4 / 43
入社式
しおりを挟む今日は入社式の日
慣れないスーツに身をまとい
母と共にバス、電車、バスを乗り継ぎ
会社に到着した
家から一時間以上かかるから
電車やバスに乗り遅れたら大変で
早めに家を出る事にした
会社に訪れるのは入社試験以来で2回目
この会社が私がこれから社員として
働く事になる場所
「随分遠い場所にある職場だけどめぐみ
大丈夫なの、、高校の時は遅刻ばかり
していたし、、朝も6時には起きないと
間に合わないし、、お母さん心配だわ~」
母親は心配性だから実際に自分が
会社に来て見て交通の面が不便だと分かり
心配になったようだった
「う~ん、、私も少し心配だけど頑張る!
初めは慣れないかもしれないけど
なんとかなるでしょう~」
私は少し強がってそう言って見たものの
内心少し不安だった
『就職先が少なくてこの会社になったけれど
少し遠すぎたかな~通勤ラッシュとかも
凄いだろうし、、私朝に弱いし、、
でもせっかく縁があって入社になったんだから
頑張るしかないな~』
私は心の中で呟いた
9時から始まる入社式
会社の中の会場に案内されると
既に沢山の人が集まっていて
私達は前の席
保護者は後ろの席に分かれ
私は真ん中の列の端っこの方に座った
男性は前列、女性は後列になっていて
周りをチラチラ見るとみんな仕事が出来そうな
人達ばかりで当たり前だけど知らない人ばかり
私は益々不安になって来た
9時になり入社式が始まると
常務、専務、社長、副社長達が
入り口から入って来た
常務は面接してもらった人なので
顔は覚えていたけれどあとの人は全く初対面
みんなとても怖い感じがした
会社の概要やお祝いの言葉、取締役からの
それぞれの話しが終わると
最後に社長の話しになった
みんな静かに聞いている
だけど社長の話しはボソボソとしていて
声も小さくて全く何を言っているか分からない
私はもっと大きな声で話したらいいのに
って少しイライラしていた
すると保護者の席から突然手を上げる
人がいたようで常務がそれに気がつき
「なんでしょうか?!何かご質問でも、、」
とその男性を見て言った
その保護者の男性は立ち上がると
「社長の話しが全く聞こえないので
もう少し大きな声で話して
いただけないでしょうか?」
と言って席に腰掛けた
周りは少しざわつき
顔色が変わった社長は
「あなたのお名前は何でしょうか?」
ときつい言い方で怒ったように言った
「柳井と申します」
「柳井さんですね、、覚えておきます、、」
社長はそう言うと
常務に名前をメモに書くように支持した
そして社長はもう話す気はない感じで
話しを辞めて、代わりに常務が閉会の
言葉を述べて入社式は終わり
私達はそれぞれに退散した
帰りバス停でバスを待っていると
「社長かなり怒っていたよね、、
柳井さんと言う人勇気あると言うか
社長に目をつけられた感じだったよね~
まさか入社取り消しとかにならないのかな、、」
そんな会話が聞こえて来た
私も社長をあんなに怒らせてしまった
柳井さんと私と同期の柳井さんの子供の
事がとても気になった
名前まで聞かれていたからきっと社長が
怒っている事は間違いない、、
私だったらきっと母親に
なんて言う事してくれたのって怒ると思う
『でも柳井さんある意味有名人に
なってしまったな~
どんな人なんだろ?!
男かな女かな?!
でも大きな声で話して欲しいと言っただけで
社長もあんなに怒る必要ないと思うけれど、、
かなりワンマンな社長なんだろうな~
そう言えばこの会社組合が無いって
言ってたしな~
先が思いやられるな~、、』
私はそんな事を考えて帰りの電車に乗り
家に着いた
今日は慣れない服装で遠距離で
緊張感があったからとても疲れた
明日からは朝早く起きて
毎日あの距離を通勤ラッシュに巻き込まれて
出勤するかと思うとゾッとしたけれど
頑張るしかなかった
そして朝になり緊張しながら出勤した
会社に着くと私達は
それぞれに配属された部署に案内され
上司や先輩社員に紹介され
仕事内容の説明を細かく教えてもらい
あっと言う間に時間が過ぎ
一日があっと言う間に終わった
更衣室に同じ部署になった人達と行くと
他の部署の人の話しが聞こえて来た
「昨日、社長を怒らせた柳井さんの息子さん
やっぱりこの会社の関連会社に配属になったん
だって、、今日はここに来てるみたいだけど
営業の仕事で採用だったのに
関連会社の工場で、それも電車で行くのには
不便な田舎に工場があるらしいよ~
なんか酷いし可哀想だよね~」
私はその話しを聞いて酷いと思うと同時に
何という会社に入社してしまったんだろう
って思った
あんな些細な事で、それも親が言った事
本人は関係ないのに、、
今日はその人来てるって言ってたけれど
会って見たいな~と思った
帰りバス停で待ってていると
ある男性が会社から出て来た
きっと同期の人と思い私は軽く頭を下げた
「お疲れさまです!
同期の方ですよね~?」
彼は気さくにハキハキと話しかけて来た
「あっ!はい!そうです!
これから宜しくお願いします!」
私が微笑んで言うと
「こちらこそ宜しくお願いします!
また同期会する予定なので是非参加して下さい」
「あっ!そうなんですか?
楽しみにしてます!
部署はどこに配属されたんですか?」
「実は、関連会社に配属になりました、、」
「えっ!もしかして柳井さんですか?」
「はい、、柳井です、、
やっぱり僕の名前有名ですよね、、
入社式であんな事があったし、、」
「あ~、、でも社長も酷いですよね、、」
私はその後の言葉が見つからず黙っていると
「大丈夫です!あの工場には寮もあるみたいだし
自然に囲まれた所にあるみたいだし
僕の実家も田舎だからこんな都会より
落ち着くし、、
頑張るつもりです!
会社は離れていても同期として
みんなと仲良くしていきたいと思ってるので
宜しくお願いします!」
と彼はあっけらかんと言った
私は驚いた
こんなに、前向きな人に会うの初めてだ
社長や親に対しての愚痴も言わない
凄い人だな~って関心した
そしてこんな前向きな人に会社が下した
判断は間違っていると思った
そして会社に対して憤りを感じた
そうこの人が
私がずっと忘れられない人になる
柳井瞬さん
この日が彼に初めて出会った日となった
そしてこの出会いがこれからの私を
色々な面で成長させてくれる事
彼と出会った事で恋する切ない気持ちを
知ると言う事も
この頃の私は全く知らなかった
前向きな彼の横顔をただ尊敬の眼差しで
見つめる私がそこにいるだけだった、、
桜が少し散り始めたそんな季節の出会いだった
運命の出会いだった
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/light_novel.png?id=7e51c3283133586a6f12)
余命3ヶ月、、たけどあなたに出逢ってしまった
山本未来
ライト文芸
乳がんで余命3ヶ月と宣告された
だけど明るく生きる決意をする
命ある限り好きな事をしよう、、
そして出逢ってしまった
大切な人と、、
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる