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皆が笑顔※(最終話)
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「ナナ…」
「…んっ…なぁに?」
9月になって久しぶりに2人で出かけた。私達は2人とも肌を合わせたくてすぐにホテルに篭った。傷は薄くなってわからなくなったが、キョウは私の全身を確認するために隅々まで舐めて吸って愛撫した。
2回キョウが達した頃に私とキョウはベッドで抱き合いながら顔を見合わせていた。
「あのさ」
「うん」
「こんな姿でいうの、ムードないんだけど…」
「うん」
キョウは少しモジモジしながら言葉を濁した。私が何を言われるのかさっぱりわからず首を傾げると、キョウは急に起き上がってベッドから出ると本人のカバンから何かを取り出した。
「ナナ。結婚しよう」
「えっ」
キョウはそう言うと、ベッドの近くの床に跪いた。私は展開にびっくりして上半身を起こして、シーツで胸元を隠しながら全裸のキョウを見つめた。
「あの事件があって、ナナがボロボロになった姿を見て…もう、辛かった。俺が、夫だと。だから近寄るなと、盾になりたかった。手続きにしろ、夫でもなく婚約者でもない俺は…何も力になれなかった。悔しかった。もうナナをあんな目に合わせたくない。ずっと俺だけのナナにしたい。だから、結婚してください!!」
キョウは取り出した小箱をパカリと開けて私に差し出してきた。その中には指輪が入っていた。それは小ぶりながらもシンプルで上品なダイヤがついた指輪だった。私のような年齢の女性でも普段使いできそうな指輪であり、私の好みでもあった。
私はそれを見て口元を手で押さえて、黙ってしまった。私が何も言わないことにキョウは不安になったのか、上目遣いで私の様子を伺った。
私はどんどん喜びでいっぱいになった。そして、裸のままプロポーズしているキョウが面白い。色々な感情があふれてしまい、私は泣きながら笑って返事を返した。
「はい。よろしくお願いします」
「やったぁぁぁぁ!!!」
キョウは嬉しそうに立ち上がると私に飛びついてきた。股間にぶら下がってるものが見えるし、私も裸だし。場面だけ見れば滑稽だ。
でも私はとても幸せでたまらなかった。
左手の薬指に指輪をはめてもらい、2人で泣いて抱き締めあった。
「婚約指輪にしては…その…安いんだけど…結婚指輪と一緒につけて欲しくて。あまりダイヤが大きいと引っかかったりして邪魔でしょ?」
「ふふ。そうだね。でも仕事や料理の時は外さなきゃいけないかな。だから、外に出かける時は必ずつけるね。結婚指輪がこの指にはまっても」
「うん。ああ、やっとやっと…ナナが俺のナナになった」
キョウはそう言って私をベッドに押し倒した。
「えっえ、待って?」
「待てない」
「もう2回したから無理でしょ?」
「無理じゃない。ほら」
キョウは私の手を掴んで股間に当てさせた。そこにはすでに硬くなったモノがあって、頭を上に持ち上げていた。
「うそ」
「だから、いいよね?」
「あっ、まっ、まって!」
「だから待てないって」
キョウはそのまま私の股を広げると、硬くなったモノをピタリと蜜壺に当ててきた。
「生でもいい?」
「………」
「生理は先週だったよね?」
「うっ」
「もし子供ができても、俺精一杯サポートする。今回だけ。お願い…」
「ぅうう、わ、わかったよ…今回だけだよ?」
「うん、やった。一年前のあの感触が…忘れられないんだ」
「あっあっ、んんん」
キョウは嬉しそうに笑うとスキンをつけていないまま私の中に入ってきた。久しぶりに皮膚が中に入ってくる感覚に私の体はブルリと震えた。
「ぁっぁ…あん」
「あー、奥まで入っちゃった。あー、あったかい。気持ちいい…ナナ、奥をたくさん突いてあげるね」
キョウは私の両膝の間に腕を入れて大きく広げると覆い被さった。そして奥の弱い場所めがけて腰を振り始めた。
「はぁん!あっあっあっ、ああ、奥っ…おくぅ」
「んっ…すごい吸い付き。奥、気持ちいい?」
「ぁっあっ、いい!いい!」
