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転生者と勇者
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しおりを挟む「ロズ、ドレス似合うね!!」
エリオがロズのドレスを褒めるが、素直に喜べなかった。
白く、レースを多く使ったドレスはシンプルではあったが……。
「ウェディングドレスみたいで落ち着かない……」
「ウェディング?」
エリオが首を傾げて返事をする。エリオも今日は貴族のような服で、髪もまとめられていた。
普段の麦わら帽子を被ったエリオからは、想像以上の変わり映えにまじまじとロズは見てしまう。
「私の元いた世界では、白いドレスを着て結婚式を挙げるの。だからなんだか落ち着かなくて……」
落ち着かないというより、気分が下がっていた。
このドレスを着るなら、アストルムの加護付きフリフリワンピースのほうが調子が良さそうだった。
「申し訳ないです。どうやらロズの事を、転生してきた聖女のような存在だと王城の人間は勘違いしているようで……」
スリザスもエリオと同じ様な服装だったが、小物の色がそれぞれ違い、スリザスは濃紺で、エリオが若草色で統一されていていた。
「まあ、勇者に会って文句言うだけだから服は問題ないけどね」
調子を戻して、にんまりと妖しい笑みを浮かべたロズにスリザスとエリオは背筋が冷える。
文句だけで手を出さないように、と厳重に注意された後、迎えの馬車に乗って城を目指した。
街の様子は賑やかで、大通りの端には様々な店が並んでいた。
その中には武器屋だったり、防具屋、怪しげな魔導具ショップなんてものもあった。
城にたどり着いて大樹を見上げると、ひらひらと若葉が落ちてくる。
RPGだと世界樹の葉があったが、ロズの手に収まった葉には残念ながら特別な力は無かった。
長い階段、廊下を歩き、大きな扉の前で待たされる。王に謁見した後、勇者と会う予定になっているが、厳かで厳粛な雰囲気にロズは背筋を伸ばした。
重厚な扉が開き、スリザスとエリオの後にロズも続く。
謁見の礼儀を知らないロズは、スリザスとエリオの動きを見様見真似で追う。
「面を上げなさい」
王のしわがれた声が聞こえ、顔を上げる。
エバーティムの王は、好々爺といった雰囲気で、ニコニコとロズを見ていた。
「君がロズかね?」
「はい、異世界より転生しました。ロズと申します」
「家名はないのかい?」
「はい、この世界での家名はまだありません」
そうか、そうかとほっこりした様子で王は深く椅子に腰掛けた。
「アルゲントの家の者もご苦労であったな。魔王が復活し、どうなる事かと思ったが……。聖女様がいれば勇者もやる気を出すはずじゃわい」
リラックスした様子の王に、ロズは肩の力を落とした。
しかし、魔王が復活しても勇者がやる気を出さなくても、焦る様子のない王に危機感の足りなさを心配する。
ロズにとって大事な友人達のいる国だ。魔王の危機なんてものに、この平和を揺るがせたくなかった。
「勇者も今来るので少し待っておれ」
王が蓄えた髭を撫でていた時、ロズの背後で激しく扉を開ける音が響く。
好々爺な王の前とはいえ、礼に欠いた態度は罰が下るのではないか。
心配したロズが恐る恐る振り返ると、受け入れ難い人物がその場に立っていた。
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