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幸せを世界に
悪魔との会食
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カローさんに兄さんに見せられる姿絵はないかと連絡すると、小さな姿絵を可愛らしいスナネズミが届けてくれた。姿絵は今のカローさんより少し若い頃ではあるが、さほど変わりはない。
僕は早速ウサギで姿絵とカローさんの名前を家族に向けて送った。兄さんの姿絵は無いらしく、次の日に兄さんがカローさんの姿絵を見て大興奮したこと含めて連絡が来た。
カローさんの姿絵はしばらく両親に預けて(兄さんが毎日眺めてるらしい)、カローさんに兄さんの姿絵がないことを伝えると「先生のお兄さんなら想像できるから大丈夫!」と言って笑っていた。こちらから姿絵を求めていたにも関わらず都合の良いことをしてしまったことを家族の代わりに謝ると、カローさんは笑って許してくれた。と、いうよりも本当に気にしてない様子にも見えた。
僕はまず、ブルックス君に連絡を取ることにした。学園から離れて統治者としての本格的な教育が始まって忙しいにも関わらず、ブルックス君は連絡したその日に予定を空けてくれた。
第1水の日の夜。僕とオリーはブルックス君を例の食堂の個室へと呼び出した。
「先生たちから連絡をいただけるだなんて、久々に会えて嬉しですね」
紫の悪魔は個室に現れると、ニコニコ笑って先にテーブルに座って待っていた僕たちに声をかけてきた。僕はそんな悪魔に向かってニッコリ微笑んで声をかけた。
「君に借りを返してもらいたくてね。その機会を与えてあげようと思うんだ」
「借りですか?」
なんのことでしょう?と笑っている悪魔は本当にいけすかない。オリーは僕と悪魔の様子を見ながら店員を呼び出して料理や飲み物を頼んでからは大人しく僕の隣に座っていた。僕は向かい側に座る悪魔に向かってさらに笑みを深めて話しかけた。
「この部屋ではないけど、この店の個室で。僕を抱いたよね?ああ、僕を救い出してくれたことに協力してくれたことには感謝してるよ?でも結果的には君の思惑通りになったし、借りを返すには少し君の取り分が多いと思うんだ」
「なるほど」
悪魔は僕が言いたいことを理解したのか、余裕そうに笑って返事を返してきた。店員は部屋の雰囲気が尋常ではないことを察したのか飲み物を運んでくる時も存在を悟られないように、静かに給仕をしていった。オリーはお酒を飲みながら状況が悪くなれば口を出そうと僕達の様子を伺っていた。僕は防音の魔法をかけてか、悪魔に話をかけた。
「あのこと、僕は結構怒ってるんだ。きっかけをくれたのは感謝するよ?でも騙し打ちは良くない。わかるよね?」
「そうですね」
「と、いうことで君にぴったりな役割をお願いしたいんだ」
「というと?」
僕と悪魔はニコニコと微笑み合いながら腹の探り合いを始めた。こういった駆け引きは正直苦手だ。ただ、可愛い教え子のため、家族の幸せのために僕はグッと拳を握ってから説明を始めた。
「実はね。カローさん。ペネロペ・カローさんの結婚についてだよ。君も情報だけなら知ってるんじゃない?」
「ああ…」
悪魔は少しだけ眉間に皺を寄せてから軽く首を縦に振った。
「カロー子爵の考えは貴族としては良くあることなのかもしれない。でもさ、1人の女性の人生を左右する結婚をあんな形で成立させようって考えは親として、義理であっても不誠実だと思うんだ。君はどう思う?」
「そうですね。確か…アボット男爵でしたね。あまりいい噂は聞きませんし、あえて婚家に選ぶにしては…。カロー子爵は領地経営もうまくいっていますし、落ちぶれた男爵家と婚姻をして縁繋ぎになる必要性は確かにありませんね」
「つまりさ、いらないからってオモチャを捨てるのと同じだよね。自分から手を差し伸べてきたのにさ。そもそも君の婚約者選びの候補者として手駒を増やしたくてカローさんを引き取ったらしいよ。君もカローさんと何度も関係を結んでるんだから、その点は察してたよね?」
「ええ、それはまぁ。ですが、あの頃はそんな家はごまんとありました。それで僕を責められても困りますよ」