すでに奥で感じる喜びを知ってしまった私は与えられる刺激に夢中になった。キョウは私の首筋を吸ったり、唇を吸ったりしながらどんどん刺激与えた。
「ああん!イクっ…あっ、だめ、奥!」
「ハァハァ…どんどん子宮が降りてきてるね。奥を突きやすい…あー、だめ、生だともたない…。限界だから、本気出すね」
「えっあっあん!はげしっ…ひゃぁっ…あっあっあっ、イイ!イイ!ああっ、だめ、あっああああ!」
「あー、でる、奥に…出すね…ナナっ!」
キョウは私を激しく揺さぶって快感を与えた。快感の波はすぐに絶頂に向かってのぼり、目の前がチカチカしてきた頃に頭に何か突き抜けていくと私はビクビクと体を震わせて達した。
キョウは私の中のうねりに耐えられず、数回腰を振ってから奥の窄まりに先端を押し付けるようにしてドクドクと熱い精を私の中に注いだ。
「あっ…ああ…出てる…」
「んっ、3回目だから量も少ないし濃くないけどね」
出された感覚を感じているとキョウは私の頬や首筋、鎖骨に口づけを落とした。そして少しずつ柔らかくなったモノをズルリと抜き取ると、私の蜜壺を見つめて微笑んだ。
「これで正真正銘俺のナナだね」
「ナニソレ」
「あー、生すごい気持ちい。パイプカットしてこようかな」
「…ナニソレ…」
快感の余韻に浸りつつ、キョウの戯言にツッコミを入れながら私は倒れ込んできたキョウを抱きしめた。
「愛してるよ、ナナ」
「私も愛してる」
お互いに見つめあって口付けた。
再会は最悪の展開から始まった。でも…
(終わりよければすべてよしよね)
私は甘えてくるキョウの頭を撫でながら、幸せを噛み締めた。
ーーーー3年後ーーー
「お母さん!授業参観なんだけど…」
「ママ!俺もあるよ!」
「でしょうね。貴方達2人同じ学年だし、同じ学校だし。でもクラス違うから交互に行くね」
「じゃ、去年は翼くんからだったから今年は私からねっ!」
「えー!!美桜ちゃんそりゃないよ!」
「はいはい。そうね、順番ね」
中学3年になった2人は同い年なため、双子のように仲が良くなった。行事についてはいつも私の取り合いだ。朝食を食べながら家族の会話でおきた出来事をキョウは寂しそうに眺めていた。
「美桜、パパも行くよ?」
「うん。知ってる。でもお母さんがいい」
「ガーン」
キョウが縋るような声で美桜ちゃんに話しかけると、キッパリとした声で返答されていた。毎年恒例のやりとりを眺めてから、私は高校2年になった翔に話しかけた。
「翔は進路どうするか決めた?もう2年の夏だし受験の本腰入れなきゃでしょ?」
「うん。とりあえず…弁護士になりたいかな」
「ええ!?」
翔は昔の宣言通り、勉強をとても頑張った。高校も進学校に通い、成績も上位をキープしている。しかし何故弁護士なのかと私が首を傾げるとキョウが私に耳打ちしてきた。
「マスターの姿見て憧れたんだって」
「ああ」
私達親子はマスターこと佐藤さんと交流を深めていた。翔は佐藤さんが父親のことで私の手助けをしたことを知っているし、親しくすればするほど憧れるようになったようだ。
「昔はキョウみたいになりたいって言ってたのに…」
「え!?そうなの!?」
「あーあ、佐藤さんにとって変わられたねぇ。残念だねぇ」
「嘘、マジ!ねぇ、翔!そうなの!?」
「うるさいなぁ。父さんはいつもうるさい。あー、モウガッコウオクレチャウ。イッテキマース」
翔はそれだけ言うと立ち上がって、食べ終わった食器をシンクに置いてからさっさとリビングから出て行った。
「ね、翼は父さんが目標だよね!?」
「えー?うーん、どうかな。わかんねぇや。じゃ、行ってきます」
翼も翔を追いかけるように立ち上がると、食器をシンクに置いてから出て行った。
「み、美桜…」
「しらなぁい」
2人の息子に振られたキョウは美桜ちゃんに縋ろうとした。しかし愛娘にも軽くあしらわれてしまってガックリと肩を落とした。美桜ちゃんも立ち上がると、食器をシンクに置いてからリビングから出て行ってしまった。
「ドンマイ」
「うっうう。段々と俺の扱いがひどく…」
「それはさぁ、毎日私にくっついて甘えてるからじゃない?威厳の〈い〉の字もないもん」
「うっうう。でもナナにくっつけないなんて…無理、考えられない!」
