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約束
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「こらー!どこにでもいっちゃダメ!」
我が子達は大きなホームセンターに興奮したのか店の中に入ると、キャッキャっと騒いで大人と美桜ちゃんを置いて走り始めた。私が声をかけるとピタッと足を止めるが、ウズウズした様子で私をチラチラと見ている。
「しょうがない。俺が2人を見てるから、女性陣はキッチン用品見てて」
「ごめん。お願いね」
キョウは美桜ちゃんの頭を優しく撫でるとソワソワしてる男の子達の元へ近寄った。そして一言二言話してから、男達は仲良く店の奥へと消えていった。
「またごめんね。パパのこと」
「大丈夫です。パパも楽しそうだし…。それにナナおばちゃんを独り占めできて嬉しいから」
「あら、嬉しい。じゃあおばちゃんの買い物付き合ってもらおうかな」
私が美桜ちゃんの手を繋いで歩き出すと、美桜ちゃんはギュッと握り返してから私についてきた。
手を繋いでどんなフライパンがいいかとか、どんな布巾がいいかとか、お弁当箱を選んだりと女同士でキャイキャイと楽しく必要なものを選んだ。
カゴに沢山入って重くなったなぁっと思った頃に、カートを押して男達が私たちのところへやってきた。
「カート持ってきたよ。カゴ重いでしょ」
「ありがとう。助かる」
私がカゴをカートの上に置いてフーッと息をつくと、キョウが美桜ちゃんに話しかけた。
「おばちゃんと何選んだの?」
「フライパンとか!可愛い布巾があったよ。パパ、これうちにも欲しいの」
美桜ちゃんはカゴに入っているウサギ柄の布巾を指さした。キョウはそれを眺めてからニコッと微笑んだ。
「いいよ。じゃあ、ナイトを2人連れて取っておいで。パパとおばちゃんはここで待ってるから。おーい。男ども。姫のお供してくれ」
「はーい」
「美桜ちゃんいこーぜ」
「うん!」
翔と翼は少し離れたところで商品を見ていたが、キョウの掛け声でこちらに寄ってくると美桜ちゃんに声をかけた。翔は美桜ちゃんの手を取って、翼は先頭を歩いて子供達3人は仲良く目的の場所へと向かっていった。
「翔ったら、さりげなく手を繋いでる」
「面倒見のいいお兄ちゃんのつもりなんじゃない?」
「ああ、そっか。少しばかり不純な目で見てしまった」
「はは。まぁ、色々あったから敏感になってるだけだよ」
キョウはクスクスと笑うと、スッと私に近寄った。急に近寄られてびっくりして固まる私にニコッと笑うと少し体を屈めて耳元に囁いてきた。
「俺がナナにすることは全部下心あるけどね」
「っ!」
「愛してる」
「ちょ!キョウ!!!」
カァァァっと顔が熱くなるのを感じると、キョウはクスクスと笑って私から体を離した。すると子供達がワイワイ話しながら戻ってくる音が聞こえた。早く火照りを冷まさなければと手で仰いでいると、戻ってきた翼に不思議そうな顔で話しかけられた。
「どうしたの?ママ。顔真っ赤。熱いの?エアコンとってもきいててここ涼しいけど…」
「…こ、こ、更年期かな。最近急に体が熱くなるのよね。あー、冷たい飲み物でも飲みたいな。早く買い物してお昼ご飯食べに行こっか」
「うん!ハンバーガー食べに行こう!近くにあったの見たよ!」
翼は私の苦し紛れの言葉を信じてくれたのかニコッと微笑んだ。翔は少し眉間に皺を寄せてキョウを見つめ、キョウはその視線を受け止めるとニコリと微笑んだ。美桜ちゃんは私のことを心配そうに見つめてから、キョウに話しかけて目的の布巾を手渡していた。
(こんなところで、全く!!)