「その点を責めたいわけじゃないよ。ただ、きっかけになったことを理解してねってだけ。でね、僕カローさんを家族にしたいんだ」
「…と、いうと?」
僕が本題に入る前に、店員が頼んだ食事を届けた。僕はそれが並べられるのを待ってから悪魔に話しかけた。
「実兄のお嫁さんになってもらいたいんだよね。カローさんも兄も乗り気でさ。でもカロー子爵とアボット男爵だっけ?この関係がなぜ結ばれようとしてるのか、それを調べて欲しいのと、カロー子爵に僕の家にカローさんを嫁がせることを納得させたいんだ。正直、僕の家は貴族にこだわりがあるわけではない。だから養子縁組を白紙にされて平民になってても問題はない。意味わかる?」
「ふむ。確かに利益のない関係の構築はきな臭いですね。ふふ、わかりました。協力しましょう」
「いい結果になれば僕も嬉しい。それに悪事が判明すれば君も悪い蟲を退治できて一石二鳥だね。僕の願いはカローさんが我が家に気持ちよく悪い縁もない状態で嫁いでくることなんだ。君ならそれができるでしょう?」
「はい。お任せください。借りを返せるように精一杯努力しますね」
「期待してるね」
僕と悪魔は同時に立ち上がって、お互いに手を差し出して握手をした。手を離して2人とも椅子に座ると、オリーはふーっと息を吐いてから並べられた料理を食べ始めた。
「じゃあ、久々の教え子との会食を楽しもうかな」
「そうですね。久々にお会いできて本当に嬉しいですよ」
僕はブルックス君に料理絵を取り分けて手渡してから自分の分を取り分けて、料理を楽しんだ。ブルックス君からウッドさん(旧姓で呼ぶ方がわかりやすいよね)の話を聞くと、なんと現在ご懐妊中らしい。僕たちが国を離れている間に発表されていたらしい。とりあえず、会食は祝いの席に変えて楽しく飲み食いした。
食事を終えて、帰る際。ブルックス君は部屋から出る前に僕たち2人に囁いてきた。
「研究されてること、流通の融通をお願いしますね」
「…お前…」
「ふふ。2人の研究は本当に素晴らしいことですね。楽しみにしています」
オリーがブルックス君の肩を掴もうとすると、その手をすり抜けて颯爽と出て行ってしまった。ブルックス君は、やはり悪魔のようなやつだと僕は再認識した。
僕は早速ウサギで姿絵とカローさんの名前を家族に向けて送った。兄さんの姿絵は無いらしく、次の日に兄さんがカローさんの姿絵を見て大興奮したこと含めて連絡が来た。
カローさんの姿絵はしばらく両親に預けて(兄さんが毎日眺めてるらしい)、カローさんに兄さんの姿絵がないことを伝えると「先生のお兄さんなら想像できるから大丈夫!」と言って笑っていた。こちらから姿絵を求めていたにも関わらず都合の良いことをしてしまったことを家族の代わりに謝ると、カローさんは笑って許してくれた。と、いうよりも本当に気にしてない様子にも見えた。
僕はまず、ブルックス君に連絡を取ることにした。学園から離れて統治者としての本格的な教育が始まって忙しいにも関わらず、ブルックス君は連絡したその日に予定を空けてくれた。
第1水の日の夜。僕とオリーはブルックス君を例の食堂の個室へと呼び出した。
「先生たちから連絡をいただけるだなんて、久々に会えて嬉しですね」
紫の悪魔は個室に現れると、ニコニコ笑って先にテーブルに座って待っていた僕たちに声をかけてきた。僕はそんな悪魔に向かってニッコリ微笑んで声をかけた。
「君に借りを返してもらいたくてね。その機会を与えてあげようと思うんだ」
「借りですか?」
なんのことでしょう?と笑っている悪魔は本当にいけすかない。オリーは僕と悪魔の様子を見ながら店員を呼び出して料理や飲み物を頼んでからは大人しく僕の隣に座っていた。僕は向かい側に座る悪魔に向かってさらに笑みを深めて話しかけた。
「この部屋ではないけど、この店の個室で。僕を抱いたよね?ああ、僕を救い出してくれたことに協力してくれたことには感謝してるよ?でも結果的には君の思惑通りになったし、借りを返すには少し君の取り分が多いと思うんだ」
「なるほど」
