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魔道具研究の日々

手がかり

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 フロラさんに勧められた薬湯はものすごく…不味かった…。でも、一口飲むだけで少しスッキリしてダルいような感じが消えた気がしたため、頑張って半分だけ飲んだ。

 でも、飲んでからお腹がグルグルして調子が悪くなったため、ずっとベッドの中で寝っ転がっていた。

 オリーは自分の部屋に置いてあった昔の資料などを読み漁って、どこかに狼を送っていた。オリーのもとには何度か茶色のモモンガのような小動物がやってきて、オリーとやり取りをしている様子だった。

 僕はオリーが資料を読んだり、狼を送ったり、動物がオリーに何かを伝えている様子をウトウトしながら眺めた。

 昼食を食べても僕はまだベッドの中で休んでいたが、オリーはずっと作業を続けていた。そろそろ午後のお茶の時間になった頃に、オリーは僕が寝ているベッドにやってきて声をかけてきた。

「アーシェ。俺の魔道具の師匠に〈中和〉について何かいい案は無いかと聞いたのだが、俺たちの魔力を使わずにするにはやはり何か媒体が必要だってことだった。それで、最近師匠の奥様達が品種改良した花が珍しくて、もしかしたら俺たちが探してる媒体になるかもしれないって返事が来たんだ。しかもな、それを父上が引き取って育ててるらしい」

「師匠?」

「ああ。この国で作られた映像保存の魔道具を作った人だ。元々は父上が母上と夢の中で旅をした時に見聞きしたものを参考にしたそうだ。陛下も国の発展につながるものには惜しみなくお金をかけてくださるお陰で、今ではあの魔道具だけでもかなり国が潤ってる。平民街も割と綺麗だったろう?」

 僕はこの屋敷に来るまでに見た街並みをぼんやりした頭の中で思い浮かべてみた。確かに都でも平民街は治安が悪かったり、浮浪者が多い。でもこの国はどこも整っていて、浮浪者がいる場所もぱっと見わからなかったぐらい綺麗だった。転移で疲れ切った僕は『さすが王都だな』の一言で終わっていたが、考えてみれば確かに僕の国よりも綺麗だった。

 アイミヤ公国は特殊な国であり、古い歴史がある国が平民街までも整備されているのは本当に珍しいことだ。

「確かに」

 僕がウンウンと頷くとオリーは優しく笑ってベッドサイドに座った。僕はゆっくり体を起こして、上半身をヘッドボードにもたれようとすると、オリーは背中に枕を数個入れてもたれやすいようにしてくれた。

「なんでも真っ白な花なんだが、特殊らしい。父上はその特殊性が母上のようだと言って数株ほど引き取ったそうだ。後で父上に声をかけておく」

「うん、わかった。なんだかこの国に来てから一気に進んだね。僕たちの子供や中和について」

「そうだな。まるで神が用意していたかのようだな」

 僕はオリーの言葉を聞いてぼんやりと頭の中で白猫を思い浮かべた。

(もしかして、僕がお願いしてたから叶えてくれた?)

 思い浮かべた白猫はどこかニンマリと笑っているような感じだった。それがなんだか面白くてふふっと笑みが漏れてしまった。それを見たオリーは不思議そうに首を傾げた。

「なんだ?急に笑って」

「ふふ。実はね、ずっと白猫にお祈りしてたんだ。中和について何か手がかりを下さいって。もしかしたら白猫が叶えてくれたのかな?って思ったらニンマリと笑った顔が浮かんできたからさ、笑えてきちゃった。猫なのに笑ってるのがわかるんだよ。不思議なんだ」

「そうか…。リチェ様か。俺も会ってみたいな」

「明日会えるといいね」

「ああ」

 僕たちはクスクスと笑い合って啄むような口づけを交わした。



 夕食の時はルイスさんと僕たち2人だけだった。クリスくんが発熱し調子を崩したらしく、夫婦2人でクリスくんに付き添ってるそうだ。

 食べながら明日の打ち合わせをして、白い花について聞いてみるとルイスさんは優しく笑って神殿の帰りに案内してくれることを約束してくれた。

 クリスくんにお見舞いとフロラさんに元気になったお礼をウサギで送ったら、真っ白な白鳥から夕飯を一緒にできなかった謝罪と明後日は一緒に食べようというお誘いをもらった。


 この屋敷の人は僕のことを差別しない。本当に家族のように接してくれる。

 僕はそれがとても嬉しくて、お風呂に入ってオリーの腕の中で眠る時までポカポカしだ心のまま眠りについた。
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