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魔道具研究の日々
加工についてどうしようかな
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僕は受け取ってしまった鍵を収納にしまってから部屋の扉を開けて中に入った。オリーはテーブルに積まれた本の中で何かの本を読んでいた。
「ただいま」
「おかえり。割と早かったな」
「うん?そうかな…長い時間を過ごしたような気がしてたけど…」
僕はオリーが座っているソファーにある本を退けてオリーの隣に座ると、頭をオリーの肩に乗せた。オリーは目線は本に向けたまま、僕の頭を優しく撫でた。
「どうした?リリー母上に何かされたか?」
「んー…何かされたというか、なんか…大事なものを貰い受けたというか…」
「んん?」
僕はぽつりぽつりとリリーさんと何があったかをオリーに話した。
肖像画の部屋でリリーさんから話してもらった説明、リリーさん自身はルイスさんを愛している様子だということ。複雑な環境の中でも母親であることや当主の代役として領地の経営をする責任などを感じてそうであり、そうあるべきだという役割を演じていそうだということを感じて僕が思った気持ちを伝えたら泣かせてしまったこと。そうしたらリリーさんから離れの鍵を譲り受けたことを話した。
オリーは相槌を打ちながら僕の頭を撫でてくれて、そして僕の話を最後まで黙ってきいてくれた。話終わった頃合いにオリーはフーッと深く息を吐くとパタンっと本を閉じた。
「なるほどな。血筋か…。そういえばリリー母上は父上よりもこの家の歴史に詳しかった。父上は色々な知識を持ってはいるが…確かに家のとこについては無頓着かもしれないな。神に仕えているからという理由もあるかもしれないが、家のことは基本的にリリー母上が仕切っていたからな」
「そうなんだ」
僕はオリーの肩にぐりぐりと頭を擦り付けると、オリーはすくすくと笑って話を続けた。
「どこかで歪んでしまった何かをリリー母上は修正しようとしていたのかも…しれないな。だから一人で気を張って、チャーリーにもアーシェにも忠告して…」
「うん…」
「ただ、アーシェの言葉で何か吹っ切れたのは間違い無いな。離れはリリー母上しか使ってない場所だし、俺もほとんど入ったことがないんだ。それを託すってことはアーシェを家族の一員として迎え入れてくれた証拠じゃないか?」
「そうなのかなぁ…。なんだか大事なものを気軽に受け取ってしまって、本当に良かったのかとわかんなくて。うーん」
僕が唸るように首を傾げているとオリーは本を開いて文字を目で追いながら話した。
「大丈夫だろ。まあ、アーシェが納得して離れをどうするか決まるまでは頭の片隅に入れておくぐらいでいいと思うぞ」
「うん…とりあえず…そうする」
僕は小さく頷くと目を瞑ってオリーの息遣いと本を捲る音に耳を済ませた。
ただ、流れていく時間だが二人が一緒にいられるだけで幸せだと感じる。愛する人がいるという事はそれだけで何かが満たされる。リリーさんもそんな気持ちなのだろうか。
リリーさんを想って少しばかり感傷に浸ってから、僕はゆっくり目を開けるとオリーが読んでいる本に目を向けた。
「ん?ジャムの作り方?」
オリーが読んでいたのは料理本だった。僕は頭をオリーの肩から離して周りにある本の題名を確認した。
【初心者でも簡単な香水】
【楽しいお菓子作り~お花編~】
【香油の種類】
【花開くお茶達】など
似たような題名がある本ばかりで、どの本も〈花〉が関連する言葉を含んだ本だった。
「あ、もしかして…白薔薇の加工どれにするか…」
「それ意外に俺が花の本を読むと思うか?」
「そ、そ、そうだよね…。あ、後で水やりに行かなきゃ」
「温室の鍵は父上がもう一つ持ってるそうだ。水やりに関しては父上がやると言っていたぞ」
「むむ。じゃあ世話を頼まれたのに僕は何をすれば…」
「そりゃぁ、話し相手って事じゃないか?」
「あ、そっちの世話…ね」
なるほどなっと納得しながらも、僕はお菓子作りの本を手に取って中を確認することにした。
花びらの砂糖漬けやジャムの作り方を眺めながら、材料として使われる花の量が割と多いことに気がついた。
「ねぇ、意外と花を消費する感じだよね」
