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好きを伝えるのは難しい
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「高田さん、これ頼むー」
「はい。終わったら徳山くんに渡せばいい?」
「おう」
向かい側の席で仕事をしている徳山くんから、パソコンの隙間から書類を受け取って、私は自分のパソコンのモニターを眺めた。
「じゃ、夕飯は奢りだなぁ。16時に仕事押し付けるんだから」
「おう。任せろ。ラーメンな」
「また?」
「いい店見つけたんだよ。美味いから行こうぜ」
「もっと高いの食べたいなぁ」
「それは今度な。ほれ、手を動かせ」
「ちぇー」
カタカタとキーボードを叩きながらお互いに会話をしつつ、自分が持っている仕事と渡された仕事をこなした。
「おわったー。はい、これね」
「お、サンキュー。助かる。俺もあと少しだから準備していつもの所で持ってて」
「はいはい」
チラリと時計を見たら18時だった。自分の仕事はすぐ終わったが、頼まれた仕事を終わらせるのに少し時間がかかってしまったようだ。私はデスクの上を綺麗に整頓してパソコンの電源を切って、タイムカードを押してロッカーへ向かった。
うちの会社は女子社員だけ指定の制服がある。みんなスーツでいいのにって思うけど、社長の趣味のようだ。パンツスタイルの方が好きなのに、スカートを履く違和感に初めは悩んだ。でも、22で入社して3年も経つと、このスカートの丈にも慣れてしまった。
「ラーメンかぁ。髪の毛あげたほうがいいかな」
ハーフアップにしていた黒い髪の毛を高い位置のポニーテールにして、ピンクのシュシュをつける。制服を脱ぐと、ジーンズにシャツ、秋だから薄手のカーディガンを羽織った。いつも通勤の服装は動きやすさ重視だ。
「はー。カジュアル過ぎるよね。でも仕方ないか」
軽く化粧を直して、カバンを持ってロッカーの鍵を閉めた。エレベーターに乗って、会社の出入り口の自動ドアを出ると右端の柱でスーツ姿の徳山くんが立っていた。
「ごめーん。持った?」
「俺より早く上がったのに、来るのが遅い」
「毎回言ってるじゃん。女は支度に時間がかかるのっ!」
「へーへー。じゃいくぞ」
私の歩調に合わせて歩く徳山くんと肩を並べて歩いた。知ってる道を通って、知らない道を進んで曲がってついた店は、お洒落な外観のお店だった。
「え、ここ本当にラーメン屋?」
「本当本当」
2人で店の中に入ると、テーブルやカウンターにチラホラと人が座っていた。店内の内装をキョロキョロと見つつ、前を進む徳山くんの背中を追いかけてテーブル席に座った。
「何にする?」
向かい側にいる徳山くんがメニューを手渡してに声をかけてきた。私はメニューを受け取って、自分の好きな醤油ラーメンを見つけると文字を指さしながら徳山くんに話しかけた。
「これ!」
「…高田さんってほんと、醤油すきだよな。わかった」
徳山くんはフッと優しく笑ってからメニューを私から奪い取って、水とおしぼりを持ってきた店員さんに醤油を二つ頼んだ。
「え?醤油?珍しい」
「ここは、醤油が1番美味いんだよ」
「え?!そーなの!?楽しみ!」
いつもなら味噌とか豚骨とか味が濃いのを好んで食べるのに、珍しい。私は水を飲みながら、店の中をじっくり眺めた。
(内装も綺麗だし、できてばっかりかなぁ。あー、いい匂い。お腹空いてきちゃった)
喉が渇いていたのか、半分ほど水を飲んでフーッと息をつくと視線を感じて目線を前に向けた。徳山くんは細い目をさらに細めて私を眺めていた。
「な、なに!?」
見つめられて少し恥ずかしい。心がザワザワし始めるのを感じつつ、私は少しだけ視線を外して、徳山くんのネクタイを見つめながら話しかけた。
「いや。水飲んでるなぁって思ってさ」
「…なにそれ」
特に意味もなく私を見ていたのだと気が付いて、フーッと息を吐いて視線を徳山くんの顔に向けた。相変わらず目は細いけど、少しだけ微笑んでいるのがわかる。
徳山くんは身長も高くスタイルもいいけど、お目目ぱっちり系ではない。丸顔に糸を引いたような細い目をしている。目を開けてる時でも、目の印象は弱い。でも、切長の目から流し目で見られるとドキッとするのだ。
いや、ドキッとするのは…私の思い出補正もあるかもしれない。
「お待たせしました。醤油二つです」
「お、きたきた」
テーブルにあった割り箸を私に手渡しながら、徳山くんはテーブルに置かれたラーメンを見てニコニコとさらに笑みを深めた。
私はお礼を言って割り箸を受け取ってから、パチンっと割って手を合わせた。
「いただきます」
「おう。いただきます」
レンゲを持って透き通ったスープを一口飲む。優しい味がする醤油の味に心がほっこりとあたたまる。私は細い麺を持ち上げて、フーフーと息を吹きかけてから麺を静かに啜った。
「んっ、美味しいね」
「だろー?高田さんこの味好きだと思ったんだよね」
ズルルッと麺を啜りながら、徳山くんは上機嫌だった。私は美味しそうに食べる徳山くんを眺めながら、静かに麺を啜って、聞こえてくる低い声がまだ高かった頃のことを思い浮かべた。
私達は、地元が同じだ。小学と中学は同じで、高校は違う。私が徳山くんのことを認識し始めたのは6年生の時。同じクラスになってからだった。
バスケをしているからか、この頃から他の男子よりも少し背が高かった。目が細いから冷淡そうに見えるが、いつもニコニコ微笑んでいて明るい。冗談を言うのも上手くて、クラスのムードメーカーだった。
私は黙っていれば綺麗なのにとよく言われてた。つまり、キツ目の顔をしていた。だから怒ってないのに「怒ってるの?」なんて聞かれることはしょっちゅうあった。
常に笑っているのも疲れるし、たまには息抜きして笑顔を隠すとすぐに「怒ってる?」と言われる。それが本当に面倒だった。
だから、常に笑顔の徳山くんを少しばかり冷たい目で見ていた。
笑顔なんて疲れるだけだ。あの人もきっと心から笑ってるわけじゃない。そんな思いがあったからだ。
でもある日、その考えはクルッと変わって私の心に春が来た。
その日は、夕方のクラブ活動で選んでいたバレーボールで後輩に辛辣な言葉をかけられた。
「高田先輩って、下手なくせに自信たっぷりですよね。ツンっとすまし顔だし、こっちのこと馬鹿にしてませんか?」
小4からクラブ活動を頑張っていたが、私には才能がなくて6年になってもレギュラーにはなれなかった。
それでも運動が楽しくて、6年最後の夏の大会に向けて頑張っていたのだ。レギュラーになれなくても、どこかで試合に出られるかもしれない。そんな思いを胸に秘めて。
真剣な顔で取り組んでいるのが、すまし顔だと言われてしまっては何も言い返せなかった。私は同じ6年のチームメイトが止めに入る前に涙が溢れてしまって、泣き顔を見られたくなくて体育館から逃げ出した。
走って走って、もう一つの体育館近くの用具室前でしゃがみ込むと、体を丸めて泣いた。
笑顔じゃないと誤解される、きつい顔が嫌いだ。見た目で誤解されて、私の頑張りは見てもらえてなかった。それが悔しくて悔しくて、辛かった。
そんな私の頭にパサっとタオルが置かれた。ふんわり香ってくる優しい柔軟剤の匂いに気がついて、顔を上げて見上げると徳山くんが近くにいた。徳山くんは顔を逸らして私からの目線を外すと、話しかけてきた。
「泣き顔は見てない。でも、話してるの…その聞いたから…。あと、高田さんはおすまし顔じゃないよ。とっても綺麗な鈴のような丸い目で、俺はとてもいいと思う。えと…うん」
「………………ありがとう」
徳山くんなりの言葉で慰めようとしてくれているのがわかって、私は自然とフッと笑みが溢れてしまった。
泣きながら微笑む私の顔を横目で見ていたのか、耳を赤くして徳山くんは何も言わずにその場から去っていった。
その背中を見送りながら、ポツリと言葉が出た。
「…ふふ。鈴のような丸い目か…」
キツい印象を受けさせてしまう、この目を綺麗だと言ってくれた。その言葉が嬉しくて、だんだん心の中がポカポカとしてきた。私はタオルに顔を埋めて、優しい匂いを嗅いだ。そして徳山くんの言葉を頭の中で繰り返して呟くことで、やっと心に落ち着きを取り戻した。
徳山くんだって、笑顔じゃない時もある。でも、冷たく感じさせないのは心の優しさがきっと滲み出てるんだ。
私も嫌だ嫌だと泣かずに、誤解を解くように動かなきゃ。それならば、泣いてても仕方ない。私は立ち上がると体育館に戻った。
後輩に謝られる前に、私は「真剣にやってる顔をおすましと言われたのは傷ついた。でも、下手なのは認める」と伝えると、気まずそうに後輩は私に謝ってきた。
その場は和解したが、後輩との距離は遠くなって卒業までギクシャクした。でも最後まで私はクラブを続けた。
この頃から、徳山くんが気になって目で追うようになっていた。声が聞こえると目線を向けてしまう。休み時間に私の席に座って他の男子と話してる姿を見てしまうと、座席から感じる少しだけの温もりにドキドキした。
貸してもらったタオルは、洗って学校に持ってきているが、心がざわざわしててなかなか声をかけられなかった。
モジモジしてるうちにあっという間に、冬になって卒業式が近くなっていた。流石に、借りっぱなしはダメだ!っと奮い立たせた日の帰り際に、帰ろうとしてる徳山くんに声をかけた。
「と、と、徳山くん…これ。ごめんね。長いこと返せなくて」
私が袋に包んであるタオルを差し出しながら声をかけると、徳山くんはタオルを見てから私を見つめて微笑んだ。
「あ、そうだった。高田さんに渡してたんだ」
タオルの存在を忘れていたような返答に私はグサッと心に何か突き刺さった。でも、次の言葉にまた心がフワフワと浮き上がってしまった。
「役に立ったならよかった。あの事は誰にも言ってないから、安心して」
タオルを受け取ってから徳山くんは出入り口で待っていた男子にからかわれながら、帰って行った。
(はぁぁぁ。やっと渡せた…。忘れてたんじゃないんだ。よかった)
ホッと胸を撫で下ろしてから自分の席に戻って私も持っていた友達に声をかけて帰宅した。
この頃には私はすでに徳山くんが好きだったのだと思う。
中学は偶然にも同じで(気になるまで意識してなくて同じとかも知らなかった)、一年からクラスが同じになったのは嬉しかった。
同じ小学からの顔見知りって事で、よく話すようになったし、仲良くなった。冗談を言い合う仲のいい男友達となった徳山くんのことを、毎日目で追って表情の一つ一つを見つめた。
常に笑顔だけど、フッと真剣な顔になる時がある。それがすごくかっこよくみえて、胸が熱くなりドキドキした。
私は部活を吹奏楽に変え、徳山くんは小学と同じバスケに入った。
外での練習をバスケ部が練習してる体育館近くでやって、運動してる姿を見つめた。どんな姿もかっこよくて、私は見つめるだけでも心があったかくて満足していた。
でも、それも2年までだった。徳山くんはどんどん身長が伸びて声が低くなり、切長の目がまたクールで女子生徒に人気が出てきた。
徳山くんは前からかっこいいのに。そんな気持ちでいながらも、私はずっと徳山くんを想い続けた。でも…
2年からクラスが離れて、部活の時やすれ違う時ぐらいしか姿を見ることができなかった徳山くんはいつの間にか、可愛らしい彼女ができていた。
どちらから告白したのかなんて、知らない。でも、下校する2人の姿を見た時に私の恋心はズタズタと刻まれて傷ついてしまった。
彼女は私と違って、可愛い顔の子だった。私と違うタイプの女性が好みだったのだ。
告白する勇気もない。見つめるだけでいいと満足していたつもりだった私はやっとそれだけではダメだったのだと気がついた。
初めての初恋を失恋して、悲しくなりながらも徳山くんが幸せならばとそっと見守った。
彼女を見つめる雰囲気が優しくて、本当に好きなんだと気がついた時は辛かった。でも、私は告白して同じ土俵に立つことすらしてなかった。だから、悔しがったり八つ当たりするのも違う。
まだ心の中で燻る恋心は他の人に向けることができず、中学3年間の恋も徳山くんに捧げていた。
彼女と別れたと聞いても、私は踏み出すことができなかった。でも高校は別だと知った時に、やっと行動を起こした。
「徳山くん。〇〇高校に行くんだっけ」
たまたま遭遇した風に、放課後に帰ろうとしていた徳山くんに声をかけた。徳山くんは私を認識すると懐かしそうな顔で笑って答えた。
「そう。バスケ強いところ。高田さんと話すの久しぶじゃん。一年以外クラス違ったもんなぁ」
「そ、そうだね。そっか。私は〇〇商業に行くんだ」
「あ、そうなんだ。あそこの制服って可愛いよな。高田さん似合いそう」
何気ない言葉に心がふわふわと浮ついた。でも今はそんなことをしている場合ではない。私は意を決して話を続けた。
「せっかくの縁が切れるのも勿体無いからさ。連絡先交換しない?」
「お、いいよ!」
徳山くんはカバンから携帯を取り出して、連絡先を教えてくれた。ドキドキしながらも登録をして、私の連絡先を登録してくれる様子を眺めた。
「じゃ、じゃあ。またね」
「ああ、またな」
胸元にギュッと携帯を押し付けて、私は逃げるようにその場を後にした。
(聞いちゃった聞いちゃった!!)
