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会話不足
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結局、貴史からはそれからずっと連絡はなかった。1週間たっても、2週間たっても、1ヶ月たっても、3ヶ月たっても反応はなかった。
私たちはその間も、皆で楽しく過ごした。
一月末には美桜ちゃんの誕生会をした。もちろん皆でプレゼントを渡した。ちなみに、翔は少ないお小遣いで花のモチーフがついたヘアピンを贈っていた。美桜ちゃんはそれを髪の毛につけて「似合う?」っと頬を赤く染めて翔に感想を求めていた。なんとも初々しい。
その様子を見ていたキョウは美桜ちゃんの恋に気がついたようだ。
「まだ、お付き合いじゃない。そう。まだ…」
キョウはしばらくそんな事をぶつぶつ呟いて、部屋の隅っこで丸くなっていた。翼はそんなキョウを心配したのか「お腹痛いの?」と声をかけるし、キョウは翼の優しさに堪えていた涙を出して嫌がる翼を抱きしめて泣いていた。
美桜ちゃんは、それを見てなんとも言えない顔になっていた。でも私が気にしないように声をかけるとホッと息をついていた。娘なりに父親が心配なのだなと思うと、心がほっこりした。
まぁ、我が子の恋を目の前で見るのは複雑であることはわかる。だが、まだ嫁いでいくわけでもないのに泣かなくてもいいだろう。そんな気持ちになりつつも、キョウを少しだけ励まして楽しい誕生会を終えた。
それ以外は変わりない毎日だし、いつも同じように過ごすが皆が笑顔だった。息子達が喧嘩を始めても、美桜がちゃんが仲裁してくれる。私とキョウが少し言い争いをしても、子供達が間に入ってくれた。
私たち5人は皆で皆を支えて生活するようになっていた。そして4月になって子供達は新学期が始まった。美桜ちゃんと翼はまた同じクラスになった。キョウは今年も運動会に一緒に行く口実ができたと大喜びした。
月に一回のデート。それは今でも続いている。
エッチは月に一回。デートの時は必ずしていた。時折子供達がデート以外でも大人に時間をくれる時があったため、そんな時は月に2回。回数は少ないが、その時間はとても濃密でお互いに満足していた。
「あー、今回のホテルは当たりだったなー」
「うん。過ごしやすかったね」
5月のデートの日。私たちは午前からお互いに体を貪りあった。過ごしやすいホテルだったため、昼ごはんもそこで食べて、14時ごろにホテルを出た。気怠い体ではあるが、その怠さがまた幸せだった。
私達は手を繋いで歩きながら見つけたカフェで休むことにした。
「この後どうしようか」
「うーん。仕事用のシャツが買いたいかな。何だか最近ボタンが…」
「え、体が丸くなった感じはないけど…あれ?もしかして…俺がたくさん揉んだ…いて!」
「人がいるところで変なことを言わないで!」
キョウの頭を叩いて言葉を遮って、私はぷんぷんと怒った。キョウは笑いながら謝ってきたが、別に本当に怒ってるわけではなかったため、すぐに許して届いたコーヒーを楽しんだ。
そんな時間を過ごしていたら、急に私たちに向かって金切り声で叫ばれた。
「どうして!!!!」
声がした方向へ私たちが目を向けると、数人の女性と共に店にやってきたと思われる菜々子さんがそこにいた。
「あっくん!なんで!なんで!!なんでそんな顔をこの人にしてるの!!!」
菜々子さんは連れていた女性達から離れてこちらに向かってきた。連れの女性達は困ったような顔になって菜々子さんを引き止めようとするが、菜々子さんはすごい剣幕でそれを振り解いた。そして連れの女性達に何かを言ってから、私たちがいるテーブルへとやってきた。
友人であろう女性達は戸惑った顔や困惑した顔になりつつ、菜々子さんを置いて店から出て行ってしまった。友人を1人残していく様子から、そこまで親しい関係性ではなさそうだった。
一連の流れを見ながら、キョウは向かい側の席から私の隣の席に座って手を握ってきた。私も菜々子さんの様子が怖くて不安だったため、その手を握り返していた。
「菜々子。周りに迷惑だよ。そんな大きな声を出して」
「あっくんなんで?ねぇ、どうして私たちの家にもういないの!帰ったのに…」
「離婚に同意して成立した時点で、あの家は菜々子の家ではないし、家族ではないのだから引っ越し先に一緒に来るわけないだろ?」
「違う違う違う!私たちはまだ離婚なんてしない!!!」
菜々子さんは頭をブンブンと横に振った。せっかくセットされた髪型も乱れているし、涙を流しているから化粧もボロボロになり始めている。
