【完結】悪役令嬢に転生した私は奴隷に身分を落とされてしまったが青年辺境伯に拾われて幸せになりました

夜炎伯空

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最終話(6話 )エピローグ あなたと永遠に・・・

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 敗戦後、徐々に力を失っていった王族は、諜報員スパイとして活動している元暗殺者アサシン達が扇動せんどうした影響もあり、二年後には平民にまで身分を落とされて辺境の地へと追いやられた。

 その結果――

 戦争の勝者であり国民からの絶大な信頼を得ていたルミナスが、王都からの要請ようせいを受けて国王に即位することとなった。

 辺境伯の後釜あとがまは、幽閉されたふりをして屋敷の近くでひっそりと暮らしていたクーラ元王子に、再び表舞台に立ってもらった。

 王族を失墜しっついさせるための助言を受けていたので、クーラ辺境伯は陰の功労者でもあった。

 その後、クーラ辺境伯は婚約者の令嬢との結婚を無事に果たし……

 今では、お腹に宿った新しい命の誕生を待ち望んでいる。


 奴隷制度をなくすには、そこから更に一年の歳月が流れた――

 奴隷に支払っていた給料を平民並みに引き上げないといけないことが反発の一番の原因だったが、その分は王族が過剰に集め過ぎていた国庫こっこから、労働者に直接補填ほてんすることで納得をしてもらった。

 国王であるルミナス自身が倹約けんやくに努め、その余剰金よじょうきんを国民が裕福に暮らせるようにと還元かんげんしていく姿に、貴族の中でも良識ある人々は感化かんかを受けていった。

 その甲斐かいあってか、少しずつ格差も緩やかなものへと是正ぜせいされていっている。
 

 そんなある日――

「実は三年前から、あなたのことが好きでした」

 オレは、ザインがキリアに告白をしている場面に遭遇してしまい……

 慌てて柱の陰へと隠れた。

 ザ、ザインもキリアのことが好きだっただと?

 そんな素振りは見たことがなかったぞ――

 ……キリアは何と返事をするんだ?

「くっ、楽しそうに話をしているのはわかるが――、内容までは聞き取れない……」 

 そんな二人の姿に、オレは思わず嫉妬してしまっていた。

   ◇

「ルミナス様が私をかえりみることなく国政で働いている間に、私の気持ちは変わってしまいました……」

「なっ!? そ、そんな――、オレはお前と結婚できる日を夢見て、ここまで頑張ってきたのに……。確かにザインはいい男だ、それはオレも認める。しかし、お前を想う気持ちは誰にも――」

 ルミナスが必死に話をしている最中、私は唇でその口を塞いだ。

 しばらくして、唇を離すと……

「ど、どういうことだ?! 何が何だかわけがわからないぞ!?」

 ルミナスは更に混乱してしまっていた。

「すみません、冗談のつもりだったんです――。ルミナス様があまりにも動揺してしまって、収拾が尽きそうにありませんでしたので強硬きょうこう手段をとらせてもらいました……」

「そうか、冗談だったのか――、ん? どこまでが冗談だったんだ? さっきのキスは冗談じゃないんだよな……」

「ふふ、さあ、どうでしょう――」

「オ、オレは初めてのキスだったんだぞ」

 え?

 ルミナスにとっても初めてのキスだったの?

「そ、それは、私もですよ……」

「――そ、そうなのか?」

「はい……」

 お互いに初めてのキスだったことを確認し合うと、私達は顔を耳まで真っ赤に染めた。

 そうして、一呼吸の間、目を見つめ合った後――

 私達はゆっくりと顔を近づけて、もう一度キスを交わした。

   ◇

 一年後――

「こんな日が迎えられるなんて夢のようです」

「オレもだよ――、ここまで長かったな……」

 私達は内外の準備期間を経て、ようやく結婚式の日を迎えていた。

 鏡には、タキシード姿のルミナスと、その隣に純白のウェディングドレスを身にまとった私の姿が映し出されている。

 法的には奴隷制度が廃止されたが、まだまだ元奴隷が王妃となることに抵抗がある者は多い。

 しかし、そんな視線など全く気にならないくらいに、私は幸せな気持ちで満たされていた。

 社畜のように働き続けて生きる希望を失っていた私――

 転生してもなお、奴隷の身分に落とされてしまった私――

 そんな私が、推しだったルミナスと結婚する日が来るなんてことは想像すらできなかった。

 今の私なら、過去の私に伝えることができるに違いない……

 頑張れば報われることもあるということを――


 教会で行われた結婚式には、メイド長や一緒に働いていたメイド達も参加してくれて、ルミナスと私の結婚を祝福してくれていた。

 誓約の時間には、女神の前で二人の愛が永遠であることを改めて誓い合った。

 思えば、この世界に来た当初は女神を恨んでいたが……

 ルミナスと結ばれた今となっては、そんな思いはどこかに消えてしまっていた。


「――そういえば、一年前にされた仕返しを、まだしてなかったな」

 披露宴も無事に終えた私達は、今日から一緒に寝泊まりする寝室で息休めをしていた。

「まだ根に持っていたんですか? こんな日にまで、あの時の話を持ち出すなんて、ルミナスって意外に執念深いんですね……」

「危うく部下との関係性にヒビが入るところだったんだ、当たり前だろ?」

「でも――、それだけ、私のことを離したくなかったってことですよね?」

「ま、まあな……」

 ルミナスが照れている。

「ふふ、素直でよろしい♡」

「くっ、キルア、最近、調子に乗ってないか?」

「ほんと、最近の私はどうかしてるとは思っているんです……、ですが、こんな風な態度をとるのは、ルミナスにだけなんですよ」

 ルミナスと一緒にいる時は安心感に包まれていて、普段の私では考えられないような言動をルミナスには見せてしまっていた――

「そ、そうか……。でも、たまにはわからせてやらないといけないかもな」

「それって――」

「初夜の今晩は覚悟してもらうぞ」

「わ、私は初めてなので、お手柔らかにお願いします……」

「はは、冗談だよ。オレも初めてだからな――、時間をかけて愛を育んでいけたらと思ってるよ」

 私はホッと胸をなでおろした。

「私達らしく……、ゆっくりとですね」

「ああ、焦ってた時期は過ぎて、今は時間に余裕もあるからな――」

「はい」

 ルミナスに身を寄せながら、私は満面の笑みを浮かべて返事をした。

 これからも、あなたと一緒なら……

 きっと、どこで何をしていたとしても――

 私はずっと幸せです。
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