【完結】夫の不倫相手が元カレの奥さん

あさリ23

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ここに決めた!

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 子供達へ、実質的な離婚が決まったことを伝えると翼は泣いて子供部屋にこもってしまった。

「しばらくそっとしておくしかないよ。翼も仕方がないことだってわかってるんだ。俺が話したことやママの様子見て段々と理解をしてたみたい。でも現実になってしまったと思うと…」

「うん。わかってる。ママも…4人でずっと仲良く暮らしたかった。翼の気持ちもわかる…。翔にも無理させてごめんね」

「…うん…。ねぇ、今日は一緒に寝てもいい?」

「あら?ママと寝るのは卒業したんじゃないの?」

「翼のこともあるし3人で寝ようよ。いいじゃん」

「ふふ。そうだね。お風呂も一緒に入る?」

「そ、それはだめ!」

 私は顔を赤くする翔をからかいながら、閉じこもってしまった翼を想って心で涙を流した。

 翼は2時間ほど部屋にこもってからテレビを見ている私と翔がいるリビングへやってきた。目は真っ赤だし、瞼は腫れぼったい。泣いていた事がすぐわかった。

 私が何も言わずに手招きすると、翼は甘えるように私に抱きついてきた。私を真ん中に、左側に翔。右側に翼。私はお腹に顔を埋めて甘える翼の頭を撫でた。

「今日は3人で寝ようね」

「…んっ」

 翼は顔を埋めながらウンウンと頷いた。翔はそれを見て少しホッと息をつくと目線をテレビに向ける。私は翔の右手をギュッと握って、翼の頭を撫でながらテレビを眺めた。

(これから3人か。子供達には本当に申し訳ない事をしてる。ごめんね)

 私1人が我慢すれば…氷の上でおままごとみたいに4人で暮らすことはできただろう。でも、いつか壊れてしまう関係である事をわかった環境で子供達を育てる事なんて…。

(離婚は間違ってない。今は辛いけど、きっと未来は3人とも笑顔のはず)

 先行きの見えない不安に押しつぶされそうになりながらも、私は子供達を守るために強くあろうと再び決心した。

 夕食はお寿司の出前にした。子供達はネタの大きなお寿司に興奮しながらたらふく食べた。取り合いをする様子を微笑ましく思いながら眺めつつ、楽しい夕食を囲んだ。

 3人ともお風呂に入って、夫婦の寝室で私を真ん中にして子供達は両サイドに寝そべった。

「ママ。俺…負けないよ」

「ん?」

 翼は何かを決意したような顔で天井を眺めながら私に声をかけてきた。私はその横顔が少し貴史に似ているなと思いながら、翼の言葉の続きを待った。

「パパとは月一で会えるんだもんね。俺のパパなのには変わらない。ずっと心で泣いてる俺が言うんだ。どうしてどうしてって。でも、俺…ママに笑って欲しい。泣いてるママを見るのはもう嫌だ。だから弱い俺に負けないように強くなるよ」

「一丁前に。エーンエーン泣いてた弱虫のくせに」

「うるさい!にーちゃんだって時々泣いてるくせに!」

「おまっ!」

「はいはい。ママを間に挟んで喧嘩しないで」

 いい話だったのに翔の横槍で子供達はベッドの中で暴れ始めた。私は笑いながらそれを抑えて2人をギュッと抱きしめた。

「大好きよ」

「俺も」

「にーちゃんより俺の方が大大大好きだよ」

「マザコン」

「それはにーちゃんもだよ!」

「あー、はいはい。寝ますよー、目を瞑ってー」

 また喧嘩が始まりそうになったため、私は仲裁した。2人はぶつぶつ言いながらも目を瞑った。

 翼は泣き疲れていたのか、そのまますぐに眠ってしまった。翔はまだ眠くないのかスースーと音を立てて寝ている翼の音を聞きながら話しかけてきた。

「ママ。俺も強くなるよ」

「ふふ。ありがとう。ママももっと強くなるね。でも、ママ1人じゃ立ち向かえない時には力を貸してくれると嬉しいな。あ、学費とか気にしないでね。バリバリ働くから行きたい高校に行かせるから!大学だって行けばいいよ。奨学金は…申請してもらうかもだけどね」