「ナナ、ごめん。移動して話してもいいかな?」
「うん」
「菜々子。店に迷惑かかってるから、移動しよう。ここは騒ぐような店じゃない」
「違う違う違う」
ぶつぶつと呟く菜々子さんを無理矢理引っ張って私たちは会計してカフェを出た。キョウが乱暴に菜々子さんの鞄を掴んで引っ張っているのに、菜々子さんは「あっくん。あっくん」と言ってどこか嬉しそうにしながらついてきた。私はその異様な状態に恐怖しつつ、近くのファミレスへ3人で入った。
なるべく人がいない、奥の席に案内してもらって飲み物を3人分頼んだ。私とキョウが一緒に座り、菜々子さんは向かいに1人座った。
通路側にキョウが座ったため、私はその席から移動できない。キョウが菜々子さんの隣ではなく私の隣を選択したことに、菜々子さんは恨めしそうな目で私を睨んでいた。
「菜々子。睨むのは違うだろ」
「だって、あっくんは私のあっくんだもん」
「前まではな。それを放棄させるようなことをしたのは誰だ?」
キョウの冷たい声に菜々子さんは黙ってしまった。私は届いたカフェオレを飲みながら2人の様子を見守った。
「だって、あっくんが…」
「ご両親との話し合いの時も、自分のこと擁護してばかりだったな。自分の親が頭を下げているのに、菜々子は喚いてばかり。反省すらせず、本当うんざりだよ。それに離婚に同意してサインしただろ?」
「あれは、しないと…あっくんが許してくれないって思ったから…」
「あのな。離婚したら許されるだなんて勘違いはやめろ。許すか許さないかは、浮気された側が決めることであって浮気した側の物差しで決めるもんじゃない。俺は一言も離婚したら許すだなんて言ってないと思うが?」
キョウが菜々子さんに向ける言葉はトゲトゲしかった。菜々子さんはそれが刺さるたびに「あう」とか「でも」とか言って反論しようとするが、うまく言葉が出ない様子だ。
「だって…」
菜々子さんはそれだけ呟くと、俯いて肩を震わせ始めた。とても綺麗な服を着て、可愛らしい顔をして、弱々しい菜々子さんが泣く姿は周りから見たら私達が虐めてるように見えているかもしれない。それぐらい菜々子さんの様子は弱々しかった。
キョウは何も言わずにコーヒーを飲んで菜々子さんを冷たい目で眺めている。私は空気になろうと決めて息を潜めた。
「だって…あっくん、私のこと見てくれない」
「は?」
菜々子さんは弱々しく呟くとポツリポツリ話を始めた。キョウは冷たい反応をしながらも話に耳を傾け始めた。
「あっくん、かっこいいから…付き合う前からたくさんの女性に囲まれてた。その中で、私が選ばれた時は本当に嬉しかった。隣にいて相応しい女性になろうって、苦手な料理をしてみたり…あっくんの部屋に行くたびに不器用ながらも掃除したり。失敗した料理を出してもあっくんは喜んでくれたし、少しの失敗も許してくれた。でもいつもどこか、私を通してどこか遠くを見てたの」
そこまで言うとまた、菜々子さんはポロポロと涙を流した。そしてひっくひっくと声を出して、しゃくりあげながら話を続けた。
「それでも…結婚してって…ひっく…プロポーズされて嬉しかった。誰かを…ひっく…見ててもいい。今は私のあっくんだ、ひっく…そう…思えたから」
私は涙を拭かずに泣く菜々子さんが痛々しくて胸が苦しくなった。そして、自分のカバンからハンカチを取り出すと菜々子さんに手渡した。菜々子さんは一瞬顔を上げてハンカチと私を見つめてから、軽く頭を下げて受け取ると涙を拭きながら話を続けた。
「結婚して、美桜がお腹に宿ってから…ひくっ…あっくんはあまり遠くを見なくなった。私だけを見てる。すごく幸せだった。でも、でも…ひくっ…美桜が生まれてから…、美桜ばっかりかまってた」
「赤ちゃんをかまうのは当たり前だろ?」
「違うの!違う…違う…。私には向けないすごくすごくすごく、優しい笑顔で、顔で、瞳で、美桜を見つめてたの。私に少し似た美桜が可愛くて仕方がないって。そしたら、あっくんが私を…見ていない。そう思ったの」
話をしながら段々と落ち着いてきたのか、しゃくり声がおさまってきた。しかしまだ涙は出るようで私のハンカチは涙の跡でいっぱいになっている。キョウは菜々子さんの言葉を聞いて片眉を上げるとジロリと睨んだ。
「だから、一歳にもならない美桜が甘えていてもほったらかし。断乳してすぐにミルクに切り替え、オムツ変えも、沐浴も…美桜の世話を放棄したのか?」
「だって、美桜が…憎らしかったの。私が放棄すればするほど、あっくんは美桜ばかり。それに気がついてはいたけど、もう世話することが出来ないくらい1人の女として美桜が憎かったの。あっくんは何も言わずに私が放棄したことを楽しそうに…楽しそうにするの。私を置いて、美桜と2人っきりの世界…寂しかった」