自宅に帰るいつもの道が、全く違う道に見えるし、地面に足がついているのかもわからないほど私は浮ついた。帰ってから着替えもせずにベッドの上に乗って、何度も何度も名前とアドレス、電話番号を見つめた。
(徳山 幸平……きゃーーー!)
徳山くんがここにいる!そんな気持ちになる度に顔をシーツに埋めて嬉しさでバタバタと足をばたつかせた。
徳山くんの携帯には私の名前が入ってる。高田 梨紗の名前がだ。繋がりが持てたことに、ポカポカと心があったかくなった。
でも、告白する勇気は出なかった。
卒業式の日。下校していく卒業生の生徒たちの中にいる徳山くんにを見つけると、私は悩んだ。
(どうしよう。でも、一度は恋を、そう。この恋を伝えたい。恋人になりたいとか、それは…そこまではまだ、あわよくば的な…。振られるのが怖い。面と向かってなんて言えない!ああっ!メールで…そう。初めて送るメールで…)
私は徳山くんの背中を見つめながら、この恋を一度私の中で区切りをつけることに決めた。
家に帰ってから何度も何度も打ち直して、読み直して1通のメールを送った。
[卒業おめでとう。これから先、別の道に進むけどお互いに頑張ろうね。あと、離れるからこそ、伝えたいと思ったので勇気を出して伝えます。メールで言うなんて卑怯でごめんね。私、あのタオルをもらった日からずっと徳山くんが好きでした。付き合って欲しいとか、そういうのは…あれなんだけど。ただ、気持ちだけを知って欲しいから、伝えました。返事がしにくかったら、なくてもいいです。ただ、伝えたかっただけなので。じゃあ、バスとか路線が被りそうだから、もし会ったら声かけるね。そっちも声かけてくれたら嬉しいな。またね]
送信してからしばらく携帯の電源は切ってしまった。
だって、返信が見れないからだ。
次の日になって電源を入れると、友人達のメールに混じって徳山くんのメールが1通あった。
[気持ち嬉しい。ありがとう。あと、気がつかなくてごめん。見かけたら声かける。またな]
私はホッと息をついた。短文だけど、徳山くんなりに悩んで送ってくれたのが伝わったからだ。
(やっぱり迷惑だったかな…でも、振られたくなくて予防線はったのは私だし…。はっきりしない返答なのは仕方ないよね)
そんなことを考えながら、そのメールを保存して私は携帯を胸に当てた。もちろん、返事は返さなかった。だって、キッパリと断られるのが怖かったからだ。
結局高校2年までは徳山くんが好きだった。バスで会うとお互いに何もなかったかのように話をした。でもある日、徳山くんの首筋に大きな赤い痕を見つけてしまった時に、ほんのりあった気持ちをそっと心の奥にしまった。
(私はやっぱり同じ土俵に上がれない。告白で断られるのを怖がって、逃げたんだ。だから、この恋は終わらせよう。いい恋だったなぁ)
言い訳のような言葉を自分に言い聞かせて、私は別の恋を探すことにした。バスも時間をずらして顔を見ないようにした。そうしないと、また気持ちが溢れそうだったからだ。
特に連絡は取り合っていなかった。でも、アドレスや電話番号を変えたと連絡が来る度に繋がりがあることにホッとした。
携帯からスマホに変えた時も、メッセージアプリに徳山くんの名前があるのを見つけて、まだ繋がってることに満足していた。
それだけで良くなっていた私は、友達に紹介された大学生の男性と高3の時に付き合うことになった。大学受験の際にすれ違って、すぐに別れてしまったから体の関係はなかった。
県外の大学に入って、また友達の紹介で同い年の彼氏ができた。この人とは長く付き合って、私の初めてはこの人に奪われた。でも、大学3年の頃には別れて、そのまま私は大学がある県で就職活動を始めた。
何となく地元には帰りたくなかったからだ。
卒業前には内定を貰えて、卒業して就職した。
そして、2年目に部署移動で東京に転勤になった。やっと慣れた頃に急な移動になって、あわあわとなりながらも私は東京の本社に転勤することになった。
「高田 梨紗さんだ。今年で…」
「24です」
「そうそう。ってことで、皆んな頼むなー」
「高田 梨紗です。まだまだ未熟ですので、ご指導等よろしくお願い致します」
自己紹介をしながらペコリと頭を下げるとパチパチと拍手が沸き起こった。頭を上げて周囲に目線を向けていると、頭ひとつ分大きな男性がいるのに気がついた。視線を向けるととても懐かしい顔があった。その人はびっくりしたような顔でいつも以上に目を見開いてこちらを見ていた。
席に案内されて、業務内容について軽く説明を受けて仕事に取り掛かろうとしていると、向かい側のデスクからニュッと長い腕が出てきて私のデスクに紙が置かれた。
[高田さん、久しぶり。同じ会社にいたなんてびっくり]
紙を見てからチラッと視線を前に向けると、モニターの隙間からこちらを覗き込んで私に手を振っている徳山くんがいた。まさか向かい側のデスクだとは思わず、私はふふっと笑みが溢れた。
本当に久しぶりで、私は懐かしい気持ちになって手を振りかえして徳山くんに微笑んだ。徳山くんは私の笑みを見て、ニコッと微笑み返してくれた。
その日あった歓迎会でみんなに私達が同じ地元だったことがバレてからは、何かと仕事を同じにされることが多くなった。
でも、私は徳山くんに対してドキドキした気持ちはもうなかった。私の初恋はいい思い出になっていたようだ。
中学1年の時のように仲のいい男友達のような存在になった徳山くんと、時折ラーメンを食べたりと夕飯を一緒にするようになった。
残業が一緒になれば、お互いに夕食を誘って食べる機会は多いけど、会社以外では接点はなかった。
そんな関係が一年ほど続いていた。
昔を振り返りながら、ラーメンを食べているとまた視線を感じた。ツルルっと口の中に麺をおさめてから顔を上げると、食べ終わった徳山くんがテーブルに片肘をついて、手に顎を乗せて私を眺めていた。
「あ!ごめん、待たせてる?急いで食べるね」
慌てたように私が食べようとしていると、徳山くんはクスッと笑った。
「いいよ。ゆっくり食べな」
「…そ、そう?」
慌てて食べようしていたのをやめて、自分のペースで食べ続けた。何故かすごく視線を感じる。私は気まずい気持ちになりながら、チュルっと麺を啜っていると徳山くんが話しかけてきた。
「高田さんって、彼氏いるの?」
「へ?いないよ?」
キョトンっとしながら顔を上げて見つめると、徳山くんは私から目線を外した。私は徳山くんの言葉を待ちつつ、チュルっとまた麺を啜り始めた。
「同期の山田がさ。高田さんのことめっちゃタイプってうるさくて。でも、周りのみんなが高田さんみたいな美人に彼氏がいないわけないだろって話してたんだよ。そっか…いないんだ」
「山田さん?誰かしらないけど…。えっと、大学卒業してからいないかなぁ。仕事始めてばかりは気が回らなくて恋もしなかったし、2年目には移動させられるし…落ち着かなくてさ」
「そうなんだ」
徳山くんは私と目を合わせようとせずに何かを考えながら返答を返してきた。
(で?その山田さんという人を紹介するとか?そんな話?)
しかし、徳山くんは黙ってしまって何も話が進まずに私はラーメンを食べ終わった。
水を飲んで帰り支度をしようとしてる私に気がつくと、徳山くんは伝票を持って立ち上がってレジへと向かった。
徳山くんの背中を追いかけて一緒に店から出ると、やっと徳山くんは口を開いた。
「週末の飲み会いく?」
「え?あー…たぶん。高梨さんが行こうってうるさいし」
「そりゃ、部署にいる高嶺の花を自慢したいからだろうね。独身者集めて飲み会だなんて、どう考えても合コンだよな」
2人で最寄駅に向かって歩きながら話していると、徳山くんは視線を前に向けたまま話していた。私は隣で時折見上げて顔に視線を向けているが、目が合うことはなかった。
「でも、そういう機会がないと私には彼氏なんて出来ないかも。今まで紹介で付き合ってばかりだし」
「………そうなんだ」
その後は特に話が続かなかった。徳山くんは最後まで私と視線を合わせないようにしながら、違う電車に乗って帰っていった。
変な雰囲気で終わったことに、原因がわからず私は首を傾げながら家に帰った。
次の日出勤すると、いつも通りの徳山くんがいて、私の向かい側の席でいつも通り仕事をしていた。その様子に私は一安心すると、いつものように接して週末まで過ごした。
「では、部署の隔たりなく、楽しく飲みましょう。かんぱーい」
「「「かんぱーい」」」
合同での飲み会はかなり人が多かった。女性も男性も知らない人ばかりなので、私は同じ部署の高梨さんにつくっついてお酒を飲んでいた。
「はぁ。高田ちゃんは今日も麗しい」
「ちょ、やめてください。高梨さん!」
「なによぉ!うちの1番株を自慢しにきてるんだから!移動してきた日に皆んながざわついたの知らないの?すっごい美人が来たって」
私の隣でビール片手に私をいじっている同性の高梨さんは、いつも気さくで面倒見のいい先輩だ。何かと目をかけてくれるから私も懐いているのだが、口を開けば〈麗しい〉とか何とか言ってくる。毎度それを否定するのも面倒に感じながらも、私は返事を返した。
「もう。本当やめてください。私の顔、キツく見えて嫌いなんですから」
「毎回そういうけど。全然キツくないよ?目がまんまるで大きくてさ。めっちゃ可愛いじゃん。化粧もなるべく柔らかく見せようとしてるんだろうけど、それがまた顔にあっててさ。髪の色も派手じゃないし、爪もゴテゴテしてないし…これぞ清楚美人!って感じじゃん。モテるでしょう?」
「モテません!もう!高梨さん、変なことばっかり言うとこの鳥の軟骨はあげません」
届いてばかりの高梨さん大好物の鳥の軟骨を取り上げると、「いやー!軟骨ちゃま!」っと言って取り返そうとするので、私はフフンっと鼻を鳴らした。
「今日は無礼講らしいので、先輩でも容赦しませんよー!」
「ぎゃー!高田ちゃんごめーん!謝るから謝るからぁ!」
大好物を取り上げられた高梨さんは、視線を私とお皿の交互に向けて、胸の前で手を組んで拝むようなポーズをしていた。
「仕方ないですね。もうからかうのやめてくださいね?」
「…本気なんだけど…」
「何か言いました?」
ボソリと呟く高梨さんをジロリと見つめると、キャンっと仔犬が鳴いたような反応をしてから高梨さんはウンウンと頭を縦に振り始めた。
「は、はーい!わかりましたぁぁ!」
「よろしい。では、どうぞ」
高梨さんの前にお皿を置くと、高梨さんは大好物を目にして尻尾を降りまくる子犬のように嬉しそうにパクパクと食べ始めた。
(高梨さんは見た目も仕草も可愛いんだよね。確か彼氏がいるんだっけ。でも何で今日いるんだろ)
もぐもぐ食べてる高梨さんへ浮かんだ疑問を聞くことにした。
「今日って独身だけなんですよね?」
「ふぉだよ」
「彼氏彼女がいてもいいんですか?」
「ゴクッ…うん。交流会も兼ねてるからね。でも、彼氏持ち彼女持ちは、ほらこれ。これを腕につけてるからさ」
高梨さんは右腕を上げると、ビニール素材でできた会社のロゴマークがついた黄色の腕輪を見せてきた。
「何ですかそれ」
「社長が昔みんなに配ったけど、誰も使わないアイテムだよ。今回の幹事が彼氏彼女がいる人は自主的にこれをつけてくださいって連絡が来てたんだ。部署に置いてあったの見なかった?」
「全く気にしてませんでした。この飲み会も高梨さんに誘われたから来ただけだし…」
チラリと周りを見渡すとチラホラと黄色い腕輪が見えた。意識してみればすぐわかる目印になるほどなぁっと感心していると、軟骨を食べ終わった高梨さんが私を見つめてきた。
「高田ちゃんは彼氏いると思ってる人多かったから、ほら。あっちとかそっちとか。視線がすごいよ?」
高梨さんが小声で話しながら指さす方向に目線を向けると、確かにこちらをチラチラと見ている男性は何人かいた。その中には徳山くんがいるグループの中の人もいて、徳山くんも時折こちらを見ていることに気がついた。
「まっ。気になる人がいないなら、飲んで食べて楽しめばいいんだよ」
「…そうですね」
私は席を離れず、高梨さんとお酒と料理を楽しんだ。時折別の部署の女性や男性に声をかけられることはあったが、たわいもない話をして終わった。
しつこく話してくる人もいないし、高梨さんと楽しく会話をして私は楽しく過ごしていた。帰りには高梨さんや他の方からの二次会に行こうという誘いを断って、少し飲みすぎたなっと思いつつ最寄駅に向かって歩き始めた。
「高田さん!!!」
知らない男性の声がして振り返ると、徳山くんと一緒に飲み食いしていたグループにいた男性が私に駆け寄ってきた。
「はい。えっと…」
「お、俺。徳山と同期の山田です」
「…ああっ。はい。はじめまして高田です」
歩みを止めると近寄って話しかけてきた山田さんにペコリと頭を下げた。私に追いついた山田さんは腕一本分ほどの距離で立って、恥ずかしそうな顔をした後で頭を下げた。
「一目惚れしました!付き合って下さい!!!」
酔った勢いなのかなんなのかわからないけど、大きな声を出して手を差し出してきた。私は周りの視線が痛いし、気になってしまって思わず頭に浮かんだ言葉をすぐに口に出してしまった。
「ご、ごめんなさい」
「…………やっぱ、俺みたいなやつはダメなんだ。ううっううう。わかりましたぁぁぁ」
山田さんは差し出した手を引っ込めると、グズグスと泣きながら後ろの方でこちらの様子を眺めていた男性の輪に駆け寄って行った。
その中には徳山くんもいて、チラッと私に目線を向けると〈ごめんね〉っと口パクで謝ってから軽く頭を下げてきた。
私も同じような頭を下げると、早歩きで駅に向かって歩きはじめた。
「…あ、あんなところで、告白とか……恥ずかしい!!」
酔った勢いでも、あんな大声で人がジロジロ見てるところで告白されるとは…。ついつい反射的に断ってしまった。申し訳なかったなっと思いつつも、駅に着いた。
カバンからスマホを取り出して時刻を確認しようとすると、メッセージが一件入っていた。
[もう帰った?電車に乗っちゃった?]