「うん。勉強も学校も頑張る」

「さぁ、寝よう。明日はまた引っ越し先を見つけに行かなきゃ。なかなかないねぇ。最悪ママの知り合いのおすすめ物件になっちゃうよ」

「んっ。明日は焼肉…が…いい…な」

「ふふ。考えとく。おやすみ」

「おやすみな…さい」

 話しながらも眠気がやってきた翔はウトウトし始めた。そしておやすみの挨拶をするとスースーと寝息を立てて眠り始めた。

「可愛い」

 大きくなっても子供は可愛い。私はこの空間と時間に癒されながらも目を瞑った。


 次の日。3人で不動産巡りをした。そしてある不動産で目星をつけた物件の内見へ向かうことになった。ただ私はその物件の住所を見て何か引っかかりを感じていた。

(なんか忘れてる気がする)

 何に引っかかるのかわからないまま不動産のスタッフに連れられてあるマンションの一室に入った。

「こちらが3DKの物件です。リビングがないのでテレビを置いたりするためにリビング代わりに一部屋使われる方が多いですね」

「なるほど…。でも上の子が大きくなると一部屋欲しくなると思うので…。2人はどう?」

 部屋の中を探検している2人に声をかけると、翼が元気よく返事をした。

「今までのところより広いし、ここいいなぁ。部屋も綺麗だし、お風呂もトイレもピカピカだよ!」

「さんせーい。窓から見える景色もいいし、学校近いし。それに最寄り駅近くにスーパーとかもあるんでしょ?ママが仕事帰りに買い物して帰るなら便利なんじゃない?」

 翼に続いて翔もワクワクしたような声で話してきた。

(確かになぁ…。まぁ、リビングがないにしても割と広いし、高校生になるまでは一部屋テレビの部屋にして、ダイニングテーブルをキッチンがあるスペースに置けばいいか。いや、でも別にテレビぐらい置くスペースありそうだし、ソファー買っても子供達は床でゲームしてるだろうし、いらないかなぁ。むしろ今から2人に部屋をあげるのもありだな…。まぁ、家具はおいおいかな)

「2人がここがいいなら…。ここにします」

「ありがとうございます!では契約に移らせていただきたいのでもう一度事務所へご案内しますね」

「はい。2人ともー、帰るよー」

「「はーい」」

 子供達は気に入った場所に決まって満足そうに笑うと部屋から出ていく私とスタッフについてきた。

 部屋はマンションの5階。角部屋だったしエレベーターにも近い。なかなかいい場所だ。

 スタッフに案内されて事務所に移ると、契約書にサインして入居日を決めた。2週間後の第三土曜日となった。

 帰り道。夕食のリクエストの焼肉屋さんに向かって3人で歩きながら私は2人に話しかけた。

「ママのベッドだけ買って、2人のは今のままでもいい?」

「うん、いいよ。勉強机はかさばるからいらないや。部屋にはベッド2つと本棚、クローゼットに衣装ケースとかでいいと思う。勉強はご飯食べるテーブルでするよ」

 私の質問に対して翔も翼も頷いた。翔はさらに子供部屋の家具についても意見を言ってくれたが、私はさっき思っていた事を2人に伝えることにした。

「うーん。あの空間にテレビを置けないこともないんだよね。いっそのことあの物件に引っ越してからは2人の部屋を分けちゃう?」

「「え!?」」

「だって、本当は2人とも自分の部屋に憧れてるでしょ?翼はまだ小学生だけど、中学生の翔はさ…ね?」

「……1人部屋になるなら、すごく嬉しい」

「うん。俺も…」

 2人は嬉しそうにしながらも申し訳なさそうな顔で頷いた。私はニヤッと笑ってから2人の頭をぐしゃぐしゃに掻き回した。

「よしよし。じゃあそうしよう。新しい生活、楽しみだねぇ」

「うん」

「学校終わったら準備しなきゃだ。どうやるといいのかな…」

 翔はスマホで引っ越しするときの分別について調べ始めた。翼はまだスマホを持っていない。ジュニア携帯を持たせてはいるが、調べ物をするときは翔のスマホを借りているようだ。

(2人の携帯の名義は貴史だったよね。あれも変えた方がいいかな…。それは貴史に聞くとするか)

 ネット制限がかかっているスマホで2人はあーだこーだと口喧嘩?をしている。私はやれやれと思いながらも2人に声をかけた。

「こらー。歩きスマホやめなさい」

「うっ。はーい」

「にーちゃん、帰ったら見せてね」

「わーかってるって」

 翔はスマホをズボンのポケットに押し込むと、翼をからかいながら歩いた。翼は反抗しながら翔にかまってもらうのが嬉しくて仕方ない様子だ。

(なんだかんだ仲良しよね)

 私はクスッと笑って2人を眺めつつ焼肉店へと向かった。




 
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