誰にも言えない初恋

山本未来

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死にたい

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お母さんが入院して1週間が経った


僕はお見舞いに行くどころか

お父さんや弟を避けて

お母さんの話しを聞く事も避けていた


お父さん達は毎日お見舞いに

行っている様子だったけれど

酷く疲れた感じで

その様子を見てお母さんの容態が

良くない事を密かに感じ取った


僕は正直に言うともうお母さんに

会いたくもないしこのまま入院していて

欲しい位だった


お母さんがいない方が静かだし

気も使わない

不安定なお母さんにもう会いたくなかった

会うのも話すのも嫌だった


そして2週間後お母さんは退院した


少し虚ろな目をしたお母さんは

僕達の事が分かっているのかどうかも

分からない位視線が定まらない


心や感情がなくなったような

魂を誰かに吸い取られたように


一点を見つめてお父さんと寝室に向かっていった


僕はお母さんが退院した事で

また不安と恐怖で心がいっぱいになる

のを感じた


いつまで、この恐怖は続くんだろう

お母さんがこの世にいる限り

ずっと僕達は不安と恐怖に怯えながら

毎日を過ごしていくんだ


そう思うと、悲しみに包まれた


クラブも辛くて辞めたかったけれど

もう少しの辛抱だと思ってなんとか

先輩のいじめに耐えていた


そして毎日寝てばかりのお母さんを

避けるように僕は部活が終わっても

駅前をうろついたり

時間を潰して、なるべく家に帰る時間帯を

遅くしていた


ある日家に帰ると仕事が休みだったのか

お父さんが僕の部屋に来るなり


「毎晩帰って来るのが遅いようだけど

お母さんがこんな状態になったのは

お前のせいなんだぞ!

その事お前は分かっているのか!」

お父さんは扉の前に立ち

大声で怒鳴って来た


「、、、」

僕はひたすら無視をしていた


「その態度はなんだ!お金もこっそり

取っていたらしいな~

勉強もしてないみたいだし

お前はいったい何を考えているんだ!」


お父さんは日々のイライラを僕に

ぶつけるように八つ当たりするように

永遠と説教を続けている


僕は何かが切れたように

机に置いてあった教科書をお父さんの体に

向かって思い切り投げつけた


「うるさい!死ね!」


僕はそう言うと震える肩や腕を

押さえながら玄関に向かい

潰れるのではないかと思う位

扉を思い切り締め走って家を出て行った


どこに行ってるかも分からないくらい

ひたすら走り続けた

真っ暗な夜道は静まりかえって

とても静かだったはずだけど

そんな静まり返った夜道なのに

僕の心は乱れてぐちゃぐちゃで

涙が次から次へと流れ

走ってる勢いでその涙は雨のように

僕の後ろに流れて

アスファルトに落ちて行った


もう何もかも嫌だった


死にたい、、僕は本気で思った









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