誰にも言えない初恋

山本未来

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宝物

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弟は水遊びに飽きたのか

靴や服を水でべチョべチョに濡らし


「お兄ちゃん、おうち帰ろ」

と濡れた服の袖を絞りながら

お母さんに怒られたらどうしょうと

言う顔で僕を見つめた

 
家に帰ると予想通り

「ゆうくん、服そんなに濡らして…

シャワー浴びて服着替えなさい!

お兄ちゃん、お願いね!」

と怒った顔で言った


僕は嫌々お風呂場に連れて行くと

服を脱がして体をシャワーで流した

「もう、いつもお兄ちゃんが

ゆう君の面倒ばっかり見ないと

いけないから気をつけるんだぞ」


「だって~楽しかったんだもん…」


服を着替えさし台所に行くと

お母さんは沢山の料理を作っていた。


「美味しそう~早く食べたいな~」

僕がつまみ食いをしようとすると

「駄目、みんなが来るまで我慢しなさい」

と言って玄関の方へ行ったので

僕はこっそり唐揚げを

一つ口の中に投げ入れた


ピンポン~玄関のチャイムが鳴り

僕は口に入っている唐揚げを飲み込み

玄関に向って大急ぎで走って行った

扉を開けると斎藤さんが大きな袋を抱えて

立つていた


横には玲奈ちゃんがニコニコ笑っている

「玲奈ちゃんのお母さん入って!」

そう言って僕はスリッパーを並べた


「翔くんありがとう、色々持って来たから

みんなで食べようね」

僕は荷物の袋を一つ持っと


「こっち、こっちだよ」

とリビングに案内した


「翔くん、良かったね

やっと玲奈ちゃんのお母さん

来てくれたね

玲奈ちゃんのお母さんいつ来るの?

って毎日毎日うるさかったもんね~」

お母さんが少しいたずらっぽい顔をしながら

言うから僕は側に行って口をふさいだ


「もう、お母さんのおしゃべり!」

玲奈ちゃんのお母さんは口に手を持って行き

笑うのをこらえているようだった


「ピザとチューハイ、お菓子持って来たよ

今日は誘ってくれてありがとう

なんか沢山料理用意してくれてるみたいだね

大変だったでしょう?」


台所にあるカウンターに荷物を置き台所を

見ながら玲奈ちゃんのお母さんは言った


「久々に色々作ったから食べてね」

お母さんは機嫌良さそうにそう言った


その後、拓也君のお母さん達も来て

ダイニングテーブルには

大人達と弟と玲奈ちゃんが座り

横に用意していた小さめのテーブルに

僕と拓也君が座り、料理を取り分けて

テーブルに並べてくれた


僕は一番に玲奈ちゃんのお母さんが

作ってくれたピザを取り口の中にいれた


『美味しい!ピザって注文して食べるものと

思ってたけど、作れるんだ~

めちゃくちゃ美味しい~

ピザ屋さんのより美味しい~』

僕は心の中で思った


「玲奈ちゃんのお母さん!

ピザめちゃくちゃ美味しいから

もっと食べたい~」


「喜んでくれて嬉しいな~

おばちゃんの分あるから食べて!」

玲奈ちゃんのお母さんは

僕のお皿に2枚追加してくれた


「いいの~ありがとう!」

僕は大きな口でピザを頬張った


「翔君はわがままなんだから…

玲奈ちゃんのお母さんごめんなさいね

翔くん玲奈ちゃんのお母さんの事

気に入ってるから…」

っとまた余計な事を言うお母さんを

僕は睨んだ…


『お母さんは余計な事ばっかり言うから嫌だ~』

心の中でそう言った


食べ終えると玲奈ちゃんと弟と

拓也君はゲームを始めたので

僕は玲奈ちゃんのお母さんの側に行くと


「玲奈ちゃんのお母さん

僕の部屋に来て~」

って手を引っ張り2階に連れて行った


「翔くんの部屋片付いてて綺麗ね~」

と玲奈ちゃんのお母さんは

僕の部屋を見てビックリしている様子で

辺りを見渡した


壁に飾っている写真をみたり

机を見たりしていた


「ねぇ~ねぇ~これ見て」

僕は机の引き出しから

木箱を取り出すと


「あのね~これ

玲奈ちゃんのお母さんにあげる

海に行った時に拾った貝殻

僕の宝物だけど

玲奈ちゃんのお母さんにあげたい」


少し照れながら握りしめた

少しピンク色した貝殻を

玲奈ちゃんのお母さんの手に渡した


「宝物もらっていいの~嬉しいな~」

玲奈ちゃんのお母さんは

とても嬉しそうに貝殻を見つめながら

ニッコリ微笑んだ


「あっそうだ、お礼にこれ翔くんにあげるね」

そう言うとポケットからカギを取り出し

それにつけていた可愛いキャラクターの

キーホルダーを渡してくれた


「これ最近旅行に行ったから

その時可愛いから買ったんだけど

まだそんなに汚れてないし

翔君にあげるね!

何かにつけてね」


僕はとても嬉しくて

そのキーホルダーを握り締めて

ピョンピョン飛び跳ねた


玲奈ちゃんのお母さんは僕を見つめて

ニコニコしていた


「僕、これ宝物にするね!

嬉しいな~ありがとう!」


僕は玲奈ちゃんのお母さんが益々好きになった


そして二人で手を繋いで前後に揺らして

微笑みあった



なぜだか優しい風が吹いたように

部屋中が優しさや暖かさでいっぱいに


なった気がした






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