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第四章 ファーストプレイ:デットエンド
人生完全初見プレイ
しおりを挟む……超能力によって世界が塗り替えられる。随分と大がかりな話だ。
確かにそんな漫画的アニメ的ライトノベル的展開を、昔はあると信じていた。と、いうよりかはあってほしいと願っていた。
そんな事があるわけない!と、切り捨てるようになったのは意外とここ最近の事で、もう高校生になった俺はサブカルチャーはあくまで趣味であると考える様になった。…全くもってつまらない人間になってしまった。だがそうやって皆大人になっていくのだろう。
……少しばかり話が逸れてしまった。何の話をしていたんだっけ?
「……超能力は希に世界を塗り替える。アンタがカナさんの側近であることに歴史が修正されていたのもその一例よ」
ああ、そうだ。超能力がどのようにして影響を与えたのか、何故俺がカナの側近になっていたのかって話だったな。
「超能力による歴史の修正。その原因はとある一つの矛盾によるものよ」
「矛盾?」
「そうよ」
七海は首肯する。矛盾、とは何か?俺が思うにカナの側近になっていることも俺が持つこの願いを叶える力によるものじゃないのかと思っているのだが。
「この矛盾の元凶は超能力。超能力が矛と盾の様にぶつかり合っているのが原因よ。そしてその盾が慎一郎、アンタの願いを叶える力。……さらにもう一方、矛となっているのがエドさんの時をかける力よ」
「エドの力?それがどうして?」
先程七海が言った通り、エドの超能力は時をかける力だ。それがどのようにして俺がカナの側近になったことに関わってくるのだろう。
「……覚えてる?さっきナオさんやミミが言ってた言葉を。この二人はエドさんによる時間逆行があっても記憶を引き継ぐことが出来る能力を持っている。そしてそのミミさんがこう言ったの」
『エドが世界をやり直した回数11回、その内、神林慎一郎がやって来てからのやり直しは1回』
「……て、事はつまり」
「そう、今のアンタはこの世界で二週目なの。そしてミミに聞いた話、一周目でアンタは命を落としたらしいの。死因は怪人の襲撃でね」
「……そうだったのか、全然気が付かなかったな」
「当たり前よ、時を戻したんだから。今のアンタにとっては起こってもない話。それを実感する方が可笑しな話だわ」
七海は軽く口を押さえて笑う。先程から興味深い話ばかり出てくる。だが、肝心の何故俺がカナの側近になっていたのかという議論については未だ何も進展していない。俺は七海に尋ねる。
「……確かに興味のある話だが、それが俺がカナの側近になったことと何の関係があるんだ?」
「ああ、そうね。……もう簡潔に言うわ。アンタは怪人に襲われ死んでしまった。けどその時一つの願い事をしたのよ。“忘れないで”ってね」
「忘れないで……」
「そう、だけどその後エドは時を戻した。時を戻した場合普通は記憶を失うのだけど、アンタは願った“忘れないで”と。だから能力を持たないのにも関わらず記憶を引き継いだ者が現れた。完全ではないけどね」
「……その記憶を引き継いだ者っていうのが…」
「そう、カナさんよ。まあ、まだ他にもいるのだけど。……ここで一周目の話をしましょうか」
七海がそう言った途端、視界が暗転する。
その次の瞬間視界に写ったのは白で埋め尽くされた世界。天井はなく、地の果ても無い。ただそこには白があるだけだ。
「ごめんね?この話はちゃんと面と向かってしたかったから」
するとその世界に突如現れた人の影。その人物はこの世界の白と対をなす黒い髪、黒い瞳の少女。…容姿端麗の美少女、白雪七海だった。
「話そうか一周目の話を…」
彼女がそう言うと、白の空間に二つの椅子が現れる。その一つに彼女が座り、もう片方に座るよう俺に指示する。お言葉に甘え、俺は空いた席に着席する。
「……まず、舞台は中央の国の港町。そこに一人の少年がいました。その少年には帰る場所は無く、よく知る人物もおらず、港の物陰で細々と生活をしていました」
「……なあ、その少年って…」
「今、私が話してるの。少し黙っていて」
「あ、ああ…」
俺は思うところがあり、七海に尋ねようとしたのだが、軽く手で制されてしまう。
まあ、恐らくだが俺が思っている事は間違いでは無いだろう。
「その少年は水を飲んだり、魚を採ったりしながら何とか生き長らえていました。ですがそんな生活も長くは続かず、少年は飢餓により生死をさまよう事になります。そんな時通りかかったのは一人のお嬢様でした。……その時の少年はまともな精神状態ではありませんでした」
「少年はその少女を襲い、追い剥ぎをして去っていきました。……その少女が只の金持ちのボンボンなら良かったのですが、なんとその少女、この国の女王様だったのです。この少年は国に捕まり、死刑を言い渡されました。残念、少年の冒険はここで終わってしまった。…と、思われましたが、それに待ったをかけたのがなんと女王様でした」
「その女王様はこう言いました。『その方は私の側近です!どうか離してあげて下さい!』そしてその少年は死刑を免れました。結果的に判決は軽い物で済んだのです。さらにこの女王様、毎日この少年の面会に足を運びました。少年はいつしかこの少女を尊敬し、またさらに身分違いの恋をしてしまいました。」
「そして心に誓いました。この女王様に危険が迫った時は自らの命を捨てても守ると…」
「……暫く彼女と少年は共に暮らしました。しかし事件は突然変異やって来るものです」
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