悪魔は僕が言いたいことを理解したのか、余裕そうに笑って返事を返してきた。店員は部屋の雰囲気が尋常ではないことを察したのか飲み物を運んでくる時も存在を悟られないように、静かに給仕をしていった。オリーはお酒を飲みながら状況が悪くなれば口を出そうと僕達の様子を伺っていた。僕は防音の魔法をかけてか、悪魔に話をかけた。
「あのこと、僕は結構怒ってるんだ。きっかけをくれたのは感謝するよ?でも騙し打ちは良くない。わかるよね?」
「そうですね」
「と、いうことで君にぴったりな役割をお願いしたいんだ」
「というと?」
僕と悪魔はニコニコと微笑み合いながら腹の探り合いを始めた。こういった駆け引きは正直苦手だ。ただ、可愛い教え子のため、家族の幸せのために僕はグッと拳を握ってから説明を始めた。
「実はね。カローさん。ペネロペ・カローさんの結婚についてだよ。君も情報だけなら知ってるんじゃない?」
「ああ…」
悪魔は少しだけ眉間に皺を寄せてから軽く首を縦に振った。
「カロー子爵の考えは貴族としては良くあることなのかもしれない。でもさ、1人の女性の人生を左右する結婚をあんな形で成立させようって考えは親として、義理であっても不誠実だと思うんだ。君はどう思う?」
「そうですね。確か…アボット男爵でしたね。あまりいい噂は聞きませんし、あえて婚家に選ぶにしては…。カロー子爵は領地経営もうまくいっていますし、落ちぶれた男爵家と婚姻をして縁繋ぎになる必要性は確かにありませんね」
「つまりさ、いらないからってオモチャを捨てるのと同じだよね。自分から手を差し伸べてきたのにさ。そもそも君の婚約者選びの候補者として手駒を増やしたくてカローさんを引き取ったらしいよ。君もカローさんと何度も関係を結んでるんだから、その点は察してたよね?」
「ええ、それはまぁ。ですが、あの頃はそんな家はごまんとありました。それで僕を責められても困りますよ」
「その点を責めたいわけじゃないよ。ただ、きっかけになったことを理解してねってだけ。でね、僕カローさんを家族にしたいんだ」
「…と、いうと?」
僕が本題に入る前に、店員が頼んだ食事を届けた。僕はそれが並べられるのを待ってから悪魔に話しかけた。
「実兄のお嫁さんになってもらいたいんだよね。カローさんも兄も乗り気でさ。でもカロー子爵とアボット男爵だっけ?この関係がなぜ結ばれようとしてるのか、それを調べて欲しいのと、カロー子爵に僕の家にカローさんを嫁がせることを納得させたいんだ。正直、僕の家は貴族にこだわりがあるわけではない。だから養子縁組を白紙にされて平民になってても問題はない。意味わかる?」
「ふむ。確かに利益のない関係の構築はきな臭いですね。ふふ、わかりました。協力しましょう」
「いい結果になれば僕も嬉しい。それに悪事が判明すれば君も悪い蟲を退治できて一石二鳥だね。僕の願いはカローさんが我が家に気持ちよく悪い縁もない状態で嫁いでくることなんだ。君ならそれができるでしょう?」
「はい。お任せください。借りを返せるように精一杯努力しますね」
「期待してるね」
僕と悪魔は同時に立ち上がって、お互いに手を差し出して握手をした。手を離して2人とも椅子に座ると、オリーはふーっと息を吐いてから並べられた料理を食べ始めた。
「じゃあ、久々の教え子との会食を楽しもうかな」
「そうですね。久々にお会いできて本当に嬉しいですよ」
僕はブルックス君に料理絵を取り分けて手渡してから自分の分を取り分けて、料理を楽しんだ。ブルックス君からウッドさん(旧姓で呼ぶ方がわかりやすいよね)の話を聞くと、なんと現在ご懐妊中らしい。僕たちが国を離れている間に発表されていたらしい。とりあえず、会食は祝いの席に変えて楽しく飲み食いした。
食事を終えて、帰る際。ブルックス君は部屋から出る前に僕たち2人に囁いてきた。
「研究されてること、流通の融通をお願いしますね」
「…お前…」
「ふふ。2人の研究は本当に素晴らしいことですね。楽しみにしています」
オリーがブルックス君の肩を掴もうとすると、その手をすり抜けて颯爽と出て行ってしまった。ブルックス君は、やはり悪魔のようなやつだと僕は再認識した。
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