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仕事と恋の両立

オリバーさんの想い

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 グニャっとしたものが消えて体の感覚が戻ってくると、見える景色が変わっていた。とても高そうな調度品がある部屋にいた。

「いらっしゃませ。ご予約はされていますか?」

 カウンターのようなテーブルから黒いジャケットに白いシャツを着た使用人のような年配の男性が話しかけてきた。

 オリバーさんは僕を抱き抱えたままその場所に近寄った。僕は手の中にある金色の鍵を受付のテーブルに置いて話しかけた。

「あの。この部屋を取ってあるって聞いたのですが…」

「ああ!お待ちしておりました。ブルックス様からお話は伺っております。鍵はそのままお待ちくださいませ。部屋までご案内いたします」

 受付の男性はニコニコと微笑んでこちらまで移動してきた。僕はテーブルに置いた鍵を手に取って、オリバーさんに抱き抱えられながら男性の後ろについて行った。

「2泊3日と伺っております。お食事も全てこちらでご用意いたしますので、何かございましたらベルを鳴らしてくださいませ。室内にある魔道具は全てご利用できます。買取希望の場合はお帰りになる際にお声掛けください。代金は全てブルックス様がご負担されます。では、ご予約のお部屋はこちらのマーガレットのお部屋でございます」

 男性は豪華な扉の前でペコリと頭を下げてから僕たちの前から消えていった。僕がオリバーさんを見上げて見つめると、オリバーさんは桃色のマーガレットの花の模様が描かれた扉を見てフッと笑った。

「真実の愛か…」

「え?」

「いやなんでもない。鍵をあける。かせ」

 少しだけいつもの強引なオリバーさんが戻ってきて僕を床に下ろすと、僕の手の中の鍵を奪ってガチャっと開けていた。そして僕の腕を引っ張って部屋の中に連れ込むと内鍵を閉めてからギュウっ抱きしめてきた。

 僕は癒される温もりを感じながらオリバーさんの背中に腕を回して抱きしめ返した。

「すまんかった。傷つけて」

「はい」

「されて初めて辛いことに気がついた」

「はい」

「愛してる、初めて会った時から。お前の白とお前の魔力の色とお前の味に、一目見て、一口味わった時から…」

「はい。僕も…会ってすぐに抱きしめられたり、甘い味を食べさせられたりしても何故か嫌悪感がありませんでした。オリバーさんの温もりに安心してました。あんなに衝撃的な出会いなのに、嫌いにならないなんて…きっと好きになってたからだと思います。愛してます」

「……ちなみに、次の空の日は国の祝日で休みだ」

「え?」

「だから学校が始まるのは火の日だ。2泊3日ってさっき言ってただろ?今日と明日はここに泊まれる。空の日は…お前の部屋に行く。これから夜はずっとお前といる。朝から夜まで食事も一緒だ。朝起きたら俺の隣にいてくれ。夜寝る時も俺の隣にいてくれ。ずっと…」