「なんだよそれ…」
キョウは深いため息を吐くと頭を抱えた。菜々子さんはまた俯いてポロポロと涙を流している。私はどう反応していいか分からず、とりあえず頭を抱えたキョウの太ももにそっと手を添えた。キョウは私にチラリと目線を向けてから顔を上げると、菜々子さんに話しかけた。
「菜々子。すごく自分勝手なこと言ってるってわかってるか?」
とても冷たいキョウの声を聞いた菜々子さんはビクッと体を震わせた。
「あっくんが、美桜に向けた笑顔を、瞳を、私にも向けてくれなかったからじゃん!!同じようにしてくれれば、美桜を憎むことなんてなかった!」
「…じゃあ、俺がその時に美桜と菜々子を同じように扱えば美桜の育児を放棄せず、付き合ってた頃のように苦手なことを頑張って、浮気も不倫もしなかった。そう言いたいのか?」
「そうだよ。全部、あっくんが原因なんだもん。あっくんが初めから私を見つめてくれればよかったのに、遠くを見てるから…」
菜々子さんは常に不安を感じていたのかもしれない。自分ではない何かに想いを馳せる好きな人。振り向かせたくて努力をして手に入れた結婚。そしてお腹に宿ってる子供を育てる間の幸せな時間。それが美桜ちゃんが生まれたことで不平不満が爆発してしまった。私にはそんな風に捉えることができた。
キョウはぎりっと下唇を噛むと、何かを考えている様子だ。菜々子さんはその顔を見て少しキョウに怒っているような顔になっていた。
「確かに、菜々子に出会ってからも出会う前も、俺の心にいたのは別の女性だ」
「ほらやっぱり!」
「でもな、結婚を決めた時には菜々子を真剣に愛してた。打算的な気持ちで初めは付き合ってた。でも心の中にいた女性はいい思い出にしよう、そう思えたから結婚を決めたんだ。美桜がお腹に宿った時、すごく嬉しかった。愛する人との子供だぞ?嬉しいに決まってる。だから生まれた美桜が愛しくて仕方なかった。その時の俺は菜々子のことも同じように大事にしてた。同じように見つめてた。付き合った当初から不安にさせてたのは悪かった。でも、あの時の俺の愛を否定することを言われたら困る。本当に俺は…」
キョウは目頭を指で押さえて声を押し殺した。何かを思い出して涙が溢れそうになったようだ。私は慰めるようにキョウの太ももに置いた手で太ももを優しく撫でた。
「嘘」
「嘘じゃない」
「だって」
「菜々子は産後鬱なのかもって思って、美桜の世話を放棄し始めても責めなかった。できるようになったら頑張ってくれるはずだ。付き合う前に苦手なことに挑戦してた菜々子なら大丈夫だって。俺、あんまり怒ったりしなかっただろ?あまりせっついて菜々子を追い込みたくなかったんだ」
「……でも……」
キョウの言葉を信じることができないのか、菜々子さんは涙目になりながら戸惑った顔になった。キョウは涙を堪えたのか少し涙声で話を続けた。
「俺たち、話し合いが足りなかったな。俺は愛してるって頻繁に伝えてた。だから伝わってると思ってたんだ。菜々子の不安に気がつかなかった、それは俺が本当に悪い。ごめんな」
「………」
菜々子さんは黙ってしまった。菜々子さんは不安で自分に自信がなかったのかもしれない。だから母と妻を放棄しても、女としての自分を磨いた。それもキョウを振り向かせたいがために。
同情はする。だが、菜々子さんがしたことに賛同はできなかった。私がキョウの太ももから手を離すと、キョウがその手を握ってきた。指を絡めるように握りあってから、キョウは口を開いた。
「菜々子。だからってな、美桜に対してしてきたことは許されることじゃない。産後鬱かと思って接していた俺を尻目に、菜々子は段々と派手になった。美桜を置いてエステや美容室に買い物。別に行くのは構わない。でも、日頃から育児や家事を頑張っている母親がたまに行くのと、放棄している母親が頻繁に行くのは違うだろ?その姿を見るたび俺の心は冷めたんだよ」
「……」
「でも自分で大切にしようと決めた女性だ。俺は俺なりに努力した。苦手なことはカバーしよう、美桜の世話が苦手なら率先してしよう。フォローしたら菜々子は前に戻るかも。そう思ってた。でも、美桜が5歳の時かな。美桜の誕生日に帰ってこなかっただろ」
「…っ…」
「その時に菜々子の様子が変わったことに気がついた。離婚の時に請求した相手は2年以内の相手ばかりだったけど、菜々子さ、その頃から浮気してただろ」
菜々子さんは図星なのかビクビクと体を震わせた。私はそれを見て「うわー」っと冷めた目で見てしまった。