「はいはい。さて、私も仕事行かなきゃ」
「…寂しい!このまま置いてかないで!」
「洗い物お願いねー」
「ナナァァァァ!」
叫ぶキョウをほっといて、私も立ち上がって食器をシンクに置いてから通勤カバンを手に取った。そしてリビングから出る前に振り返るとキョウに話しかけた。
「今夜はお楽しみね?」
「っっ!?!」
「イッテキマース」
「ナナァァァァ!!」
キョウが嬉しそうな顔になった後に私が突き放したため、キョウはまた叫んだ。それが面白くて私は振り返らずにリビングに出た後にクスクスと笑った。
「ママ。父さんいじめすぎないでよ?後々こっちにくるから」
「「そうそう」」
「えー?いじめてないよー?」
鞄を持って子供達は玄関で少し話していたようで、私が出てくると玄関の扉を開けながら翔が話しかけてきた。翔の言葉に翼も美桜ちゃんも頷く。私はとぼけながら笑って靴を履くと、子供達を追いかけるように玄関から出た。
我が家は今一戸建てに住んでいる。
結婚してすぐに家を建てた。費用はキョウが全部出してくれた。どこからそんな大金が出てくるのかと驚いたが、キョウは笑って教えてくれなかった。
5LDKの家は家族みんなの希望を盛り込んだ家だ。とても住みやすく、引っ越ししてからさらに結束力が強まった気がする。
プロポーズされて、翌月には入籍を済ませた。入籍するまでの1ヶ月の間に私の両親、キョウの両親と子供達含めて面会をした。キョウはガチガチに緊張していたし、私もキョウの両親に会う時はとても緊張した。
でもどちらの親もそれぞれの子供が私達に懐いている様子を見て安堵したのか、反対されずにすんなりと受け入れてもらえた。
結婚式はお互いに2回目だということもありしなかった。その代わり写真を撮った。もちろん家族写真もある。
リビングのよく見える場所にキョウと私のタキシードとウエディング姿の写真。そしてその隣に、その姿の私達の周りにフォーマルな服を着た子供達と撮った写真が飾られている。
そして、プロポーズされた日に避妊せずに行為をしたが、授かることはなかった。少し寂しさを感じながらも、これからのことを考えると安堵もした。
キョウは宣言通り、パイプカットをしてきた。それも私に内緒でだ。だから、今では避妊をすることはほとんどなくなった。排卵日が近い時だけ念のためにしているぐらいだ。
夫婦仲は良好だ。夜の生活も週に3回はある。デートは月に一回。家で肌を重ねることができるから、ホテルには行かなくなった。
私達は皆、加藤になった。息子達の希望で養子縁組したからだ。
ただ、美桜ちゃんと翔は今年からお付き合いを始めている。まだまだ清い付き合いのようだ。
キョウはそれを知った時に寂しそうにしていたが、反対はしなかった。こっそり泣いてはいたが…。翼は2人が付き合っていることを聞いても嬉しそうに笑っているだけで、実は彼女がいると告白をしてきたほどだ。なんともちゃっかりしている。
2人が結婚するかはわからない。ただ連れ子同士であれば、結婚は許されている。私とキョウは2人を暖かく見守ることにした。
あれから貴史は大人しくなったそうだ。今では年賀状が届くぐらいだ(私の実家に)。まだ1人でいるらしい。正直、あの人の情報は耳にも入れたくない。でも、子供達が将来的に面会するかもしれない。それを考えると、毎年届く便りを渋々許している状態だ。ちなみに、自宅に持ち帰りはしない。子供達が見てしまう可能性があるからだ。返事も返していない。私達の幸せな姿を見せるのも嫌だからだ。この暗い感情もいつか飲み込めるのだろうか。今はまだわからない。
菜々子さんは今、結婚を前提で付き合っている人がいるそうだ。子供は望んでいない様子だが、キョウよりもいい男を捕まえたと自慢の連絡が来た(キョウの仕事用のアドレスに)。前向きになった菜々子さん。見せてもらった文章を見ても幸せである事が伝わった。キョウと2人で返事を考えて返信したが、菜々子さんからは特に返事はなかった。今後、美桜ちゃんが菜々子さんと会うかはまだわからない。でも、1人の女として菜々子さんが前向きになって、幸せな事はとても喜ばしかった。
色々なことがあった。でも、私は幸せだ。
ずっとずっと、幸せに暮らせますように。