表示された名前と文字にびっくりして思わず「ぎゃっ」と声が出てしまった。
あの日以来、表示されなかった徳山くん名前を見ていると、あの時の淡い気持ちが少しだけ蘇った。懐かしいなっと思いつつ私は返事を返した。
[10分後にくる電車に乗るよ。今は改札に入るところ]
送信して、鞄から定期を取り出していると、あまりならない電話の着信音が鳴った。表示された名前をを見ると徳山くんだった。
「はい」
『まだ乗らないで!そこにいて』
「え?」
『とにかく、改札ダメ。まってて、今いくらから』
それだけ言うと徳山くんは電話を切ってしまった。私はスマホを耳から離して、意味がわからないまま言われたとおりに改札近くの柱の前で立ってまっていた。
しばらくすると走ってきたような様子の徳山くんが駅の中に入ってきて、私を見つけると近寄ってきた。
「よかった。高田さん。明日は土曜だし、飲みに行こう」
「え!?ええ!?」
徳山くんは私の左腕をガシッと大きな右手で掴むと、私を引っ張って歩きはじめた。
「ちょ、え?なに!?」
「だから、飲み会」
徳山くんはスマホで何かを調べてから電話をかけていた。事前に席を確認しているようで、歩きながら店を探しつつ席の予約が取れた店に私を掴んだまま連れて行った。
「いらっしゃいませ」
「さっき電話した徳山です」
「お待ちしてました。2名様ご案内でーす」
ガヤガヤと人がたくさんいる居酒屋の店内を歩いて、個室に案内されるとやっと徳山くんは私から手を離した。
「ほら。座って」
「う、うん」
戸惑いながらも個室の椅子に座ると、徳山くんは向かいに座ってメニューを開いて眺めていた。
「お腹いっぱい?」
「え、あ、うん。軽いものしか無理かな」
「わかった。何飲む?」
「さっきたくさん飲んで、少し酔ってるから梅酒ソーダかな」
「ほい」
徳山くんは私から希望を聞くと、店員さんを呼んで、生ビールと梅酒ソーダや枝豆や揚げ物セットを頼んでいた。私はポテトくらいなら食べられるかなぁっと思いつつその様子を眺めていた。
頼んでからは特に会話もなくて、どうしていいのかわからなかった私はとりあえずさっきのことを話してみた。
「あ、あの。山田さん?だっけ。あんな場所で断ってごめんって伝えといて」
「あー、あれはアイツが悪いから気にしなくていいよ。ベロベロに酔って、場所も考えずにしたんだからさ」
「そ、そう?で、でも。酔った勢いでもちゃんと告白するなんて凄いよね。そこだけは尊敬する」
話してる間にお酒と枝豆がテーブルにやってきて、私はグラスを持ってクスッと笑っていると徳山くんはビール片手に私をじっと見つめてきた。
「俺さ……」
「ん?」
返事を返しながら梅酒ソーダを飲んだが、徳山くんはそれから何も話さなかった。私はどうしたのかと心配になりながら、グラスをテーブルに置いて首を傾げた。すると徳山くんは私を見つめた後に一気にビールを半分飲み干してから、ドンっとテーブルの上にジョッキを置いて細い目を開けて私をじっと見つめてきた。
「俺…」
「うん」
私のことをじっと見つめているけど、それ以上話が進まない。何が言いたいのか分からなくて戸惑っていると、頼んでいたポテトや唐揚げの揚げ物セットが届いた。
徳山くんは私から視線を外すと、パクパクと揚げ物を食べてそれ以上何も話さない。どう反応していいのか分からず、私はとりあえず枝豆をチビチビ食べながら、徳山くんの言葉を待った。
ビールを飲み干して、2杯目の生ビールを頼んでも徳山くんは何も話さない。シーンっとした雰囲気が気まずくて、私はソワソワし始めていると2杯目のビールが届いた。
またそのビールを勢いよく半分ほど飲むと、やっと徳山くんは口を開いた。
「あー。山田のこと、馬鹿にできねーや。くそっ」
「ど、ど、どうしたの?」
徳山くんはじっと私を見つめてから、うううっと唸ってから小さな声でつぶやいた。
「……きだ」
「へ?なに?聞こえない」
周りの声や音でかき消されて聞き取れない。少し前屈みになって耳を傾けてると、徳山くんは少し立ち上がって両手を伸ばして私の顔を掴むと正面に向けてから、ムニュッと柔らかいものを私の唇に押し付けてきた。
「んんん!?!」
「ちゅっ…だから…好きだ」
「え、えええ?」
いきなりのキスと告白にびっくりして目を見開いていると、徳山くんは私のことをギラギラとした目で見つめてきた。何をされて、何を言われてるのか理解し始めると、私の心臓はドキドキと鳴ってうるさくなってきた。
「好きだ。高田さんが…好きだ」
「え、ええ。待って、あの」
「嫌?ダメ?俺めっちゃ好き。ほんと好き。小学6年の時に泣きながら微笑んだ顔を見た時から、好き」
「ひょえ!?」
徳山くんはまた顔を近づけてきた。私は顔が熱くなるのを感じながらも咄嗟に手で徳山くんの顔を押しのけた。
「ま、まって!!」
「だめ?」
しゅんっと落ち込んだ徳山くんは私の顔から手を離すと、ポスっと音を立てて椅子に座った。そして、しょぼーんっと肩を落としてしまった。私は熱くなった顔を手で仰いで冷ましながら、視線を彷徨わせて声をかけた。
「えっと、待って…ダメとかじゃなくて」
「じゃあ、いい?」
「だから、その…」
何と返事していいのか分からないでいると、徳山くんはビールを一気に飲み干してドンっとテーブルにジョッキを置いた。
「初恋の人から、中学の卒業式で好きだったとか言われた俺の気持ちわかる?めっちゃ嬉しいのに、返事はなくていいとかっ。付き合ってとかもなく…もう終わりましたみたいな!」
「えっ、あの、それは…」
ジトっとした目で私を見つめてくる徳山くんはパクパクとやけ食いのようにつまみを食べながら、さらに言葉を続けた。
「俺みたいなやつが高田さんとなんて付き合えないとか思って、別の女の子に告白されて付き合って…。高田さんは何とも思ってなさそうだったから、やっぱりって思いつつ初恋を封印して。でも、彼女とも何となくうまくいかなくて別れて…。なのに、実は好きでしたとか言われたんだぞ!だからまた意識するようになって、バスで会うたび嬉しかったけど…。メールも来ないし…かと言って俺からメールするにも言葉が見つからなくて…」
「えっと…その…」
徳山くんは私の飲みかけの梅酒ソーダを奪い取ると、ゴクゴクと全て飲み干してさらに話を続けた。
「また、女の子に告白されて付き合って…。でも高田さんへの気持ちは変わらなくて…。それでまた別れて。大学も違う県へ行ったって風の噂で聞いて、やっと諦めたのに!!こんなところにまた現れるし!めっちゃ美人になってて、周りの男どもがうるさいし!昔から綺麗だったけど!ねぇ!聞いてる!」
「はい!!」
酔っているのか頬を赤くして、ジトーっとした目で私をみてきた徳山くんは、私の右手を両手で掴むとぎゅっと握ってきた。私の心はどんどん何かを思い出したかのようにドキドキと高鳴り、体も熱くなってきた。そんな私にはお構いなしに、徳山くんは真剣な顔で見つめてきた。
「好きだ。もう、ほんと。まじで。だからもう一度恋してください!!!」
「は、はいぃぃい!」
頭に浮かんだのは〈はい〉だった。思わず返事を返して私がコクコクと頭を縦に振ると、徳山くんはパァァッと顔が明るくなった。そして、届いていた伝票を引っ掴むと、私の手を握ったまま鞄を持って立ち上がった。
「ホテル」
「え!!!」
「ホテル」
私を引っ張るように歩き出す徳山くんについて行くために、鞄を持って慌てて立ち上がってついて行った。会計も負担してくれて、徳山くんは私の手を引いてどんどんとホテル街に向かって歩き始めた。
「まって、あの」
「ゆっくり話したい」
「それは、あの、わかるけど…いきなりは…」
「話すだけ」
ズンズン歩いて空いてる場所を見つけると、問答無用で私をホテルに連れ込んだ。徳山くんが選んだ部屋に連れ込まれると、ソファーに2人並んで座った。
「あの、えっとね」
状況に戸惑いながらも、なぜか少しだけ何かを期待してる自分に気がついた。でも、この気持ちがどうなってるのか分からなくて、見つめてくる視線に目を彷徨わせていると徳山くんはジトっとした目で私を見つめてきた。
「え?俺たち付き合うんだよね」
「……………あっ、うん。そう…なるよね?」
「じゃあ。何で俺をちゃんとみないの」
少し怒ったような声にブルっと体が震えた。なぜ目が合わせられないのか自分の心に問いかけると、すんなりと答えが出てきた。
「は、恥ずかしくて……」
「……可愛すぎる……」
徳山くんはギュッと私を抱きしめると、スリスリと頭に頬を擦り付けてきた。
「はぁぁ。高田さんの匂いだ。この匂いだ。もうあのタオルから匂いがしなくて…。似たような匂いの柔軟剤を探して使ってみたけど、全然違うくて…」
「……はうっ。あの、待って…心と頭が追いつかなくて…」
「高田さんを待ってたらダメってのは中学の卒業式で知ってるから、待たない。あの時も意地張って、自分から告白もしないで、ウジウジしたから…」
ぶつぶつ呟くと徳山くんの手は私の体を撫でるように触っていた。まるで、私の存在を確かめているような手つきだった。
「で、でも、私はまだ…」
「わかってる。それは待つから…。もう少し感じさせて。俺の高田さんになったって…確かめたい」
「……んっ、はい」
顔を上げたくても頭の上に頬を乗せられてて動かせない。私がぺとっと頬を胸板にくっつけると、徳山くんは更に強く抱きしめてきた。
「俺のこと、もう初恋として封印処理してた?」
「え……うん。高校2年までまだ好きだったけど…首に痕をつけてるの見て彼女いるのを知ったから…それからは、もう諦めてて」
「………やっぱあれ見てからだよね。バスで会わなくなったの。避けてたよな?」
「だって、私は同じ土俵に上がる自信もなかったから…断られるのが怖くて…告白もまともにできなかったし、仕方ないと思って」
ボソボソっと私が呟くと、徳山くんはハァァァっとため息をついた。
「あの頃の俺に言いたい。ウジウジせずに告白しろって。早く告ればよかった。タオルの匂い嗅いで、自慰にふけってばかりいないで」
「っ!?」
「あれはいいおかずだったけど、流石に匂いがなくなってからは捗らなくてさ。するときは卒アル眺めてたんだよね」
「んんんん!?」
「あ、ごめん。気持ち悪いよな。オカズにされてたとか聞いたら、ごめん。幻滅しないで」
知らなかった事実を聞かされて目を白黒させてる私に、徳山くんはまたスリスリと頬を頭に擦り付けて甘えていた。
(男の子の事情はあると思うけど、私で何かをしてたとか恥ずかしすぎる!!!)
頭の中で言葉を理解した頃にはまた体が熱くなってきて、徳山くんの背中に腕を回して顔を隠すように徳山くんの胸元に顔を埋めた。
「可愛すぎる。俺の高田さんが可愛すぎる。梨沙って呼んでいい?」
「…う、うん」
「待って、元カレとか何で呼ばれてた?」
「え?梨沙かな…」
徳山くんはムムムッと唸ると、ギュッと私を抱きしめてまた頬を頭にスリスリし始めた。
「くっ。俺より先に名前呼びやがって!悔しい。あー!梨沙梨沙!好きだ」
徳山くんの心の叫びのような言葉に私の心はポカポカと温かくなっていた。
(すごく嬉しい。まさか、あんなに好きだった人に好きと言われるだなんて…。封印していた気持ちが出てきちゃった。元カレには〈俺のこと本当に好きなのか〉とかよく言われたけど…もしかして、まだどこかで徳山くんが好きだったのかな。私)
久しぶりに会ったときはドキドキしなかったのに、気持ちを聞いてドキドキするなんて都合のいい想いだ。でも、このドキドキした気持ちには身に覚えがあったし、元カレ達にはこんなにドキドキすることがなかった。
だから、私の中にある気持ちを徳山くんに伝えるとこにした。
「あの、徳山くん」
「なに?」
私がモゾモゾと動くと、頭の上にあった重みがなくなった。顔を上げて見上げると、私のことを愛おしそうに見つめる徳山くんの顔があった。その顔を見てまたドキドキと胸が高鳴って、顔が熱くなってくる。でもここでちゃんと伝えないとダメだ!そう自分を奮い立たせて、私は気持ちを伝えた。
「私の初恋。どこかでまだ残ってたみたい。今まで付き合った人には感じてないドキドキが、再発しちゃった。こんなにドキドキするのはあの頃から徳山くんだけだよ」
徳山くんは私の言葉を聞くとボボっと顔を真っ赤に染めて私から顔を隠すように抱きついてきた。
「ああああ、可愛すぎる。梨沙が可愛すぎる。本当は名前もずっと心では梨沙って呼んでた!!ごめんなさい!!でももう堂々と呼べる幸せすぎる!!」
「ふふっ。私も名前で呼んでもいい?」
「っ!?!」
ガバッと私から体を離した徳山くんは顔を真っ赤にしながら顔を横に振ったり縦に振ったりした後に、恥ずかしそうに顔を手で覆ってしまった。
「まって、それはまだダメ。いや、いいけど、まって!」
「名前呼ぶだけだよ?幸平?コウくん?コウちゃん?」
「ああああ!ダメって言ったのに!もう!」
徳山くんは私を乱暴に横抱きで抱き抱えると、隣にあった大きなベッドに放り投げた。私がびっくりしてる間にはボスンっと音を立ててベッドに落とされて、ネクタイを緩めている徳山くんが私を狙うような目で見つめながらべッドにのぼって近寄っていた。
「まっ、まって。それは、まだ、はやくない?」
「名前呼ばれたから我慢できなくて、入れないから。味見だけ。ちょっとだけ…ね?」
ハァハァと興奮してる様子を見るとこちらも何だかムラムラしてしまった。体全体が熱くなるのを感じながら小さく頷くと、徳山くんは私の唇に唇をくっつけながら私の服を大きな手で次々と剥がしていった。
「んっ…んっんん」
脱がすのを体を浮かしたりしながら手伝って、私の口に入ってきた舌を出迎えて絡ませあった。
(ああ、私、あの徳山くんとキスしてる!!)