「まさかなっと思いつつ、確信が持てないまま3年。でも3年経って確信が持てたから、離婚に向けて準備を始めた。ただ、菜々子には怪しまれないようにな。愛する人が他の男に抱かれてて、何食わぬ顔で帰ってきて俺にも抱かれる。2年間苦痛だった」
「だから…だから…避妊したの?」
「そっ。他の男に抱かれたような女が宿したどこの種かもわからない子供を世話したくない。それに菜々子は浮気を始めてからピルを飲み始めただろ?出産してから生理が重くなったとか言って。中出し放題だったかもだけど、信用できなかった。だから自衛のために避妊したよ」
涙は引っ込んだのか、キョウは冷静さを取り戻したようだ。菜々子さんは知らなかった事実に驚き、そして悲しそうな顔になった。
「…避妊されたから、なおさらあっくんが私を見てくれてないって…」
「だから浮気、不倫相手を増やしたのか?」
菜々子さんはコクンっと頷いた。
「性病は怖かったから…病院に頻繁に検査いってた」
「だろうな。ピルの処方以外の領収書があったからな。それは知ってる。ちなみに俺も別の病院で検査してた。離婚前にもな。あのテニスの合宿前にもしてたから…まぁ、ナナを思いっきり抱いたんだけど」
「ちょっと…」
私はもしかしたら性病になっていたかもしれない。そんな事実を知ってびっくりしながらも、キョウの発言を咎めた。キョウは何も悪いことは言ってないと言う顔で飄々としていた。
「…じゃあ、どうしたらよかったの…」
「菜々子は俺に話せばよかったんだよ。不安だからもっと私を見てって。行動に移す前に。さっき俺に話したみたいに」
「それで変わってたの?」
「話し合いが足りなかったって言ったろ?夫婦なんて所詮他人だ。他人の気持ちを言葉無くして察するなんて難しい。わかるだろ?」
菜々子さんは何も言えずに黙ってしまった。そして私が渡したハンカチをじっと見つめた。
「すれ違った…のね」
「そうだな」
「私間違えちゃったんだ…」
菜々子さんは何か憑き物が落ちたような顔になった。しばらく黙ってしまったが、冷めてしまったコーヒーを一口飲んで、スッと顔を上げた。
その顔はどこかスッキリとしていた。
「私もごめんなさい。全部あっくんが悪いって思って逃げてた。私も悪いし、私がしたことは最低な事だった。ごめんなさい。そして美桜をお願いします」
菜々子さんはそれだけ言うと深く頭を下げた。キョウはフーッと息を吐くと口を開いた。
「美桜はまだ菜々子を許せてない。引っ越したのも美桜が嫌がったからだ。ママがいたことを思い出したくないって。美桜なりに菜々子が好きだったから、浮気はかなり傷ついたようだよ。面会は美桜が会いたがるまで無理だろうな」
「うん。美桜が成人して…大人になってから、それぐらいになるって思ってる。会った時に失望されないようにだけ、これから頑張る」
「そうか。がんばれ。応援してる。美桜が決心したら連絡する。今は電話とか拒否してるけど、落ち着いたら…」
「ううん。美桜が決心するまで拒否しておいて。私…辛抱できなくなって電話かけちゃうかもだから。実際に今日まで何度もかけてたもの」
「そうだな。わかった」
菜々子さんの瞳は何かを決意した瞳だった。そして話が終わると菜々子さんはスッと席を立った。
「お会計…」
「いいよ。出しとく」
「ありがとう。あっくん、幸せになってね」
「菜々子もな」
「うん。あっくんよりいい男捕まえる。次は間違えないようにする。今日は邪魔してごめんなさい。ハンカチは…洗って返す機会がないから…」
菜々子さんは困った顔で握りしめたハンカチを眺めた。私は別人になった菜々子さんに笑顔を向けた。
「そのままででいいですよ」
「ごめんなさい。貸してくれてありがとう」
菜々子さんは私にそっとハンカチを渡してきた。私がニコッと微笑んでそれを受け取ると、菜々子さんはペコリと頭を下げた。
「じゃ、バイバイ」
「ああ、じゃあな」
菜々子さんはニコッと微笑んで私たちに軽く手を振って歩き始めた。その背中はすごく弱々しい。でも足取りはしっかりしていて前を向いて歩き出したのがわかった。
「泣いて化粧が落ちても美人って…羨ましい」
「何言ってんの?ナナはどんな時も美人で可愛いから」
「それ、変なフィルター搭載してるキョウだけだよ」
「そうかなー?」
私たちは冗談を言って笑い合った。キョウもどこかスッキリした様子だ。私はチラリと店内の時計を見てもうすぐ17時になることに気がついた。
「あー、もう帰らなきゃ!時間過ぎちゃう」
「…もう一回ホテル行きたかったな」
