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第一章 ボーイ・ミーツ・ツーディーガールズ

夢ならばどれほどよかったでしょう

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 暇だ。非常に暇である。

 これから向かう北の国は西の国から約1日半。ちなみに東の国から西の国まで約3日。船の中には様々な娯楽施設がある。そして一度は東の国から西の国までの船旅を満喫して過ごしてもいる。

 何故、暇なのか。

 いや、暇というのは語弊があった。正確に言えば、楽しくない、だ。同じように思うかもしれないが違うのだ。

「やったー!また勝ったー!」

 はしゃぐカナ。今いるのは娯楽施設の一つである卓球場だ。そこで俺達は卓球をやっている。

「ふっふー、弱いなーチロ。……はっ!」

 言っている途中に何かに気づいたカナ。一体何が…。

「……もしかして私が天才なのかも。」

 等と供述しており…。まあ、実際Aランクの実力の持ち主なだけありその才能は中々のものだ。

 話が逸れたが、これだけ見れば美少女と一緒に卓球をしている。非常に喜ばしいことこの上無い展開だが、ただ問題がある。

 それは俺にまとわり付いて離れない、背徳感という感覚である。

 DOUTEIである俺はこの程度のことですら、ナオにより課せられたセクハラ等変なことをすれば一発アウトという条件に引っ掛かるんじゃないかと思い、恐怖と共に過ごしている。そのためありとあらゆることを楽しむ余裕が無いのだ。

「……何かつまらなさそうだね、チロ。」

「……。」

 呆気にとられた。察するとか、勘づくとかそういうのが苦手なカナにこんなことを言われるとは。

「困ったことがあったなら私に言って。私って頼り無いかもしれないけど、だからこそ何かチロの役に立ちたいの。」

「……。」

「むぅー、何で無視するの?」

「……気が向いたら話すよ。」

「そうね、なら気が向くまでにチロの頼れるカナちゃんになるから。」

「……。」

「ふふっ。」

 嬉しいやら恥ずかしいやら、とにかく救われた。

 笑顔のカナ、何とも形容しがたい世界一の笑顔。この笑顔はどんな憂いも忘れさせてくれる。

 背徳感という感情も、セクハラしたらアウトって社会常識じゃね?逮捕されるような事でもなければ大丈夫じゃね?と当たり前の事に気付きどこかへ消えてった。





 ※




「て言うかカナとは一度、レ○セッ○スしてる関係ですし、同意の上なら何してもいいよね?」

「なっ!///……いいわけないでしょ!」

 カナの平手打ち、こうかはばつぐんだ。

「いかんいかん、思ったことがつい口に。」

「もー、せっかく人が気を使ってあげたのに、さっきからずっとえっちな事考えてたんだ。」

「い、いやそんなことは……。」

「チロ、最低。」

 ジト目でこちらを睨み付けてくるカナ。笑顔が似合う彼女だが、中々しないこういう表情も良いと思います。何かゾクゾクする。

「……氏ね。」

「!、あれ?また声に出てた?」

「顔に出てたのよ。このドスケベ変態。」

「ありがとうございます!」

「……ばーか。」

 いつもとは違うカナの雰囲気、これもお互いの仲が深まったからかなー何て考えるが、実際の所、好感度は駄々下がりである。

 そんなことをしている間に、俺達は北の国に到着した。




 ※





 国境の広い大海原を超えると雪国であった。夜の底が白くなった。停泊所に船が止まった。

「……何て想像をしてたんだがな。」

  強い日差しが照りつける。想像とは真逆の気候だ。暑い、暑すぎる。照り焼きになりそう。

「なに?もうついたの?」

 船から出てきたのはあの後ずっと寝ていたカナだ。寝ぼけた様子で船から歩いてくる。

「何か、変な夢を見てたんだけど……。」

「へー、どんな?」

「えーっと……。」

 何か恥じる様に言いづらそうなカナ。可愛い、というかエロい。下半身が元気になる。

「……チロが変態なの。」

「……。」

「べ、別に気にしないで?夢の事だから。」

 それ夢じゃ無いんです。本当にすいません。誠にごめんなさい。

 夢ならばどれほどよかったでしょう、と思っていた事だったが、カナが夢だと思ってるので、この際夢だったということにしとこう。

「ところで、何か思ってたのと違うね。」

「あー、やっぱりそう思う?」

 カナも俺と同じ風な想像をしてたのだろう。実際、本家ガガガ戦記にも雪上のテニスコートとかがあったりするのだが……。

「おーっす、お客さんよく来たね~。」

 意気揚々と挨拶をしてきたのは北の国代表、ユキだ。

 金髪のセミロングで服装は白シャツとホットパンツという、かなりラフな格好だ。だがこの暑さではちょうど良いだろう。

「よっしゃっ!早速、野球しようぜ!」

「えぇ~!?」

 短パンのガキがポケ○ンバトルを仕掛けてくる要領で、野球の試合を仕掛けてくるユキ。

 対するカナは、得意の物真似シリーズで、マス○さんを披露。その完成度の高さは中々のものだが、何故、マ○オさんなのか?

 恐らくは、 イソノ~野球やろうぜ~。にかけてるのだろうが、マスオさんはフグタである。

 そんなことを考えてる内に、カナとユキはそれぞれ9人の守護者を召喚していた。がその内の一人に…。

 ーー次回、野球回。乞うご期待!!
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