そう思うだけで、ドキドキと胸が高鳴った。お互いに求め合うように口付けるたびに、口元から音がなった。私の服を下着以外脱がせると、次は口づけ合いながら徳山くんが服を脱ぐのを手伝った。
お互いに何も話さず、ハァハァと息遣いを荒くしながら口付ける。それだけなのにすごく興奮してきて、ムラムラする。初めての相手にはこんなこと感じたことない。でも私も徳山くんを求めてるし、徳山くんも私を求めてる。お互いがお互いを欲しがっているような口付けをしながら下着姿になった徳山くんを、私は自然と股を開いて間に出迎えていた。
「はぁ…はぁ…ごめん。味見だけとか無理そう」
「はぁ…んっ…私も、こんなに欲しいの初めてかも」
「…っ!もう、煽るな、やめてくれ。これでも優しくしたくて我慢してるんだから!」
徳山くんは私の背中に手を差し込んでフォックを外すと、ポイっと床にブラを投げ捨てた。そして出てきた膨らみを興奮したような顔で眺めてから、ぺろりと唇を舐めた。その顔が色っぽくて、私の体はビクンッと反応した。
「可愛い。俺の手にすっぽりおさまるんだ。おっきいと思ってたのに…ハァハァ…これが梨沙のおっぱい」
両手で膨らみを包み込むと、徳山くんは顔を胸元に埋めてチュウチュウと吸い始めた。
「あっ…あっあ!」
「可愛い声すぎる。想像なんかより…」
チュッチュッと赤い痕をつけながら膨らみを揉んだり、乳首を吸われると気持ちが良くてブルブルと体が震えた。
(やだ、うそ。こんなに感じたことない)
優しく触られるだけで、体が喜びで震える。弱い場所を刺激されれば快感で体が震える。私の体は全身で徳山くんを受け入れる喜びを表現していた。
「はぁん…あっあっ…んん」
「だめだ、可愛すぎる…」
チュッチュッとお腹に向かって口付けながら頭を下げて、徳山くんはショーツゆっくり脱がせた。お尻を上げて手伝うとあっという間にショーツは床に転がってしまった。
「ハァハァ…たまんね」
「やっ、まって!洗ってないから、あっあああ!」
「ジュッ…だめ、待ってられない」
私の股を大きく広げると、徳山くんは私の蜜壺に顔を立ててベロベロと舐めたり、ジュルジュル吸い始めた。
「あっあああ、やっ、あっあっ、まって、まって、あっああああ!」
そこを舐められるのは好きじゃなかった。だから、体の関係があった元カレにしたいと言われても、あまりさせたことがない。なのに、徳山くんには簡単に許してしまった。
(やだ、徳山くんの舌が、私を舐めてる!)
そう思うだけで、体が痺れたような感覚になった。与えられる刺激も感じたことがないくらい気持ちよくて、私はどんどん快感の波に誘われて絶頂に向かっていた。
「あっあっあっ、だめ、きちゃう…あっああ、やっ、それは、ああああ!」
達しそうなことを伝えると、徳山くんは触って欲しがって主張していた突起をジュルルっとわざと音を立てるように吸い上げた。その刺激にあっという間に絶頂に到達してしまい、私はガクガクっと体を震わせて達した。
「んっ…可愛い。もっとしてあげる」
「んっ、やだ、待ってまだ…あっああ!いきなり、んっんっ…はぁん」
「2本はいちゃった。沢山舐めたから濡れ濡れ。俺の指を美味しそうに食べる梨沙が可愛い」
「んっんっ、あっ!そこ、あっあっあっ、ああん」
「可愛い。もっと乱れて、俺だけに見せて…」
指が動くたびに粘着質な音が鳴る、それに私の喘ぎ声と徳山くんの興奮したような吐息が空間を支配していた。
「あっあっ、あああ!」
「可愛すぎる、もう一回イッたら…」
「ひゃん!二つは、やっ、あっあっあっ、あああん」
「可愛い、好き。梨沙、好きだよ」
中を刺激されながら突起もこねるように押し潰されて、私は二つの快感に一気に絶頂に向かった。その後に色っぽい声で名前と気持ちを囁かれるとドキンっと胸が高鳴って、ブワァァァっと体から何かが溢れ始めた。
「あっあっ、イッ…イッチャ…あっああああ!」
溢れ出したものは勢いよく頭に向かって駆け抜けた。その瞬間に目の前が火花が散って、体を弓形にそらせるとガクガクと体が震えて私は達した。
「あー、我慢できない」
徳山くんは指を引き抜くと、ペロペロと指についた蜜を舐めてから、備え付けのスキンの袋を開けて、硬くなっているモノにつけ始めた。
その様子を快感の余韻に浸りながら眺めていると、さらに胸がドキドキし始めた。
(私、徳山くんと一つになるの!?)
そう思うだけで、興奮してしまう。早く一つになりたくて、装着した徳山くんが私の股の間に戻ってくると、両腕を伸ばして声をかけた。
「はやく、きて」
「~~っっ!だから煽るなって!」
顔を赤くしながら徳山くんは私の蜜壺に硬いモノをおしあてると、私の上に覆い被さった。私は両腕を徳山くんの首に回してギュっと抱き寄せると、ゆっくり中に入ってる感覚を感じた。
「あっ…はいって…る」
「ハァハァ…やばっ。中に入れただけで、興奮して出しそう…ああ、あったけぇ…そして中が俺を歓迎してる…最高」
ゆっくり根元まで入ってくると、私の中の壁は徳山くんの形を隅々まで記憶しようとウネウネと動いていた。この圧迫感は久々だけど、全く嫌な感じはしない。前は少し苦手だったのに。
むしろ、やっと一つになった喜びでいっぱいだった。
「嬉しい。徳山くんと一つ…」
「だから……もういい。煽った責任とってくれ」
徳山くんは股が広がるように私の膝裏に両腕を滑り込ませてからシーツに手をつくと、私の首筋に口付けながら腰を動かし始めた。
「はぁんぁん…あっあっ、あっああ、きもちっきもちぃ!」
「くっ、耳元で梨沙の声が…やべぇ、負けんな、まだ出すなよ、俺」
徳山くんは自分に言い聞かせるような呟きながらどんどん私の中を動き回った。私の弱い場所を探し当てるとずっとそこを狙ってくる。耳元から聞こえる息遣いや、抱きついている上半身から感じる体温さえも私に快感を与えた。
「あっあっ、ああ!それ、あっあっあああ!好きっ、好きっ…すきっ…はぁあああん!」
「っく…あっ、無理無理!でるっ」
気持ちよくて絶頂に達しながら無意識的に気持ちを伝えた私の締め付けと壁の動きに耐えられず、徳山くんは奥にグッと差し込んでスキン越しにドクドクと熱い精を注いだ。
「ハァハァ…まじで、やばい。俺こんなに早くないはずなのに…」
「…んっ…はぁ…好き…」
いまだ快感に酔いながらチュッチュッと次もねだるように徳山くんの首筋に口付けると、徳山くんはすぐに私の中から出て行って、素早く2袋目を開けてスキンをつけるとまた私の中に入ってきた。
「2枚じゃゴム足りん!!!」
「あっあああ!」
もう硬さを取り戻したモノは私をまたどんどん快感の波に誘って行った。私は徳山くんに抱きつきながら、両足を徳山くんのお尻に当ててもっと奥に入って欲しいと誘った。クネクネと腰を揺らしていると、徳山くんはさらに動きを早めた。
「ああああ!あっあっあっ、それ、いい!すきぃ!」
「俺も、俺も、好きだっ」
「すきっ、んっんっ…んん」
お互いに求め合うように口付けた。徳山くんがくれる刺激は全て気持ちがいい。
(こんなに気持ちがいいの初めて、こんなに感じたことない。本当に好きな人とするとこんなに違うの?知らなかった、知らなかった!)
徳山くんを離したくなくて、私は全身で絡みついた。徳山くんも私を離そうとせず、口づけをしながらも腰を動かし続けた。
「んっんん…ちゅっ…あっあっ、こう…へい…こう…しゅき…あああ!すきぃ!」
「だから、名前は…あああ、くっそ、可愛すぎる、はぁ、俺も好き、ずっと、梨沙だけっ!」
「あっああ!それ、ああ!つよっ…ひゃぁ、あっああ!らめっ、ひゃあああ!」
徳山くんは話しながら勢いをつけて奥に向かって突き上げてきた。その度に皮膚と皮膚がぶつかる音や粘着質な音が鳴る。刺激が強くて私はすぐに絶頂に達してしまった。
ビクビクと震えている私の頬や首筋に口付けながら、徳山くんは私を色っぽい顔で見つめてからニヤリと笑った。
「よし、2回目は耐えた。梨沙が可愛すぎて、マジでやばい。どこまで俺を溺れさせればいいの?」
「ハァハァ…だって、こんなに気持ちいいのはじめてなの」
トロンっとしたまま徳山くんを見つめると、私を愛おしそうに見つめて私の両腕を首から離させた。そしてお互いの両手を重ねると指を絡めるように手を繋ぎ、私の手の甲をシーツに押し付けた。
「俺も。こんなにいいのは初めて。俺、絶倫じゃないんだけど、今回は何度でもできそう。ゴムは追加で頼まなきゃな」
徳山くんは私に微笑むと、また私を絶頂の高みに誘い始めた。私はキュンキュンと胸がときめき、高鳴りながら与えられる刺激に酔った。
結局その日はホテルに泊まった。ゴムは私が寝てる間に追加されてた。抱きしめあって眠ったりで休憩も挟んで、追加した2枚とも使い切って土曜の昼頃には2人で手を繋いでホテルから出た。
「梨沙。俺の部屋こない?」
「え?今から?幸平の?」
「そう。合鍵渡すし、あとお泊まりセットもいるだろ?色々買ってからさ。俺も梨沙の部屋の合鍵ちょうだい。でも今日の夜は俺の部屋に泊まって」
大きな体を屈んで私の唇に口付けると、幸平は少し熱のこもった瞳で私を見つめた。この瞳に弱い私はコクンっと頷くと、幸平の左腕に絡みつくように抱きついた。
わざと胸を押し当てて上を見上げると、耳を赤くした幸平が私を見下ろしていた。
「いいよ。ゴムも買ってね」
「っっっ、もちろんですとも!!」
私の返答に顔も赤くしながら幸平は歩きはじめた。私はクスクスと笑いながら幸平の腕に頬を寄せて肩を並べて歩いた。
幸せ
この一言が頭に浮かんだ。そしてこんなに満たされた気持ちは初めてだった。
初恋は実らないって諦めてた。勇気がなくて踏み出せなくてウジウジしてた。でも…
チラッと上を見上げると、幸平が私の視線に気がついて微笑んだ。
「好き」
私がポツリと呟くと、幸平はまた顔を赤くして片手で顔を覆ってしまった。
「だめだ、俺よ、まだだめだ。買い物して、それから。な?うんうん、わかってる。でも可愛くてもダメだ。とにかく薬局行って沢山買って……」
幸平は自分に言い聞かせるようにぶつぶつ呟きながら私をくっつけたまま目的地に向かって歩いた。
私は幸平の様子が可愛くてクスクスっと笑うともう一度呟いた。
「だぁいすき」
「っっっ!!!待ってくれ、まだダメなの!あとで、ね?ね?」
その後、幸平は早歩きで私を連れ回した。薬局や服屋、スーパーを巡ってから電車に乗って幸平の部屋に向かった。
ずっと何かに追い立てられるようだった幸平は玄関に入って内鍵を閉めるなり、その場で私を押し倒した。
ついて早々、2人で服を脱がせあって廊下を歩いた。ワンルームの部屋に入ると、下着姿になって2人で口付けあいながらベッドにのぼった。そして、私は唇が離れた瞬間に溢れる気持ちを伝えた。
「好き」
「……っっ、俺も好きだから、わかったから!!」
がっつくように私に吸い付いてきた幸平が可愛くて、私はギュッと抱きしめた。
こらから先どうなるかわからない。私の初恋の実はカラカラに乾燥してた。でも気持ちを伝えるたびに潤いが増して、今は真っ赤に熟れている。
このままずっと一緒にいたい。そんな想いから心の中に浮かんだ言葉を刺激を感じながら幸平に伝えた。
「あっあっ…けっこ…ん…して…あっああ」
「っ!!それは俺が言うセリフ!!!」
幸平は悶えるように叫んだあと、私を優しく触って抱いた。
ずっと一緒にいよう。そう囁き合いながら。
「はい。終わったら徳山くんに渡せばいい?」
「おう」
向かい側の席で仕事をしている徳山くんから、パソコンの隙間から書類を受け取って、私は自分のパソコンのモニターを眺めた。
「じゃ、夕飯は奢りだなぁ。16時に仕事押し付けるんだから」
「おう。任せろ。ラーメンな」
「また?」
「いい店見つけたんだよ。美味いから行こうぜ」
「もっと高いの食べたいなぁ」
「それは今度な。ほれ、手を動かせ」
「ちぇー」
カタカタとキーボードを叩きながらお互いに会話をしつつ、自分が持っている仕事と渡された仕事をこなした。
「おわったー。はい、これね」
「お、サンキュー。助かる。俺もあと少しだから準備していつもの所で持ってて」
「はいはい」
