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第四章 ファーストプレイ:デットエンド

You are an idiot

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「好きです!付き合って下さい!」

 誰もいない、二人だけの教室。目の前の男はそう言った。七海の体は自然と動き、その運動部らしき男を見上げるように首を動かした。

「(体が勝手に…?)」

「(そう、今見てるのは私の“記憶”これは過去の出来事であって私達は干渉出来ない。…だから私の体で変なことしようとしても無駄だからね?)」

「(いや、やらねーよ。本人が見てる前で。)」

「(でもさっきエッチな事考えてたでしょ?)」

「(思想良心の自由は何があろうと侵害されない唯一の権利なんDAZE☆)」

「(はいはい、慎一郎くんは天才でちゅねー。…ちょっと黙ろうか?)」

 とたんに低くなった彼女の威圧の声に、俺はなす術なく押し黙る。そして俺らがそんな茶番を繰り広げている間、運動部らしき男はずっとこちらの返事を待っていた。

 そんな紳士的な彼に対して、白雪七海はどう返事をするのか。そう考えていると、一拍置いて彼女が口を開いた。


「…アンタ馬鹿じゃないの?」


 …刹那、空気が凍りついた。彼女の口から出たのは必要以上の拒絶、罵倒の言葉だった。それをあっけらかんと彼女は言い放った。

 俺すらも、言葉が出なかったのだ。その言葉を聞いた運動部男子当人は、相当心にダメージを喰らった筈だろう。一体どんな顔をしているのだろうと、俺が彼の顔に目線を移そうとしたときに、

 …世界が暗転した。


 そこは先程俺がいた教室。クラスメイトがいて、ハゲの教師が数学を教えていた。

 先程はまるで気付かなかったが、クラスメイトが授業を受ける教室から一瞬にして放課後、男と彼女だけの場所に俺はテレポーテーションしていたみたいだ。

 可笑しな事に気付かない、まるで夢を見ているかのような、そんな感覚だった。

「まあ、あながち間違いじゃないね。さっきのは彼の妄想。それに私が入り込んで邪魔してたの。」

「(そんな事も出来るのか?…それにしても趣味が悪いな。)」

「(ただの超能力者の暇つぶしよ。何か面白いじゃない?)」

 そう言って笑う彼女。確かにやられて何か実害があるわけでも無いが、気分は害する。やはりあまりいい趣味では無い気がするが。

「(まあ、そんな事より…。)」

 彼女がそう言うと、またもや自然と体が動く。首を動かした彼女の視線の先に映るのは見覚えのある、とある人物。

「……。」

 黙ってこちらを凝視するその男は、先程放課後の教室で白雪七海に告白した人物だった。そしてその男はこちらと目が合うと急いで視線を逸らした。

 その男は冷や汗を流し、明らかに動揺している様子だった。

「(うわああ!やべぇえ!目ぇ合っちゃったよお!!…やっぱり俺に気があるのか?うわあああ!)」

「(…え?なに今の、怖いんだけど?)」

 急に聞こえた叫び声、恐らくあの男の心の声だろう。

 だが、気持ち悪い。他人が何を考えても、何を思っても別にいいと思うが、気持ち悪い。勝手に思考を覗きこんで申し訳ないが、気持ち悪い。

「(…まあ、確かに気持ち悪いかもしれないけど、悪い人じゃないから。)」

 白雪七海からそんなフォローが入る。当たり障り無さすぎてフォローになってない気もするが。

「(糞っ!駄目だ!何回告白のイメージトレーニングをしても彼女に振られる未来しか見えないっ!…やっぱり俺なんかとは不釣り合いなのだろうか…?)」

「(そうよっ!)」

「(…お前さっきフォロー入れたばっかだろ。)」

「(いや、違うの!今のはこの体の、過去の私の思考で、私が言ったわけじゃないの!)」

 彼女はそう弁明する。それにしても過去の彼女は何故だかこの男に辛辣だな。それともそう感じるのは今の彼女がこの男をやけに庇っているからか。

 …今の彼女はこの男とどういう関係何だろうか。

「はいはい、じゃあ授業ここで終わりまーす。」

 ハゲの教師がそう言うと、皆が一斉に立ち上がり一礼する。七海も例外では無い。しかし授業が終わったその後、回りのクラスメイトが下校する中、彼女は一人教室に残っていた。

 俺はそれを不振に思いながらも、彼女同様段々と燈色になっていく空を眺めていた。

 すると突然、教室に残った彼女、白雪七海が黄昏た様子で夕陽を眺めながら口を開いた。

「不釣り合いな恋かぁ…。馬鹿みたいだなぁ、あの人も私も。」

 彼女は大きな溜め息を吐く。…まるで自嘲するかの様に。

「…分かってるんだ。不釣り合いなのは。…それでも愛しているよ、…シンイチr…」

「(わああああい!!あ!そうだ!慎一郎!今の言葉は気にしなくていいからね!?)」

「(いや、するわボケ。もうシンイチロまで言ってたろ。)」

「(言ってない!)」

 過去の彼女、白雪七海が言った大胆な告白。だがまさかその時は本人に聞かれるとは思ってなかっただろう。そして聞かれた当人、現在の七海は余程恥ずかったのか、うーうーと唸っている。…可愛いな、オイ。

「聞いちゃったよ、…白雪七海さん♪」

 と、その時、突如聞こえたそんな声。教室前方の扉、開け広げてあったその扉から一つの人影が覗く。声からして女性であろうその人物は…。

「恋話かしら?良いわね!良いわよ!ポエマーね、七海さん♪素晴らしかったわ、さっきの!」

 ずけずけと七海の元へ踏み込む彼女。そして彼女は続けてこう言ったのだった…。





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