「もうもうもう!変なこと言ってないで行くよ!!」
私は私の体を触りたがるキョウを急かしながら、ファミレスから子供達が待っている家へと向かった。
私たちはその間も、皆で楽しく過ごした。
一月末には美桜ちゃんの誕生会をした。もちろん皆でプレゼントを渡した。ちなみに、翔は少ないお小遣いで花のモチーフがついたヘアピンを贈っていた。美桜ちゃんはそれを髪の毛につけて「似合う?」っと頬を赤く染めて翔に感想を求めていた。なんとも初々しい。
その様子を見ていたキョウは美桜ちゃんの恋に気がついたようだ。
「まだ、お付き合いじゃない。そう。まだ…」
キョウはしばらくそんな事をぶつぶつ呟いて、部屋の隅っこで丸くなっていた。翼はそんなキョウを心配したのか「お腹痛いの?」と声をかけるし、キョウは翼の優しさに堪えていた涙を出して嫌がる翼を抱きしめて泣いていた。
美桜ちゃんは、それを見てなんとも言えない顔になっていた。でも私が気にしないように声をかけるとホッと息をついていた。娘なりに父親が心配なのだなと思うと、心がほっこりした。
まぁ、我が子の恋を目の前で見るのは複雑であることはわかる。だが、まだ嫁いでいくわけでもないのに泣かなくてもいいだろう。そんな気持ちになりつつも、キョウを少しだけ励まして楽しい誕生会を終えた。
それ以外は変わりない毎日だし、いつも同じように過ごすが皆が笑顔だった。息子達が喧嘩を始めても、美桜がちゃんが仲裁してくれる。私とキョウが少し言い争いをしても、子供達が間に入ってくれた。
私たち5人は皆で皆を支えて生活するようになっていた。そして4月になって子供達は新学期が始まった。美桜ちゃんと翼はまた同じクラスになった。キョウは今年も運動会に一緒に行く口実ができたと大喜びした。
月に一回のデート。それは今でも続いている。
エッチは月に一回。デートの時は必ずしていた。時折子供達がデート以外でも大人に時間をくれる時があったため、そんな時は月に2回。回数は少ないが、その時間はとても濃密でお互いに満足していた。
「あー、今回のホテルは当たりだったなー」
「うん。過ごしやすかったね」
5月のデートの日。私たちは午前からお互いに体を貪りあった。過ごしやすいホテルだったため、昼ごはんもそこで食べて、14時ごろにホテルを出た。気怠い体ではあるが、その怠さがまた幸せだった。
私達は手を繋いで歩きながら見つけたカフェで休むことにした。
「この後どうしようか」
「うーん。仕事用のシャツが買いたいかな。何だか最近ボタンが…」
「え、体が丸くなった感じはないけど…あれ?もしかして…俺がたくさん揉んだ…いて!」
「人がいるところで変なことを言わないで!」
キョウの頭を叩いて言葉を遮って、私はぷんぷんと怒った。キョウは笑いながら謝ってきたが、別に本当に怒ってるわけではなかったため、すぐに許して届いたコーヒーを楽しんだ。
そんな時間を過ごしていたら、急に私たちに向かって金切り声で叫ばれた。
「どうして!!!!」
声がした方向へ私たちが目を向けると、数人の女性と共に店にやってきたと思われる菜々子さんがそこにいた。
「あっくん!なんで!なんで!!なんでそんな顔をこの人にしてるの!!!」
菜々子さんは連れていた女性達から離れてこちらに向かってきた。連れの女性達は困ったような顔になって菜々子さんを引き止めようとするが、菜々子さんはすごい剣幕でそれを振り解いた。そして連れの女性達に何かを言ってから、私たちがいるテーブルへとやってきた。
友人であろう女性達は戸惑った顔や困惑した顔になりつつ、菜々子さんを置いて店から出て行ってしまった。友人を1人残していく様子から、そこまで親しい関係性ではなさそうだった。
一連の流れを見ながら、キョウは向かい側の席から私の隣の席に座って手を握ってきた。私も菜々子さんの様子が怖くて不安だったため、その手を握り返していた。
「菜々子。周りに迷惑だよ。そんな大きな声を出して」
「あっくんなんで?ねぇ、どうして私たちの家にもういないの!帰ったのに…」
「離婚に同意して成立した時点で、あの家は菜々子の家ではないし、家族ではないのだから引っ越し先に一緒に来るわけないだろ?」
「違う違う違う!私たちはまだ離婚なんてしない!!!」
菜々子さんは頭をブンブンと横に振った。せっかくセットされた髪型も乱れているし、涙を流しているから化粧もボロボロになり始めている。
「ナナ、ごめん。移動して話してもいいかな?」
「うん」
「菜々子。店に迷惑かかってるから、移動しよう。ここは騒ぐような店じゃない」
「違う違う違う」
