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第一章 ボーイ・ミーツ・ツーディーガールズ

熱血スポ根小説と化したガガガ戦記。前編

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 説明し忘れていたが、守護者には幾つかのタイプがある。

 それぞれ性格で分類され、ツンデレ、クール、キュート、パッション、ヤンデレ、ヤンキー、そしてもう一つはたまにしか出ないレアキャラだ。性格ごとに勝ったときの台詞などが異なる。

 そんな感じで召喚される守護者は、容姿等様々だ。

 だがそんな中、カナが召喚した守護者の中に一つ異様な人影がある。

 身長は2メートル程あり、どっからどう見ても女には見えない体格をした筋肉ムキムキの、…女性である。

「うっふん♪いくわよ。」

 うん、女性だ。間違いなく女性だ。どう見ても女性だ。紛う方なき女性だ。

 そう、彼女こそ、たまにしか出ないレア守護者、"レディ"である。そうだ、レディだ。正真正銘、女なのだ。

「両者準備は整ったみたいだな。」

「そうね。」

 両者ツッコミは無いみたいね。まあ、そうだろう。ガガガ戦記ではこれは普通なのだ。

 カルチャーショック的な何かを感じながら、辺りを見渡し、こちらが召喚した守護者達を確認する。

 ヤンキー
 クール
 ヤンキー
 パッション
 ヤンキー
 ヤンキー

「チーム名は…ヤンキースでいいかな?」

 しかし、全員が女性なのでスケバンズの方がいいか?いやでもチーム名はつける必要ないか、俺達は中央の国代表として来てるのだから。

「おい!テメーら!今からカジノ行って豪遊すっぞ!」

「オッシャー!!」

「Fooooo!」

「さんせー!」

「チッ、虫けらが吠えてやがる。うるせえったらありゃしねぇ。」

「ンだと、コノヤロー!!」

「あ?ヤンのか?」

「やめろ!二人とも!今は喧嘩してる場合ではない。」

 何やら寸劇か行われている。クールとヤンキーの親玉的な奴が言い争っていて、その間に割って入るのがパッションだ。

 なんだか険悪なムードが漂っている。これは中央の国代表カナの側近であるチロが何とかしなければ…。

「おい!お前ら良く聞け!!」

 全員の視線が一斉に自分へ向く。注目されるのは好きでは無いが、立場上仕方がない。俺が皆をまとめなくては。

「今からやるのは野球、チームスポーツだ!だから全員が協力しなければ勝てない!!」

 今のところは皆真面目に聞いてくれている。チロは話を続ける

「ありきたりな話だが人という字は、人と人ががささえあってる。という事で…えー、俺は、とても素晴らしいと思う。ので、皆も力をあわせて頑張って欲しい。」

 多少、言葉がまとまらなかったが、きっとこの熱意は皆に伝わっただろう。

「人っていう字って実は片方寄りかかって楽してるよね。」

「あー、俺それ俺ガ○ルで見た。」

「ヒャハハハハ!!」

 こ、コイツら。俺の熱意が全く伝わってない。それにちょっとヤバい事言ったな。消されるぞ?おい。

「はいはい、みんなちゅーもーく!」

「イエッサー!!」

「今から野球やるから打順とポジションを決めないと。」

「アイアイサー!」

 何故だ。俺の熱意は全くもって通じなかったというのに。一体なにが足りんかったんでしょうかねぇ。

「まず、ポジションを決めようか。」

「ういっす!俺ら全員どこでも守れますぜ。」

「それじゃあ、それぞれ好きなとこ守っていいよ。喧嘩はしないでね!」

「はーい!」

「じゃあ打順だね。あなたが一番、あなたが二番、で……。」

「いや、あなたが、あなたがって、それじゃあ分からんでしょ。」

「いえ、チロ様。私たち守護者はカナ様の考えていることは言葉にせずとも分かるのです。シンパシーと言いますか…。」

 ご丁寧に説明してくれたのはクールだ。背筋を伸ばし執事の様な姿勢でこちらを見ている。さすがクールだ。女性だというのに醸し出ているこのカッコ良さは一体なんだ?

「でも、シンパシー的なのは俺は全く感じないけど?」

「それは私たちがカナ様に生み出された存在だからです。もはや我々とカナ様は一心同体なのです。」

 カナと一心同体、という言葉にとてつもないジェラシーが沸き上がってきた。俺だってカナとほとんどの時間を共有してるし、一心同体といっても過言ではないんじゃないか。

「じゃあ、カナ。俺が今何を考えているか当ててみてくだせえ。」

「うーん、……分かった!!」

 暫し考えた後、カナは俺の心を読むことに成功したか、自信満々で答えを言う。

「多分だけど、お腹が空いた、とか?」

「残念ながら違います。」

 俺が考えていたのは、カナちゃんマジ天使。という台詞である。別にお腹は空いていない。カナを食べちゃいたいとは思うが。

「お互い、ポジションと打順は決めましたか?」

 質問を投げかけたのは、北の国の守護者、レイだ。空色の髪の眼鏡っ娘で正に生真面目と言った性格である。ガガガ戦記内でも一番の常識人で将来を考えるのならば結婚するのは彼女がいいと思う。

「?、何ですか、私の顔に何かついてますか?」

「いえいえ、大丈夫です。打順もポジションもオッケーです。」

「左様ですか。では始めましょう。」

 そこで今まで会話に加わって無かった、ガタイのいいレディの事を思い出す。

「……そこで何してんだ?」

 レディがいたのは端に生えてた木の影だった。隠れたつもりでこちらをチラチラ見ていたようだが、その巨体は全然隠れきれていない。

「ちょっとそこにいる強面の女の子達が怖くて。」

「……。」

 多分、俺らにとってもあいつらにとっても、お前の方が断然怖いと思うけどな。
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