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第二章 メモリー&レイルート
え?お前らって、一緒に寝てたの?
しおりを挟む「ほ、本当に申し訳ありませんでした。」
朝起きて開口一番、レイはそんな謝罪を口にする。
…昨日の夜。まあ、色々とあって、酔っぱらったレイと一緒に寝ることとなり、翌朝、酔いの覚めたレイが昨日の出来事についてめっちゃ謝っている、というのが今の状況だ。
「でも、男が女をベットに連れ込んで、女の方が謝るって凄い状況だな、これ。」
「いや、でも酔ってたとはいえ、一緒に寝ようと駄々をこねたのは私です。本当に申し訳無い。」
「まあ、そうだけど…。」
改めて凄い状況だ。風呂場で鉢合わせになり、何故か一緒に風呂に入って、告白されて、断って、でも自分の部屋のベットに連れ込んで一緒に寝る。…本当にはちゃめちゃだな。
「…俺的には女の子と寝れるなんて、貴重な経験が出来てよかったと思ってるよ。」
「…いつもカナさまとは一緒に寝ないのですか?」
「寝るときはあるけど、…お前やたらくっついてくるし、抱きついてくるし、…カナともそんな経験はほとんど無い。」
でも正直、満更でもなかった、いや、最高だった。ただそのせいで一睡も出来なかったが。
「ほとんど、ですか…。つまり、あるにはあるのですか…。」
レイは自分の行いに顔を赤く染めながらも、何故かカナに対して対抗意識を燃やしているようだった。その気持ちは分からなくないが、それを受ける側になるとどうにも心が落ち着かない。カナの事を刺したりしないよね?レイちゃん。
「…所で昨日の夜の事は、酔った勢いでの冗談では無いよな?」
昨日の出来事、それはレイの告白だ。レイが言った俺の事を愛してるという旨は本当だったのか、俺はずっと気になっていた。
「……はい、そうです。真実です、…全部。」
頬を赤く染めて、目を逸らすレイ。その様子から嘘を言ってるようには全く見えない。
「じゃあ、レイは本当に俺に惚れてるのか?」
「あああああ!!もうっ、恥ずかしいので掘り下げないでくださいっ!!!」
顔を耳まで赤くして、レイは絶叫する。その勢いに圧倒されて俺は肩を震わせて、レイから一歩後ずさる。
「私は!貴方に!既に振られたんです!!ですからっ!!私と貴方は友人同士!!それだけです!!終わり!閉廷!…以上!皆解散!」
「あ、ああ…。」
レイの威圧に押し負けて、俺はこの事については追求を止める。そもそも何を聞こうとしていたか忘れてしまった。
「…おいおい、朝っぱらからうるせーな。」
…俺たちの会話に割り込んで、ノックもせずに部屋に入ってきたのは、北の国代表、金髪ショートのボーイッシュ、ユキだ。……その身体には下着以外何も纏ってない。何というか本当にガサツだ。俺は目を背ける。
「申し訳ありません、ユキ様。」
「およ?レイ?ここにいたのか。」
どうやらユキはレイを探していた様だった。そしてレイとの会話の後に、何かに気づいたような顔をユキが見せる。
「え?お前らって、一緒に寝てたの?」
「……。」
「………。」
「な、何で黙ってんだ…。」
いや、言える訳が無い、一緒に寝てたなんて。特にユキには。こいつの場合側近であるレイに対してめちゃくちゃ過保護だ。ばれた時には何されるか分からない。そもそも男が女を部屋に連れ込んで一緒に寝てるって、これかなり不味いだろ…。
「い、いや。これにはまあ、色々と…。」
「はい、そうです。一緒に寝ていました。チロさんとはもう良い友人ですので。」
俺が必死の弁明をしようと、脳をフル可動していると、レイが割り込んでありのままの真実を話してしまった。お、おい!レイ!何やってんだ!
俺はレイに抗議の視線を向ける。しかしレイはこちらを見向く様子もない。くそう、もう祈るしかねぇ。
暫し間が空き、ようやくユキが口を開く。
「……そうか、お前も成長したなレイ。今まで人見知りのボッチだったのに、一緒に寝る程の友人ができるとはな。」
「は、はは、まあお陰さまです。」
「それはそうと、これから朝食を食べて、そこから見送りだ。遅刻するんじゃないぞ?」
「はい、分かりました。」
「んじゃな。」
そう言って去っていくユキに、レイは深く頭を下げる。ユキが完全にここから去ると、そこから俺に向き直る。
そしてお互いに大きな溜め息をつく。
「……はー、心臓が止まりそうでしたよ。」
「ああ、俺もだ。何で正直話したんだ?まあ、勘違いしてくれたみたいだけど。」
「…ユキ様は貴方の事を男だと知らないので、まあ、だから大丈夫だったと思うんですけど。」
「……そうだったな。また俺の性別を忘れてたよ。」
「何か生きづらそうですね。」
「……まぁな。」
ユキの疑いも晴れ、その後の朝食も特に何もなく、出発までの時間をレイと駄弁って過ごした。……本当に俺にはもったいない程の良い友人をもったと思う。そして時間が来て、俺たちは北の国を後にすることになった。
そして……、
「試合してくれてありがとうね。」
「まあ、お互い様だ。これからも頑張ろうぜ。」
「そうね。また世界大会で会いましょう。」
「おう。」
代表者同士でそんなやり取りが行われる。レイは事情があり城に残っているが、別れは済ませてきた。
「じゃあそろそろ行こうか、チロ。」
「だな。」
そうして俺らは船に乗り込み、北の国を後にした。
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