チラリと時計を見たら18時だった。自分の仕事はすぐ終わったが、頼まれた仕事を終わらせるのに少し時間がかかってしまったようだ。私はデスクの上を綺麗に整頓してパソコンの電源を切って、タイムカードを押してロッカーへ向かった。
うちの会社は女子社員だけ指定の制服がある。みんなスーツでいいのにって思うけど、社長の趣味のようだ。パンツスタイルの方が好きなのに、スカートを履く違和感に初めは悩んだ。でも、22で入社して3年も経つと、このスカートの丈にも慣れてしまった。
「ラーメンかぁ。髪の毛あげたほうがいいかな」
ハーフアップにしていた黒い髪の毛を高い位置のポニーテールにして、ピンクのシュシュをつける。制服を脱ぐと、ジーンズにシャツ、秋だから薄手のカーディガンを羽織った。いつも通勤の服装は動きやすさ重視だ。
「はー。カジュアル過ぎるよね。でも仕方ないか」
軽く化粧を直して、カバンを持ってロッカーの鍵を閉めた。エレベーターに乗って、会社の出入り口の自動ドアを出ると右端の柱でスーツ姿の徳山くんが立っていた。
「ごめーん。持った?」
「俺より早く上がったのに、来るのが遅い」
「毎回言ってるじゃん。女は支度に時間がかかるのっ!」
「へーへー。じゃいくぞ」
私の歩調に合わせて歩く徳山くんと肩を並べて歩いた。知ってる道を通って、知らない道を進んで曲がってついた店は、お洒落な外観のお店だった。
「え、ここ本当にラーメン屋?」
「本当本当」
2人で店の中に入ると、テーブルやカウンターにチラホラと人が座っていた。店内の内装をキョロキョロと見つつ、前を進む徳山くんの背中を追いかけてテーブル席に座った。
「何にする?」
向かい側にいる徳山くんがメニューを手渡してに声をかけてきた。私はメニューを受け取って、自分の好きな醤油ラーメンを見つけると文字を指さしながら徳山くんに話しかけた。
「これ!」
「…高田さんってほんと、醤油すきだよな。わかった」
徳山くんはフッと優しく笑ってからメニューを私から奪い取って、水とおしぼりを持ってきた店員さんに醤油を二つ頼んだ。
「え?醤油?珍しい」
「ここは、醤油が1番美味いんだよ」
「え?!そーなの!?楽しみ!」
いつもなら味噌とか豚骨とか味が濃いのを好んで食べるのに、珍しい。私は水を飲みながら、店の中をじっくり眺めた。
(内装も綺麗だし、できてばっかりかなぁ。あー、いい匂い。お腹空いてきちゃった)
喉が渇いていたのか、半分ほど水を飲んでフーッと息をつくと視線を感じて目線を前に向けた。徳山くんは細い目をさらに細めて私を眺めていた。
「な、なに!?」
見つめられて少し恥ずかしい。心がザワザワし始めるのを感じつつ、私は少しだけ視線を外して、徳山くんのネクタイを見つめながら話しかけた。
「いや。水飲んでるなぁって思ってさ」
「…なにそれ」
特に意味もなく私を見ていたのだと気が付いて、フーッと息を吐いて視線を徳山くんの顔に向けた。相変わらず目は細いけど、少しだけ微笑んでいるのがわかる。
徳山くんは身長も高くスタイルもいいけど、お目目ぱっちり系ではない。丸顔に糸を引いたような細い目をしている。目を開けてる時でも、目の印象は弱い。でも、切長の目から流し目で見られるとドキッとするのだ。
いや、ドキッとするのは…私の思い出補正もあるかもしれない。
「お待たせしました。醤油二つです」
「お、きたきた」
テーブルにあった割り箸を私に手渡しながら、徳山くんはテーブルに置かれたラーメンを見てニコニコとさらに笑みを深めた。
私はお礼を言って割り箸を受け取ってから、パチンっと割って手を合わせた。
「いただきます」
「おう。いただきます」
レンゲを持って透き通ったスープを一口飲む。優しい味がする醤油の味に心がほっこりとあたたまる。私は細い麺を持ち上げて、フーフーと息を吹きかけてから麺を静かに啜った。
「んっ、美味しいね」
「だろー?高田さんこの味好きだと思ったんだよね」
ズルルッと麺を啜りながら、徳山くんは上機嫌だった。私は美味しそうに食べる徳山くんを眺めながら、静かに麺を啜って、聞こえてくる低い声がまだ高かった頃のことを思い浮かべた。
私達は、地元が同じだ。小学と中学は同じで、高校は違う。私が徳山くんのことを認識し始めたのは6年生の時。同じクラスになってからだった。
バスケをしているからか、この頃から他の男子よりも少し背が高かった。目が細いから冷淡そうに見えるが、いつもニコニコ微笑んでいて明るい。冗談を言うのも上手くて、クラスのムードメーカーだった。
私は黙っていれば綺麗なのにとよく言われてた。つまり、キツ目の顔をしていた。だから怒ってないのに「怒ってるの?」なんて聞かれることはしょっちゅうあった。
常に笑っているのも疲れるし、たまには息抜きして笑顔を隠すとすぐに「怒ってる?」と言われる。それが本当に面倒だった。
だから、常に笑顔の徳山くんを少しばかり冷たい目で見ていた。
笑顔なんて疲れるだけだ。あの人もきっと心から笑ってるわけじゃない。そんな思いがあったからだ。
でもある日、その考えはクルッと変わって私の心に春が来た。
その日は、夕方のクラブ活動で選んでいたバレーボールで後輩に辛辣な言葉をかけられた。
「高田先輩って、下手なくせに自信たっぷりですよね。ツンっとすまし顔だし、こっちのこと馬鹿にしてませんか?」
小4からクラブ活動を頑張っていたが、私には才能がなくて6年になってもレギュラーにはなれなかった。
それでも運動が楽しくて、6年最後の夏の大会に向けて頑張っていたのだ。レギュラーになれなくても、どこかで試合に出られるかもしれない。そんな思いを胸に秘めて。
真剣な顔で取り組んでいるのが、すまし顔だと言われてしまっては何も言い返せなかった。私は同じ6年のチームメイトが止めに入る前に涙が溢れてしまって、泣き顔を見られたくなくて体育館から逃げ出した。
走って走って、もう一つの体育館近くの用具室前でしゃがみ込むと、体を丸めて泣いた。
笑顔じゃないと誤解される、きつい顔が嫌いだ。見た目で誤解されて、私の頑張りは見てもらえてなかった。それが悔しくて悔しくて、辛かった。
そんな私の頭にパサっとタオルが置かれた。ふんわり香ってくる優しい柔軟剤の匂いに気がついて、顔を上げて見上げると徳山くんが近くにいた。徳山くんは顔を逸らして私からの目線を外すと、話しかけてきた。
「泣き顔は見てない。でも、話してるの…その聞いたから…。あと、高田さんはおすまし顔じゃないよ。とっても綺麗な鈴のような丸い目で、俺はとてもいいと思う。えと…うん」
「………………ありがとう」
徳山くんなりの言葉で慰めようとしてくれているのがわかって、私は自然とフッと笑みが溢れてしまった。
泣きながら微笑む私の顔を横目で見ていたのか、耳を赤くして徳山くんは何も言わずにその場から去っていった。
その背中を見送りながら、ポツリと言葉が出た。
「…ふふ。鈴のような丸い目か…」
キツい印象を受けさせてしまう、この目を綺麗だと言ってくれた。その言葉が嬉しくて、だんだん心の中がポカポカとしてきた。私はタオルに顔を埋めて、優しい匂いを嗅いだ。そして徳山くんの言葉を頭の中で繰り返して呟くことで、やっと心に落ち着きを取り戻した。
徳山くんだって、笑顔じゃない時もある。でも、冷たく感じさせないのは心の優しさがきっと滲み出てるんだ。
私も嫌だ嫌だと泣かずに、誤解を解くように動かなきゃ。それならば、泣いてても仕方ない。私は立ち上がると体育館に戻った。
後輩に謝られる前に、私は「真剣にやってる顔をおすましと言われたのは傷ついた。でも、下手なのは認める」と伝えると、気まずそうに後輩は私に謝ってきた。
その場は和解したが、後輩との距離は遠くなって卒業までギクシャクした。でも最後まで私はクラブを続けた。
この頃から、徳山くんが気になって目で追うようになっていた。声が聞こえると目線を向けてしまう。休み時間に私の席に座って他の男子と話してる姿を見てしまうと、座席から感じる少しだけの温もりにドキドキした。
貸してもらったタオルは、洗って学校に持ってきているが、心がざわざわしててなかなか声をかけられなかった。
モジモジしてるうちにあっという間に、冬になって卒業式が近くなっていた。流石に、借りっぱなしはダメだ!っと奮い立たせた日の帰り際に、帰ろうとしてる徳山くんに声をかけた。
「と、と、徳山くん…これ。ごめんね。長いこと返せなくて」
私が袋に包んであるタオルを差し出しながら声をかけると、徳山くんはタオルを見てから私を見つめて微笑んだ。
「あ、そうだった。高田さんに渡してたんだ」
タオルの存在を忘れていたような返答に私はグサッと心に何か突き刺さった。でも、次の言葉にまた心がフワフワと浮き上がってしまった。
「役に立ったならよかった。あの事は誰にも言ってないから、安心して」
タオルを受け取ってから徳山くんは出入り口で待っていた男子にからかわれながら、帰って行った。
(はぁぁぁ。やっと渡せた…。忘れてたんじゃないんだ。よかった)
ホッと胸を撫で下ろしてから自分の席に戻って私も持っていた友達に声をかけて帰宅した。
この頃には私はすでに徳山くんが好きだったのだと思う。
中学は偶然にも同じで(気になるまで意識してなくて同じとかも知らなかった)、一年からクラスが同じになったのは嬉しかった。
同じ小学からの顔見知りって事で、よく話すようになったし、仲良くなった。冗談を言い合う仲のいい男友達となった徳山くんのことを、毎日目で追って表情の一つ一つを見つめた。
常に笑顔だけど、フッと真剣な顔になる時がある。それがすごくかっこよくみえて、胸が熱くなりドキドキした。
私は部活を吹奏楽に変え、徳山くんは小学と同じバスケに入った。
外での練習をバスケ部が練習してる体育館近くでやって、運動してる姿を見つめた。どんな姿もかっこよくて、私は見つめるだけでも心があったかくて満足していた。
でも、それも2年までだった。徳山くんはどんどん身長が伸びて声が低くなり、切長の目がまたクールで女子生徒に人気が出てきた。
徳山くんは前からかっこいいのに。そんな気持ちでいながらも、私はずっと徳山くんを想い続けた。でも…
2年からクラスが離れて、部活の時やすれ違う時ぐらいしか姿を見ることができなかった徳山くんはいつの間にか、可愛らしい彼女ができていた。
どちらから告白したのかなんて、知らない。でも、下校する2人の姿を見た時に私の恋心はズタズタと刻まれて傷ついてしまった。
彼女は私と違って、可愛い顔の子だった。私と違うタイプの女性が好みだったのだ。
告白する勇気もない。見つめるだけでいいと満足していたつもりだった私はやっとそれだけではダメだったのだと気がついた。
初めての初恋を失恋して、悲しくなりながらも徳山くんが幸せならばとそっと見守った。
彼女を見つめる雰囲気が優しくて、本当に好きなんだと気がついた時は辛かった。でも、私は告白して同じ土俵に立つことすらしてなかった。だから、悔しがったり八つ当たりするのも違う。
まだ心の中で燻る恋心は他の人に向けることができず、中学3年間の恋も徳山くんに捧げていた。
彼女と別れたと聞いても、私は踏み出すことができなかった。でも高校は別だと知った時に、やっと行動を起こした。
「徳山くん。〇〇高校に行くんだっけ」
たまたま遭遇した風に、放課後に帰ろうとしていた徳山くんに声をかけた。徳山くんは私を認識すると懐かしそうな顔で笑って答えた。
「そう。バスケ強いところ。高田さんと話すの久しぶじゃん。一年以外クラス違ったもんなぁ」
「そ、そうだね。そっか。私は〇〇商業に行くんだ」
「あ、そうなんだ。あそこの制服って可愛いよな。高田さん似合いそう」
何気ない言葉に心がふわふわと浮ついた。でも今はそんなことをしている場合ではない。私は意を決して話を続けた。
「せっかくの縁が切れるのも勿体無いからさ。連絡先交換しない?」
「お、いいよ!」
徳山くんはカバンから携帯を取り出して、連絡先を教えてくれた。ドキドキしながらも登録をして、私の連絡先を登録してくれる様子を眺めた。
「じゃ、じゃあ。またね」
「ああ、またな」
胸元にギュッと携帯を押し付けて、私は逃げるようにその場を後にした。
(聞いちゃった聞いちゃった!!)
