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魔道具研究の日々
さぁ、帰ろう
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「う、うう…」
目が覚めて体を動かそうとするが、とても体が重くて辛い。重い体を動かしてゆっくり上半身を起こすと、隣はもぬけの殻で僕1人がベッドで寝ていた。
「あれ?…寝る前と服が違う」
寝る前は白は白でも使い古した白の寝巻きだったはずなのに、今は新品下ろしたての真っ白なものを着ていた。服の作りも少し違う。僕は状況が飲み込めず混乱していると、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
「起きたか」
部屋に入ってきたのは何やら見覚えのある匂いがする器をお盆に乗せて運んできたオリーだった。
「…そ、その…匂いは…」
「フロラに頼んで作ってもらった薬湯だ」
「う、うう。嫌だ!それは飲みたくない!お腹がグルグルするし!」
「だめだ。一口だけでも飲め。体がだるくて辛いだろう?」
「うぐっ。なぜそれを…」
図星を突かれて何も言い返せない僕の前にずいっと器を差し出してオリーはベッドサイドに座った。僕は渋々器を受け取って、表現し難い色をした薬湯をじっと眺めた。
「夢だからと激しくしたが、なかなか起きなかったのと…まぁ…下着もすごい事になってたからな。着替えさせても一向に起きないし、その感じがだか潰した時の様子と似ていたからな。出発は一日ずらして明日にする予定に変更してある。今はもう昼過ぎだし、薬湯を飲んで寝込んでも問題ない。むしろ飲んで体力を戻さないと移動が辛いぞ」
「…う、うう」
オリーのいい分はもっともで、僕は渋々重い腕を動かして器を口元に寄せた。ゴクッと一口飲み込むと何とも言えない味が広がった。前回同様に一口飲んだだけでスッキリするし、体力も戻ったような気になった。でも、体のだるさはどうにもならず僕は一口飲んで器をオリーに押し付けるとパタリとベッドに倒れ込んだ。
「つらい」
「使用人に食べやすいスープを持ってきてもらう。それを食べてまた寝てろ。昨日別れの挨拶をしたし、夕食も部屋で食べても問題ない。何も考えずに体を休めとけ」
「…はーい…」
そもそもの原因はオリーがあんなに激しく女の僕を抱いたからだし、かと言って夢で起きたことが現実の体に影響するだなんて…。白猫はそのことを知っていたのか、知らなかったのかわからないけども、ちょっとばかり面倒なことをしてくれた。そんな気分になるとどっと疲れがでてきた。
「少し寝るね」
「ああ」
オリーの声を聞きながらも僕はまた瞼を閉じて眠りに落ちた。
気がついたら夜だった。夕食の時間もすぎていたけど、オリーは僕のために温かい食事を収納の中に入れて準備してくれていた。
僕は柔らかいお肉が入った野菜スープとパン、果物を食べられるだけ食べて2人で湯浴みをした。体はまだ重かったからオリーが(いたずらせず)丁寧に洗ってくれた。
「明日は朝早いからな」
「うん、流石に今夜は夢はないと思う。出発前にフロラさん達に声をかけたいな」
「わかった。皆が朝食を食べる時間より先に出かける予定だから、朝食代わりの軽食をもらったら家族に挨拶して出かけよう」
「そうだね。僕、この国に来て本当に良かった。オリーの家族にも会えたし、子供についても研究についても進んだし。この国で暮らす未来もなんとなく想像できるから、次来る時に不安はないかな」
オリーの胸元にモゾモゾと動いて顔を埋めると、オリーは優しく頭を撫でてくれた。
「それは良かった。俺もアーシェが家族と仲良く出来そうで安心してる。でも何かあればすぐに俺に言ってくれ。俺はアーシェの1番の味方だからな」
「えへへ。僕もオリーの1番の味方だよ。愛してる」
「俺も愛してる」
お互いに見つめあって愛を囁いてから軽く唇を合わせた。僕達はお互いに微笑みあってから、ギュッと抱きしめあって眠りについた。
朝起きて、身支度を済ませて準備を終えると僕達は軽食を使用人から受け取ってそれぞれの家族の部屋へ挨拶に行った。
ルイスさんはすでに起きていて、僕たちが挨拶に行くと優しく出迎えてくれた。そしてリリーさんから離れを託されたことを話すと、ルイスさんは少しだけ驚いたような顔になってから笑っていた。屋敷に戻る時期に着いてはまた連絡すること、白薔薇を使った研究を陛下に伝えるために、アイミヤ公国で協力してくれる人達にまず子供ができるかを確認したいことを話した。ルイスさんは陛下とも仲がいいらしく、陛下との謁見は難しくても事業についての報告はいつでもできるため、事業計画書などが伝達魔法で送ることになった。そして、アイザックさん達の結果も知りたいと言われたため、僕たちは力強く頷いて了承した。
