92 / 114
92.魔王討伐後(レリック視点)
しおりを挟む
魔王討伐したその日の正午。
大部屋の人払いをして、昼食を食べながら、セシルから話を聞いた。
クリス副団に拐われた時、何があったのか?と。
セシルは、私が誘拐されたとクリス副団から聞いたらしいが、その内容は昔、騎士団が対処した『伯爵令息誘拐事件』そのままの内容だった。
もし、本当にそんな状況になったら、私は存在を消して襲撃者の武器を奪い、再びセシルを取り返せる。
それに、先読み出来るクリス副団ならば、丸腰でも相手の動きを躱して武器を奪い、多勢でも、的確にダメージを与えて、簡単に形勢逆転出来る。
だが、セシルは混乱状態で考える暇を与えられず、魔王は、クリス副団の記憶にある実際の事件を偽装し、真実味を持たせて話をしていたようだ。
セシルが話を信じてしまうのも仕方がない。
そもそも私が周囲を警戒していれば、セシルを手放す事態にはならなかった。
二度とこのような失態は犯さないと、大いに反省した。
午後。
少し遅れて騎士棟へ出勤し、執務室にクリス副団を呼んで、聞き取りをした。
「夜会開始直前、父と口論になりました。母や祖父は事故死だと、兄や妹に伝えていたのです。家族には真実を告げるべきだと主張しましたが、まだ二人は受け止め切れないと父に言われ、夜会が始まって直ぐ、私は頭を冷やす為、一旦、バルコニーへ行ったのですが、そこから記憶がありません。」
溜め息が出た。
クリス副団は夜会が始まった時、既に魔に囚われ、魔王に操られたまま夜会会場に戻り、普通にクリスとして過ごしていたらしい。
もしかしたら、参加者が魔に囚われた切っ掛けは、魔王に操られていたクリス副団が何かしたのかもしれない。
記憶が無いだけに調べようがないが。
「それで、睡眠の陣は、いつ手にした。」
「念のため、元々二枚だけ持っていました。気づいたら無くなっていましたが。」
「なるほど。」
初めに持っていた二枚は、私とセシルに使って、地下の部屋を見張っている青騎士団には、セシルのポーチから抜き取って使ったのだろう。
「あ!そういえば……」
「クリス副団、何か思い出したのか?」
「一瞬ですが、セシル嬢に頬を包まれて、何度も名前を呼ばれた気が……」
「は?」
何故、そんな幸せそうな事だけ思い出す。
思わず、聞き取りでメモしていた紙を、グシャッと握り潰しそうになった。
そう言えば、一瞬だけクリス副団の後頭部にある錠前を解錠したが、再び現れてしまったと、セシルが言っていた。
恐らく、セシルが錠前を解錠した時、一瞬我に返ったのだろう。
操られていたので、仕方ないと言えば仕方ないのだが、分かっていてもやるせない。
私はクリス副団が操られている間、何をしたのか、自分が知る全てを話して聞かせた。
「記憶がないとは言え、とんでもない事を。ただ、セルリアンが魔に囚われたのは、セルリアンのせいだと思いますが。」
男爵家次男のセルリアンは、自分より家格が上の令嬢に恋をして、その令嬢と結婚したいが為に、武勲を立てようと努力している。
そして、その令嬢に言い寄る男が現れると、影ながら排除しているらしい。
騎士団内では、有名な話だ。
ただ、その令嬢が、セルリアンに好意があるのか、誰も知らない。と言うか、そこまで興味がないので知ろうともしていない。
「クリス副団も知っていたのだろう?セルリアンが、ある令嬢に片想いしていると。」
「はい、ストーカー並みに重いと団員達の間では有名でしたから。」
「魔王はクリス副団を使って、セルリアンの弱い部分をついたのだろう。まあ、言われても記憶がないのだから困るだろうが。」
「そうですね。ただ、仕出かした事の責任は取ります。やはり極刑、でしょうか?」
クリス副団は真面目な男だ。追い詰めてしまったらしい。
「済まない、八つ当たりをしてしまった。魔は誰にでも囚われる可能性がある。そうならないよう対策する為に、話を聞くのが目的だ。追い詰めたい訳ではなかった。」
「しかし、許されない事をしたのは事実です。エド団長のように首輪を着けて、一生王家に仕えます。」
恐らく我々が魔王と戦っている間、そんなことを考えていたのだろう。
「首輪は着けなくても良いが、一生王家に仕えて貰えるのは有難い。総長にも話しておこう。」
その日の午後四時。
団長会議が行われた。
メンバーは、四人。
白騎士団の代表として総長のピューリッツ兄上、青騎士団団長のエド、黒騎士団団長のアレク、そして、赤騎士団団長の私だ。
私は、セシルとクリス副団の聞き取りについて報告し、クリス副団の希望について伝えた。
「魔に囚われた事について罰するつもりはないが、王家の犬になりたいなら、大歓迎だ。首輪をしないまでも、気が変わらない内に、一生王家に仕えると、誓約書に一筆書いて貰おうか。」
総長のピューリッツ兄上が、キラリと目を光らせている。
有能な人材を決して逃さないとでも言いたげだ。
「それ、いいね。僕達のように、一生王家に縛られる仲間が、また一人増えるわけだ。ね、エド。」
アレクが嬉しそうに、エドの肩を叩いている。
「喜ばしい限りだな。それに比べて、我が部下のセルリアンは、クリス副団のせいだと言いはっている。が、何も無かった事にするつもりはない。」
いつかまた生まれるかもしれない魔王に備えて、エドはセルリアンと教会の地下へ同行していた部下達に、連帯責任として、魔王封印の箱を一年で修復するよう、命じたらしい。