「そうだな。香油や香水だともっと量が必要だろうな。そもそもあの薔薇は花の匂いは強くない気もするから、香りが必要な香油などは不向きな気もする」
「あー…」
バラを育てる場所の確保も必要そうだと思いながらも、僕はパラパラと本をめくった。読み終わると別の本を手に取って確認し、オリーが集めた本を全て確認した頃にはお昼ご飯の時間になっていた。
使用人に頼んでお茶と軽食を運んでもらうと、部屋で昼食を食べてから、僕達は一旦話し合うことにした。
「どれが1番効果があるのか、正直さっぱりわかんない」
「そうだな」
「白薔薇だから正直言って赤い薔薇より華やかさはないよね。そうなると目で楽しむ薔薇紅茶もどうなのかなっては思う」
「ああ」
「そうなると…ジャムか砂糖漬けかな…食べ物として摂取するなら。香水や香油はいったん後回しにして、今咲いている花で出来そうなのって言ったらそれぐらいかな。あとは花自体に保存魔法を使って身につけるとか…」
「ふむ。じゃあまずは花単体を保存魔法で体に身につけた場合何本必要なのか、また効果時間はどれほどか。体内に摂取する場合、ジャムと砂糖漬けを対象にしてどれぐらいの量を食べればどれだけの時間の効果があるのか。それを調べるか」
「そうだね。できれば魔力色が濃い人に試してもらいたいよね。アイザックさん達の魔力色だと摂取したりの検討はできないし」
「それならば…真っ黒の父上と濃いめの黒のチャーリーに試してもらうのはどうだ?」
「2人が協力してくれるならそれもいいね」
僕達はウンウンっと互いに頷き合うとそれぞれで作業を分担することにした。
僕は花を摘んでまずはジャムと砂糖漬け作り。あと乾燥させた薔薇もいくつか作ることにした。
オリーはルイスさんとチャーリーさんへの交渉と、まずは花単体での効果や本数、持続時間などを調べることになった。
ルイスさんもチャーリーさんも快く研究に協力してくれるとになり、僕達はこの日から慌ただしく温室と調理室、ルイスさんの自室を行ったり来たりした。チャーリーさんは領地に戻っている期間もあるため、屋敷にいる間だけ協力してもらうことになった。実質ルイスさんが実験の検体になったが、ルイスさんは仕事終わりの合間に時間を作ってくれて僕達に快く協力してくれた。
僕達は初めに考えついた事をどんどん試した。
するとあっという間に1週間経ってしまった。
「ただいま」
「おかえり。割と早かったな」
「うん?そうかな…長い時間を過ごしたような気がしてたけど…」
僕はオリーが座っているソファーにある本を退けてオリーの隣に座ると、頭をオリーの肩に乗せた。オリーは目線は本に向けたまま、僕の頭を優しく撫でた。
「どうした?リリー母上に何かされたか?」
「んー…何かされたというか、なんか…大事なものを貰い受けたというか…」
「んん?」
僕はぽつりぽつりとリリーさんと何があったかをオリーに話した。
肖像画の部屋でリリーさんから話してもらった説明、リリーさん自身はルイスさんを愛している様子だということ。複雑な環境の中でも母親であることや当主の代役として領地の経営をする責任などを感じてそうであり、そうあるべきだという役割を演じていそうだということを感じて僕が思った気持ちを伝えたら泣かせてしまったこと。そうしたらリリーさんから離れの鍵を譲り受けたことを話した。
オリーは相槌を打ちながら僕の頭を撫でてくれて、そして僕の話を最後まで黙ってきいてくれた。話終わった頃合いにオリーはフーッと深く息を吐くとパタンっと本を閉じた。
「なるほどな。血筋か…。そういえばリリー母上は父上よりもこの家の歴史に詳しかった。父上は色々な知識を持ってはいるが…確かに家のとこについては無頓着かもしれないな。神に仕えているからという理由もあるかもしれないが、家のことは基本的にリリー母上が仕切っていたからな」
「そうなんだ」
僕はオリーの肩にぐりぐりと頭を擦り付けると、オリーはすくすくと笑って話を続けた。
「どこかで歪んでしまった何かをリリー母上は修正しようとしていたのかも…しれないな。だから一人で気を張って、チャーリーにもアーシェにも忠告して…」
「うん…」
「ただ、アーシェの言葉で何か吹っ切れたのは間違い無いな。離れはリリー母上しか使ってない場所だし、俺もほとんど入ったことがないんだ。それを託すってことはアーシェを家族の一員として迎え入れてくれた証拠じゃないか?」