次にフロラさん達家族の部屋に向かうと、クリス君はまだ寝ていたがフロラさんとチャーリーさんはイチャイチャと口付けながら部屋の中にいた。いい雰囲気を邪魔してしまった状況に気まずさを覚えながら挨拶をすると、フロラさん達はクスクス笑っていた。子供について頻繁に連絡をくれることになった。フロラさん達に任せっきりになる事の申し訳なさを伝えると、フロラさんは「お母様と同じことをしているだけよ。むしろ誇らしく思ってるの。だから、私の誇りを迷惑な存在だとは思わないわ。安心して」と話してくれた。その言葉はとても力強くて、1人の母親として決心している姿は尊敬すら覚えた。感謝と尊敬を伝えて僕たちはフロラさん達の部屋から離れた。
次にリリーさんの部屋に向かった。リリーさんには詳しく話せなかったが、フロラさんが産む子供を僕達の子供にすることを伝えた。驚いたような顔になるかと思ったが、そこまで驚きはなく、むしろ微笑ましげな顔で微笑まれた。拠点をこちらに移すことを伝えると、研究部屋を離れにして居住区は屋敷にするよう勧められた。元々の所有者であるリリーさんの提案だし、子供がいる状態で研究資料や材料などを屋敷にお置いておくのは確かに心配ではあった。僕たち2人はその提案を快く受け入れて、離れを有効活用することをリリーさんと約束した。リリーさんは前よりも晴れやかな顔だった。
側室の方々はこの日は4人でお茶会へ行く予定だったようで、皆朝から着飾っていた。挨拶をすると「私たちまで挨拶に来てくれるなんて、律儀というか、嬉しいというか。ありがとう」と言っていた。家族ではあるが、ルイスさんの妻としての役割はほとんどしていないそうで(リリーさんも夜はないそうだ)、ただ居候のようなものだからと笑っていた。だからフロラさんが産む子供を僕たちの子供にすることを伝えると、産着や肌着、おくるみ、子供の世話などクリスくんの時同様に手助けしてくれることを約束してくれた。
皆見送りを希望してくれたが、まだ朝早い事もあって見送りは断った。
執事や使用人の皆にも軽く挨拶してから、僕達は呼んだ馬車に乗り込んで清々しい朝の風を感じながらアイミヤ公国に向けて出発した。
目が覚めて体を動かそうとするが、とても体が重くて辛い。重い体を動かしてゆっくり上半身を起こすと、隣はもぬけの殻で僕1人がベッドで寝ていた。
「あれ?…寝る前と服が違う」
寝る前は白は白でも使い古した白の寝巻きだったはずなのに、今は新品下ろしたての真っ白なものを着ていた。服の作りも少し違う。僕は状況が飲み込めず混乱していると、部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。
「起きたか」
部屋に入ってきたのは何やら見覚えのある匂いがする器をお盆に乗せて運んできたオリーだった。
「…そ、その…匂いは…」
「フロラに頼んで作ってもらった薬湯だ」
「う、うう。嫌だ!それは飲みたくない!お腹がグルグルするし!」
「だめだ。一口だけでも飲め。体がだるくて辛いだろう?」
「うぐっ。なぜそれを…」
図星を突かれて何も言い返せない僕の前にずいっと器を差し出してオリーはベッドサイドに座った。僕は渋々器を受け取って、表現し難い色をした薬湯をじっと眺めた。
「夢だからと激しくしたが、なかなか起きなかったのと…まぁ…下着もすごい事になってたからな。着替えさせても一向に起きないし、その感じがだか潰した時の様子と似ていたからな。出発は一日ずらして明日にする予定に変更してある。今はもう昼過ぎだし、薬湯を飲んで寝込んでも問題ない。むしろ飲んで体力を戻さないと移動が辛いぞ」
「…う、うう」
オリーのいい分はもっともで、僕は渋々重い腕を動かして器を口元に寄せた。ゴクッと一口飲み込むと何とも言えない味が広がった。前回同様に一口飲んだだけでスッキリするし、体力も戻ったような気になった。でも、体のだるさはどうにもならず僕は一口飲んで器をオリーに押し付けるとパタリとベッドに倒れ込んだ。
「つらい」
「使用人に食べやすいスープを持ってきてもらう。それを食べてまた寝てろ。昨日別れの挨拶をしたし、夕食も部屋で食べても問題ない。何も考えずに体を休めとけ」
「…はーい…」
そもそもの原因はオリーがあんなに激しく女の僕を抱いたからだし、かと言って夢で起きたことが現実の体に影響するだなんて…。白猫はそのことを知っていたのか、知らなかったのかわからないけども、ちょっとばかり面倒なことをしてくれた。そんな気分になるとどっと疲れがでてきた。
