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あーあ

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 新しい職場にいた同期の貴史と出会い、付き合って26歳で結婚。貴史とも体の関係で始まったけど、私よりも貴史が熱を上げて付き合いはじめた関係もなかなか良かった。

 結婚した頃には貴史への愛を自覚していた。結婚してすぐに妊娠して、27歳の時に1人目の子供を出産し、29歳で2人目を出産した。

 育休を使いながら仕事をしていたが、2人目が生まれた時に貴史に頼まれて専業主婦になった。ずっと続けていた仕事を辞めてしまうことにはなったが、私なりに結婚生活を楽しんだ。

 35歳まではお互いに誘い合って夜の生活もあった。でも段々と貴史からの誘いがなくなった。疲れている様子から、私もなかなか誘えなかった。

 でも、私が声をかけると嬉しそうに微笑んで抱いてくれる。夜がなくても夫婦仲はとても良くて、子供達の前でもイチャイチャするたび男の子2人の子供に呆れられていた。

 38歳になると、こちらが誘っても断られるようになった。疲れていると言われるとそれ以上言えなかった。でも、抱きしめて眠ってくれるし、夜の生活がないだけで以前と変わらなかった。

 その頃に、貴史はストレス発散だと言って会社の人たちとテニスを始めた。ゴルフとかじゃなくてテニス?と疑問に思ったけど、楽しそうに第二土曜日に出かけていく様子を微笑ましく見ていた。

 仕事のストレスが発散されれば、夜の生活も戻るかも。

 そんなことを考えながら2年経った。

 貴史はテニスがよほど楽しいのか、第三土曜にもテニスのサークルだと言って出かけるようになった。

 子供たちも大きくなって、ほとんど手がかからない。親について回るよりも、ゲームや友達と遊ぶ方が好きなようだった。

 なんだか私だけがポツンと家に取り残されるようになっていた。

 でも、ある日。貴史がテニスの練習試合に応援に来ないかと言ってきた。山奥の貸別荘コテージ、テニスコートがある場所で親睦会をしながら交流しようとなったそうだ。

 久々に貴史と出かけられる。しかも泊まりで。そう思うだけで心が躍って私はすぐに了承した。

 子供達は一日なら留守番すると言ってついてこなかった。13歳中学生の長男が11歳小学生の次男をちゃんと面倒見る事、家から出ない事、火を使わないこと、戸締りをしっかりすること、寝る前にスマホで連絡する事を約束させて、不安に思いながらも子供達をおいて夫婦で山の中にある別荘へ自家用車で向かった。

 夫婦できていたり、カップルできていたりと、思っていたよりもたくさんの人が来ていた。知らない人の顔をジロジロ見るのも嫌だし、特に男性には目線を向けずに自己紹介して、奥様たちの輪に入って話に花を咲かせた。

 そう。私は久しぶりの貴史との泊まり旅行に心がウキウキしていたのだ。

 そして、貴史がテニスを頑張っている姿を見るのは微笑ましくて、私はフェンスの向こうから応援をしていた。仲良くなった奥様たちと話したりして時間が過ぎていくと、いつの間にか貴史の姿が見えなくなっていた。

 別荘からテニスコートは少し離れている。別荘へ移動しようとしている人たちの群れから離れて、貴史を探していると、あの現場を見てしまったのだ。

 森の中にあるから、身を隠す場所はたくさんあった。

 でも運良く、いや、運悪く私はあの2人を見つけてしまったのだった。



 ぼんやりと回想している間に、3人の話は拗れていたようだ。私がモゾモゾと動き始めたのに気が付いたキョウがギュッと私を抱きしめて離さなかった。

「おまっ…いつまで香織に触ってる!離せよ」

 貴史の怒っているような声が聞こえる。様子からキョウの腕が掴まれたようだ。私は状況を把握したくて動きたいが、キツく抱きしめられていて身動きが取れなかった。

「やだね。お前はそっちの偽物がいいんだろ?」

「嫌!あっくん、やめて!」

 女性の泣き叫ぶような声が聞こえてきた。とりあえず、私もやっと冷静になってきた。この状況をなんとかしようと抱きしめられながら声をだした。

「と、とりあえず…コテージに、行かない?こんなところで話してても…」

「そうだね。みんなもう移動してるし」

「……香織、こいよ」

 私の言葉に同意したキョウの拘束が解かれて、私はホッと息をつくと体を離して貴史のもとへ移動した。私と交代して奥さんがキョウに抱きついて、謝りながら泣いていた。

「すまん」

「…謝るならなぜしたのか教えて」

 小さく呟いて頭を下げた貴史の隣でキョウの視線を背中に感じながら、コテージに向かって歩いた。後ろから少し離れてあの2人もついてくる気配を感じる。

「いつから?」

「…一年…前から」

「最低」

 歩きながらも股の間から垂れてくる感覚に気持ち悪さを感じながら、私は貴史を睨みつけた。

「わたしとしないくせに」

「あ、あれは…その…」

「なに、私が子供産んでおばさんになったから?」

「っ……」

 貴史は気まずそうに私を見てから視線を逸らした。

(やっぱりか)

 そんな言葉が心の中に浮かんだ。歳を取れば取るほど体型は崩れた。努力はしていたが、日々の子育てでなかなか手入れもできなかった。

 私もそれを言い訳にして逃げていたのは悪い。でも、不倫して裏切るのは違うだろう。

 私は徐々に気持ちが冷めていくのを感じながら、さっき自分がしたことを思い出した。

 キョウじゃなかったら、きっとあんな風に誘われても抵抗して暴れただろう。元カレで知り合いだった事や乱暴ではないことを知っていたからこそ、私は簡単に体を許した。2年間の欲求不満もそれを後押ししてしまった。

 フーっと息を吐きながら、私たち夫婦に割り当てられた部屋に入った。しばらくするとコンコンっとノックが聞こえた。貴史が扉を開けると、ニコニコ微笑んでいるキョウと泣き腫らした顔のキョウの奥さんが入ってきた。

「ベッドしかないから、ここしか座るところないよね。じゃ、俺たちこっちね」

 サイドテーブルを挟んで並んでいるツインのベッドの片方にキョウは奥さんを引っ張って座った。

 私たち夫婦も向かい合うようにもう片方のベッドに座った。

 私の正面には泣いている奥さんがいた。
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