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第二章 メモリー&レイルート

じゃあ………、優しくしてね?

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 長かった野球対決は、我が中央の国チームが勝利を飾った。訳なのだが……。

「はああ~。」

 チロは大きく溜め息をついた、憂鬱を感じていた。

 カナのお陰で戦犯になるのを間逃れたチロだったが、最後に告げた感謝の言葉と愛の告白はカナには伝わることは無かった。

 それが意外にもショックだった。どっちにしろ、いい結果は待っていなかったかもしれない。それでもショックだった。カナにはその気はないだろうが断りもせず、あしらわれた。そんな感覚だ。

 それはチロが女だというのが一番の問題、というよりは問題はそれだけなのだが、女である以上は悲しいかな、この結果は変わらない。

 という訳で自分の胸を揉む。

 この行動も自分がこの世界に来たばっかりの頃以来だ。他にも胸だけでなく下も触ったり、この体で自慰行為もしたりした。

 ……なんだその目は、お前らもするだろ?多分。

 まあ、そんなことはさておいて、最近の自分は女であることに疑問を持たなくなりつつあった。

 慣れというのは恐ろしいもので、自分が本当は男だということを時々忘れそうになることがある。これは非常に良くない。

 ただ、カナへの愛情は本物で、結婚したいとも本気で思う。もう性交もしてるし段階は踏んでいる。でも自分は女だ。いやいや自分は男だろう。いや、どっちだっけ?

 とまあ、こんな風に自分の性別やまた感情もたまに分からなくなり、頭がどうにかなりそうになるときがある。

 だが断言しよう、自分は男だと。

 俺は母親の腹の中から出てきた時点から股間にナニはついていたし、この人生で男を好きになったこともない。ただ色々あって体は女になってしまったが、それでも男を好きになったりはしない。好きな女の子もいるし、男が女の皮を被っているだけだ。

 だから胸を揉む、女の胸を揉みたい。至極同然な男の欲求だ。俺は男だ。だから胸を揉む。そこに女の胸がある。だから胸を揉む。……いやいやそれは犯罪だ。だがそれは俺の胸だ。

 ……自分でも何言ってるかもう分かんねえな。


「またやってる……。そんなに自分の胸に納得いかないの?」

 俺が胸を揉んでいる所に、そう言ってやって来たのはカナだ。

 またも胸揉み現場を見られ、羞恥心で顔を熱くしながら、死にたいと、頭の中で連呼する。だが勘違いしてくれているようなので、耳まで熱くなるのを感じながら誤魔化すことにする。

「まあね、でも自分で揉むより、他人に揉んでもらった方が効果はあるって聞いたことあるけど…。」

「ふーん、じゃあ私がチロのおっぱい揉んであげようかなー?」

「いや、逆に俺がカナのおっぱいを揉むのも…。」

「え?チロが?…私のを、揉むの?………本当に効果あるの?」

 カナが期待するような、少し恥じるような表情で、自分の胸を抱き寄せこちらを見ている。

 適当に誤魔化すつもりが、まさかの状況にハッピー☆マテリアル!!

 おい、俺の口!今度飯おごってやるよ。

「じゃあ………、優しくしてね?」

 カナが自分の体をチロに差し出す。その顔は先程の自分のように耳まで赤い。

 そこに胸がある。だから胸を揉む。それが同意の上なら憂い無し。レッツゴートゥーいざ行かん。

 指をくねらせながら、カナの胸に手を伸ばす。そしてその胸を一心不乱に……。

「おどりゃあああ!!!」

「ぺぷしっ!!!」

 揉みしだこうとしたところに、思わぬ邪魔が入った。

 そのお邪魔虫は野球対決ではカナの女房役であったライだ。俺に対しての言動や態度が完全に舐め腐っている上、その女房役という肩書きも気に食わない。ならお前がキャッチャーをやれと言われても断固拒否するが。

 そしてライは上司である俺に対して遂に暴言では飽きたらず、ドロップキックをかまして来やがった。これは由々しき事態である。

「なっ!何をするだァーッ! ゆるさんッ!」

「うるせー!!糞レズビ○ン!カナ様に手ぇ出すんじゃねえよ!!」

「じゃあお前の乳を揉ませろ。」

「なっ……?、何言ってんだ!!見境無しか!!お前みたいな奴にカナ様は渡さんっ!!」

 チロの予想外の返答に対して、顔を赤くしながらカナの親父みたいな事を言い出すライ。それからもライと一歩も引かぬ口喧嘩を繰り広げていた所に…。

「相変わらず賑やかだねー、そっちは。」

 そう言って会話に入ってきたのは、金髪ショートの長身美人、北の国代表のユキだ。

 言い忘れてたが、ここは北の国の城の中。試合に勝った褒美として、今晩はここに泊まることとなっている。

 しかしまだ時刻は昼時、とてつもない長い時間試合を繰り広げていたように感じるが、5インニングの野球対決では経過時間は精々1時間程度だ。

 なので今は各々が夕食までの時間を自由に過ごしているといった状況だ。

「仲が良いことは別に悪いことじゃないと、私は思うけどなー。」

「そう言うそっちこそ、今はとっても仲良しみたいじゃない。」

 というのも、ユキとやって来たもう一人の人物。空色の髪の生真面目眼鏡っ娘、ユキの側近であるレイだ。そしてユキとレイは登場からずっとお互いの手を握りあっている。

 ユキは変わらず飄々としているが、レイは彭を赤らめ、少し恥ずかしそうな表情だ。

「まあな、レイは私の自慢の側近だ。本当に私の事を良く理解してくれてるし、頭も良い。私には勿体無いくらいだ。」

「ぅぅ……、ありがとうございます…。」

 屈託なく、そう話すユキに、ライは顔から火が出そうなほどに顔を赤くして俯いている。

「それはそうとして、あんたら暇か?」

 カナとチロを指してそう尋ねてくるユキ。

「これから二人で温泉に行こうと思ってた所なんだよ。折角の機会だし、それぞれの代表と側近で裸の付き合いで話し合いでもしないか?」





 ーー次回、温泉回再びッ!!
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