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悲しい夜と温かい心
しおりを挟む中学3年生の夏が過ぎ
高校受験という課題が段々と本格的になり
僕は焦っていた
昔から勉強が苦手な僕は
野球に夢中でテスト前に友達の
ノートを借りて要点だけ覚える
山掛けのような勉強方法だったから
テストもあまりいい点数は取れなかったし
その事でいつも両親と喧嘩したり
怒られる事が多かった
お母さんも体調が悪かったから
勉強しない僕にヒステリーを起こして
僕も反抗的な態度を取って
物に当たったり時にはお母さんを
押しのけたり暴言を吐いたりした
心では冷静にしたいと思っていたけど
抑えきれない感情が爆発する事が
段々増えて行った
ある晩、何もしないでふさぎ込んでいる
お母さんに向かって
「他のお母さんはご飯作ったり
身の回りの世話してくれたり
わがまま聞いてくれたりするのに
何でお母さんは寝てばかりで
泣いたり怒ったりで、、
僕こんな家もお母さんも大嫌いだ
もっと優しいお母さんが良かった!」
そう言って、寝ているお母さんに
持っていたカバンを思い切り投げつけ
あてもないのに外へ飛び出した
お母さんは狂ったように
泣き叫んでいるのが
玄関にいても聞こえたけれど
僕は積り積もった感情を抑え切れなかった
どこにも行く所がない僕は
公園のベンチでずっと座って心を
落ち着かせていたけど
涙が溢れて止まらなかった
「あれ?もしかして翔君?
こんな時間にどうしたの?」
優しくて温かい声がして目を腕で
こすりながら顔を上げると
玲奈ちゃんママが心配そうに
僕を見つめていた
その日はちょうど満月で
明るい月の光が
優しい顔をした玲奈ちゃんママを照らして
まるで救いの天使が現れたような
感覚になった
僕は泣いていた事を隠す様に
精一杯何もなかったように
振るまったけれど玲奈ちゃんママは
何かを察した感じで
僕が座っているベンチの横に座った
「今、実家に行ってて
色々もらったけど
翔君ご飯たべた?」
僕は首を左右に振り小さい声で
「食べてないです」と言った
「ちょうど良かった
パン沢山もらいすぎて
食べきれないから
どうしょうかな~って思ってたんだ
翔君良かったら好きなパン選んで」
玲奈ちゃんママは袋から沢山のパンを
取り出して選ばせてくれた
僕はその中からピザパンを選んだけれど
小さいな袋にあと2つぐらい入れてくれて
僕に手渡してくれた
「ありがとうございます!」
僕がそう言うと
「このジュースもまだ少し
冷えてるし飲んでね」
と言って缶ジュースを手渡してくれた
少し沈黙が続いた後
玲奈ちゃんママは
僕の方に体を向けると少しためらいながら
「翔君が元気ないとおばちゃんも
元気なくなるな~
色々あると思うけど
元気出してね
もうすぐ受験だよね~
翔君も高校生になるんだね~
高校生になっも野球続けるんでしょう?
甲子園行けたら最高だね~
頑張ってね!」と言った
僕は泣きそうになるのを必死でこらえて
頷くのが精一杯だった
玲奈ちゃんママは僕が落ち込んでいる
理由は聞いて来ない
ただ僕の横にいてくれた
その沈黙が僕には心地よくて
不意に吹く風が優しく感じられた
「翔くんが小さい時この公園で
色々話したね、あの時楽しかったな~
高校生になってもたまに会ったら
話ししようね!
おばちゃんはいつも
翔くんの味方だからね」
僕は嬉しくてたまらなかった
さっきまで感じていた孤独感も
怒りも抑え切れない感情も
吹き飛びそっと玲奈ちゃんママを
見つめた
優しい目をして満月を
見ている玲奈ちゃんママが眩しかった
そして心が愛で満たされたような
温かい気持ちでいっぱいになった
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