「少し寝るね」
「ああ」
オリーの声を聞きながらも僕はまた瞼を閉じて眠りに落ちた。
気がついたら夜だった。夕食の時間もすぎていたけど、オリーは僕のために温かい食事を収納の中に入れて準備してくれていた。
僕は柔らかいお肉が入った野菜スープとパン、果物を食べられるだけ食べて2人で湯浴みをした。体はまだ重かったからオリーが(いたずらせず)丁寧に洗ってくれた。
「明日は朝早いからな」
「うん、流石に今夜は夢はないと思う。出発前にフロラさん達に声をかけたいな」
「わかった。皆が朝食を食べる時間より先に出かける予定だから、朝食代わりの軽食をもらったら家族に挨拶して出かけよう」
「そうだね。僕、この国に来て本当に良かった。オリーの家族にも会えたし、子供についても研究についても進んだし。この国で暮らす未来もなんとなく想像できるから、次来る時に不安はないかな」
オリーの胸元にモゾモゾと動いて顔を埋めると、オリーは優しく頭を撫でてくれた。
「それは良かった。俺もアーシェが家族と仲良く出来そうで安心してる。でも何かあればすぐに俺に言ってくれ。俺はアーシェの1番の味方だからな」
「えへへ。僕もオリーの1番の味方だよ。愛してる」
「俺も愛してる」
お互いに見つめあって愛を囁いてから軽く唇を合わせた。僕達はお互いに微笑みあってから、ギュッと抱きしめあって眠りについた。
朝起きて、身支度を済ませて準備を終えると僕達は軽食を使用人から受け取ってそれぞれの家族の部屋へ挨拶に行った。
ルイスさんはすでに起きていて、僕たちが挨拶に行くと優しく出迎えてくれた。そしてリリーさんから離れを託されたことを話すと、ルイスさんは少しだけ驚いたような顔になってから笑っていた。屋敷に戻る時期に着いてはまた連絡すること、白薔薇を使った研究を陛下に伝えるために、アイミヤ公国で協力してくれる人達にまず子供ができるかを確認したいことを話した。ルイスさんは陛下とも仲がいいらしく、陛下との謁見は難しくても事業についての報告はいつでもできるため、事業計画書などが伝達魔法で送ることになった。そして、アイザックさん達の結果も知りたいと言われたため、僕たちは力強く頷いて了承した。
次にフロラさん達家族の部屋に向かうと、クリス君はまだ寝ていたがフロラさんとチャーリーさんはイチャイチャと口付けながら部屋の中にいた。いい雰囲気を邪魔してしまった状況に気まずさを覚えながら挨拶をすると、フロラさん達はクスクス笑っていた。子供について頻繁に連絡をくれることになった。フロラさん達に任せっきりになる事の申し訳なさを伝えると、フロラさんは「お母様と同じことをしているだけよ。むしろ誇らしく思ってるの。だから、私の誇りを迷惑な存在だとは思わないわ。安心して」と話してくれた。その言葉はとても力強くて、1人の母親として決心している姿は尊敬すら覚えた。感謝と尊敬を伝えて僕たちはフロラさん達の部屋から離れた。
次にリリーさんの部屋に向かった。リリーさんには詳しく話せなかったが、フロラさんが産む子供を僕達の子供にすることを伝えた。驚いたような顔になるかと思ったが、そこまで驚きはなく、むしろ微笑ましげな顔で微笑まれた。拠点をこちらに移すことを伝えると、研究部屋を離れにして居住区は屋敷にするよう勧められた。元々の所有者であるリリーさんの提案だし、子供がいる状態で研究資料や材料などを屋敷にお置いておくのは確かに心配ではあった。僕たち2人はその提案を快く受け入れて、離れを有効活用することをリリーさんと約束した。リリーさんは前よりも晴れやかな顔だった。
側室の方々はこの日は4人でお茶会へ行く予定だったようで、皆朝から着飾っていた。挨拶をすると「私たちまで挨拶に来てくれるなんて、律儀というか、嬉しいというか。ありがとう」と言っていた。家族ではあるが、ルイスさんの妻としての役割はほとんどしていないそうで(リリーさんも夜はないそうだ)、ただ居候のようなものだからと笑っていた。だからフロラさんが産む子供を僕たちの子供にすることを伝えると、産着や肌着、おくるみ、子供の世話などクリスくんの時同様に手助けしてくれることを約束してくれた。
皆見送りを希望してくれたが、まだ朝早い事もあって見送りは断った。
執事や使用人の皆にも軽く挨拶してから、僕達は呼んだ馬車に乗り込んで清々しい朝の風を感じながらアイミヤ公国に向けて出発した。
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