ぶつぶつと呟く菜々子さんを無理矢理引っ張って私たちは会計してカフェを出た。キョウが乱暴に菜々子さんの鞄を掴んで引っ張っているのに、菜々子さんは「あっくん。あっくん」と言ってどこか嬉しそうにしながらついてきた。私はその異様な状態に恐怖しつつ、近くのファミレスへ3人で入った。
なるべく人がいない、奥の席に案内してもらって飲み物を3人分頼んだ。私とキョウが一緒に座り、菜々子さんは向かいに1人座った。
通路側にキョウが座ったため、私はその席から移動できない。キョウが菜々子さんの隣ではなく私の隣を選択したことに、菜々子さんは恨めしそうな目で私を睨んでいた。
「菜々子。睨むのは違うだろ」
「だって、あっくんは私のあっくんだもん」
「前まではな。それを放棄させるようなことをしたのは誰だ?」
キョウの冷たい声に菜々子さんは黙ってしまった。私は届いたカフェオレを飲みながら2人の様子を見守った。
「だって、あっくんが…」
「ご両親との話し合いの時も、自分のこと擁護してばかりだったな。自分の親が頭を下げているのに、菜々子は喚いてばかり。反省すらせず、本当うんざりだよ。それに離婚に同意してサインしただろ?」
「あれは、しないと…あっくんが許してくれないって思ったから…」
「あのな。離婚したら許されるだなんて勘違いはやめろ。許すか許さないかは、浮気された側が決めることであって浮気した側の物差しで決めるもんじゃない。俺は一言も離婚したら許すだなんて言ってないと思うが?」
キョウが菜々子さんに向ける言葉はトゲトゲしかった。菜々子さんはそれが刺さるたびに「あう」とか「でも」とか言って反論しようとするが、うまく言葉が出ない様子だ。
「だって…」
菜々子さんはそれだけ呟くと、俯いて肩を震わせ始めた。とても綺麗な服を着て、可愛らしい顔をして、弱々しい菜々子さんが泣く姿は周りから見たら私達が虐めてるように見えているかもしれない。それぐらい菜々子さんの様子は弱々しかった。
キョウは何も言わずにコーヒーを飲んで菜々子さんを冷たい目で眺めている。私は空気になろうと決めて息を潜めた。
「だって…あっくん、私のこと見てくれない」
「は?」
菜々子さんは弱々しく呟くとポツリポツリ話を始めた。キョウは冷たい反応をしながらも話に耳を傾け始めた。
「あっくん、かっこいいから…付き合う前からたくさんの女性に囲まれてた。その中で、私が選ばれた時は本当に嬉しかった。隣にいて相応しい女性になろうって、苦手な料理をしてみたり…あっくんの部屋に行くたびに不器用ながらも掃除したり。失敗した料理を出してもあっくんは喜んでくれたし、少しの失敗も許してくれた。でもいつもどこか、私を通してどこか遠くを見てたの」
そこまで言うとまた、菜々子さんはポロポロと涙を流した。そしてひっくひっくと声を出して、しゃくりあげながら話を続けた。
「それでも…結婚してって…ひっく…プロポーズされて嬉しかった。誰かを…ひっく…見ててもいい。今は私のあっくんだ、ひっく…そう…思えたから」
私は涙を拭かずに泣く菜々子さんが痛々しくて胸が苦しくなった。そして、自分のカバンからハンカチを取り出すと菜々子さんに手渡した。菜々子さんは一瞬顔を上げてハンカチと私を見つめてから、軽く頭を下げて受け取ると涙を拭きながら話を続けた。
「結婚して、美桜がお腹に宿ってから…ひくっ…あっくんはあまり遠くを見なくなった。私だけを見てる。すごく幸せだった。でも、でも…ひくっ…美桜が生まれてから…、美桜ばっかりかまってた」
「赤ちゃんをかまうのは当たり前だろ?」
「違うの!違う…違う…。私には向けないすごくすごくすごく、優しい笑顔で、顔で、瞳で、美桜を見つめてたの。私に少し似た美桜が可愛くて仕方がないって。そしたら、あっくんが私を…見ていない。そう思ったの」
話をしながら段々と落ち着いてきたのか、しゃくり声がおさまってきた。しかしまだ涙は出るようで私のハンカチは涙の跡でいっぱいになっている。キョウは菜々子さんの言葉を聞いて片眉を上げるとジロリと睨んだ。
「だから、一歳にもならない美桜が甘えていてもほったらかし。断乳してすぐにミルクに切り替え、オムツ変えも、沐浴も…美桜の世話を放棄したのか?」
「だって、美桜が…憎らしかったの。私が放棄すればするほど、あっくんは美桜ばかり。それに気がついてはいたけど、もう世話することが出来ないくらい1人の女として美桜が憎かったの。あっくんは何も言わずに私が放棄したことを楽しそうに…楽しそうにするの。私を置いて、美桜と2人っきりの世界…寂しかった」
「なんだよそれ…」