キョウのいきなりの囁きに体がジンジンと熱い。正直下着も少し冷たい。あの一言で体がこんなに反応するだなんて、本当に厄介だ。
私は熱い体を冷ますために少し早歩きでレジに向かって会計を済ませた。キョウ達親子は別のレジで買い物を済ませ、私たち親子と合流すると店から出てハンバーガーショップへと向かった。
皆んなでわいわいと食事をして、帰りにスーパーで食材を沢山買い込んで私たちは501号室へ帰った。
「帰ったら手を洗ってねー!あ、美桜ちゃん。テレビは明日届くから何もないけど寛いでて」
「はい」
「美桜ちゃん。洗面所はこっちだよ」
私の声かけに美桜ちゃんはニコっと微笑んだ。翼が美桜ちゃんをエスコートして家の中を案内すると、私は買ったものを冷蔵庫の中にドンドン入れていった。キョウは何も言わずに手伝ってくれた。子供達は翼の部屋でトランプゲームを始めたようだ。少しだけ開いたドアの隙間から3人の楽しそうな声が聞こえてきた。
「洗ったりも手伝う」
「ありがとう。調味料とかも買い込んだから重かったよね。荷物持ちもありがとうね」
「あれぐらいどうってことないよ」
大人2人は買ったものを片付けたり、使う前の水洗いをしたりとキッチン周りを片付けた。2人でやったのもあってあっという間に整うと、私はケトルでお湯を沸かしてコーヒーを2つ淹れた。マグカップをテーブルに置いてキョウに休憩するように声をかけてから、ジュースを3つお盆に乗せて翼の部屋に差し入れに行くと、3人は嬉しそうに受け取って飲み干した。
エアコンは各部屋についてはいるが、子供達は遠慮して(電気代を気にしている様子)エアコンを使っても温度をあまり下げずに使っている。とても暑い日は28度でも暑いことには変わらない。正直、熱中症が怖い。私はエアコンの温度をもう少し下げるように言ってから部屋から出た。今日はお客さんがいるから、温度を下げるだろう。
キョウはテーブルの椅子に座って私が帰ってくるのを待っていたようだ。私が向かい側に座ってからコーヒーをゆっくり飲み始めた。
「はぁぁ。本格的に住めるようにやっとなったよ。ありがとう」
「ん?いいよいいよ。今15時か。夕飯まで少し時間あるね」
「そうね。テレビもないから静かでごめんね。16時にはご飯の用意始めるから17時過ぎには出来上がると思う」
「んっ。ナナの手料理楽しみ。作ってる姿を眺めなきゃな」
「なにそれ」
キョウの冗談にクスクス笑いながらコーヒーを飲んでいると、翼の部屋から空になったコップが乗ったお盆を持った翔が現れた。
「おじさん。ちょっと話、しようか」
「んー、翔くんの危険センサーは優秀だね。いいよ」
私は翔からお盆を受け取って2人を見つめた。キョウは飲みかけのコーヒーを残して、翔と一緒に翔の部屋に入っていった。
「…急にどうしたのかな…」
翔は少し気を張り詰めた顔だった。キョウも少し真剣な顔になってたし…どうも、心配だ。
私はたのしい声が聞こえる少し隙間の開いた翼の部屋と、ピシャリと扉が閉まっている翔の部屋を眺めながらコーヒーを飲んだ。
15分くらいすると翔の部屋から2人が出てきた。キョウは翔の肩を抱いて、翔はそれを嫌そうな顔で引き剥がそうとしつつも満更でもない様子だった。
「じゃ、それが守れるなら何も言わないから」
「おう。おじさんに任せて」
翔はそれだけ言うと翼の部屋へと消えていった。キョウはその後ろ姿を眺めてから私の向いに座ると、冷めたコーヒーをズルルッと音を立てて飲んだ。
「何があったの?」
「んー。男同士の話」
「……で?」
「詳しくは言えませんなぁ。翔くんとの男の約束だから」
「なにそれ。心配して損した気がする。ただ仲良くなっただけじゃない」
「そー。翔くん本当にいい男だよ。将来が楽しみだ」
「もう…。まっ、たしかに翔はカッコいいけどね。ふふん」
私が得意げな顔で鼻を鳴らすとキョウはクスクスと笑った。
キョウは宣言通り。私が夕食を作る後ろ姿をニコニコしながら眺めた。皿を取ってくれたりテーブルにお皿を並べてくれたりと手伝ってくれたが、その間もご機嫌だった。
