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第五章 キングダムインベードミッション
前回までのお拐い
しおりを挟む『…………会いにいこう。チロに』
……私、カナはチロに会いに行くため街へと飛び出した。
守護者のライが言うには、どうやら大会の再開が遅れているらしく、確かに会場前には屯する人の群れが多く見られた。
当然、試合を見に来た人達だ。皆、私に気付いて手を振ってくれたり、声をかけたりしてくれた。
ただ、急いでる様子の私に気を使ってか、サイン求めたり、引き留めたりはしなかった。ありがたかったけれど、少し気を遣わせてしまって申し訳無かった。
……そんな時だった。
「お、おい!なんだアレは……ッ?!」
突如、広場に響いた声。声の主の方へ振り向くと、その人は空を指差して口を開けていた。
私を倣って空を見る。
「……な、なに……あれ…………?」
※
……時は少し前へ遡る。
※
昨日の夜の事でした。私、レイが拐われたのは。
王城に眠る最強の秘密兵器とやらを破壊すべく、私と、南の国代表のミミ様、そして私の想い人であるチロさんこと神林慎一郎さんと、城へと続く長いトンネルを進んでいた時の事です。
『……こんなところに勝手に入ってきちゃ駄目じゃイカ。悪い鼠ちゃん達……』
そんな舌足らずの語尾が聞こえたかと思った刹那、私は突然の睡魔に襲われ意識を失ったのでした。
……最後の最後に、私はチロさんに抱き抱えられる幻影を見た気がするのですが、結局、最後には私の恋路を邪魔するお邪魔虫にその手は剥がされ、私は連れ去られてしまった訳です。
そうして私は今、見馴れない場所で目を覚まし、お拐いのおさらいをしていたのですが、ここはどこでしょう?
「やあ、se réveiller(目が覚めた)かい?可愛い可愛い空色のお姫様☆」
「ひっ……!?」
突如、視界の横から現れた顔中ブサイクのメイクをした残念な色男が、ゾッとするほど、吐き気を催すほとの気色の悪い声で私の耳元で囁くので、私は咄嗟に後ずさります。
「WOW、驚かせてしまったようだね。Entschuldigung (すまない)。怖がらせるつもりはなかったんだが……って、なんだいその顔は?」
私は目の前に現れた男に敵意の眼差しを向けます。王国国王、レオ・レイカ。エドさん曰く、世界を終わらせることの出来る兵器を所持する諸悪の根元。本物の悪党です。
「確かにこんな怪しい、怪しすぎる格好をしているのは重々承知しているが、実際のところ、僕はそんなに怪しい奴ではないよ。いや、マジで」
「……嘘をつかないでください。話はエドさんから聞きました。貴方は私達の“敵”です」
「うーん“敵”って言われるとそう強く否定は出来ないんだけど、敵とは言っても敵(敵(てき))じゃなく敵(敵(かたき))って言うか、enemy(敵)ではなくてrival(敵)って感じ?うーん、上手く説明できないなぁ……」
「……分かりづらいんですよ、貴方の喋り方」
国王は自らは害をなす存在ではないと、身振り手振りで必死に弁明するのだが、よく分からない言語で喋るのでほとんど意味が理解できない。警戒はしているが、毒気が抜かれたような気分だ。
「まあ、とりあえずMain topic(本題)に入ろう。今回君を呼んだのは他でもない。君に頼みたいことがあるからなんだ☆」
「……呼んだって、随分と勝手な言い種ですね。私を誘拐してきた癖に」
「そりゃあだって君達が勝手に王城に侵入してきたからじゃないか。多少手荒にはなるよ。それにしたって、元々君はこのместо(場所)に呼ぶつもりだったからね☆」
国王は小踊りしながら語る。正直かなりウザイ。
「……私を呼んで、一体何をするつもりだったんですか……?」
「…………」
ピタッと踊りを止めた国王は、右手の人差し指を天へと向けて、ビシッとポーズを決めた。
「……それはとてもeasy(簡単)な事さ……」
国王はこちらへ駆け寄ると、膝をつき、手の平を私の方へ向けて差し出す。
「……レイ。君に、この国の王位を継いでもらいたいんだ」
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