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103.カイン殿と飲み会(レリック視点)
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今日はセシルの実家、アセンブル伯爵家のタウンハウスに来ている。
晩餐後、アセンブル伯爵殿に「男だけでワインでも」と誘われ、応接間に移動したものの、一杯飲む間も無く、伯爵殿は家令に呼ばれ、早々に退席してしまった。
「レリック殿下、俺の部屋で飲み直しませんか?セシルの絵姿もありますよ。ご覧になりますか?」
「是非見たい。」
セシルの絵姿に釣られて、カイン殿の部屋へ行った。
「これは幼少期、こちらは成人になった時ですね。友人の絵師に描いて貰った物です。」
「これは素晴らしい。」
絵姿は釣書としても使われる。
表情は澄ました顔が多く、時には美化され、本人と印象が変わる場合も多い。
だがこの絵姿は、セシルが自然に微笑んだ表情が描かれており、ありのままのセシルを感じられた。
友人の絵師とやらは、セシルをよく知っているのだろう。
幼少期も成人のセシルも可愛い!是非とも欲しい!
「カイン殿、この姿絵を譲って貰えないだろうか?」
「それ、私のお気に入りなんですよ。殿下はセシルとこれから暮らすのだから、絵姿なんて要らないでしょう。それに絵なら、宮廷絵師に幾らでも描かせられるのでは?」
カイン殿は分かっていないようだ。
「こんなに生き生きとした、愛らしいセシルは描けないだろう。それに、過去のセシルもだ。私はセシルの全てを把握したい。」
何も驚くような事は言っていない筈だが、カイン殿が目を丸くしている。
「まさか殿下が、そんな独占欲丸出し発言をするとは意外です。セシルにしても、進んで殿下と手を繋いでいるし、二ヶ月の間に、一体何があったのですか?」
それはもう秘匿任務の連続だった、とは言えない。
「特に……色々だ。セシルは真面目で思い遣りがあり、美しく、愛らしい。そんな所に惹かれて、好かれる為に頑張った結果だろう。」
手を繋ぐのは、あれこれと理由をつけて習慣付けた結果だ。
今では、セシルからも手を繋いでくれるようになった。
思い出すと嬉しくて、ワインも進むというものだ。
「で、絵姿を譲って貰いたいのだが、幾ら払えばいい。」
「お金は結構です。そうですね……チェスで殿下が勝ったら譲りましょう。俺が勝ったら、俺の願いを聞いて頂けませんかね。」
カイン殿が、ローテーブルに置いてある、チェスボードを指差した。
「チェスをするのは構わないが、カイン殿の願いは何だ。勝つつもりだが、負けた時、無理を言われても困る。」
「出来る範囲で構いませんよ。ま、チェスをしながら話します。お先にどうぞ。」
カイン殿は自信があるらしい。
「では。」
ソファーに向かい合って座り、駒を運びつつ、互いにワインを嗜む。
「殿下、もうグラスが空いていますよ。」
カイン殿がワインを継ぎ足してくれる。
「有り難う、って私を酔わせて判断を鈍らせるつもりではないか?」
「そうですね。それも戦略の内ですが、折角お勧めのワインを沢山用意したので、飲んで頂きたいとも思っていますよ。」
部屋には数種類のボトルワインが並んでいる。
「確かにどれも旨いが、私だけ酔うのも不公平だ。カイン殿も飲め。」
カイン殿のグラスに並々注ぐと、カイン殿は水を飲むように、クイッと飲み干した。
