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第四章 ファーストプレイ:デットエンド

全肯定ハル太郎

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「貴方は私の様に、異世界に憧れ、非現実に憧れ、心踊らす大冒険に憧れる。子供の心を持つ探求者か!?」

 春風ハルカは目を輝かせてそう言った。

 対する白雪七海は白けた顔で再度溜め息を吐く。

「…異世界異世界って言うけどさ、そんなに良い物じゃないよ?」

 まるで異世界に行ったことのあるかのような口振りに、ハルカは目を丸くする。

 異世界に行ったことがある。そう言われても大多数は只の戯れ言だと切り捨てるだろう。だがこの少女は異世界を信じて止まない厨二病。

 それに七海の言葉には妙な説得力があり、目の前の少女のその顔は夢見る少女のそれになっていた。

「な、七海さん!まっ、まさかの転生者ですか!?」

 ハルカは七海の言葉を一切疑う事無く、全て鵜呑みにし、はしゃぎながらそう尋ねる。

「…やべぇ、口が滑った。」

「へっへっへ~、言質は頂きましたぜ~。」

 頭を抱える七海と躍り狂うハルカ。さっきからコイツらはどうも騒がしい。

「…まあ、この馬鹿になら教えてもいいかな?」

「やったああ!!馬鹿で良かったああ!!」

 誇れる事では無い。だがそう言っても通じないだろうな、このガッツポーズしている馬鹿には。

「一回しか言わないから聞いててね?結論から言うと私は転生者じゃない。行って帰って来た出戻りよ。だけど異世界で暮らしていた事も事実。貴方が考えているこの世界とは別の世界、異世界というものは存在するわ。」

「そ、それは本当の事何ですか?にわかには信じがたいのですが…。」

「誤魔化さなくても分かるわ。私異世界に行ったことがある他に私超能力が使えたりもするの。人の心が読める読心術ってヤツね。貴方は異世界の存在を信じて疑って無い。だけど異世界を本気で信じているなんて恥ずかしいと思ってる。まあまあ良識あるのね、貴方にも。」

 かなりのお喋りだったハルカも、自身の心の内を七海に完璧に言い当てられ絶句する。自分の考えが丸裸にされたのが恥ずかしかったのか、少し頬を紅潮させている。

「な、な……。」

「「何で分かったんですか!?どんなカラクリですか!?」」

 ハルカの絶叫に七海が声を被せる。しかも良い感じにハモらせながら。

「真似しないで下さい!後ハモらせ無いで下さい!」

「ふふ、ごめんなさい。でも貴方って単調だから次に行う行動、次に言う言動まで簡単に読めるわね。」

 七海の言葉にハルカは息を飲む。普通はまずイカサマを疑うだろうが、良く言えば純粋で心の綺麗なハルカは七海の能力について一切の疑問も持たずに信じ込んだ。

 事実、異世界は存在する。七海の言葉は全て真実なのだ。

 ハルカはずっと求めていた異世界の存在を確信し、目を輝かせ、喜びに満ちた様子だった。

「ほ、本当にあるんだ…。異世界。」

「ええ、だけど鵜呑みにする人間なんていると思わなかったわ。…貴方って本当に馬鹿ね。」

「ありがとうございます!!」

 馬鹿と言われるのもお構い無しに、ハルカは感謝の言葉を告げる。

「何のありがとうよ。」

「もし宜しければその異世界とやらに私を連れていってくれませんか?」

「…はあ。」

 七海は今日何度目となるか分からない溜め息を吐く。

「言っておくけど、まず前提として貴方が思うほど異世界っていうのは素晴らしい所じゃないの。治安も衣食住も日本の方が断然上。それがまず一つ。そして二つ目はそこは貴方が望む魔法や超能力の世界で間違いない。だけど一般人の貴方は何も出来ない。生きていける保証も無い。」

「質問ですけど、七海さんはそんなところでどうやって生き残ってきたの?」

「私には超能力があるの。さっき言ったでしょ?読心術ってヤツ。確かに実戦向きでは無いけど、スパイ任務とかに結構役に立つのよ?」

「んで、七海さんはそっちの世界ではお偉いさんなの?」

「うーん、まあそうかな?結構いい場所で暮らしてたし、だから生き残れたっていうのもあるかもね。」

 好奇心旺盛な小学生の様に質問をするハルカ。そして小学生の様に、年不相応なキラキラした笑顔を浮かべる。

「じゃあ七海さん!七海さんのコネで私もいい場所で暮らさせてくださいよ!お礼は私に出来ることなら何でもします!お願いします!」

「何でもって…。昼休みに全裸で校庭十週とかでもいいの?」

「喜んでっ!」

「喜ぶな馬鹿。」

 恥ずかしげも無くそう言うハルカに、もはや溜め息製造機となった七海はまたまた溜め息を吐き出す。

「まあ、お礼は別に要らないけど貴方に大事な忠告があるわ。」

「大事な、忠告?」

「そう。よく聞いてほしいんだけど、私は貴方が望む通り貴方を異世界に連れていくことが出来るわ。だけれど異世界から元の世界、すなわちこの世界に戻す力は持っていないの。つまり向こうの世界に一度行くともう帰れないということなの。それでも貴方はいいの?」

「それじゃ止めときます。」

「はあ、貴方本当に分かってるの?一度行ったら戻れ……え!?」

「だから行きませんって、人の話ちゃんと聞いてました?」

「…貴方だけには言われたく無いわね。」

 これまで全肯定だったハルカの即答の否定に余程驚いたのか七海は目を丸くする。

「何か完全に話が逸れてましたけど、私がここに来た当初の目的は異世界に連れていってもらう事ではありません。言った通り私はゲームを作っています。ただシナリオ作りの才能は一切合切皆無の私です。なので私は七海さんにシナリオ作成をお願いしたいなーと思って来たのです。」

「…完全に忘れてたわ。」

「許しましょう!…そうですねえ、そのゲームのタイトルは…。」

「…ガールズガーディアンガンガンダッシュ戦記、何てどうでしょう?」




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