「そうなのかなぁ…。なんだか大事なものを気軽に受け取ってしまって、本当に良かったのかとわかんなくて。うーん」
僕が唸るように首を傾げているとオリーは本を開いて文字を目で追いながら話した。
「大丈夫だろ。まあ、アーシェが納得して離れをどうするか決まるまでは頭の片隅に入れておくぐらいでいいと思うぞ」
「うん…とりあえず…そうする」
僕は小さく頷くと目を瞑ってオリーの息遣いと本を捲る音に耳を済ませた。
ただ、流れていく時間だが二人が一緒にいられるだけで幸せだと感じる。愛する人がいるという事はそれだけで何かが満たされる。リリーさんもそんな気持ちなのだろうか。
リリーさんを想って少しばかり感傷に浸ってから、僕はゆっくり目を開けるとオリーが読んでいる本に目を向けた。
「ん?ジャムの作り方?」
オリーが読んでいたのは料理本だった。僕は頭をオリーの肩から離して周りにある本の題名を確認した。
【初心者でも簡単な香水】
【楽しいお菓子作り~お花編~】
【香油の種類】
【花開くお茶達】など
似たような題名がある本ばかりで、どの本も〈花〉が関連する言葉を含んだ本だった。
「あ、もしかして…白薔薇の加工どれにするか…」
「それ意外に俺が花の本を読むと思うか?」
「そ、そ、そうだよね…。あ、後で水やりに行かなきゃ」
「温室の鍵は父上がもう一つ持ってるそうだ。水やりに関しては父上がやると言っていたぞ」
「むむ。じゃあ世話を頼まれたのに僕は何をすれば…」
「そりゃぁ、話し相手って事じゃないか?」
「あ、そっちの世話…ね」
なるほどなっと納得しながらも、僕はお菓子作りの本を手に取って中を確認することにした。
花びらの砂糖漬けやジャムの作り方を眺めながら、材料として使われる花の量が割と多いことに気がついた。
「ねぇ、意外と花を消費する感じだよね」
「そうだな。香油や香水だともっと量が必要だろうな。そもそもあの薔薇は花の匂いは強くない気もするから、香りが必要な香油などは不向きな気もする」
「あー…」
バラを育てる場所の確保も必要そうだと思いながらも、僕はパラパラと本をめくった。読み終わると別の本を手に取って確認し、オリーが集めた本を全て確認した頃にはお昼ご飯の時間になっていた。
使用人に頼んでお茶と軽食を運んでもらうと、部屋で昼食を食べてから、僕達は一旦話し合うことにした。
「どれが1番効果があるのか、正直さっぱりわかんない」
「そうだな」
「白薔薇だから正直言って赤い薔薇より華やかさはないよね。そうなると目で楽しむ薔薇紅茶もどうなのかなっては思う」
「ああ」
「そうなると…ジャムか砂糖漬けかな…食べ物として摂取するなら。香水や香油はいったん後回しにして、今咲いている花で出来そうなのって言ったらそれぐらいかな。あとは花自体に保存魔法を使って身につけるとか…」
「ふむ。じゃあまずは花単体を保存魔法で体に身につけた場合何本必要なのか、また効果時間はどれほどか。体内に摂取する場合、ジャムと砂糖漬けを対象にしてどれぐらいの量を食べればどれだけの時間の効果があるのか。それを調べるか」
「そうだね。できれば魔力色が濃い人に試してもらいたいよね。アイザックさん達の魔力色だと摂取したりの検討はできないし」
「それならば…真っ黒の父上と濃いめの黒のチャーリーに試してもらうのはどうだ?」
「2人が協力してくれるならそれもいいね」
僕達はウンウンっと互いに頷き合うとそれぞれで作業を分担することにした。
僕は花を摘んでまずはジャムと砂糖漬け作り。あと乾燥させた薔薇もいくつか作ることにした。
オリーはルイスさんとチャーリーさんへの交渉と、まずは花単体での効果や本数、持続時間などを調べることになった。
ルイスさんもチャーリーさんも快く研究に協力してくれるとになり、僕達はこの日から慌ただしく温室と調理室、ルイスさんの自室を行ったり来たりした。チャーリーさんは領地に戻っている期間もあるため、屋敷にいる間だけ協力してもらうことになった。実質ルイスさんが実験の検体になったが、ルイスさんは仕事終わりの合間に時間を作ってくれて僕達に快く協力してくれた。
僕達は初めに考えついた事をどんどん試した。
するとあっという間に1週間経ってしまった。
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