「さあ、殿下も。」
飲んだ直後に、またしても注がれてしまった。
美味いから良いが。
「で、カイン殿の希望をまだ聞いていないが。」
再びチェスに向き直った。
「殿下とセシルの間に子どもが何人か生まれたら、一人私の養子に頂きたい。」
「は?」
突拍子もない話に、駒を倒しそうになった。
「これはまた、随分先の話をする。」
「そうですね。私は嫡男ですが、一生結婚をする気はありません。ですから、セシルにも前々から話はしてあるのです。」
「その黒子が原因か?だが、それでも良いと言ってくれる女性も現れるのではないか?」
カイン殿はモテる。誰かしら受け入れてくれる女性はいるだろう。
「……俺には婚約者がいました。成人する前に病気で亡くなってしまったのですが、婚約当初、彼女は黒子を気にしませんでした。ですが、その彼女が病気になった時、言ったのです。俺の黒子のせいで呪われたのだと。」
カイン殿が駒を動かして、ワインを飲み干した。
「それは単なる八つ当たりだろう。」
カイン殿のグラスにワインを注ぐ。
「ええ。彼女は病気で精神的に参っていた……だけではないのですが、何か不幸があった時、黒子のせいだと言われかねない。セシルは『例え自分に、どんな不幸が起きたとしても、絶対に黒子のせいではない。黒子のせいにはしない』と言ってくれました。ですが、誰もがセシルのようには思えないと俺は思っています。」
「それは……そうかも知れない。」
我が国で、黒いアザは不吉だとされて、忌み嫌われている。
何も無い時は良くても、何か問題が起これば、アザのせいにされるのは予想出来る。
「俺は、誰にも黒子を見せる気がないので、誰かに受け入れて貰う自体、あり得ません。ですから、俺が勝って、将来、殿下が子宝に恵まれて、その子が成人したら、一人養子に頂きたい。次男、三男は爵位が必要ですから、悪い話ではない筈です。」
「確かに。伯爵家を継げるなら寧ろ厚待遇だ。だが、セシルの絵姿の為には負けられない。」
駒を動かしてワインを呷った。
飲みやすいせいか、するすると飲めてしまう。
「殿下に希望を聞いて頂けそうなので、俺も負けられませんね。」
カイン殿が駒を動かして、自分と私のグラスにワインを注いだ。
「チェックメイト。」
「な!」
カイン殿に負けた。
「養子の件は、子供が生まれたら検討しよう。もう一度だ。」
「良いですよ。では、私が勝ったら、いつから手を繋ぎ始めたのか教えて貰いましょうか。」
カイン殿は優雅にワインを飲み干した。
「そんなの始めからだが?」
「今言いますか?」
「手なんてエスコートやダンスでも繋ぐだろう。」
「ですよね……やっぱり、ワグナーが奥手過ぎたんだよなぁ~。」
ハァーと溜め息をついて、カイン殿が遠い目をしている。
ワグナー……セシルの元婚約者、ワイル伯爵令息だったか。
婚約中に浮気し、子まで作った男だと黒騎士団から報告が上がっていた。
そんな男が奥手と言えるのか、甚だ疑問ではあるが、彼が婚約破棄しなければ、セシルは自棄になってアイテムの箱を開けなかっただろう。
私がセシルと婚約する事もなかったし、悪魔を退ける事も、世界が救われる事も、魔王を消し去る事も出来なかった。
私が好きという感情を知ったり、両想いになる幸せを感じることも無かっただろう。
そして、今、セシルの愛らしい絵姿に出会えることも……。
ワイル伯爵令息には、セシルに手を出さないでいてくれたことも含めて、これでも感謝している。