そんなことを思いながら青く広がる空と遠くで楽しそうに笑って会話をする子供達を眺めて、私は仕事へ向かった。
「…んっ…なぁに?」
9月になって久しぶりに2人で出かけた。私達は2人とも肌を合わせたくてすぐにホテルに篭った。傷は薄くなってわからなくなったが、キョウは私の全身を確認するために隅々まで舐めて吸って愛撫した。
2回キョウが達した頃に私とキョウはベッドで抱き合いながら顔を見合わせていた。
「あのさ」
「うん」
「こんな姿でいうの、ムードないんだけど…」
「うん」
キョウは少しモジモジしながら言葉を濁した。私が何を言われるのかさっぱりわからず首を傾げると、キョウは急に起き上がってベッドから出ると本人のカバンから何かを取り出した。
「ナナ。結婚しよう」
「えっ」
キョウはそう言うと、ベッドの近くの床に跪いた。私は展開にびっくりして上半身を起こして、シーツで胸元を隠しながら全裸のキョウを見つめた。
「あの事件があって、ナナがボロボロになった姿を見て…もう、辛かった。俺が、夫だと。だから近寄るなと、盾になりたかった。手続きにしろ、夫でもなく婚約者でもない俺は…何も力になれなかった。悔しかった。もうナナをあんな目に合わせたくない。ずっと俺だけのナナにしたい。だから、結婚してください!!」
キョウは取り出した小箱をパカリと開けて私に差し出してきた。その中には指輪が入っていた。それは小ぶりながらもシンプルで上品なダイヤがついた指輪だった。私のような年齢の女性でも普段使いできそうな指輪であり、私の好みでもあった。
私はそれを見て口元を手で押さえて、黙ってしまった。私が何も言わないことにキョウは不安になったのか、上目遣いで私の様子を伺った。
私はどんどん喜びでいっぱいになった。そして、裸のままプロポーズしているキョウが面白い。色々な感情があふれてしまい、私は泣きながら笑って返事を返した。
「はい。よろしくお願いします」
「やったぁぁぁぁ!!!」
キョウは嬉しそうに立ち上がると私に飛びついてきた。股間にぶら下がってるものが見えるし、私も裸だし。場面だけ見れば滑稽だ。
でも私はとても幸せでたまらなかった。
左手の薬指に指輪をはめてもらい、2人で泣いて抱き締めあった。
「婚約指輪にしては…その…安いんだけど…結婚指輪と一緒につけて欲しくて。あまりダイヤが大きいと引っかかったりして邪魔でしょ?」
「ふふ。そうだね。でも仕事や料理の時は外さなきゃいけないかな。だから、外に出かける時は必ずつけるね。結婚指輪がこの指にはまっても」
「うん。ああ、やっとやっと…ナナが俺のナナになった」
キョウはそう言って私をベッドに押し倒した。
「えっえ、待って?」
「待てない」
「もう2回したから無理でしょ?」
「無理じゃない。ほら」
キョウは私の手を掴んで股間に当てさせた。そこにはすでに硬くなったモノがあって、頭を上に持ち上げていた。
「うそ」
「だから、いいよね?」
「あっ、まっ、まって!」
「だから待てないって」
キョウはそのまま私の股を広げると、硬くなったモノをピタリと蜜壺に当ててきた。
「生でもいい?」
「………」
「生理は先週だったよね?」
「うっ」
「もし子供ができても、俺精一杯サポートする。今回だけ。お願い…」
「ぅうう、わ、わかったよ…今回だけだよ?」
「うん、やった。一年前のあの感触が…忘れられないんだ」
「あっあっ、んんん」
キョウは嬉しそうに笑うとスキンをつけていないまま私の中に入ってきた。久しぶりに皮膚が中に入ってくる感覚に私の体はブルリと震えた。
「ぁっぁ…あん」
「あー、奥まで入っちゃった。あー、あったかい。気持ちいい…ナナ、奥をたくさん突いてあげるね」
キョウは私の両膝の間に腕を入れて大きく広げると覆い被さった。そして奥の弱い場所めがけて腰を振り始めた。
「はぁん!あっあっあっ、ああ、奥っ…おくぅ」
「んっ…すごい吸い付き。奥、気持ちいい?」
「ぁっあっ、いい!いい!」
すでに奥で感じる喜びを知ってしまった私は与えられる刺激に夢中になった。キョウは私の首筋を吸ったり、唇を吸ったりしながらどんどん刺激与えた。
「ああん!イクっ…あっ、だめ、奥!」
