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第二章 メモリー&レイルート
早くズボンとパンツを履いたらどうだ。
しおりを挟む俺の正体、隠していた真実。
それを明かしたら、一体どうなるだろう。
俺はこの真実を、いつか話さなければいけないと思っていた。だがその時を誤ってはいけないと、そうとも思っていた。
カナとはもうそれなりの時間を共にした仲だ。だけども話すのは今じゃない。今話したらきっと幻滅されてしまう。
俺はカナが大好きだと、そう声を大にして言える。だけども今のままでは、その愛を受け止めてもらえる事は無い。だけど真実を話したら嫌われてしまうかもしれない。
そんな思考の迷路に迷って、俺は現状に甘んじていた。
いつかきっと、心の準備が出来たら話そう。…そう思っていたのだが。
「…今言ったことは真実だ。……まさかチロさんから聞かされていないとは思わなかったけどね。」
「ほ、本当なの?チロ…。」
その真実は、他人の口から勝手に告げられた。自由で身勝手なお喋りに……。
当然、俺が冷静でいられる訳はなく、どのように弁解するか全力で考えるが、パニックになってしまった頭では良い案など浮かぶはずがない。
「…嘘でしょ?ねえ、チロ?」
カナが信じられないといった表情で俺に問い詰める。一歩一歩、俺に向かって歩を進めるが、思わず俺は後ずさってしまう。
それでもカナは俺の目の前に立ち、俺の肩に手を乗せて、真っ直ぐ俺を見つめる。
「チロ、違うよね?だって、…だって。」
カナは俯き、肩に置いていた手を力なく下に落とす。
……そしてその手を俺のズボンにのぱして…。
ズルッッ!!…っと俺のズボンをパンツごと下ろす。
「だって…!チロは、ちん○んついてないじゃん!!」
下を隠すものは何もなく、俺の下半身が無慈悲にも晒される。確かに言われた通りナニのついてない、少女の体だ。
俺は晒された下半身を手で隠す。恥ずかしさに顔が熱くなる。これは俺の本当の体ではないが、不意討ちでパンツを下ろされれば誰だって恥ずかしいはずだ。
「ちょ、ちょ、おま!何しやがるッ!!」
完全に気が動転して、あろうことか、…俺はカナの事を殴りかかろうとした。
……だが、その拳はカナに片手で受け止められる。
「受け止めてんじゃねえええ!!!!」
「……そんな馬鹿な事をしてないで、早くズボンとパンツを履いたらどうだ。」
俺とカナがドタバタ茶番劇を繰り広げていると、呆れたような声でミミが突っ込みを入れる。……物凄く恥ずかしい。そう思いながら俺はズボンとパンツを履き直す。
結局カナは、俺の事を女だと信じて疑って無いらしいので、俺が真実を話すのはもう少し先になるだろう。
「……だいぶ話が逸れてしまったが、…あー、何の話をしてたんだっけ?」
「……何だったっけ?」
「まあ、いい。世間話もこの辺にして、そろそろ試合の方に…。」
「お姉ちゃん!!」
「おー。どうしたんだ、ハナ。」
世間話に終止符を打とうとしていた空気の中、また新たな刺客がやって来た。
ミミ同様、小柄な体格だが、ミミとは違って年相応の可愛らしさを持つ、燈色の髪の少女、南の国側近のハナだ。
「あ、どうも。中央の国の皆さん。私は南の国のハナと申します。よろしくお願いします。」
そう言ってペコリと頭を下げるハナ。何気ない動作だが、その中にも何か愛らしさを感じて、胸がほっこりする。
「それでお姉ちゃん。試合の準備が出来たから、もう来て大丈夫だよ。」
「おう、ありがとうな。ハナ。」
ミミがハナの頭を撫でる。ハナはとても嬉しそうな表情をしている。本当に微笑ましい、素晴らしい姉妹愛だなと俺は思った。
「よし!それじゃあ試合といくか。」
「そういえば試合って何をするんだ?」
「まあ、来れば分かる。最近流行りのヤツだ。」
そう言われたのでついていく。……思ったが何故こいつらが仕切っているのだろう。ここは中央の国でアイツらは招待されたいわば客だろう。……まあ、ウチのカナは人をまとめたり、仕切ったりするのに向いていないとは思うが。
「ついたぞ、ここだ。」
色々と考え事をしている間に目的地に着いたようだ。ミミはその部屋の扉を開ける。
……そこはおよそ6畳ほどの部屋で、あるのはテレビとソファーのみ。スポーツ等出来そうもない、狭い部屋だった。
「……おいおい、こんなとこで何をするんだよ。」
「あれ?チロさん、ご存じありませんか?」
俺の質問に口を開いたのはハナだった。ハナは部屋にあるテレビの方向を指差して言った。
「Eスポーツですよ。聞いた事くらいはあるんじゃないですか?」
よく見ると、テレビの前には白いゲームのハードと、リモコンの形をしたコントローラーが4つ置いてあった。
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