結果的に、彼の不貞と婚約破棄が、国や私の幸せに貢献する結果をもたらしてくれた。
だからと言って、二度とセシルに関わらせる気はない。
せいぜい浮気相手と幸せになるがいい。
セシルは私が全力で幸せにする。
セシルの何一つ、誰かに譲る気は無い。
そして、今度こそカイン殿に勝って、絵姿を手に入れる。
このチャンスを逃してなるものか。
チェスボードを見て思案していると、カイン殿が駒を動かした。
「では、私が勝ったら、セシルと、どこまでしたのか教えて貰いましょうか。」
「身内のそんな話、聞きたいか?」
チェスボードから顔を上げると、カイン殿の眉間に皺が寄っていた。
「正直、複雑です。ただ、あの鈍い妹をどこまで攻略したのか、純粋に興味がありますね。」
「なるほど。」
初日から私室で共に暮らし、数日後にはベッドを共用しているとは絶対、言えない。
任務の為とも言えないし、ベッドの共用は私の独断なだけに、常識を疑われるに違いない。
口付けは……誰でもするから言える範囲ではあるが……。
「それは秘匿しておきたいので、次は絶対に勝つ。」
「俺も負ける気はないですよ。」
互いにフッと笑い合うと、ワインを呷って再びチェスを再開した。
時間は、あっという間に過ぎて、深夜零時を過ぎていた。
「チェックメイト。私の勝ちだ。」
「あ――っ……仕方ない。約束通り、絵姿は譲りますよ。」
漸くカイン殿から絵姿を受け取った。
「それにしてもカイン殿は酒に強い。私は、かなり酔ってしまったようだ。」
もう、思考が働かない。
「俺はザルと言われていますからね。今まで、一度も酔った経験はありません。殿下は領地へ来て、セシルに連れ回されたりと、お疲れでしょうから、酔いが回りやすかったのかもしれませんよ。」
周りには、空になったワインボトルが何本も並んでいる。
これだけ飲めば、酔いが回るのも当然だ。
顔色一つ変わらないカイン殿が、異常なのだろう。
「疲れてはない。久々にゆっくりしたくらいだ。ただ、普段ワインをこんなには飲まない。飲み過ぎた。」
「そのようですね。日付も変わりましたし、そろそろお開きにしましょうか。」
「ああ。」
王宮でも、領地へ招待されても、王族としての仮面を外した事はなかったのに、セシルや、アセンブル伯爵家の居心地の良さからか、羽目を外し過ぎたらしい。
だが、カイン殿と有意義で楽しい時間を過ごせた。
何より、セシルの絵姿を手に入れられて満足だ。
客室のベッドに倒れ込むと、直ぐに睡魔がやって来た。
もうセシルは寝ているだろう。
「お休み、セシル。」
セシルの絵姿を胸に抱いて、そのまま眠った。
晩餐後、アセンブル伯爵殿に「男だけでワインでも」と誘われ、応接間に移動したものの、一杯飲む間も無く、伯爵殿は家令に呼ばれ、早々に退席してしまった。
「レリック殿下、俺の部屋で飲み直しませんか?セシルの絵姿もありますよ。ご覧になりますか?」
「是非見たい。」
セシルの絵姿に釣られて、カイン殿の部屋へ行った。
「これは幼少期、こちらは成人になった時ですね。友人の絵師に描いて貰った物です。」
「これは素晴らしい。」
絵姿は釣書としても使われる。
表情は澄ました顔が多く、時には美化され、本人と印象が変わる場合も多い。
だがこの絵姿は、セシルが自然に微笑んだ表情が描かれており、ありのままのセシルを感じられた。
友人の絵師とやらは、セシルをよく知っているのだろう。
幼少期も成人のセシルも可愛い!是非とも欲しい!