「まるで…結婚の誓いの言葉を聞いてるみたいです」

 僕が腕の中でクスクス笑っているとオリバーさんはまたギュッと抱きしめてきた。

「この国でも流石に同性は婚姻できない。でも、俺はお前との関係をそんな関係にしたい。結婚して欲しい。どんな形でもずっと俺といて欲しい」

「…どうしよう…。嬉しい…。はい。ずっと一緒にいます」

 僕は涙が溢れてきて、オリバーさんの胸元に顔を埋めて、ウンウンと頷いた。オリバーさんは嬉しそうに笑って僕を抱きしめ返してきた。

 しばらくそのままお互いに抱きしめあっていたが、オリバーさんがポツリとつぶやいた。

「俺の…話を聞いてくれるか?」

 涙を拭きながら顔を上げるとオリバーさんは真剣な顔をしながら僕を見つめていた。僕はニコッと微笑んでから頷いた。

「はい。愛する貴方の事をもっと知りたい」

「…っ……ありがとう……」

 オリバーさんは涙を目に溜めながら僕の手を引いて、部屋の中にあるソファーに座らせてくれた。

 部屋の中は豪華で、ソファーがある広間のような空間と大きなベッドがある空間。手洗いや浴室もあり、小さなテーブルには椅子が2つあった。

「一つの家みたいな部屋ですね」

「そうだな。この部屋はここら辺では1番高い部屋だ。普通の連れ込み部屋にはベッドと風呂と手洗いくらいしかない」

「まるで使ったことがあるような…」

「……もうお前としか使わない」

「ならいいですよ。さぁ、オリバーさんも僕の隣に座って?」

 立ったまま僕に話しかけていたオリバーさんを誘うと、恐る恐る僕の右隣に座ってきた。そして僕の左手を右手で握ってから呪文を唱えて室内に防音の魔法をかけた。

「あのクソガキが魔道具を仕込んでも、声はこれで聞こえない。今から話すことは誰にも言わないでくれ。俺の国でも秘匿とされてることだ」

「はい」

 僕が真剣な顔で頷くと、オリバーさんは優しく微笑んで収納から大きめの黒い石を取り出して、ソファーの前にあるテーブルに置いた。

「何ですか?」

「この国では改良されて小型化しているが…これは映像保存の魔道具の初期型だ。この魔道具は俺の国で作られたんだ。各国で広まり出したのは最近だがな」

「へー…知らなかった」

 オリバーさんは黒い石に魔力を流すと、ポワンっと光が出てきて横向きに置かれた長方形の形になった。そして光がだんだん色づいて絵が浮かび上がってきた。

「これが俺の家族だ」

 出てきた絵は真ん中に銀髪の男性が微笑みながらこちらを見ていた。少し後ろに下がった場所には微笑んでいる複数の女性が左右に2人と3人に分かれて並んでいた。銀髪の男性に肩を抱かれながら、15歳ぐらいの拗ねたような顔の黒髪の少年と微笑んでいる銀髪の少女がいた。

「片割れの目をよく見てくれ」

 オリバーさんが指を差したのは銀髪の少女だった。目をよくみると真っ黒な瞳だった。

「くろの…瞳?」

「ああ。珍しいだろう?これが聖女マイカがこの世界にいた証の一つだ」

「聖女マイカ…」

 僕がポツリと呟きながら目の前に見える絵を見ていると、オリバーさんは語り始めた。

「聖女マイカ。別の世界からやってきた黒髪黒目の女性だ。俺たちの国は国の中枢として重要な役割を持つ王族、上位貴族、そして神殿を総括している神官長。5人の男達の間に30年子供ができず、子が欲しいと神に祈ったことで遣わされた聖女だ」

「別世界…」

「そうだ。聖女は真っ白で青い瞳をした聖獣と一緒に現れた。そして前に見せた石を使って、4人の男性に子供を授けた」

「…あの石」

 僕が前に見た小瓶に入った真っ白な石を思い浮かべていると、オリバーさんはさらに話を続けた。

「あの小瓶に子種を入れ、石を入れると子種が消える代わりに石が白と黒になったそうだ。それを聖女自身が胎にいれると子が宿っていたらしい」

「なんとも…神秘的な」

「子は聖獣が管理していたらしい。そして出産も聖獣が主導で行ったそうだ」

「…意思疎通ができたのですか?」

「ああ。聖女と守護者として認められた俺の父上だけな。聖獣によって取り上げられた俺達は眩い光に包まれて聖女の腹から出てきたそうだ。そして、生まれてすぐに聖女の乳を吸って、父親達の元に…」

「産まれてすぐに産みの母親と離れたんですか?」

「そうだ。聖女は秘匿されてた。他国から狙われることを恐れたその頃の王太子がそう決めたんだ。生まれた子供は正室との間のことして民や事情をしらない他の貴族達に通達された。俺も父親の右隣にいるこの正室の子供として認識されてる」

