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episode1 鬼
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「おい、みなしご」
あざ笑うかのような声が届いた。
その声は自分に向けられたものだと分かっていたけれど、声の方には反応を示さず、黙々と薪拾いをする。
「おい、聞こえねぇの?」
またも反応を示さずにいると、鈍い音と共に頭に衝撃が走った。
うずくまり、後頭部を押さえるとぬるりとした感触。手の平には自分の物と思われる血が大量に付着していた。
「お前が無視するからだろ?」
少し視線を後ろに向けてみると、村の子供が石を片手で弾ませ、口角を吊り上げている。
「お前は、逆らえる身分じゃないんだから少しは利口になれよ。なぁ?みなしご。」
僕の名前は「みなしご」喋る事、反抗する事
は許されていない。
僕は生まれてすぐに捨てられた。
今育てて頂いてるお爺様、お婆様に運良く拾って頂き。お世話になっているので、お側で働かせて頂いている。
僕はみなしごで、お爺様は、「お前はまた捨てられたら生きることができない。死ぬしかないんだ」と教えられ育てられた。
だから捨てられないように幼少期からなんでもやった。
教えられた事はすぐ出来るように努力し、今まで言いつけも破った事はない。
おかげでこの齢まで生きることができている。
僕は口をきけない。喋る事はお爺様、お婆様以外にはしてはならないと言われたから。
僕は反抗する事は出来ない。お爺様、お婆様にそう言いつけられているから。
痛みに耐え、石を投げられた後頭部を押さえ立ち上がると、もう一人の声が少し遠くから聞こえた。
「こら!!またこんな所で油売って!!森のふもとで鬼が出る話を忘れたのかい!?」
声からしてさっきの子供の母親だろうか、
子供は慌てて声のする方へ駆けて行った。
二人の声がどんどん遠ざかって行く。
声が聞こえなくなったのを確認し、口を開く。
「鬼....。」
独り言を呟いて、目の前に広がる森を見る。
この村は年々人が減っている。
この村の主な収入源は農作で森に入れなければ死活問題となるが、森に入った者は、死体として発見されたり、帰ってこなかったりしている。
さらに、森のふもとで働く村娘は奇妙なものを見たという。
黒く、大きな体に、四つの足、一つの大きな眼球、大きな口と牙。鋭い角を持つ怪物が人を食っていたと。
その化け物を見た村娘は、その場から死に物狂いで逃げ出し「あれは人食い鬼だ」と言った。
森に入ることができず、作物が取れなくなり、飢餓状態が続くようになると若者が「鬼退治に行ってくる。」と村の者が止めるのを聞きもせず、に森に入り、帰って来ないという事が三度続いた。
森は「鬼ヶ島」と呼ばれ、本格的に人が寄り付かなくなった。
人が寄り付かない森のふもとは薪が沢山拾える。
僕は、森のふもとで毎日薪拾いをしているが、鬼の姿は一度も見たことがない。
本当にいるのなら、僕の事は食べてくれるだろうか。
痩せているから。食べてくれないかもしれないな。
そんな事を今日も考え、籠いっぱいの薪を背負い、家へと帰る。
あざ笑うかのような声が届いた。
その声は自分に向けられたものだと分かっていたけれど、声の方には反応を示さず、黙々と薪拾いをする。
「おい、聞こえねぇの?」
またも反応を示さずにいると、鈍い音と共に頭に衝撃が走った。
うずくまり、後頭部を押さえるとぬるりとした感触。手の平には自分の物と思われる血が大量に付着していた。
「お前が無視するからだろ?」
少し視線を後ろに向けてみると、村の子供が石を片手で弾ませ、口角を吊り上げている。
「お前は、逆らえる身分じゃないんだから少しは利口になれよ。なぁ?みなしご。」
僕の名前は「みなしご」喋る事、反抗する事
は許されていない。
僕は生まれてすぐに捨てられた。
今育てて頂いてるお爺様、お婆様に運良く拾って頂き。お世話になっているので、お側で働かせて頂いている。
僕はみなしごで、お爺様は、「お前はまた捨てられたら生きることができない。死ぬしかないんだ」と教えられ育てられた。
だから捨てられないように幼少期からなんでもやった。
教えられた事はすぐ出来るように努力し、今まで言いつけも破った事はない。
おかげでこの齢まで生きることができている。
僕は口をきけない。喋る事はお爺様、お婆様以外にはしてはならないと言われたから。
僕は反抗する事は出来ない。お爺様、お婆様にそう言いつけられているから。
痛みに耐え、石を投げられた後頭部を押さえ立ち上がると、もう一人の声が少し遠くから聞こえた。
「こら!!またこんな所で油売って!!森のふもとで鬼が出る話を忘れたのかい!?」
声からしてさっきの子供の母親だろうか、
子供は慌てて声のする方へ駆けて行った。
二人の声がどんどん遠ざかって行く。
声が聞こえなくなったのを確認し、口を開く。
「鬼....。」
独り言を呟いて、目の前に広がる森を見る。
この村は年々人が減っている。
この村の主な収入源は農作で森に入れなければ死活問題となるが、森に入った者は、死体として発見されたり、帰ってこなかったりしている。
さらに、森のふもとで働く村娘は奇妙なものを見たという。
黒く、大きな体に、四つの足、一つの大きな眼球、大きな口と牙。鋭い角を持つ怪物が人を食っていたと。
その化け物を見た村娘は、その場から死に物狂いで逃げ出し「あれは人食い鬼だ」と言った。
森に入ることができず、作物が取れなくなり、飢餓状態が続くようになると若者が「鬼退治に行ってくる。」と村の者が止めるのを聞きもせず、に森に入り、帰って来ないという事が三度続いた。
森は「鬼ヶ島」と呼ばれ、本格的に人が寄り付かなくなった。
人が寄り付かない森のふもとは薪が沢山拾える。
僕は、森のふもとで毎日薪拾いをしているが、鬼の姿は一度も見たことがない。
本当にいるのなら、僕の事は食べてくれるだろうか。
痩せているから。食べてくれないかもしれないな。
そんな事を今日も考え、籠いっぱいの薪を背負い、家へと帰る。
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