出来上がったトロトロオムライスを見た美桜ちゃんはパァァッと目を輝かせた。ケチャップを渡すと花の絵を描いてニコニコだ。我が子達は適当にケチャップをかけていた。キョウは私に描いてっと子供がいない間にねだってきていたため、私が描いた丸の絵にニコニコだ。私は適当にグネグネ模様を描いて、皆で手を合わせるといただきますをして食事を始めた。
「美味しい!こんなに美味しいオムライス初めて食べた」
「そう?嬉しい。美桜ちゃんは褒めるのが上手いね」
「いや、本当に美味いよ」
美桜ちゃんは幸せそうな顔でご飯を食べてくれる。キョウも同じような顔で食べている。
(こう見ると、親子なんだなって思うわね)
美桜ちゃんはキョウと似ているが、顔の感じは少し菜々子さんが強い。でも仕草や考え方、味の好み、表情がとても似ていた。
「ママのご飯はなんでも美味しいんだよ」
「そうなんだ。ママの手料理いいなぁ」
翼が美桜ちゃんに何気なく言った言葉で引き出した美桜ちゃんの言葉は、どこか寂しそうだった。
(ママの手料理…か)
美桜ちゃんは食べながらニコニコしている。我が子達は美桜ちゃんの言葉を気にしているのかいないのか、何も言わずに食事を続けている。キョウは少しだけ曇った顔になってから私にニコッと微笑んで手を動かして食事をしていた。
「美桜ちゃん。土日はおばちゃんが作るからね。食べたいものいっぱい教えてね」
「はい!」
「明日はなにがいい?」
「俺、グラタン」
「俺、豚の角煮」
翔と翼の順に聞いてもいないのにリクエストしてきた。美桜ちゃんはクスクス笑って口を開いた。
「えと、私もグラタンかな」
「よっしゃ!じゃ、明日はグラタンで」
美桜ちゃんが翔の意見に賛成すると、翔は翼を揶揄うような顔になった。翼はムムッとした顔になりつつもなにも言わずにモグモグとご飯を食べ始めた。
「わかった。じゃ、明日はグラタンね」
「楽しみだなぁ。グラタン」
キョウはニコニコしながらとてもウキウキし始めた。美桜ちゃんはそれを見て少し嬉しそうな顔になった。
(あ、そういえば…)
遠い日の記憶を思い起こす。キョウは確か一番好きな食べ物がグラタンだったはず。昔はよく作ってあげていたのだ。
(美桜ちゃんはパパが好きなものをリクエストしたんだね。優しいな)
私は優しい気持ちにほっこりしつつ、我が子達の喧嘩に仲裁をし、ご飯を楽しく食べた。
我が子達は大きなホームセンターに興奮したのか店の中に入ると、キャッキャっと騒いで大人と美桜ちゃんを置いて走り始めた。私が声をかけるとピタッと足を止めるが、ウズウズした様子で私をチラチラと見ている。
「しょうがない。俺が2人を見てるから、女性陣はキッチン用品見てて」
「ごめん。お願いね」
キョウは美桜ちゃんの頭を優しく撫でるとソワソワしてる男の子達の元へ近寄った。そして一言二言話してから、男達は仲良く店の奥へと消えていった。
「またごめんね。パパのこと」
「大丈夫です。パパも楽しそうだし…。それにナナおばちゃんを独り占めできて嬉しいから」
「あら、嬉しい。じゃあおばちゃんの買い物付き合ってもらおうかな」
私が美桜ちゃんの手を繋いで歩き出すと、美桜ちゃんはギュッと握り返してから私についてきた。
手を繋いでどんなフライパンがいいかとか、どんな布巾がいいかとか、お弁当箱を選んだりと女同士でキャイキャイと楽しく必要なものを選んだ。
カゴに沢山入って重くなったなぁっと思った頃に、カートを押して男達が私たちのところへやってきた。
「カート持ってきたよ。カゴ重いでしょ」
「ありがとう。助かる」
私がカゴをカートの上に置いてフーッと息をつくと、キョウが美桜ちゃんに話しかけた。
「おばちゃんと何選んだの?」
「フライパンとか!可愛い布巾があったよ。パパ、これうちにも欲しいの」
美桜ちゃんはカゴに入っているウサギ柄の布巾を指さした。キョウはそれを眺めてからニコッと微笑んだ。
「いいよ。じゃあ、ナイトを2人連れて取っておいで。パパとおばちゃんはここで待ってるから。おーい。男ども。姫のお供してくれ」
「はーい」
「美桜ちゃんいこーぜ」
「うん!」