 オリバーさんは優しく微笑む一人の女性を指さした。髪の色は淡い金色で瞳は青色だった。

「…流石に、この方の子供というのは無理が…」

「だよな。でも、俺も片割れも紫の瞳と銀の髪は明らかに父上から受け継いだものだ。だから、周りからは父上が他の女に孕ませて子供を産ませて、正室の子供として育ててるという認識だったようだな。間違っていないからか、父上は否定も肯定もしなかった。…それで何度も俺と片割れは周りの貴族の子供にいびられたもんだ」

「……だからオリバーさんは拗ねてるんですか?」

「…これは…。自分の産みの母の絵がないのにって思っていたからだな」

「見たかったんですか?」

「…ああ。見たかったし、会いたかった。いじめられるたびに父上は俺と片割れにどれだけ愛し合って俺たちが生まれたかを語るんだ。そして、愛おしそうに俺達を抱きしめてくれた」

「素敵なお父さんですね」

「…素敵か?まぁ、一途に聖女だけを愛しているのは素敵かもしれん。話がそれたな。戻すぞ」

「はい」

 オリバーさんは僕の返事を待ってから、見えている絵を違うものに切り替えた。出てきたのはオリバーさん達と歳が近い4人の男女とオリバーさん達双子の絵だった。

「これが聖女の血を引く子供だ。こいつらの色は全て父親の色と同じだ」

 金茶赤黒黒銀の順で子供達が並んでいた。みんな幼さは残っているが男性は凛々しい顔立ちだし、女性は朗らかな笑みを浮かべていた。

「…明らかに、オリバーさん達の髪色と目は…これを見ると不思議でしかないですね」

「神からの祝福だそうだ。俺達6人は聖女から生まれたことも知っている。どんなふうに生まれたかも、乳をもらったことも…。そして何故か俺以外の皆はすんなり受け入れた」

「…すんなり?」

「ああ。小さい頃から話を聞いていた誰にも話してはいけない聖女が本当にいて、それが自分の産み母であるという事実を他の4人はすぐに受け止めた。そして片割れは父親と母親の色をわかりやすく受け継ぎ、そして聖女の名前を一部受け継いだ事で産みの母への愛を受け止めたようだ」

 何故オリバーさんは?そんな気持ちが浮かび上がった僕が首を傾げながらオリバーさんを見つめると、絵を消して黒い物体を収納に収めてから僕に苦笑いをしてオリバーさんは見つめ返してきた。

「ここからが俺の複雑な心境の話だ」

「はい」

 僕が真剣な顔で頷くとオリバーさんは眉尻を下げて話し始めた。

「俺は…愛なんてものを信じられなかった。聖女マイカは元の世界に伴侶も子供もいたそうだ。でも俺の世界で父上と愛を語り合った。そして、石を使わずに胎に父上の子種を受け入れて、俺と片割れが宿った。でも、産まれて乳を与えてから会わなかったそうだ。愛し合って生まれた俺達にも。他の4人と同じように…」

「……理由は?」

「…しらん。でも父上はその事を聞く時ばかりは悲しそうな顔になって言うんだ。〈聖女の慈悲だからだ〉ってな」

「…意味がわかりませんね」

「だよな。俺もまだ納得してなかった。でも、今はちょっとだけ…お前への愛を自覚してからは考えを改めようと思ってる。この国では無償の愛ってのもあると神は教えているらしい。つまり、聖女の慈悲は無償の愛なんだろうな。こちらに何も求めず、ただ愛を残して去った。この世界の愛する人を残しても、元の世界の愛する人の所へ…帰った。きっと涙を流してな」
 
 なるほど。無償の愛か。何も顧みずに与えるだけだなんて、欲まみれの人間には考えられない事だろう。そして、聖女の慈悲深さが感じられた。

 オリバーさんは僕を見つめながら話を続けた。

「愛なんてどうせいつか消える。そう思うほど家族への愛以外は信じられなくなった。どんなに愛していると囁かれても何も思わなかった。どんなに女を抱いても何も感じなかった。でも、家族の愛。つまり母親からの愛。それが1番欲しかった。だから、父親からあの石を譲ってもらったんだ。唯一、母親の魔力を感じることができる遺物だったからだ。あの石を眺めている間は心が凪いだ。満たされるような気持ちになったんだ。そして、俺は1つ決意したんだ」

