ガールズガーディアンガンガンダッシュ戦記

七井 望月

文字の大きさ
上 下
100 / 100
第五章 キングダムインベードミッション

前回までのお拐い

しおりを挟む
 
『…………会いにいこう。チロに』

 ……私、カナはチロに会いに行くため街へと飛び出した。

 守護者のライが言うには、どうやら大会の再開が遅れているらしく、確かに会場前には屯する人の群れが多く見られた。

 当然、試合を見に来た人達だ。皆、私に気付いて手を振ってくれたり、声をかけたりしてくれた。

 ただ、急いでる様子の私に気を使ってか、サイン求めたり、引き留めたりはしなかった。ありがたかったけれど、少し気を遣わせてしまって申し訳無かった。



 ……そんな時だった。

「お、おい!なんだアレは……ッ?!」

 突如、広場に響いた声。声の主の方へ振り向くと、その人は空を指差して口を開けていた。

 私を倣って空を見る。




「……な、なに……あれ…………?」




 ※





 ……時は少し前へ遡る。




 ※




 昨日の夜の事でした。私、レイが拐われたのは。

 王城に眠る最強の秘密兵器とやらを破壊すべく、私と、南の国代表のミミ様、そして私の想い人であるチロさんこと神林慎一郎さんと、城へと続く長いトンネルを進んでいた時の事です。

『……こんなところに勝手に入ってきちゃ駄目じゃイカ。悪い鼠ちゃん達……』

 そんな舌足らずの語尾が聞こえたかと思った刹那、私は突然の睡魔に襲われ意識を失ったのでした。

 ……最後の最後に、私はチロさんに抱き抱えられる幻影を見た気がするのですが、結局、最後には私の恋路を邪魔するお邪魔虫にその手は剥がされ、私は連れ去られてしまった訳です。

 そうして私は今、見馴れない場所で目を覚まし、お拐いのおさらいをしていたのですが、ここはどこでしょう?

「やあ、se réveiller(目が覚めた)かい?可愛い可愛い空色のお姫様☆」

「ひっ……!?」

 突如、視界の横から現れた顔中ブサイクのメイクをした残念な色男が、ゾッとするほど、吐き気を催すほとの気色の悪い声で私の耳元で囁くので、私は咄嗟に後ずさります。

「WOW、驚かせてしまったようだね。Entschuldigung (すまない)。怖がらせるつもりはなかったんだが……って、なんだいその顔は?」

 私は目の前に現れた男に敵意の眼差しを向けます。王国国王、レオ・レイカ。エドさん曰く、世界を終わらせることの出来る兵器を所持する諸悪の根元。本物の悪党です。

「確かにこんな怪しい、怪しすぎる格好をしているのは重々承知しているが、実際のところ、僕はそんなに怪しい奴ではないよ。いや、マジで」

「……嘘をつかないでください。話はエドさんから聞きました。貴方は私達の“敵”です」

「うーん“敵”って言われるとそう強く否定は出来ないんだけど、敵とは言っても敵(敵(てき))じゃなく敵(敵(かたき))って言うか、enemy(敵)ではなくてrival(敵)って感じ?うーん、上手く説明できないなぁ……」

「……分かりづらいんですよ、貴方の喋り方」

 国王は自らは害をなす存在ではないと、身振り手振りで必死に弁明するのだが、よく分からない言語で喋るのでほとんど意味が理解できない。警戒はしているが、毒気が抜かれたような気分だ。

「まあ、とりあえずMain topic(本題)に入ろう。今回君を呼んだのは他でもない。君に頼みたいことがあるからなんだ☆」

「……呼んだって、随分と勝手な言い種ですね。私を誘拐してきた癖に」

「そりゃあだって君達が勝手に王城に侵入してきたからじゃないか。多少手荒にはなるよ。それにしたって、元々君はこのместо(場所)に呼ぶつもりだったからね☆」

 国王は小踊りしながら語る。正直かなりウザイ。

「……私を呼んで、一体何をするつもりだったんですか……?」

「…………」

 ピタッと踊りを止めた国王は、右手の人差し指を天へと向けて、ビシッとポーズを決めた。

「……それはとてもeasy(簡単)な事さ……」

 国王はこちらへ駆け寄ると、膝をつき、手の平を私の方へ向けて差し出す。

「……レイ。君に、この国の王位を継いでもらいたいんだ」




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

魔法少女になれたなら【完結済み】

M・A・J・O
ファンタジー
【第5回カクヨムWeb小説コンテスト、中間選考突破!】 【第2回ファミ通文庫大賞、中間選考突破!】 【第9回ネット小説大賞、一次選考突破!】 とある普通の女子小学生――“椎名結衣”はある日一冊の本と出会う。 そこから少女の生活は一変する。 なんとその本は魔法のステッキで? 魔法のステッキにより、強引に魔法少女にされてしまった結衣。 異能力の戦いに戸惑いながらも、何とか着実に勝利を重ねて行く。 これは人間の願いの物語。 愉快痛快なステッキに振り回される憐れな少女の“願い”やいかに―― 謎に包まれた魔法少女劇が今――始まる。 ・表紙絵はTwitterのフォロワー様より。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...