「ハァハァ…どんどん子宮が降りてきてるね。奥を突きやすい…あー、だめ、生だともたない…。限界だから、本気出すね」
「えっあっあん!はげしっ…ひゃぁっ…あっあっあっ、イイ!イイ!ああっ、だめ、あっああああ!」
「あー、でる、奥に…出すね…ナナっ!」
キョウは私を激しく揺さぶって快感を与えた。快感の波はすぐに絶頂に向かってのぼり、目の前がチカチカしてきた頃に頭に何か突き抜けていくと私はビクビクと体を震わせて達した。
キョウは私の中のうねりに耐えられず、数回腰を振ってから奥の窄まりに先端を押し付けるようにしてドクドクと熱い精を私の中に注いだ。
「あっ…ああ…出てる…」
「んっ、3回目だから量も少ないし濃くないけどね」
出された感覚を感じているとキョウは私の頬や首筋、鎖骨に口づけを落とした。そして少しずつ柔らかくなったモノをズルリと抜き取ると、私の蜜壺を見つめて微笑んだ。
「これで正真正銘俺のナナだね」
「ナニソレ」
「あー、生すごい気持ちい。パイプカットしてこようかな」
「…ナニソレ…」
快感の余韻に浸りつつ、キョウの戯言にツッコミを入れながら私は倒れ込んできたキョウを抱きしめた。
「愛してるよ、ナナ」
「私も愛してる」
お互いに見つめあって口付けた。
再会は最悪の展開から始まった。でも…
(終わりよければすべてよしよね)
私は甘えてくるキョウの頭を撫でながら、幸せを噛み締めた。
ーーーー3年後ーーー
「お母さん!授業参観なんだけど…」
「ママ!俺もあるよ!」
「でしょうね。貴方達2人同じ学年だし、同じ学校だし。でもクラス違うから交互に行くね」
「じゃ、去年は翼くんからだったから今年は私からねっ!」
「えー!!美桜ちゃんそりゃないよ!」
「はいはい。そうね、順番ね」
中学3年になった2人は同い年なため、双子のように仲が良くなった。行事についてはいつも私の取り合いだ。朝食を食べながら家族の会話でおきた出来事をキョウは寂しそうに眺めていた。
「美桜、パパも行くよ?」
「うん。知ってる。でもお母さんがいい」
「ガーン」
キョウが縋るような声で美桜ちゃんに話しかけると、キッパリとした声で返答されていた。毎年恒例のやりとりを眺めてから、私は高校2年になった翔に話しかけた。
「翔は進路どうするか決めた?もう2年の夏だし受験の本腰入れなきゃでしょ?」
「うん。とりあえず…弁護士になりたいかな」
「ええ!?」
翔は昔の宣言通り、勉強をとても頑張った。高校も進学校に通い、成績も上位をキープしている。しかし何故弁護士なのかと私が首を傾げるとキョウが私に耳打ちしてきた。
「マスターの姿見て憧れたんだって」
「ああ」
私達親子はマスターこと佐藤さんと交流を深めていた。翔は佐藤さんが父親のことで私の手助けをしたことを知っているし、親しくすればするほど憧れるようになったようだ。
「昔はキョウみたいになりたいって言ってたのに…」
「え!?そうなの!?」
「あーあ、佐藤さんにとって変わられたねぇ。残念だねぇ」
「嘘、マジ!ねぇ、翔!そうなの!?」
「うるさいなぁ。父さんはいつもうるさい。あー、モウガッコウオクレチャウ。イッテキマース」
翔はそれだけ言うと立ち上がって、食べ終わった食器をシンクに置いてからさっさとリビングから出て行った。
「ね、翼は父さんが目標だよね!?」
「えー?うーん、どうかな。わかんねぇや。じゃ、行ってきます」
翼も翔を追いかけるように立ち上がると、食器をシンクに置いてから出て行った。
「み、美桜…」
「しらなぁい」
2人の息子に振られたキョウは美桜ちゃんに縋ろうとした。しかし愛娘にも軽くあしらわれてしまってガックリと肩を落とした。美桜ちゃんも立ち上がると、食器をシンクに置いてからリビングから出て行ってしまった。
「ドンマイ」
「うっうう。段々と俺の扱いがひどく…」
「それはさぁ、毎日私にくっついて甘えてるからじゃない?威厳の〈い〉の字もないもん」
「うっうう。でもナナにくっつけないなんて…無理、考えられない!」
「はいはい。さて、私も仕事行かなきゃ」
「…寂しい!このまま置いてかないで!」
「洗い物お願いねー」
「ナナァァァァ!」
