誰にも言えない初恋

山本未来

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あなたに出逢った日

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貴方と初めて出逢ったのは

僕が小学一年の夏休み

8月の暑い夏の日だった


蝉の鳴き声が響き渡り

雲ひとつない青空が広がり

みんな汗を拭いたり、日傘をさしたりして

少しでも暑さをしのごうとしていた


僕と弟の祐介は近所の公園で

水遊びをしながら暑い夏を楽しんでいた


水道から流れる水は冷たくて気持ちよくて

両手の手のひらに、ありったけの水を流し込むと

思いきり祐介の顔をめがけてその水をかけた

祐介は、キャッ、キャッ、と喜んでいる


あまりに楽しそうなので僕は何度もそれを

繰り返していた

何度も繰り返しているうちに

弟は飽きて来たのか


「お兄ちゃん~お母さんの所に行こう~」

そう言って小さなおもちゃのバケツと

スコップを手に握りしめ

足早に母のいる公園のベンチに

向かって走って行った


木でできたベンチは4人位が座れる長さで

2つ並んでいる


一つのベンチにはさっきまでは母が

1人で座っていたのに

見知らぬ女の人が横に座っていた


あまり笑わない母が楽しそうに笑っている姿に

不思議に思いながら

僕はその女の人を見つめた


「お母さん~水道の所に来て~

 一緒に水遊びしょうよ~」

そう言って祐介は手を引っ張って

嫌がる母を水道がある方に

連れて行った


「もう、祐ちゃん、、

お母さんお友達とお話してるのに

少しだけだからね~」

お母さんは面倒くさそうに

盛り上がっていた話を

続けたかったような様子で

祐介の方について行った


2人が向こうに行くと

僕は、お母さんの友達という女の人と

二人きりになった


「こんにちは!

翔君!水遊び楽しかった?」

その人はベンチに座り

僕に優しく話かけてくれた


僕はその女の人の隣にくっつく様に座ると


「いつも弟わがままばかり言うから

仕返しに水いっぱいかけちゃった~

いつもお母さんに甘えてばかりで

喧嘩してもいつも僕ばかり怒られて

お兄ちゃんなんだからって、、

僕、弟に生まれたかったな~」


しょぼくれた顔で僕がそう言うと


「そうなんだ~おばちゃんも妹いたから

その気持ち分かるよ~

いつも損ばかりしてたよ~

お姉ちゃんなんだからって~」


そんな話をしながら僕とその女の人は

手を握りながらぶらぶらと

前後に腕を揺らしていた


僕はどちらかと言うと人見知りなのに

初対面の人とこんなにも打ち解けている事が

不思議で、なぜだか僕はずっと

その人の目に釘付けになっていた


とても優しそうな目、丸顔でさっき

おばさんと言っていたけど

僕はおばさんとは思えなかった

どちらかと言うとお姉さん

まん丸の大きい目、笑った顔が

とっても可愛い


「ねぇ~おばちゃんの膝に座っていい~」

僕は思いついたままそう言うと

返事を待つ事なく勝手に膝の上に座っていた


その人はぎゅ~って僕の後ろから

手をまわして抱き寄せてくれた


なぜだか優しくて温かい気持ちになり

このままお母さん戻ってこなければいいのに

とも思う程居心地が良かった


そして、また公園に来れば

この人に会えるかも

そんな思いが頭をよぎった

そんなあの人との思い出、、


沢山の色々な思い出たちは流れるように

消え去って行ったけれど


この夏の日の出来事は

高校生になった今でも鮮明に覚えている


あの日出逢ったのは運命だった

僕はそう思えたんだ…


あの時の繋いだ手の温もりと

抱き寄せてくれたホットする気持ちは

ずっと忘れられない

忘れられないんだ









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