 何を?っと首を傾げて見つめるとオリバーさんはフッと微笑んだ。

「もう、聖女を呼ばなくても、どんな人でも子供が授かる魔道具を作ろうと決めたんだ。俺のような愛を信じられない子供を増やさないため、そして…心優しい女性を傷つけないためだ」

「…それが研究?」

「そうだ。本家のあの石を参考に20年前から研究している。聖女マイカは石を授ける時に言ったそうだ。〈これは特別だから研究しても無駄〉ってな。でも、この国の避妊の魔道具を見て、可能性があるんじゃないかと思った。遮ることができるなら繋げることもできるはずだと。しかし、生命の神秘とも言える子供を宿す行為は再現することが難しい…何度も何度も失敗した」

「…なるほど…」

「失敗すればするほど、愛が憎かった。だから今まで独り身だった。憎い愛を語りたくもないし、求められなくなかったからだ」

 オリバーさんは僕を愛おしそうに見つめながら話を続けた。

「お前に会った時。その真っ白な髪を見た時。心が踊った。俺が知っている同じ色の純白だったからだ。ああ、これが欲しい。あの瞬間、俺はそう思っていた。そして、身内以外で出会う初めての灰色だった。更に欲しくなった。男となんて仕事以外で口付けるのも、アレを咥えるのも咥えさせるのも、抱くのも嫌だったが…お前のことは手に入れたかった…」

「もしかして、練習って…」

「あの時は本能だけでそう感じて、練習だとか言って触っていた。今思えば、何も染まっていないお前を俺の手で染めたかったったし、俺のものにしたかったんだろうな」

「…僕がオリバーさんに気持ちを伝えても…何も言ってくれなかったのは?僕以外を抱いていたのは?僕がもし女性ならもう少し変わりましたか?」

 オリバーさんは悲しげな顔になりながらも話を続けた。

「…全て無自覚だった。愛を否定していたから、俺は家族以外の向ける愛がどんなものか知らなかった。でも本能的には知っていたんだろうな。そして、お前からの愛を受け入れるほど満たされた。返事を返せなかったのは、俺が自覚してないのと、愛はいつか消えると怯えていたからだ。口に出したら終わってしまうんじゃないか、母親のように愛を語りつつも消えてしまうのではないかと…疑っていた。それに、女の方が疑って愛を認めることができなかったかもしれない。男だったから、俺も素直に受け止めた気がする。どうしても、母親の愛と女からの愛が被ってな…。他の女を抱いていたのは…本能や心はお前を抱きたかった。でも疑っている自分が心を閉ざしていた。抱いている間は何も考えずにいられる。だから、寄ってくる女を抱いていた。」

「…もう仕事以外では女性を抱かないでくださいね?」

 僕は思いだして悲しい気持ちになると、オリバーさんは僕をギュッと抱きしめてきた。

「抱かない。お前だけだ」

「はい」

「お前がカローを抱いて、ブルックスに抱かれている姿は…今思い出しても心が痛い。特にブルックスに抱かれている姿は…隣から聞こえる声と音が…もう…狂いそうになった。お前への気持ちをどうしたらいいのかわからなくて、女を抱いたけど何も見つからなくて1人で酒を飲んでたら、隣からお前たちの声と音だ。もう…何度も止めに入ろうと思った。でも…動けなかった。ブルックスはお前に愛を囁いていただろう?愛する人を抱くのは満たされるとかなんとか。その言葉は俺の心にスッと入って心の扉を開けてしまった。お前との交わりを思い出すほど、隣から聞こえてくるお前の声を聞くほど…どんどん自覚した。愛してるって…。そしてブルックスに取られたくなくて、部屋に入った。でも目の前で俺以外に抱かれるお前を見て…つらくて…。あいつを殴ることもできなかった。情けないよな。あいつは全部知っててやったんだろう?」