叫ぶキョウをほっといて、私も立ち上がって食器をシンクに置いてから通勤カバンを手に取った。そしてリビングから出る前に振り返るとキョウに話しかけた。
「今夜はお楽しみね?」
「っっ!?!」
「イッテキマース」
「ナナァァァァ!!」
キョウが嬉しそうな顔になった後に私が突き放したため、キョウはまた叫んだ。それが面白くて私は振り返らずにリビングに出た後にクスクスと笑った。
「ママ。父さんいじめすぎないでよ?後々こっちにくるから」
「「そうそう」」
「えー?いじめてないよー?」
鞄を持って子供達は玄関で少し話していたようで、私が出てくると玄関の扉を開けながら翔が話しかけてきた。翔の言葉に翼も美桜ちゃんも頷く。私はとぼけながら笑って靴を履くと、子供達を追いかけるように玄関から出た。
我が家は今一戸建てに住んでいる。
結婚してすぐに家を建てた。費用はキョウが全部出してくれた。どこからそんな大金が出てくるのかと驚いたが、キョウは笑って教えてくれなかった。
5LDKの家は家族みんなの希望を盛り込んだ家だ。とても住みやすく、引っ越ししてからさらに結束力が強まった気がする。
プロポーズされて、翌月には入籍を済ませた。入籍するまでの1ヶ月の間に私の両親、キョウの両親と子供達含めて面会をした。キョウはガチガチに緊張していたし、私もキョウの両親に会う時はとても緊張した。
でもどちらの親もそれぞれの子供が私達に懐いている様子を見て安堵したのか、反対されずにすんなりと受け入れてもらえた。
結婚式はお互いに2回目だということもありしなかった。その代わり写真を撮った。もちろん家族写真もある。
リビングのよく見える場所にキョウと私のタキシードとウエディング姿の写真。そしてその隣に、その姿の私達の周りにフォーマルな服を着た子供達と撮った写真が飾られている。
そして、プロポーズされた日に避妊せずに行為をしたが、授かることはなかった。少し寂しさを感じながらも、これからのことを考えると安堵もした。
キョウは宣言通り、パイプカットをしてきた。それも私に内緒でだ。だから、今では避妊をすることはほとんどなくなった。排卵日が近い時だけ念のためにしているぐらいだ。
夫婦仲は良好だ。夜の生活も週に3回はある。デートは月に一回。家で肌を重ねることができるから、ホテルには行かなくなった。
私達は皆、加藤になった。息子達の希望で養子縁組したからだ。
ただ、美桜ちゃんと翔は今年からお付き合いを始めている。まだまだ清い付き合いのようだ。
キョウはそれを知った時に寂しそうにしていたが、反対はしなかった。こっそり泣いてはいたが…。翼は2人が付き合っていることを聞いても嬉しそうに笑っているだけで、実は彼女がいると告白をしてきたほどだ。なんともちゃっかりしている。
2人が結婚するかはわからない。ただ連れ子同士であれば、結婚は許されている。私とキョウは2人を暖かく見守ることにした。
あれから貴史は大人しくなったそうだ。今では年賀状が届くぐらいだ(私の実家に)。まだ1人でいるらしい。正直、あの人の情報は耳にも入れたくない。でも、子供達が将来的に面会するかもしれない。それを考えると、毎年届く便りを渋々許している状態だ。ちなみに、自宅に持ち帰りはしない。子供達が見てしまう可能性があるからだ。返事も返していない。私達の幸せな姿を見せるのも嫌だからだ。この暗い感情もいつか飲み込めるのだろうか。今はまだわからない。
菜々子さんは今、結婚を前提で付き合っている人がいるそうだ。子供は望んでいない様子だが、キョウよりもいい男を捕まえたと自慢の連絡が来た(キョウの仕事用のアドレスに)。前向きになった菜々子さん。見せてもらった文章を見ても幸せである事が伝わった。キョウと2人で返事を考えて返信したが、菜々子さんからは特に返事はなかった。今後、美桜ちゃんが菜々子さんと会うかはまだわからない。でも、1人の女として菜々子さんが前向きになって、幸せな事はとても喜ばしかった。
色々なことがあった。でも、私は幸せだ。
ずっとずっと、幸せに暮らせますように。
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