キョウは深いため息を吐くと頭を抱えた。菜々子さんはまた俯いてポロポロと涙を流している。私はどう反応していいか分からず、とりあえず頭を抱えたキョウの太ももにそっと手を添えた。キョウは私にチラリと目線を向けてから顔を上げると、菜々子さんに話しかけた。
「菜々子。すごく自分勝手なこと言ってるってわかってるか?」
とても冷たいキョウの声を聞いた菜々子さんはビクッと体を震わせた。
「あっくんが、美桜に向けた笑顔を、瞳を、私にも向けてくれなかったからじゃん!!同じようにしてくれれば、美桜を憎むことなんてなかった!」
「…じゃあ、俺がその時に美桜と菜々子を同じように扱えば美桜の育児を放棄せず、付き合ってた頃のように苦手なことを頑張って、浮気も不倫もしなかった。そう言いたいのか?」
「そうだよ。全部、あっくんが原因なんだもん。あっくんが初めから私を見つめてくれればよかったのに、遠くを見てるから…」
菜々子さんは常に不安を感じていたのかもしれない。自分ではない何かに想いを馳せる好きな人。振り向かせたくて努力をして手に入れた結婚。そしてお腹に宿ってる子供を育てる間の幸せな時間。それが美桜ちゃんが生まれたことで不平不満が爆発してしまった。私にはそんな風に捉えることができた。
キョウはぎりっと下唇を噛むと、何かを考えている様子だ。菜々子さんはその顔を見て少しキョウに怒っているような顔になっていた。
「確かに、菜々子に出会ってからも出会う前も、俺の心にいたのは別の女性だ」
「ほらやっぱり!」
「でもな、結婚を決めた時には菜々子を真剣に愛してた。打算的な気持ちで初めは付き合ってた。でも心の中にいた女性はいい思い出にしよう、そう思えたから結婚を決めたんだ。美桜がお腹に宿った時、すごく嬉しかった。愛する人との子供だぞ?嬉しいに決まってる。だから生まれた美桜が愛しくて仕方なかった。その時の俺は菜々子のことも同じように大事にしてた。同じように見つめてた。付き合った当初から不安にさせてたのは悪かった。でも、あの時の俺の愛を否定することを言われたら困る。本当に俺は…」
キョウは目頭を指で押さえて声を押し殺した。何かを思い出して涙が溢れそうになったようだ。私は慰めるようにキョウの太ももに置いた手で太ももを優しく撫でた。
「嘘」
「嘘じゃない」
「だって」
「菜々子は産後鬱なのかもって思って、美桜の世話を放棄し始めても責めなかった。できるようになったら頑張ってくれるはずだ。付き合う前に苦手なことに挑戦してた菜々子なら大丈夫だって。俺、あんまり怒ったりしなかっただろ?あまりせっついて菜々子を追い込みたくなかったんだ」
「……でも……」
キョウの言葉を信じることができないのか、菜々子さんは涙目になりながら戸惑った顔になった。キョウは涙を堪えたのか少し涙声で話を続けた。
「俺たち、話し合いが足りなかったな。俺は愛してるって頻繁に伝えてた。だから伝わってると思ってたんだ。菜々子の不安に気がつかなかった、それは俺が本当に悪い。ごめんな」
「………」
菜々子さんは黙ってしまった。菜々子さんは不安で自分に自信がなかったのかもしれない。だから母と妻を放棄しても、女としての自分を磨いた。それもキョウを振り向かせたいがために。
同情はする。だが、菜々子さんがしたことに賛同はできなかった。私がキョウの太ももから手を離すと、キョウがその手を握ってきた。指を絡めるように握りあってから、キョウは口を開いた。
「菜々子。だからってな、美桜に対してしてきたことは許されることじゃない。産後鬱かと思って接していた俺を尻目に、菜々子は段々と派手になった。美桜を置いてエステや美容室に買い物。別に行くのは構わない。でも、日頃から育児や家事を頑張っている母親がたまに行くのと、放棄している母親が頻繁に行くのは違うだろ?その姿を見るたび俺の心は冷めたんだよ」
「……」
「でも自分で大切にしようと決めた女性だ。俺は俺なりに努力した。苦手なことはカバーしよう、美桜の世話が苦手なら率先してしよう。フォローしたら菜々子は前に戻るかも。そう思ってた。でも、美桜が5歳の時かな。美桜の誕生日に帰ってこなかっただろ」
「…っ…」
「その時に菜々子の様子が変わったことに気がついた。離婚の時に請求した相手は2年以内の相手ばかりだったけど、菜々子さ、その頃から浮気してただろ」
菜々子さんは図星なのかビクビクと体を震わせた。私はそれを見て「うわー」っと冷めた目で見てしまった。
「まさかなっと思いつつ、確信が持てないまま3年。でも3年経って確信が持てたから、離婚に向けて準備を始めた。ただ、菜々子には怪しまれないようにな。愛する人が他の男に抱かれてて、何食わぬ顔で帰ってきて俺にも抱かれる。2年間苦痛だった」