 縋るような瞳でオリバーさんは僕を見つめてきた。僕は優しくオリバーさんの背中を撫でて話した。

「そうですよ。そして、あの悪魔は抱かれる演技をしろって言ったんです。でも、蓋を開けたら強いお酒を飲ませて…僕を抱いたんです。酷いですよね。騙されたんです、僕。こんなにいい部屋を用意されても許したくない。でも、あの悪魔のおかげで愛する人が僕のもとに来てくれた。だから感謝はしてるんです。あの悪魔と取引してよかった。羽をもがれて堕ちても、貴方も堕ちてきてくれたから」

「…そうか…」

「女性を抱いても、ブルックス君に抱かれても全く満たされませんでした。幸せな気持ちにもならないし…、快楽だけで体は反応するし気持ちはいいけど、心は全く満足できませんでした」

「俺と同じだな。お前を抱くほど他の女を抱いても満たされなかった。隣にお前が寝てるだけの方が満たされた…」

「オリバーさんが変にこだわって、意地張るのがダメなんですよ!もう」

「す、すまん…一つのことに拘りやすいのは…父上に似たのかもな。あの人は狂っていると思う時もあったから…」

「変なところ似たんですね。もう…」

「そうだな。すまんが、俺は本当に父親似のようだ。愛は重いし、それに…お前が1秒でも側にいないと思うと辛い。ずっと側に置いて…大事に閉じ込めておきたい」

 僕は不穏な言葉を聞いてあわわっと焦った。そして、オリバーさんの背中を撫でながら話した。

「そ、それは困ります!僕、家族や領民達をもっと豊かにしたい。閉じ込められちゃうとできなくなります」

「なら、俺の目の見える場所に必ずいてくれ。じゃないと…狂いそうだ」

「お、オリバーさん…今までと別人…ですね」

「今までが別人で、これが俺だ。多分な」

 今までの辛い時間を思うと、僕にこれだけ執着してくるオリバーさんを愛おしいと思ってしまった僕も、愛に狂っているのだろうか。

 いや、僕も…同じだ。離れて欲しくないし、離したくない。ずっと一緒にいられるなら何でもする。家族のように愛おしい、友人のように愛おしい、肉体的にも精神的にも一途に愛を与えてあげたい、愛おしい。この人の為なら、見返りなんてなくても守ってあげたい、愛おしい。

 僕の愛は全てオリバーさんだけに向いていた。僕はふふっと笑って顔を上げると、僕の反応を心配そうに見ている紫の瞳を見つめた。

「僕の全ての愛は貴方のもの。オリバーさんの全ての愛も僕にください。僕は離れません。絶対に」

「ああ。俺の愛は全てお前に捧げる。俺も離れない。絶対に」

 僕がギュッと抱きつくと、オリバーさんも抱きしめてくれた。

 ひとつになって、溶け合いたい

 湧き上がる熱がどんどん溢れてきた。僕はオリバーさんが欲しくなって、瞳に熱を込めて見つめた。

「じゃ、長いお話はもう終わりですか?」

 僕はふふっと笑ってオリバーさんの背中にあった手をお尻に移動させて優しく揉みながら誘うように見つめた。オリバーさんは嬉しそうに微笑んで、僕の背中にあった両手を僕のお尻に移動させて、同じように揉んできた。

「そうだな。ほぼ終わりだ。だから…愛し合ってもいいか?」

「はい。僕も愛し合いたい」

「…まずはお前の体を消毒することからだな」

 ニヤッと笑ったオリバーさんは僕を狙うような瞳で見てきた。僕らその瞳にブルっと体を震わせて、ウットリしながら見つめ返した。

「はい、狼さん」

 僕は瞼を閉じて、愛し合う開始の合図を待った。
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