自宅に帰るいつもの道が、全く違う道に見えるし、地面に足がついているのかもわからないほど私は浮ついた。帰ってから着替えもせずにベッドの上に乗って、何度も何度も名前とアドレス、電話番号を見つめた。
(徳山 幸平……きゃーーー!)
徳山くんがここにいる!そんな気持ちになる度に顔をシーツに埋めて嬉しさでバタバタと足をばたつかせた。
徳山くんの携帯には私の名前が入ってる。高田 梨紗の名前がだ。繋がりが持てたことに、ポカポカと心があったかくなった。
でも、告白する勇気は出なかった。
卒業式の日。下校していく卒業生の生徒たちの中にいる徳山くんにを見つけると、私は悩んだ。
(どうしよう。でも、一度は恋を、そう。この恋を伝えたい。恋人になりたいとか、それは…そこまではまだ、あわよくば的な…。振られるのが怖い。面と向かってなんて言えない!ああっ!メールで…そう。初めて送るメールで…)
私は徳山くんの背中を見つめながら、この恋を一度私の中で区切りをつけることに決めた。
家に帰ってから何度も何度も打ち直して、読み直して1通のメールを送った。
[卒業おめでとう。これから先、別の道に進むけどお互いに頑張ろうね。あと、離れるからこそ、伝えたいと思ったので勇気を出して伝えます。メールで言うなんて卑怯でごめんね。私、あのタオルをもらった日からずっと徳山くんが好きでした。付き合って欲しいとか、そういうのは…あれなんだけど。ただ、気持ちだけを知って欲しいから、伝えました。返事がしにくかったら、なくてもいいです。ただ、伝えたかっただけなので。じゃあ、バスとか路線が被りそうだから、もし会ったら声かけるね。そっちも声かけてくれたら嬉しいな。またね]
送信してからしばらく携帯の電源は切ってしまった。
だって、返信が見れないからだ。
次の日になって電源を入れると、友人達のメールに混じって徳山くんのメールが1通あった。
[気持ち嬉しい。ありがとう。あと、気がつかなくてごめん。見かけたら声かける。またな]
私はホッと息をついた。短文だけど、徳山くんなりに悩んで送ってくれたのが伝わったからだ。
(やっぱり迷惑だったかな…でも、振られたくなくて予防線はったのは私だし…。はっきりしない返答なのは仕方ないよね)
そんなことを考えながら、そのメールを保存して私は携帯を胸に当てた。もちろん、返事は返さなかった。だって、キッパリと断られるのが怖かったからだ。
結局高校2年までは徳山くんが好きだった。バスで会うとお互いに何もなかったかのように話をした。でもある日、徳山くんの首筋に大きな赤い痕を見つけてしまった時に、ほんのりあった気持ちをそっと心の奥にしまった。
(私はやっぱり同じ土俵に上がれない。告白で断られるのを怖がって、逃げたんだ。だから、この恋は終わらせよう。いい恋だったなぁ)
言い訳のような言葉を自分に言い聞かせて、私は別の恋を探すことにした。バスも時間をずらして顔を見ないようにした。そうしないと、また気持ちが溢れそうだったからだ。
特に連絡は取り合っていなかった。でも、アドレスや電話番号を変えたと連絡が来る度に繋がりがあることにホッとした。
携帯からスマホに変えた時も、メッセージアプリに徳山くんの名前があるのを見つけて、まだ繋がってることに満足していた。
それだけで良くなっていた私は、友達に紹介された大学生の男性と高3の時に付き合うことになった。大学受験の際にすれ違って、すぐに別れてしまったから体の関係はなかった。
県外の大学に入って、また友達の紹介で同い年の彼氏ができた。この人とは長く付き合って、私の初めてはこの人に奪われた。でも、大学3年の頃には別れて、そのまま私は大学がある県で就職活動を始めた。
何となく地元には帰りたくなかったからだ。
卒業前には内定を貰えて、卒業して就職した。
そして、2年目に部署移動で東京に転勤になった。やっと慣れた頃に急な移動になって、あわあわとなりながらも私は東京の本社に転勤することになった。
「高田 梨紗さんだ。今年で…」
「24です」
「そうそう。ってことで、皆んな頼むなー」
「高田 梨紗です。まだまだ未熟ですので、ご指導等よろしくお願い致します」
自己紹介をしながらペコリと頭を下げるとパチパチと拍手が沸き起こった。頭を上げて周囲に目線を向けていると、頭ひとつ分大きな男性がいるのに気がついた。視線を向けるととても懐かしい顔があった。その人はびっくりしたような顔でいつも以上に目を見開いてこちらを見ていた。
席に案内されて、業務内容について軽く説明を受けて仕事に取り掛かろうとしていると、向かい側のデスクからニュッと長い腕が出てきて私のデスクに紙が置かれた。
[高田さん、久しぶり。同じ会社にいたなんてびっくり]
紙を見てからチラッと視線を前に向けると、モニターの隙間からこちらを覗き込んで私に手を振っている徳山くんがいた。まさか向かい側のデスクだとは思わず、私はふふっと笑みが溢れた。
本当に久しぶりで、私は懐かしい気持ちになって手を振りかえして徳山くんに微笑んだ。徳山くんは私の笑みを見て、ニコッと微笑み返してくれた。
その日あった歓迎会でみんなに私達が同じ地元だったことがバレてからは、何かと仕事を同じにされることが多くなった。
でも、私は徳山くんに対してドキドキした気持ちはもうなかった。私の初恋はいい思い出になっていたようだ。
中学1年の時のように仲のいい男友達のような存在になった徳山くんと、時折ラーメンを食べたりと夕飯を一緒にするようになった。
残業が一緒になれば、お互いに夕食を誘って食べる機会は多いけど、会社以外では接点はなかった。
そんな関係が一年ほど続いていた。
昔を振り返りながら、ラーメンを食べているとまた視線を感じた。ツルルっと口の中に麺をおさめてから顔を上げると、食べ終わった徳山くんがテーブルに片肘をついて、手に顎を乗せて私を眺めていた。
「あ!ごめん、待たせてる?急いで食べるね」
慌てたように私が食べようとしていると、徳山くんはクスッと笑った。
「いいよ。ゆっくり食べな」
「…そ、そう?」
慌てて食べようしていたのをやめて、自分のペースで食べ続けた。何故かすごく視線を感じる。私は気まずい気持ちになりながら、チュルっと麺を啜っていると徳山くんが話しかけてきた。
「高田さんって、彼氏いるの?」
「へ?いないよ?」
キョトンっとしながら顔を上げて見つめると、徳山くんは私から目線を外した。私は徳山くんの言葉を待ちつつ、チュルっとまた麺を啜り始めた。
「同期の山田がさ。高田さんのことめっちゃタイプってうるさくて。でも、周りのみんなが高田さんみたいな美人に彼氏がいないわけないだろって話してたんだよ。そっか…いないんだ」
「山田さん?誰かしらないけど…。えっと、大学卒業してからいないかなぁ。仕事始めてばかりは気が回らなくて恋もしなかったし、2年目には移動させられるし…落ち着かなくてさ」
「そうなんだ」
徳山くんは私と目を合わせようとせずに何かを考えながら返答を返してきた。
(で?その山田さんという人を紹介するとか?そんな話?)
しかし、徳山くんは黙ってしまって何も話が進まずに私はラーメンを食べ終わった。
水を飲んで帰り支度をしようとしてる私に気がつくと、徳山くんは伝票を持って立ち上がってレジへと向かった。
徳山くんの背中を追いかけて一緒に店から出ると、やっと徳山くんは口を開いた。
「週末の飲み会いく?」
「え?あー…たぶん。高梨さんが行こうってうるさいし」
「そりゃ、部署にいる高嶺の花を自慢したいからだろうね。独身者集めて飲み会だなんて、どう考えても合コンだよな」
2人で最寄駅に向かって歩きながら話していると、徳山くんは視線を前に向けたまま話していた。私は隣で時折見上げて顔に視線を向けているが、目が合うことはなかった。
「でも、そういう機会がないと私には彼氏なんて出来ないかも。今まで紹介で付き合ってばかりだし」
「………そうなんだ」
その後は特に話が続かなかった。徳山くんは最後まで私と視線を合わせないようにしながら、違う電車に乗って帰っていった。
変な雰囲気で終わったことに、原因がわからず私は首を傾げながら家に帰った。
次の日出勤すると、いつも通りの徳山くんがいて、私の向かい側の席でいつも通り仕事をしていた。その様子に私は一安心すると、いつものように接して週末まで過ごした。
「では、部署の隔たりなく、楽しく飲みましょう。かんぱーい」
「「「かんぱーい」」」
合同での飲み会はかなり人が多かった。女性も男性も知らない人ばかりなので、私は同じ部署の高梨さんにつくっついてお酒を飲んでいた。
「はぁ。高田ちゃんは今日も麗しい」
「ちょ、やめてください。高梨さん!」
「なによぉ!うちの1番株を自慢しにきてるんだから!移動してきた日に皆んながざわついたの知らないの?すっごい美人が来たって」
私の隣でビール片手に私をいじっている同性の高梨さんは、いつも気さくで面倒見のいい先輩だ。何かと目をかけてくれるから私も懐いているのだが、口を開けば〈麗しい〉とか何とか言ってくる。毎度それを否定するのも面倒に感じながらも、私は返事を返した。
「もう。本当やめてください。私の顔、キツく見えて嫌いなんですから」
「毎回そういうけど。全然キツくないよ?目がまんまるで大きくてさ。めっちゃ可愛いじゃん。化粧もなるべく柔らかく見せようとしてるんだろうけど、それがまた顔にあっててさ。髪の色も派手じゃないし、爪もゴテゴテしてないし…これぞ清楚美人!って感じじゃん。モテるでしょう?」
「モテません!もう!高梨さん、変なことばっかり言うとこの鳥の軟骨はあげません」
届いてばかりの高梨さん大好物の鳥の軟骨を取り上げると、「いやー!軟骨ちゃま!」っと言って取り返そうとするので、私はフフンっと鼻を鳴らした。
「今日は無礼講らしいので、先輩でも容赦しませんよー!」
「ぎゃー!高田ちゃんごめーん!謝るから謝るからぁ!」
大好物を取り上げられた高梨さんは、視線を私とお皿の交互に向けて、胸の前で手を組んで拝むようなポーズをしていた。
「仕方ないですね。もうからかうのやめてくださいね?」
「…本気なんだけど…」
「何か言いました?」
ボソリと呟く高梨さんをジロリと見つめると、キャンっと仔犬が鳴いたような反応をしてから高梨さんはウンウンと頭を縦に振り始めた。
「は、はーい!わかりましたぁぁ!」
「よろしい。では、どうぞ」
高梨さんの前にお皿を置くと、高梨さんは大好物を目にして尻尾を降りまくる子犬のように嬉しそうにパクパクと食べ始めた。
(高梨さんは見た目も仕草も可愛いんだよね。確か彼氏がいるんだっけ。でも何で今日いるんだろ)
もぐもぐ食べてる高梨さんへ浮かんだ疑問を聞くことにした。
「今日って独身だけなんですよね?」
「ふぉだよ」
「彼氏彼女がいてもいいんですか?」
「ゴクッ…うん。交流会も兼ねてるからね。でも、彼氏持ち彼女持ちは、ほらこれ。これを腕につけてるからさ」
高梨さんは右腕を上げると、ビニール素材でできた会社のロゴマークがついた黄色の腕輪を見せてきた。
「何ですかそれ」
「社長が昔みんなに配ったけど、誰も使わないアイテムだよ。今回の幹事が彼氏彼女がいる人は自主的にこれをつけてくださいって連絡が来てたんだ。部署に置いてあったの見なかった?」
「全く気にしてませんでした。この飲み会も高梨さんに誘われたから来ただけだし…」
チラリと周りを見渡すとチラホラと黄色い腕輪が見えた。意識してみればすぐわかる目印になるほどなぁっと感心していると、軟骨を食べ終わった高梨さんが私を見つめてきた。
「高田ちゃんは彼氏いると思ってる人多かったから、ほら。あっちとかそっちとか。視線がすごいよ?」
高梨さんが小声で話しながら指さす方向に目線を向けると、確かにこちらをチラチラと見ている男性は何人かいた。その中には徳山くんがいるグループの中の人もいて、徳山くんも時折こちらを見ていることに気がついた。
「まっ。気になる人がいないなら、飲んで食べて楽しめばいいんだよ」
「…そうですね」
私は席を離れず、高梨さんとお酒と料理を楽しんだ。時折別の部署の女性や男性に声をかけられることはあったが、たわいもない話をして終わった。
しつこく話してくる人もいないし、高梨さんと楽しく会話をして私は楽しく過ごしていた。帰りには高梨さんや他の方からの二次会に行こうという誘いを断って、少し飲みすぎたなっと思いつつ最寄駅に向かって歩き始めた。
「高田さん!!!」
知らない男性の声がして振り返ると、徳山くんと一緒に飲み食いしていたグループにいた男性が私に駆け寄ってきた。
「はい。えっと…」
「お、俺。徳山と同期の山田です」
「…ああっ。はい。はじめまして高田です」
歩みを止めると近寄って話しかけてきた山田さんにペコリと頭を下げた。私に追いついた山田さんは腕一本分ほどの距離で立って、恥ずかしそうな顔をした後で頭を下げた。
「一目惚れしました!付き合って下さい!!!」
酔った勢いなのかなんなのかわからないけど、大きな声を出して手を差し出してきた。私は周りの視線が痛いし、気になってしまって思わず頭に浮かんだ言葉をすぐに口に出してしまった。
「ご、ごめんなさい」
「…………やっぱ、俺みたいなやつはダメなんだ。ううっううう。わかりましたぁぁぁ」
山田さんは差し出した手を引っ込めると、グズグスと泣きながら後ろの方でこちらの様子を眺めていた男性の輪に駆け寄って行った。
その中には徳山くんもいて、チラッと私に目線を向けると〈ごめんね〉っと口パクで謝ってから軽く頭を下げてきた。
私も同じような頭を下げると、早歩きで駅に向かって歩きはじめた。
「…あ、あんなところで、告白とか……恥ずかしい!!」
酔った勢いでも、あんな大声で人がジロジロ見てるところで告白されるとは…。ついつい反射的に断ってしまった。申し訳なかったなっと思いつつも、駅に着いた。
カバンからスマホを取り出して時刻を確認しようとすると、メッセージが一件入っていた。
[もう帰った?電車に乗っちゃった?]