「カイン殿、この姿絵を譲って貰えないだろうか?」
「それ、私のお気に入りなんですよ。殿下はセシルとこれから暮らすのだから、絵姿なんて要らないでしょう。それに絵なら、宮廷絵師に幾らでも描かせられるのでは?」
カイン殿は分かっていないようだ。
「こんなに生き生きとした、愛らしいセシルは描けないだろう。それに、過去のセシルもだ。私はセシルの全てを把握したい。」
何も驚くような事は言っていない筈だが、カイン殿が目を丸くしている。
「まさか殿下が、そんな独占欲丸出し発言をするとは意外です。セシルにしても、進んで殿下と手を繋いでいるし、二ヶ月の間に、一体何があったのですか?」
それはもう秘匿任務の連続だった、とは言えない。
「特に……色々だ。セシルは真面目で思い遣りがあり、美しく、愛らしい。そんな所に惹かれて、好かれる為に頑張った結果だろう。」
手を繋ぐのは、あれこれと理由をつけて習慣付けた結果だ。
今では、セシルからも手を繋いでくれるようになった。
思い出すと嬉しくて、ワインも進むというものだ。
「で、絵姿を譲って貰いたいのだが、幾ら払えばいい。」
「お金は結構です。そうですね……チェスで殿下が勝ったら譲りましょう。俺が勝ったら、俺の願いを聞いて頂けませんかね。」
カイン殿が、ローテーブルに置いてある、チェスボードを指差した。
「チェスをするのは構わないが、カイン殿の願いは何だ。勝つつもりだが、負けた時、無理を言われても困る。」
「出来る範囲で構いませんよ。ま、チェスをしながら話します。お先にどうぞ。」
カイン殿は自信があるらしい。
「では。」
ソファーに向かい合って座り、駒を運びつつ、互いにワインを嗜む。
「殿下、もうグラスが空いていますよ。」
カイン殿がワインを継ぎ足してくれる。
「有り難う、って私を酔わせて判断を鈍らせるつもりではないか?」
「そうですね。それも戦略の内ですが、折角お勧めのワインを沢山用意したので、飲んで頂きたいとも思っていますよ。」
部屋には数種類のボトルワインが並んでいる。
「確かにどれも旨いが、私だけ酔うのも不公平だ。カイン殿も飲め。」
カイン殿のグラスに並々注ぐと、カイン殿は水を飲むように、クイッと飲み干した。
「さあ、殿下も。」
飲んだ直後に、またしても注がれてしまった。
美味いから良いが。
「で、カイン殿の希望をまだ聞いていないが。」
再びチェスに向き直った。
「殿下とセシルの間に子どもが何人か生まれたら、一人私の養子に頂きたい。」
「は?」
突拍子もない話に、駒を倒しそうになった。
「これはまた、随分先の話をする。」
「そうですね。私は嫡男ですが、一生結婚をする気はありません。ですから、セシルにも前々から話はしてあるのです。」
「その黒子が原因か?だが、それでも良いと言ってくれる女性も現れるのではないか?」
カイン殿はモテる。誰かしら受け入れてくれる女性はいるだろう。
「……俺には婚約者がいました。成人する前に病気で亡くなってしまったのですが、婚約当初、彼女は黒子を気にしませんでした。ですが、その彼女が病気になった時、言ったのです。俺の黒子のせいで呪われたのだと。」
カイン殿が駒を動かして、ワインを飲み干した。
「それは単なる八つ当たりだろう。」
カイン殿のグラスにワインを注ぐ。
「ええ。彼女は病気で精神的に参っていた……だけではないのですが、何か不幸があった時、黒子のせいだと言われかねない。セシルは『例え自分に、どんな不幸が起きたとしても、絶対に黒子のせいではない。黒子のせいにはしない』と言ってくれました。ですが、誰もがセシルのようには思えないと俺は思っています。」
「それは……そうかも知れない。」
我が国で、黒いアザは不吉だとされて、忌み嫌われている。
何も無い時は良くても、何か問題が起これば、アザのせいにされるのは予想出来る。
「俺は、誰にも黒子を見せる気がないので、誰かに受け入れて貰う自体、あり得ません。ですから、俺が勝って、将来、殿下が子宝に恵まれて、その子が成人したら、一人養子に頂きたい。次男、三男は爵位が必要ですから、悪い話ではない筈です。」
「確かに。伯爵家を継げるなら寧ろ厚待遇だ。だが、セシルの絵姿の為には負けられない。」
