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幸せを世界に

これから先について

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 前回と同じように転移施設やオリーの転移魔法を使って移動した。アイミヤ公国に着いたのは第4木の日だった。夕方には寮に着いて荷解きをしてからアイザックさんへ到着したことを連絡した。

 イーサンにも帰宅したことを連絡すると、すぐに部屋にやってきて甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。僕たちは疲れ果てて、イーサンが夕食の準備をしてくれてとても助かった。

 明日からは自分たちで食事の準備をするから、イーサンはまだ休暇を楽しんでほしいと伝えると「怠けていたのでもう働かたい気分なのです」と言って明日から僕たちの世話をすると張り切っていた。やる気満々のイーサンに水を刺すこともできず、僕たちはお世話を頼むことにした。

 ご飯を食べて湯浴みしたらすぐに寝た。移動だけだが本当に疲れる。アイミヤ公国とフィレント王国直通の移動施設が欲しいと心の底から願ったほどだった。


 第4魔の日まで僕たちはゴロゴロと過ごした。旅の疲れもそれで癒えたし、明日アイザックさん達に会うのも楽しみだしとウキウキしながらこの日を過ごした。



 第4土の日。赤の8からアイザックさんの屋敷に向かった。時間についてはアイザックさんから朝食を一緒にというお誘いがあったからだ。オリーの転移魔法でシュッと移動してアイザックさんの屋敷に着くと、2人は待ち構えていたように僕たちを出迎えてくれた。

「ああん!おかえりなさい」

 ハンナさんは出会って早々僕に抱きついて、胸元を僕の顔に押し付けて頭に頬擦りしてきた。僕は大歓迎ぶりにびっくりしながらも後ろで微笑んでいるアイザックさんにヘラッと笑って声をかけた。

「おはようございます。ただいまです」

「おはようございます。無事に帰宅できて安心しました。朝からハンナがすみません。連絡が来てから待ち遠しくて、ソワソワしてしまってまして。さぁ、アシェル君が困ってますよ。そろそろ離れなさい」

「ううん。この可愛い男の子の匂いをもう少し…」

「クソババァ。いい加減にしろ」

 怒ったオリーに引き剥がされたハンナさんは怒るよりも幸せそうな顔で笑って僕から離れていった。

 朝食を食べながらアイザックさん達に休暇の話をすると、ニコニコと笑って話を聞いてくれた。オリーは時々ハンナさん達に悪態をつきながらも、久しぶりに会う友人達との会話を楽しんでいる様子だった。

 朝食も終わり、食後のお茶の時間になってから僕達は本題を切り出した。

「アイザック。あの話だが…魔道具というか方法が見つかった。ただ、本当にこれで子供ができるかは証明されていない。保証はない。いいんだな?」

「はい。覚悟はできています。期待していたことが実らなくても、それは君達のせいではない。私達はその運命を受け入れて生きていくことにします」

「大丈夫よ。心配しないで。何かあればこの年まで独り身になった呪いを私の一族に放ってやるから!」

 アイザックさん達は幸せそうな笑ってからお互いに見つめあって微笑んでいた。その様子はやっぱり夫婦のようだったし、お互いに愛し合っているのがすごくわかった。

 オリーと目配せすると、オリーの収納から魔石の中に花びらが入った魔道具を4つ。僕の収納からはジャムと砂糖漬けの瓶を1つずつテーブルの上に出した。

「この石が魔道具だ。装飾品にするといいとは思うが…指輪の場合は大きさがわからないし、俺達にはそこまで加工技術がない。ハンナならなんとかなるだろう?」

「ふふ。任せてちょっうだい。装飾品にするなら私でも加工できるから、すぐに身につけることができるわよ。アイザック。指輪にする?耳飾りにする?」

 ハンナさんは魔石の石を1つ手に取って眺めながらアイザックさんに声をかけた。アイザックさんは優しく微笑むと僕とオリーの左薬指にはまった指輪を見ると口を開いた。

「私も左薬指に指輪が欲しいです」

「…アイザック…」

 ハンナさんはその言葉に胸が熱くなったような顔になると言葉を詰まらせた。そして2人は見つめあって今から口付けますよっという雰囲気になった時にオリーが水を差すように声をかけた。

「魔石は一度使うと2日後じゃないと使えない。毎回付け替える必要があるからな」

「ちょ、オリー…今それを伝えなくてもっ!」

「ババァとジジィの乳繰りあいなんて見たくないからな」

 アイザックさん達は自分の世界から帰ってくると、お互いにハァァァっと深いため息をついて苦笑いをしていた。僕は申し訳なく思いながらも、ジャムと砂糖漬けについて説明を始めた。

「魔道具だけだと効果が持続しないんです。なので、このジャムを小さじ1又は砂糖漬けの花びらを1枚必ず食べてください。両方使うことで効果が3時間現れます。効果がなくなると魔石の花びらの色が薄くなるのですぐわかると思います。2日後になれば花びらの色が白に戻ります。付け替えるのは面倒かもですが、忘れないように気をつけてください」

「なるほど。外からと内からの効果なのですね。ジャムや砂糖漬けを食べるだなんて…面白いですね。これはどちらも同じ花でしょうか」

 アイザックさんはジャムの瓶を手に取ると観察するやな顔で眺め始めた。オリーはその様子を見ながら説明を続けた。

「そうだ。ある特殊な花で、俺の祖国にしか咲かない花なんだ。それで…この研究を続けるために、俺たちは拠点をフィレント王国に移そうと思ってる」

 アイザックさんは瓶をテーブルに置くと、じっと僕達2人を見つめた。お互いに見つめあってどれくらいの時間が経ったかわからない。探るような目と威圧感のある雰囲気に僕がゴクリと生唾を飲むと、アイザックさんはふんわりと優しく微笑んだ。

「わかりました。いつ頃の予定ですか?」

「来年の花の2月には完全に移動したい。あと、俺の親族が産む子供を俺たちの子供にする予定なんだ。その子が生まれるのが来年の種の3月頃なんだ。立ち合いもしたいとは思ってる…」

 アイザックさんはオリーの言葉を聞いて、顎に手を当てて考え事をしてからまた口を開いた。

「では、穫れの3月。卒業式と同時がこちらとしても都合がいいですね。新学期になるまでに2人とも辞職ということでこちらも手配しましょう。私達の子供がもし授かった場合は…」

「仕事をやめたとしても、2人の子供が産まれるまではそばに居る。約束の期限はできればの話だ。ただ、半年以内に効果がない場合は…授かる可能性が低いと考えて別の協力者を探す必要があるかもしれない。それはまた、相談しよう」

「僕達にとっても2人の子供は大事な子なので、最後まで結果を見届けさせてください」

 僕とオリーは真剣な顔で2人を見つめると、2人は少しだけホッとした顔になって微笑んだ。

「わかりました。では早速来月から励んでみようと思います」

「半年以内…つまり穫れの2月までってことね。もしその時期に授かった場合は貴方達の子供のこともあるし、またそこは相談ね」

「ああ」

「よーし、アイザック。朝から晩まで頑張りましょう!」

「ふふ。そうですね」

「仕事もしろよな…」

「ははは」

 気合い十分の2人に対して僕とオリーは乾いた笑いをしながらも、ホッと息をついた。
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