザックさんたちからハンナさんが懐妊したと連絡が来た実の2月後半。兄さん達の結婚式(家族でのお祝い会)が実の3月第3土の日。そして今日は実の3月第2土の日。僕とオリーはアイザックさんの屋敷でハンナさんとアイザックさんの結婚祝いに駆けつけていた。
なんと、2人は妊娠が分かってすぐにハンナさんの一族に連絡して婚姻届を出していたのだ。前々から書類は用意していたらしく、もう提出するだけだったそうだ。ハンナさんの一族からは安定期に入って子供が確実に生まれるまではと渋られたそうだが、ハンナさんが何十年もアイザックさんと一緒になれなかったことの恨み辛みを泣きながら話したことで、一族の当主が折れたそうだ。
と、いうことでハンナさんはさっさとアイザックさんの屋敷に住まいを移して住み着いている。そして、待ちに待った新婚生活にハンナさんは張り切って…
「あああああ。だから、少しは大人しくしてください!」
「病気じゃないのだから、寝てばっかりは暇なのよ」
「妊娠は確かに病気ではないですが、だからといって無理していいわけじゃないですよ!お薬だって使えないし、普段より病気になりやすいんですから!それに時々お腹が痛いとか言ってるじゃないですか!それも赤ちゃんがまだお腹で落ち着いてなからって聞いてますよ!いい加減大人してくてください!」
「だってぇぇぇぇ」
「だってじゃありません!おくるみでも作ってのんびりしてください」
「裁縫は得意じゃないの…」
「じゃあ、頑張って練習してください。不恰好でも子供は母親が一生懸命作ったものは嬉しいのですから。さーさー。ベッドに戻った戻った」
「ブーブーブーブー。皆んなしてそればかり」
医者から高齢での出産であること含めて、妊娠が継続するかわからないと言われているため、流産を防ぐため今はまず安静にしろと言われているにもかかわらずハンナさんは重い洗濯物をもったり、立ち仕事を長時間しようとしたりと動き回ってしまうのだ。
元気が有り余っているハンナさんはアイザックさんが仕事している時は、学園まで連れてこられ学園長室または僕たちの職場で監視されている。休日になると家のことをしなければと、動き始めるためアイザックさんや屋敷の使用人(年配)で止めてはいるが、手が足りなくて引き止められない。
と、いうことで僕とオリーがハンさんを見張っている任務をアイザックさんから承ったのだった。オリーはアイザックさんを手伝って子供部屋を整え、僕は主にハンナさんの監視。そして今は動き始めようとしたハンナさんをベッドに押し込んだところだ。
「はぁ。まだ実感がないわ。このお腹に赤ちゃんがいるなんて」
「つわりもないですもんね」
「そう!でもコッテリしたものは食べる気にならないわね。さっぱりしたものが美味しいわ。生の魚介を食べられないのは残念だけど」
「妊娠中は味が濃いもの、生モノ、お酒、お茶など普段食べていたものが制限されちゃいますからね。でも、それも子供のためですよ。ハンナさんが何か病気になったら子供にも影響が出るんですから」
「分かってるわよ。妊娠中に飲めるお茶があってよかったわ。なかったら白湯ぐらいしか飲めないもの。でも時々揚げた芋が食べたいのよね」
「時々ならいいんじゃないですか?芋にかける味付けを薄くしたりしたら」
「そうよね?今日の夕飯にばあやに頼もうかしら」
ばあやとは屋敷に長年勤めている平民の使用人のことだ。コックも数人雇っているが、ハンナさんは最近ばあやが作る料理が好きで夕飯だけ作ってもらっているそうだ。しかし休みの日もあるため、ばあやがいない日はコック長が作った食事を食べている。
今日はばあやがいる日なのか、ハンナさんはベッドに寝そべって青色の小鳥を伝達魔法で出すとばあやに向かって連絡をしていた。僕はベッドサイド近くの椅子に座って、本を読みながらハンナさんの話し相手兼監視をしている。
「そうだわ。来週は屋敷に来れないのよね」
「はい。兄が結婚するんです。結婚祝いももう買いましたよ。僕の実家は小さくて、子供が産まれたりと家族が増えると一緒に住めないので、兄夫婦はしばらく両親達とは別に暮らすんです。なので、僕からは時刻魔道具です。オリーはなぜが媚薬を買ってました…」
「あははははは。新婚に媚薬って…ふふふ」
「実兄の閨事情なんて考えたくないのに…。どう考えても夜がんばってねって感じですよね」
「そうよね。ふふふふ。ついでに精力増強の食べ物も贈りなさいよ」
「アイザックさん達の時はアイザックさんのお疲れ具合が気になって贈っただけで、まだまだ元気な兄さん達にあげるのはちょっといやらしい気がします!」
「あはははは。あ、私たちにも祝いの品ありがとうね。すごく嬉しいわ」
ハンナさんは部屋に飾られた真っ白な薔薇を眺めてニッコリと微笑んだ。僕とオリーは2人から魔道具とジャム、砂糖漬けを返してもらった。そして結婚祝いに保存魔法を施した白薔薇を2本送ったのだ。
いつまで咲き続けるかは正直言ってわからない。保存魔法がかかってはいるが、加工されたと認識されるのかがわからないからだ。それでも2人に花を贈ったのは魔道具を回収したときに少し寂しそうな顔をしていたからだ。
「互いの愛ね。私とアイザックの愛でできた我が子へ送るにも最適だわ」
「オリーが1本より2本がいいって。3本が俺たちが送る本数じゃないってうるさかったので」
「ふふ。意外と細やかな知識を持ってるわよねオリバーちゃんって」
「そうですね。おそらくお父様が知識欲のある方だからだと思います。親に似たんですよ」
「ふふふ。この子もきっと私やアイザックの何かを受け継ぐのよね。魔力色は黒にさらに近寄ってしまうけど…でも、2人の研究が世界に広がれば私たちのように悩むこともないわね。本当に…奇跡のような研究を実らせてくれてありがとう」
ハンナさんは寝ながら僕を見つめて優しく微笑んだ。僕はその視線を受け止めて、小さく首を横に振った。
「僕たちだけじゃ、成し遂げられませんでした。神の祝福があって、その祝福を守ってくれた人がいて、僕たちを信じて待っててくれた人がいたからです。僕たちは用意されたものを具現化しただけで…」
「それでも具現化するために頑張ってくれたのは2人よ。もっと誇っていいのよ」
「……」
「もう!真面目なんだから!聞き分けがない子とおしゃべりしてても楽しくないわ!動いてアイザック達のところに行こうかしら」
「あわわわ!もうさっき散歩は行ったのですからしばらくは大人しくてください!」
起きあがろうとするハンナさんを慌てて押さえつけてベッドに寝かせると、ハンナさんは僕の手を握って微笑んだ。
「じゃあ、もっと誇りを持って。自信を持って。オリバーちゃんだけでは成し遂げられなかったはずよ。貴方がいたから、2人だったからよ」
「……はい」
「ふふ。今日もお泊まりしてく?」
「あ、その予定です」
「そうだと思って用意はしてあるわ。夕飯までまだ時間があるわね…刺繍でもしようかしら」
ハンナさんは上半身を起こしてヘッドボードに背もたれた。僕は起き上がるのを手伝って背中にたくさんのクッションを入れてから途中で止まっている刺繍を手渡した。
「それ、なんですか?白い丸…」
「白薔薇よ!」
「…ばら…」
裁縫が苦手はハンナさんの刺繍はとても下手だ。でも子供を思って一針一針指している姿はとても幸せそうだった。僕はその姿を眺めてから椅子に座って本の続きを読み始めた。
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