翔と翼は少し離れたところで商品を見ていたが、キョウの掛け声でこちらに寄ってくると美桜ちゃんに声をかけた。翔は美桜ちゃんの手を取って、翼は先頭を歩いて子供達3人は仲良く目的の場所へと向かっていった。
「翔ったら、さりげなく手を繋いでる」
「面倒見のいいお兄ちゃんのつもりなんじゃない?」
「ああ、そっか。少しばかり不純な目で見てしまった」
「はは。まぁ、色々あったから敏感になってるだけだよ」
キョウはクスクスと笑うと、スッと私に近寄った。急に近寄られてびっくりして固まる私にニコッと笑うと少し体を屈めて耳元に囁いてきた。
「俺がナナにすることは全部下心あるけどね」
「っ!」
「愛してる」
「ちょ!キョウ!!!」
カァァァっと顔が熱くなるのを感じると、キョウはクスクスと笑って私から体を離した。すると子供達がワイワイ話しながら戻ってくる音が聞こえた。早く火照りを冷まさなければと手で仰いでいると、戻ってきた翼に不思議そうな顔で話しかけられた。
「どうしたの?ママ。顔真っ赤。熱いの?エアコンとってもきいててここ涼しいけど…」
「…こ、こ、更年期かな。最近急に体が熱くなるのよね。あー、冷たい飲み物でも飲みたいな。早く買い物してお昼ご飯食べに行こっか」
「うん!ハンバーガー食べに行こう!近くにあったの見たよ!」
翼は私の苦し紛れの言葉を信じてくれたのかニコッと微笑んだ。翔は少し眉間に皺を寄せてキョウを見つめ、キョウはその視線を受け止めるとニコリと微笑んだ。美桜ちゃんは私のことを心配そうに見つめてから、キョウに話しかけて目的の布巾を手渡していた。
(こんなところで、全く!!)
キョウのいきなりの囁きに体がジンジンと熱い。正直下着も少し冷たい。あの一言で体がこんなに反応するだなんて、本当に厄介だ。
私は熱い体を冷ますために少し早歩きでレジに向かって会計を済ませた。キョウ達親子は別のレジで買い物を済ませ、私たち親子と合流すると店から出てハンバーガーショップへと向かった。
皆んなでわいわいと食事をして、帰りにスーパーで食材を沢山買い込んで私たちは501号室へ帰った。
「帰ったら手を洗ってねー!あ、美桜ちゃん。テレビは明日届くから何もないけど寛いでて」
「はい」
「美桜ちゃん。洗面所はこっちだよ」
私の声かけに美桜ちゃんはニコっと微笑んだ。翼が美桜ちゃんをエスコートして家の中を案内すると、私は買ったものを冷蔵庫の中にドンドン入れていった。キョウは何も言わずに手伝ってくれた。子供達は翼の部屋でトランプゲームを始めたようだ。少しだけ開いたドアの隙間から3人の楽しそうな声が聞こえてきた。
「洗ったりも手伝う」
「ありがとう。調味料とかも買い込んだから重かったよね。荷物持ちもありがとうね」
「あれぐらいどうってことないよ」
大人2人は買ったものを片付けたり、使う前の水洗いをしたりとキッチン周りを片付けた。2人でやったのもあってあっという間に整うと、私はケトルでお湯を沸かしてコーヒーを2つ淹れた。マグカップをテーブルに置いてキョウに休憩するように声をかけてから、ジュースを3つお盆に乗せて翼の部屋に差し入れに行くと、3人は嬉しそうに受け取って飲み干した。
エアコンは各部屋についてはいるが、子供達は遠慮して(電気代を気にしている様子)エアコンを使っても温度をあまり下げずに使っている。とても暑い日は28度でも暑いことには変わらない。正直、熱中症が怖い。私はエアコンの温度をもう少し下げるように言ってから部屋から出た。今日はお客さんがいるから、温度を下げるだろう。
キョウはテーブルの椅子に座って私が帰ってくるのを待っていたようだ。私が向かい側に座ってからコーヒーをゆっくり飲み始めた。
「はぁぁ。本格的に住めるようにやっとなったよ。ありがとう」
「ん?いいよいいよ。今15時か。夕飯まで少し時間あるね」
「そうね。テレビもないから静かでごめんね。16時にはご飯の用意始めるから17時過ぎには出来上がると思う」
「んっ。ナナの手料理楽しみ。作ってる姿を眺めなきゃな」
「なにそれ」
キョウの冗談にクスクス笑いながらコーヒーを飲んでいると、翼の部屋から空になったコップが乗ったお盆を持った翔が現れた。