「だから…だから…避妊したの?」
「そっ。他の男に抱かれたような女が宿したどこの種かもわからない子供を世話したくない。それに菜々子は浮気を始めてからピルを飲み始めただろ?出産してから生理が重くなったとか言って。中出し放題だったかもだけど、信用できなかった。だから自衛のために避妊したよ」
涙は引っ込んだのか、キョウは冷静さを取り戻したようだ。菜々子さんは知らなかった事実に驚き、そして悲しそうな顔になった。
「…避妊されたから、なおさらあっくんが私を見てくれてないって…」
「だから浮気、不倫相手を増やしたのか?」
菜々子さんはコクンっと頷いた。
「性病は怖かったから…病院に頻繁に検査いってた」
「だろうな。ピルの処方以外の領収書があったからな。それは知ってる。ちなみに俺も別の病院で検査してた。離婚前にもな。あのテニスの合宿前にもしてたから…まぁ、ナナを思いっきり抱いたんだけど」
「ちょっと…」
私はもしかしたら性病になっていたかもしれない。そんな事実を知ってびっくりしながらも、キョウの発言を咎めた。キョウは何も悪いことは言ってないと言う顔で飄々としていた。
「…じゃあ、どうしたらよかったの…」
「菜々子は俺に話せばよかったんだよ。不安だからもっと私を見てって。行動に移す前に。さっき俺に話したみたいに」
「それで変わってたの?」
「話し合いが足りなかったって言ったろ?夫婦なんて所詮他人だ。他人の気持ちを言葉無くして察するなんて難しい。わかるだろ?」
菜々子さんは何も言えずに黙ってしまった。そして私が渡したハンカチをじっと見つめた。
「すれ違った…のね」
「そうだな」
「私間違えちゃったんだ…」
菜々子さんは何か憑き物が落ちたような顔になった。しばらく黙ってしまったが、冷めてしまったコーヒーを一口飲んで、スッと顔を上げた。
その顔はどこかスッキリとしていた。
「私もごめんなさい。全部あっくんが悪いって思って逃げてた。私も悪いし、私がしたことは最低な事だった。ごめんなさい。そして美桜をお願いします」
菜々子さんはそれだけ言うと深く頭を下げた。キョウはフーッと息を吐くと口を開いた。
「美桜はまだ菜々子を許せてない。引っ越したのも美桜が嫌がったからだ。ママがいたことを思い出したくないって。美桜なりに菜々子が好きだったから、浮気はかなり傷ついたようだよ。面会は美桜が会いたがるまで無理だろうな」
「うん。美桜が成人して…大人になってから、それぐらいになるって思ってる。会った時に失望されないようにだけ、これから頑張る」
「そうか。がんばれ。応援してる。美桜が決心したら連絡する。今は電話とか拒否してるけど、落ち着いたら…」
「ううん。美桜が決心するまで拒否しておいて。私…辛抱できなくなって電話かけちゃうかもだから。実際に今日まで何度もかけてたもの」
「そうだな。わかった」
菜々子さんの瞳は何かを決意した瞳だった。そして話が終わると菜々子さんはスッと席を立った。
「お会計…」
「いいよ。出しとく」
「ありがとう。あっくん、幸せになってね」
「菜々子もな」
「うん。あっくんよりいい男捕まえる。次は間違えないようにする。今日は邪魔してごめんなさい。ハンカチは…洗って返す機会がないから…」
菜々子さんは困った顔で握りしめたハンカチを眺めた。私は別人になった菜々子さんに笑顔を向けた。
「そのままででいいですよ」
「ごめんなさい。貸してくれてありがとう」
菜々子さんは私にそっとハンカチを渡してきた。私がニコッと微笑んでそれを受け取ると、菜々子さんはペコリと頭を下げた。
「じゃ、バイバイ」
「ああ、じゃあな」
菜々子さんはニコッと微笑んで私たちに軽く手を振って歩き始めた。その背中はすごく弱々しい。でも足取りはしっかりしていて前を向いて歩き出したのがわかった。
「泣いて化粧が落ちても美人って…羨ましい」
「何言ってんの?ナナはどんな時も美人で可愛いから」
「それ、変なフィルター搭載してるキョウだけだよ」
「そうかなー?」
私たちは冗談を言って笑い合った。キョウもどこかスッキリした様子だ。私はチラリと店内の時計を見てもうすぐ17時になることに気がついた。
「あー、もう帰らなきゃ!時間過ぎちゃう」
「…もう一回ホテル行きたかったな」
「もうもうもう!変なこと言ってないで行くよ!!」
私は私の体を触りたがるキョウを急かしながら、ファミレスから子供達が待っている家へと向かった。
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