駒を動かしてワインを呷った。
飲みやすいせいか、するすると飲めてしまう。
「殿下に希望を聞いて頂けそうなので、俺も負けられませんね。」
カイン殿が駒を動かして、自分と私のグラスにワインを注いだ。
「チェックメイト。」
「な!」
カイン殿に負けた。
「養子の件は、子供が生まれたら検討しよう。もう一度だ。」
「良いですよ。では、私が勝ったら、いつから手を繋ぎ始めたのか教えて貰いましょうか。」
カイン殿は優雅にワインを飲み干した。
「そんなの始めからだが?」
「今言いますか?」
「手なんてエスコートやダンスでも繋ぐだろう。」
「ですよね……やっぱり、ワグナーが奥手過ぎたんだよなぁ~。」
ハァーと溜め息をついて、カイン殿が遠い目をしている。
ワグナー……セシルの元婚約者、ワイル伯爵令息だったか。
婚約中に浮気し、子まで作った男だと黒騎士団から報告が上がっていた。
そんな男が奥手と言えるのか、甚だ疑問ではあるが、彼が婚約破棄しなければ、セシルは自棄になってアイテムの箱を開けなかっただろう。
私がセシルと婚約する事もなかったし、悪魔を退ける事も、世界が救われる事も、魔王を消し去る事も出来なかった。
私が好きという感情を知ったり、両想いになる幸せを感じることも無かっただろう。
そして、今、セシルの愛らしい絵姿に出会えることも……。
ワイル伯爵令息には、セシルに手を出さないでいてくれたことも含めて、これでも感謝している。
結果的に、彼の不貞と婚約破棄が、国や私の幸せに貢献する結果をもたらしてくれた。
だからと言って、二度とセシルに関わらせる気はない。
せいぜい浮気相手と幸せになるがいい。
セシルは私が全力で幸せにする。
セシルの何一つ、誰かに譲る気は無い。
そして、今度こそカイン殿に勝って、絵姿を手に入れる。
このチャンスを逃してなるものか。
チェスボードを見て思案していると、カイン殿が駒を動かした。
「では、私が勝ったら、セシルと、どこまでしたのか教えて貰いましょうか。」
「身内のそんな話、聞きたいか?」
チェスボードから顔を上げると、カイン殿の眉間に皺が寄っていた。
「正直、複雑です。ただ、あの鈍い妹をどこまで攻略したのか、純粋に興味がありますね。」
「なるほど。」
初日から私室で共に暮らし、数日後にはベッドを共用しているとは絶対、言えない。
任務の為とも言えないし、ベッドの共用は私の独断なだけに、常識を疑われるに違いない。
口付けは……誰でもするから言える範囲ではあるが……。
「それは秘匿しておきたいので、次は絶対に勝つ。」
「俺も負ける気はないですよ。」
互いにフッと笑い合うと、ワインを呷って再びチェスを再開した。
時間は、あっという間に過ぎて、深夜零時を過ぎていた。
「チェックメイト。私の勝ちだ。」
「あ――っ……仕方ない。約束通り、絵姿は譲りますよ。」
漸くカイン殿から絵姿を受け取った。
「それにしてもカイン殿は酒に強い。私は、かなり酔ってしまったようだ。」
もう、思考が働かない。
「俺はザルと言われていますからね。今まで、一度も酔った経験はありません。殿下は領地へ来て、セシルに連れ回されたりと、お疲れでしょうから、酔いが回りやすかったのかもしれませんよ。」
周りには、空になったワインボトルが何本も並んでいる。
これだけ飲めば、酔いが回るのも当然だ。
顔色一つ変わらないカイン殿が、異常なのだろう。
「疲れてはない。久々にゆっくりしたくらいだ。ただ、普段ワインをこんなには飲まない。飲み過ぎた。」
「そのようですね。日付も変わりましたし、そろそろお開きにしましょうか。」
「ああ。」
王宮でも、領地へ招待されても、王族としての仮面を外した事はなかったのに、セシルや、アセンブル伯爵家の居心地の良さからか、羽目を外し過ぎたらしい。
だが、カイン殿と有意義で楽しい時間を過ごせた。
何より、セシルの絵姿を手に入れられて満足だ。
客室のベッドに倒れ込むと、直ぐに睡魔がやって来た。
もうセシルは寝ているだろう。
「お休み、セシル。」
セシルの絵姿を胸に抱いて、そのまま眠った。
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