表示された名前と文字にびっくりして思わず「ぎゃっ」と声が出てしまった。
あの日以来、表示されなかった徳山くん名前を見ていると、あの時の淡い気持ちが少しだけ蘇った。懐かしいなっと思いつつ私は返事を返した。
[10分後にくる電車に乗るよ。今は改札に入るところ]
送信して、鞄から定期を取り出していると、あまりならない電話の着信音が鳴った。表示された名前をを見ると徳山くんだった。
「はい」
『まだ乗らないで!そこにいて』
「え?」
『とにかく、改札ダメ。まってて、今いくらから』
それだけ言うと徳山くんは電話を切ってしまった。私はスマホを耳から離して、意味がわからないまま言われたとおりに改札近くの柱の前で立ってまっていた。
しばらくすると走ってきたような様子の徳山くんが駅の中に入ってきて、私を見つけると近寄ってきた。
「よかった。高田さん。明日は土曜だし、飲みに行こう」
「え!?ええ!?」
徳山くんは私の左腕をガシッと大きな右手で掴むと、私を引っ張って歩きはじめた。
「ちょ、え?なに!?」
「だから、飲み会」
徳山くんはスマホで何かを調べてから電話をかけていた。事前に席を確認しているようで、歩きながら店を探しつつ席の予約が取れた店に私を掴んだまま連れて行った。
「いらっしゃいませ」
「さっき電話した徳山です」
「お待ちしてました。2名様ご案内でーす」
ガヤガヤと人がたくさんいる居酒屋の店内を歩いて、個室に案内されるとやっと徳山くんは私から手を離した。
「ほら。座って」
「う、うん」
戸惑いながらも個室の椅子に座ると、徳山くんは向かいに座ってメニューを開いて眺めていた。
「お腹いっぱい?」
「え、あ、うん。軽いものしか無理かな」
「わかった。何飲む?」
「さっきたくさん飲んで、少し酔ってるから梅酒ソーダかな」
「ほい」
徳山くんは私から希望を聞くと、店員さんを呼んで、生ビールと梅酒ソーダや枝豆や揚げ物セットを頼んでいた。私はポテトくらいなら食べられるかなぁっと思いつつその様子を眺めていた。
頼んでからは特に会話もなくて、どうしていいのかわからなかった私はとりあえずさっきのことを話してみた。
「あ、あの。山田さん?だっけ。あんな場所で断ってごめんって伝えといて」
「あー、あれはアイツが悪いから気にしなくていいよ。ベロベロに酔って、場所も考えずにしたんだからさ」
「そ、そう?で、でも。酔った勢いでもちゃんと告白するなんて凄いよね。そこだけは尊敬する」
話してる間にお酒と枝豆がテーブルにやってきて、私はグラスを持ってクスッと笑っていると徳山くんはビール片手に私をじっと見つめてきた。
「俺さ……」
「ん?」
返事を返しながら梅酒ソーダを飲んだが、徳山くんはそれから何も話さなかった。私はどうしたのかと心配になりながら、グラスをテーブルに置いて首を傾げた。すると徳山くんは私を見つめた後に一気にビールを半分飲み干してから、ドンっとテーブルの上にジョッキを置いて細い目を開けて私をじっと見つめてきた。
「俺…」
「うん」
私のことをじっと見つめているけど、それ以上話が進まない。何が言いたいのか分からなくて戸惑っていると、頼んでいたポテトや唐揚げの揚げ物セットが届いた。
徳山くんは私から視線を外すと、パクパクと揚げ物を食べてそれ以上何も話さない。どう反応していいのか分からず、私はとりあえず枝豆をチビチビ食べながら、徳山くんの言葉を待った。
ビールを飲み干して、2杯目の生ビールを頼んでも徳山くんは何も話さない。シーンっとした雰囲気が気まずくて、私はソワソワし始めていると2杯目のビールが届いた。
またそのビールを勢いよく半分ほど飲むと、やっと徳山くんは口を開いた。
「あー。山田のこと、馬鹿にできねーや。くそっ」
「ど、ど、どうしたの?」
徳山くんはじっと私を見つめてから、うううっと唸ってから小さな声でつぶやいた。
「……きだ」
「へ?なに?聞こえない」
周りの声や音でかき消されて聞き取れない。少し前屈みになって耳を傾けてると、徳山くんは少し立ち上がって両手を伸ばして私の顔を掴むと正面に向けてから、ムニュッと柔らかいものを私の唇に押し付けてきた。
「んんん!?!」
「ちゅっ…だから…好きだ」
「え、えええ?」
いきなりのキスと告白にびっくりして目を見開いていると、徳山くんは私のことをギラギラとした目で見つめてきた。何をされて、何を言われてるのか理解し始めると、私の心臓はドキドキと鳴ってうるさくなってきた。
「好きだ。高田さんが…好きだ」
「え、ええ。待って、あの」
「嫌?ダメ?俺めっちゃ好き。ほんと好き。小学6年の時に泣きながら微笑んだ顔を見た時から、好き」
「ひょえ!?」
徳山くんはまた顔を近づけてきた。私は顔が熱くなるのを感じながらも咄嗟に手で徳山くんの顔を押しのけた。
「ま、まって!!」
「だめ?」
しゅんっと落ち込んだ徳山くんは私の顔から手を離すと、ポスっと音を立てて椅子に座った。そして、しょぼーんっと肩を落としてしまった。私は熱くなった顔を手で仰いで冷ましながら、視線を彷徨わせて声をかけた。
「えっと、待って…ダメとかじゃなくて」
「じゃあ、いい?」
「だから、その…」
何と返事していいのか分からないでいると、徳山くんはビールを一気に飲み干してドンっとテーブルにジョッキを置いた。
「初恋の人から、中学の卒業式で好きだったとか言われた俺の気持ちわかる?めっちゃ嬉しいのに、返事はなくていいとかっ。付き合ってとかもなく…もう終わりましたみたいな!」
「えっ、あの、それは…」
ジトっとした目で私を見つめてくる徳山くんはパクパクとやけ食いのようにつまみを食べながら、さらに言葉を続けた。
「俺みたいなやつが高田さんとなんて付き合えないとか思って、別の女の子に告白されて付き合って…。高田さんは何とも思ってなさそうだったから、やっぱりって思いつつ初恋を封印して。でも、彼女とも何となくうまくいかなくて別れて…。なのに、実は好きでしたとか言われたんだぞ!だからまた意識するようになって、バスで会うたび嬉しかったけど…。メールも来ないし…かと言って俺からメールするにも言葉が見つからなくて…」
「えっと…その…」
徳山くんは私の飲みかけの梅酒ソーダを奪い取ると、ゴクゴクと全て飲み干してさらに話を続けた。
「また、女の子に告白されて付き合って…。でも高田さんへの気持ちは変わらなくて…。それでまた別れて。大学も違う県へ行ったって風の噂で聞いて、やっと諦めたのに!!こんなところにまた現れるし!めっちゃ美人になってて、周りの男どもがうるさいし!昔から綺麗だったけど!ねぇ!聞いてる!」
「はい!!」
酔っているのか頬を赤くして、ジトーっとした目で私をみてきた徳山くんは、私の右手を両手で掴むとぎゅっと握ってきた。私の心はどんどん何かを思い出したかのようにドキドキと高鳴り、体も熱くなってきた。そんな私にはお構いなしに、徳山くんは真剣な顔で見つめてきた。
「好きだ。もう、ほんと。まじで。だからもう一度恋してください!!!」
「は、はいぃぃい!」
頭に浮かんだのは〈はい〉だった。思わず返事を返して私がコクコクと頭を縦に振ると、徳山くんはパァァッと顔が明るくなった。そして、届いていた伝票を引っ掴むと、私の手を握ったまま鞄を持って立ち上がった。
「ホテル」
「え!!!」
「ホテル」
私を引っ張るように歩き出す徳山くんについて行くために、鞄を持って慌てて立ち上がってついて行った。会計も負担してくれて、徳山くんは私の手を引いてどんどんとホテル街に向かって歩き始めた。
「まって、あの」
「ゆっくり話したい」
「それは、あの、わかるけど…いきなりは…」
「話すだけ」
ズンズン歩いて空いてる場所を見つけると、問答無用で私をホテルに連れ込んだ。徳山くんが選んだ部屋に連れ込まれると、ソファーに2人並んで座った。
「あの、えっとね」
状況に戸惑いながらも、なぜか少しだけ何かを期待してる自分に気がついた。でも、この気持ちがどうなってるのか分からなくて、見つめてくる視線に目を彷徨わせていると徳山くんはジトっとした目で私を見つめてきた。
「え?俺たち付き合うんだよね」
「……………あっ、うん。そう…なるよね?」
「じゃあ。何で俺をちゃんとみないの」
少し怒ったような声にブルっと体が震えた。なぜ目が合わせられないのか自分の心に問いかけると、すんなりと答えが出てきた。
「は、恥ずかしくて……」
「……可愛すぎる……」
徳山くんはギュッと私を抱きしめると、スリスリと頭に頬を擦り付けてきた。
「はぁぁ。高田さんの匂いだ。この匂いだ。もうあのタオルから匂いがしなくて…。似たような匂いの柔軟剤を探して使ってみたけど、全然違うくて…」
「……はうっ。あの、待って…心と頭が追いつかなくて…」
「高田さんを待ってたらダメってのは中学の卒業式で知ってるから、待たない。あの時も意地張って、自分から告白もしないで、ウジウジしたから…」
ぶつぶつ呟くと徳山くんの手は私の体を撫でるように触っていた。まるで、私の存在を確かめているような手つきだった。
「で、でも、私はまだ…」
「わかってる。それは待つから…。もう少し感じさせて。俺の高田さんになったって…確かめたい」
「……んっ、はい」
顔を上げたくても頭の上に頬を乗せられてて動かせない。私がぺとっと頬を胸板にくっつけると、徳山くんは更に強く抱きしめてきた。
「俺のこと、もう初恋として封印処理してた?」
「え……うん。高校2年までまだ好きだったけど…首に痕をつけてるの見て彼女いるのを知ったから…それからは、もう諦めてて」
「………やっぱあれ見てからだよね。バスで会わなくなったの。避けてたよな?」
「だって、私は同じ土俵に上がる自信もなかったから…断られるのが怖くて…告白もまともにできなかったし、仕方ないと思って」
ボソボソっと私が呟くと、徳山くんはハァァァっとため息をついた。
「あの頃の俺に言いたい。ウジウジせずに告白しろって。早く告ればよかった。タオルの匂い嗅いで、自慰にふけってばかりいないで」
「っ!?」
「あれはいいおかずだったけど、流石に匂いがなくなってからは捗らなくてさ。するときは卒アル眺めてたんだよね」
「んんんん!?」
「あ、ごめん。気持ち悪いよな。オカズにされてたとか聞いたら、ごめん。幻滅しないで」
知らなかった事実を聞かされて目を白黒させてる私に、徳山くんはまたスリスリと頬を頭に擦り付けて甘えていた。
(男の子の事情はあると思うけど、私で何かをしてたとか恥ずかしすぎる!!!)
頭の中で言葉を理解した頃にはまた体が熱くなってきて、徳山くんの背中に腕を回して顔を隠すように徳山くんの胸元に顔を埋めた。
「可愛すぎる。俺の高田さんが可愛すぎる。梨沙って呼んでいい?」
「…う、うん」
「待って、元カレとか何で呼ばれてた?」
「え?梨沙かな…」
徳山くんはムムムッと唸ると、ギュッと私を抱きしめてまた頬を頭にスリスリし始めた。
「くっ。俺より先に名前呼びやがって!悔しい。あー!梨沙梨沙!好きだ」
徳山くんの心の叫びのような言葉に私の心はポカポカと温かくなっていた。
(すごく嬉しい。まさか、あんなに好きだった人に好きと言われるだなんて…。封印していた気持ちが出てきちゃった。元カレには〈俺のこと本当に好きなのか〉とかよく言われたけど…もしかして、まだどこかで徳山くんが好きだったのかな。私)
久しぶりに会ったときはドキドキしなかったのに、気持ちを聞いてドキドキするなんて都合のいい想いだ。でも、このドキドキした気持ちには身に覚えがあったし、元カレ達にはこんなにドキドキすることがなかった。
だから、私の中にある気持ちを徳山くんに伝えるとこにした。
「あの、徳山くん」
「なに?」
私がモゾモゾと動くと、頭の上にあった重みがなくなった。顔を上げて見上げると、私のことを愛おしそうに見つめる徳山くんの顔があった。その顔を見てまたドキドキと胸が高鳴って、顔が熱くなってくる。でもここでちゃんと伝えないとダメだ!そう自分を奮い立たせて、私は気持ちを伝えた。
「私の初恋。どこかでまだ残ってたみたい。今まで付き合った人には感じてないドキドキが、再発しちゃった。こんなにドキドキするのはあの頃から徳山くんだけだよ」
徳山くんは私の言葉を聞くとボボっと顔を真っ赤に染めて私から顔を隠すように抱きついてきた。
「ああああ、可愛すぎる。梨沙が可愛すぎる。本当は名前もずっと心では梨沙って呼んでた!!ごめんなさい!!でももう堂々と呼べる幸せすぎる!!」
「ふふっ。私も名前で呼んでもいい?」
「っ!?!」
ガバッと私から体を離した徳山くんは顔を真っ赤にしながら顔を横に振ったり縦に振ったりした後に、恥ずかしそうに顔を手で覆ってしまった。
「まって、それはまだダメ。いや、いいけど、まって!」
「名前呼ぶだけだよ?幸平?コウくん?コウちゃん?」
「ああああ!ダメって言ったのに!もう!」
徳山くんは私を乱暴に横抱きで抱き抱えると、隣にあった大きなベッドに放り投げた。私がびっくりしてる間にはボスンっと音を立ててベッドに落とされて、ネクタイを緩めている徳山くんが私を狙うような目で見つめながらべッドにのぼって近寄っていた。
「まっ、まって。それは、まだ、はやくない?」
「名前呼ばれたから我慢できなくて、入れないから。味見だけ。ちょっとだけ…ね?」
ハァハァと興奮してる様子を見るとこちらも何だかムラムラしてしまった。体全体が熱くなるのを感じながら小さく頷くと、徳山くんは私の唇に唇をくっつけながら私の服を大きな手で次々と剥がしていった。
「んっ…んっんん」
脱がすのを体を浮かしたりしながら手伝って、私の口に入ってきた舌を出迎えて絡ませあった。
(ああ、私、あの徳山くんとキスしてる!!)