「おじさん。ちょっと話、しようか」
「んー、翔くんの危険センサーは優秀だね。いいよ」
私は翔からお盆を受け取って2人を見つめた。キョウは飲みかけのコーヒーを残して、翔と一緒に翔の部屋に入っていった。
「…急にどうしたのかな…」
翔は少し気を張り詰めた顔だった。キョウも少し真剣な顔になってたし…どうも、心配だ。
私はたのしい声が聞こえる少し隙間の開いた翼の部屋と、ピシャリと扉が閉まっている翔の部屋を眺めながらコーヒーを飲んだ。
15分くらいすると翔の部屋から2人が出てきた。キョウは翔の肩を抱いて、翔はそれを嫌そうな顔で引き剥がそうとしつつも満更でもない様子だった。
「じゃ、それが守れるなら何も言わないから」
「おう。おじさんに任せて」
翔はそれだけ言うと翼の部屋へと消えていった。キョウはその後ろ姿を眺めてから私の向いに座ると、冷めたコーヒーをズルルッと音を立てて飲んだ。
「何があったの?」
「んー。男同士の話」
「……で?」
「詳しくは言えませんなぁ。翔くんとの男の約束だから」
「なにそれ。心配して損した気がする。ただ仲良くなっただけじゃない」
「そー。翔くん本当にいい男だよ。将来が楽しみだ」
「もう…。まっ、たしかに翔はカッコいいけどね。ふふん」
私が得意げな顔で鼻を鳴らすとキョウはクスクスと笑った。
キョウは宣言通り。私が夕食を作る後ろ姿をニコニコしながら眺めた。皿を取ってくれたりテーブルにお皿を並べてくれたりと手伝ってくれたが、その間もご機嫌だった。
出来上がったトロトロオムライスを見た美桜ちゃんはパァァッと目を輝かせた。ケチャップを渡すと花の絵を描いてニコニコだ。我が子達は適当にケチャップをかけていた。キョウは私に描いてっと子供がいない間にねだってきていたため、私が描いた丸の絵にニコニコだ。私は適当にグネグネ模様を描いて、皆で手を合わせるといただきますをして食事を始めた。
「美味しい!こんなに美味しいオムライス初めて食べた」
「そう?嬉しい。美桜ちゃんは褒めるのが上手いね」
「いや、本当に美味いよ」
美桜ちゃんは幸せそうな顔でご飯を食べてくれる。キョウも同じような顔で食べている。
(こう見ると、親子なんだなって思うわね)
美桜ちゃんはキョウと似ているが、顔の感じは少し菜々子さんが強い。でも仕草や考え方、味の好み、表情がとても似ていた。
「ママのご飯はなんでも美味しいんだよ」
「そうなんだ。ママの手料理いいなぁ」
翼が美桜ちゃんに何気なく言った言葉で引き出した美桜ちゃんの言葉は、どこか寂しそうだった。
(ママの手料理…か)
美桜ちゃんは食べながらニコニコしている。我が子達は美桜ちゃんの言葉を気にしているのかいないのか、何も言わずに食事を続けている。キョウは少しだけ曇った顔になってから私にニコッと微笑んで手を動かして食事をしていた。
「美桜ちゃん。土日はおばちゃんが作るからね。食べたいものいっぱい教えてね」
「はい!」
「明日はなにがいい?」
「俺、グラタン」
「俺、豚の角煮」
翔と翼の順に聞いてもいないのにリクエストしてきた。美桜ちゃんはクスクス笑って口を開いた。
「えと、私もグラタンかな」
「よっしゃ!じゃ、明日はグラタンで」
美桜ちゃんが翔の意見に賛成すると、翔は翼を揶揄うような顔になった。翼はムムッとした顔になりつつもなにも言わずにモグモグとご飯を食べ始めた。
「わかった。じゃ、明日はグラタンね」
「楽しみだなぁ。グラタン」
キョウはニコニコしながらとてもウキウキし始めた。美桜ちゃんはそれを見て少し嬉しそうな顔になった。
(あ、そういえば…)
遠い日の記憶を思い起こす。キョウは確か一番好きな食べ物がグラタンだったはず。昔はよく作ってあげていたのだ。
(美桜ちゃんはパパが好きなものをリクエストしたんだね。優しいな)
私は優しい気持ちにほっこりしつつ、我が子達の喧嘩に仲裁をし、ご飯を楽しく食べた。
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