そう思うだけで、ドキドキと胸が高鳴った。お互いに求め合うように口付けるたびに、口元から音がなった。私の服を下着以外脱がせると、次は口づけ合いながら徳山くんが服を脱ぐのを手伝った。
お互いに何も話さず、ハァハァと息遣いを荒くしながら口付ける。それだけなのにすごく興奮してきて、ムラムラする。初めての相手にはこんなこと感じたことない。でも私も徳山くんを求めてるし、徳山くんも私を求めてる。お互いがお互いを欲しがっているような口付けをしながら下着姿になった徳山くんを、私は自然と股を開いて間に出迎えていた。
「はぁ…はぁ…ごめん。味見だけとか無理そう」
「はぁ…んっ…私も、こんなに欲しいの初めてかも」
「…っ!もう、煽るな、やめてくれ。これでも優しくしたくて我慢してるんだから!」
徳山くんは私の背中に手を差し込んでフォックを外すと、ポイっと床にブラを投げ捨てた。そして出てきた膨らみを興奮したような顔で眺めてから、ぺろりと唇を舐めた。その顔が色っぽくて、私の体はビクンッと反応した。
「可愛い。俺の手にすっぽりおさまるんだ。おっきいと思ってたのに…ハァハァ…これが梨沙のおっぱい」
両手で膨らみを包み込むと、徳山くんは顔を胸元に埋めてチュウチュウと吸い始めた。
「あっ…あっあ!」
「可愛い声すぎる。想像なんかより…」
チュッチュッと赤い痕をつけながら膨らみを揉んだり、乳首を吸われると気持ちが良くてブルブルと体が震えた。
(やだ、うそ。こんなに感じたことない)
優しく触られるだけで、体が喜びで震える。弱い場所を刺激されれば快感で体が震える。私の体は全身で徳山くんを受け入れる喜びを表現していた。
「はぁん…あっあっ…んん」
「だめだ、可愛すぎる…」
チュッチュッとお腹に向かって口付けながら頭を下げて、徳山くんはショーツゆっくり脱がせた。お尻を上げて手伝うとあっという間にショーツは床に転がってしまった。
「ハァハァ…たまんね」
「やっ、まって!洗ってないから、あっあああ!」
「ジュッ…だめ、待ってられない」
私の股を大きく広げると、徳山くんは私の蜜壺に顔を立ててベロベロと舐めたり、ジュルジュル吸い始めた。
「あっあああ、やっ、あっあっ、まって、まって、あっああああ!」
そこを舐められるのは好きじゃなかった。だから、体の関係があった元カレにしたいと言われても、あまりさせたことがない。なのに、徳山くんには簡単に許してしまった。
(やだ、徳山くんの舌が、私を舐めてる!)
そう思うだけで、体が痺れたような感覚になった。与えられる刺激も感じたことがないくらい気持ちよくて、私はどんどん快感の波に誘われて絶頂に向かっていた。
「あっあっあっ、だめ、きちゃう…あっああ、やっ、それは、ああああ!」
達しそうなことを伝えると、徳山くんは触って欲しがって主張していた突起をジュルルっとわざと音を立てるように吸い上げた。その刺激にあっという間に絶頂に到達してしまい、私はガクガクっと体を震わせて達した。
「んっ…可愛い。もっとしてあげる」
「んっ、やだ、待ってまだ…あっああ!いきなり、んっんっ…はぁん」
「2本はいちゃった。沢山舐めたから濡れ濡れ。俺の指を美味しそうに食べる梨沙が可愛い」
「んっんっ、あっ!そこ、あっあっあっ、ああん」
「可愛い。もっと乱れて、俺だけに見せて…」
指が動くたびに粘着質な音が鳴る、それに私の喘ぎ声と徳山くんの興奮したような吐息が空間を支配していた。
「あっあっ、あああ!」
「可愛すぎる、もう一回イッたら…」
「ひゃん!二つは、やっ、あっあっあっ、あああん」
「可愛い、好き。梨沙、好きだよ」
中を刺激されながら突起もこねるように押し潰されて、私は二つの快感に一気に絶頂に向かった。その後に色っぽい声で名前と気持ちを囁かれるとドキンっと胸が高鳴って、ブワァァァっと体から何かが溢れ始めた。
「あっあっ、イッ…イッチャ…あっああああ!」
溢れ出したものは勢いよく頭に向かって駆け抜けた。その瞬間に目の前が火花が散って、体を弓形にそらせるとガクガクと体が震えて私は達した。
「あー、我慢できない」
徳山くんは指を引き抜くと、ペロペロと指についた蜜を舐めてから、備え付けのスキンの袋を開けて、硬くなっているモノにつけ始めた。
その様子を快感の余韻に浸りながら眺めていると、さらに胸がドキドキし始めた。
(私、徳山くんと一つになるの!?)
そう思うだけで、興奮してしまう。早く一つになりたくて、装着した徳山くんが私の股の間に戻ってくると、両腕を伸ばして声をかけた。
「はやく、きて」
「~~っっ!だから煽るなって!」
顔を赤くしながら徳山くんは私の蜜壺に硬いモノをおしあてると、私の上に覆い被さった。私は両腕を徳山くんの首に回してギュっと抱き寄せると、ゆっくり中に入ってる感覚を感じた。
「あっ…はいって…る」
「ハァハァ…やばっ。中に入れただけで、興奮して出しそう…ああ、あったけぇ…そして中が俺を歓迎してる…最高」
ゆっくり根元まで入ってくると、私の中の壁は徳山くんの形を隅々まで記憶しようとウネウネと動いていた。この圧迫感は久々だけど、全く嫌な感じはしない。前は少し苦手だったのに。
むしろ、やっと一つになった喜びでいっぱいだった。
「嬉しい。徳山くんと一つ…」
「だから……もういい。煽った責任とってくれ」
徳山くんは股が広がるように私の膝裏に両腕を滑り込ませてからシーツに手をつくと、私の首筋に口付けながら腰を動かし始めた。
「はぁんぁん…あっあっ、あっああ、きもちっきもちぃ!」
「くっ、耳元で梨沙の声が…やべぇ、負けんな、まだ出すなよ、俺」
徳山くんは自分に言い聞かせるような呟きながらどんどん私の中を動き回った。私の弱い場所を探し当てるとずっとそこを狙ってくる。耳元から聞こえる息遣いや、抱きついている上半身から感じる体温さえも私に快感を与えた。
「あっあっ、ああ!それ、あっあっあああ!好きっ、好きっ…すきっ…はぁあああん!」
「っく…あっ、無理無理!でるっ」
気持ちよくて絶頂に達しながら無意識的に気持ちを伝えた私の締め付けと壁の動きに耐えられず、徳山くんは奥にグッと差し込んでスキン越しにドクドクと熱い精を注いだ。
「ハァハァ…まじで、やばい。俺こんなに早くないはずなのに…」
「…んっ…はぁ…好き…」
いまだ快感に酔いながらチュッチュッと次もねだるように徳山くんの首筋に口付けると、徳山くんはすぐに私の中から出て行って、素早く2袋目を開けてスキンをつけるとまた私の中に入ってきた。
「2枚じゃゴム足りん!!!」
「あっあああ!」
もう硬さを取り戻したモノは私をまたどんどん快感の波に誘って行った。私は徳山くんに抱きつきながら、両足を徳山くんのお尻に当ててもっと奥に入って欲しいと誘った。クネクネと腰を揺らしていると、徳山くんはさらに動きを早めた。
「ああああ!あっあっあっ、それ、いい!すきぃ!」
「俺も、俺も、好きだっ」
「すきっ、んっんっ…んん」
お互いに求め合うように口付けた。徳山くんがくれる刺激は全て気持ちがいい。
(こんなに気持ちがいいの初めて、こんなに感じたことない。本当に好きな人とするとこんなに違うの?知らなかった、知らなかった!)
徳山くんを離したくなくて、私は全身で絡みついた。徳山くんも私を離そうとせず、口づけをしながらも腰を動かし続けた。
「んっんん…ちゅっ…あっあっ、こう…へい…こう…しゅき…あああ!すきぃ!」
「だから、名前は…あああ、くっそ、可愛すぎる、はぁ、俺も好き、ずっと、梨沙だけっ!」
「あっああ!それ、ああ!つよっ…ひゃぁ、あっああ!らめっ、ひゃあああ!」
徳山くんは話しながら勢いをつけて奥に向かって突き上げてきた。その度に皮膚と皮膚がぶつかる音や粘着質な音が鳴る。刺激が強くて私はすぐに絶頂に達してしまった。
ビクビクと震えている私の頬や首筋に口付けながら、徳山くんは私を色っぽい顔で見つめてからニヤリと笑った。
「よし、2回目は耐えた。梨沙が可愛すぎて、マジでやばい。どこまで俺を溺れさせればいいの?」
「ハァハァ…だって、こんなに気持ちいいのはじめてなの」
トロンっとしたまま徳山くんを見つめると、私を愛おしそうに見つめて私の両腕を首から離させた。そしてお互いの両手を重ねると指を絡めるように手を繋ぎ、私の手の甲をシーツに押し付けた。
「俺も。こんなにいいのは初めて。俺、絶倫じゃないんだけど、今回は何度でもできそう。ゴムは追加で頼まなきゃな」
徳山くんは私に微笑むと、また私を絶頂の高みに誘い始めた。私はキュンキュンと胸がときめき、高鳴りながら与えられる刺激に酔った。
結局その日はホテルに泊まった。ゴムは私が寝てる間に追加されてた。抱きしめあって眠ったりで休憩も挟んで、追加した2枚とも使い切って土曜の昼頃には2人で手を繋いでホテルから出た。
「梨沙。俺の部屋こない?」
「え?今から?幸平の?」
「そう。合鍵渡すし、あとお泊まりセットもいるだろ?色々買ってからさ。俺も梨沙の部屋の合鍵ちょうだい。でも今日の夜は俺の部屋に泊まって」
大きな体を屈んで私の唇に口付けると、幸平は少し熱のこもった瞳で私を見つめた。この瞳に弱い私はコクンっと頷くと、幸平の左腕に絡みつくように抱きついた。
わざと胸を押し当てて上を見上げると、耳を赤くした幸平が私を見下ろしていた。
「いいよ。ゴムも買ってね」
「っっっ、もちろんですとも!!」
私の返答に顔も赤くしながら幸平は歩きはじめた。私はクスクスと笑いながら幸平の腕に頬を寄せて肩を並べて歩いた。
幸せ
この一言が頭に浮かんだ。そしてこんなに満たされた気持ちは初めてだった。
初恋は実らないって諦めてた。勇気がなくて踏み出せなくてウジウジしてた。でも…
チラッと上を見上げると、幸平が私の視線に気がついて微笑んだ。
「好き」
私がポツリと呟くと、幸平はまた顔を赤くして片手で顔を覆ってしまった。
「だめだ、俺よ、まだだめだ。買い物して、それから。な?うんうん、わかってる。でも可愛くてもダメだ。とにかく薬局行って沢山買って……」
幸平は自分に言い聞かせるようにぶつぶつ呟きながら私をくっつけたまま目的地に向かって歩いた。
私は幸平の様子が可愛くてクスクスっと笑うともう一度呟いた。
「だぁいすき」
「っっっ!!!待ってくれ、まだダメなの!あとで、ね?ね?」
その後、幸平は早歩きで私を連れ回した。薬局や服屋、スーパーを巡ってから電車に乗って幸平の部屋に向かった。
ずっと何かに追い立てられるようだった幸平は玄関に入って内鍵を閉めるなり、その場で私を押し倒した。
ついて早々、2人で服を脱がせあって廊下を歩いた。ワンルームの部屋に入ると、下着姿になって2人で口付けあいながらベッドにのぼった。そして、私は唇が離れた瞬間に溢れる気持ちを伝えた。
「好き」
「……っっ、俺も好きだから、わかったから!!」
がっつくように私に吸い付いてきた幸平が可愛くて、私はギュッと抱きしめた。
こらから先どうなるかわからない。私の初恋の実はカラカラに乾燥してた。でも気持ちを伝えるたびに潤いが増して、今は真っ赤に熟れている。
このままずっと一緒にいたい。そんな想いから心の中に浮かんだ言葉を刺激を感じながら幸平に伝えた。
「あっあっ…けっこ…ん…して…あっああ」
「っ!!それは俺が言うセリフ!!!」
幸平は悶えるように叫んだあと、私を優しく触って抱いた。
ずっと一緒にいよう。そう囁き合いながら。
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