「俺はもうやらない。手を出せば、俺が一人でやる羽目になるしな。俺が一人で出来たんだ。一から部下にやらせれば、人数いるし、一年もあれば出来るだろう。多分。」
エドは簡単に言うが、セルリアンや部下達は、エドのような天才ではない。
任務をしながらの作業に、これから一年、いや、もっとかもしれない。
連日徹夜必至だと悟って、肩を落としたに違いない。
「それにしても、今回は全てが後手になったよね。仲間が魔に囚われて、魔王に操られていると気付けずに、魔王の復活を許してしまった。拐われたセシル嬢が無事で、箱が魔王を吸引したから事なきを得たけれど、こんな幸運、なかなか無いよ。」
「確かに、アレクの言う通り、今回は本当に運が良かった。」
総長の言葉に、私やエドも頷いた。
今回の反省点を踏まえて、今後の対策が話し合われた。
その結果、騎士棟では、団員が魔に囚われていないかチェックするため、扉がある全ての床に、魔を感知する陣を設置するとなった。
また、セシルが二度と利用されないよう、護衛を一人増やし、護衛当番に錠前が着いていないかを毎回、セシルに確認して貰うと決定した。
これで会議も終わりかと思ったら、兄上が口を開いた。
まだ何かあるのか。
「次は外交の話だ。先日の魔溜まり任務について、ホワーズ魔法王国には既に報告しているが、魔王吸引についても報告する。数日の間に返事が来て、使者の訪問日程が決定するだろう。対応は王家と白騎士以外の騎士団長で行うから、そのつもりでいて欲しい。」
魔王の脅威が無くなり、安心して結婚式を迎えられると思ったら、次は外交か。
「レリック、詳しい事が決まったら、セシルにも伝えてくれ。」
「はい。」
ホワーズ魔法王国は、魔王討伐協会の本拠地がある国だ。
大昔、魔王討伐のアイテムを発明した国であり、魔王の情報を世界の国々と共有するため、世界を代表して情報を集めている。
従って、魔王討伐した国は、世界平和の為にも、聞き取り調査の協力が義務となっている。
貴重なアイテムを使えるセシルも、聞き取り調査の対象だ。
二日後の午後四時。
団長会議で、兄上から報告があった。
「早速、ホワーズ魔法王国から返事が来た。使者の訪問は六月二十四日。丁度、レリックの挙式一週間前に決定した。滞在予定は三日だ。」
面倒事が挙式前に終わるなら何よりだが、事前に届いた調査協力書に目を通して、思わず顔をしかめた。
「アイテムを使える者と、二人きりでの聞き取り調査だと?」
二人きりで調査を行う理由は全うで、先方はアイテムを使える者を『勇者』と表現して、男女の区別をしていない。
ただ、使者が私より年下の男……。
「この要求を全て受け入れなければならないのか……。三日も。」
嫌だ、嫌すぎる。本来なら、絶対に断る内容だ。
だが、調査協力書の内容は、協力する義務があり、基本的に拒否権はない。
拒否したら、逆に面倒な事態になると分かっているだけに、我慢するしかない。
結婚はもうすぐなのに、本当に面倒事ばかり起こる。
セシル成分を補給しなければやっていられない。
私室に戻って、私の帰りを待っていたセシルを見た瞬間、抱き締めた。
「あの……レリック様、夕食が……。」
「もう少しだけ。」
この後、セシルに外交の話をする。
私にも心の準備が必要だ。
ハグする時間が、回数を重ねる度に長くなってしまうのは、私の精神衛生上、仕方がない。
シーナが、これ見よがしに咳払いをしている……。
が、聞こえない振りをしておいた。
大部屋の人払いをして、昼食を食べながら、セシルから話を聞いた。
クリス副団に拐われた時、何があったのか?と。
セシルは、私が誘拐されたとクリス副団から聞いたらしいが、その内容は昔、騎士団が対処した『伯爵令息誘拐事件』そのままの内容だった。
もし、本当にそんな状況になったら、私は存在を消して襲撃者の武器を奪い、再びセシルを取り返せる。
それに、先読み出来るクリス副団ならば、丸腰でも相手の動きを躱して武器を奪い、多勢でも、的確にダメージを与えて、簡単に形勢逆転出来る。
だが、セシルは混乱状態で考える暇を与えられず、魔王は、クリス副団の記憶にある実際の事件を偽装し、真実味を持たせて話をしていたようだ。
セシルが話を信じてしまうのも仕方がない。
そもそも私が周囲を警戒していれば、セシルを手放す事態にはならなかった。
二度とこのような失態は犯さないと、大いに反省した。
午後。
少し遅れて騎士棟へ出勤し、執務室にクリス副団を呼んで、聞き取りをした。
「夜会開始直前、父と口論になりました。母や祖父は事故死だと、兄や妹に伝えていたのです。家族には真実を告げるべきだと主張しましたが、まだ二人は受け止め切れないと父に言われ、夜会が始まって直ぐ、私は頭を冷やす為、一旦、バルコニーへ行ったのですが、そこから記憶がありません。」
溜め息が出た。
クリス副団は夜会が始まった時、既に魔に囚われ、魔王に操られたまま夜会会場に戻り、普通にクリスとして過ごしていたらしい。
もしかしたら、参加者が魔に囚われた切っ掛けは、魔王に操られていたクリス副団が何かしたのかもしれない。
記憶が無いだけに調べようがないが。
「それで、睡眠の陣は、いつ手にした。」
「念のため、元々二枚だけ持っていました。気づいたら無くなっていましたが。」
「なるほど。」
初めに持っていた二枚は、私とセシルに使って、地下の部屋を見張っている青騎士団には、セシルのポーチから抜き取って使ったのだろう。
「あ!そういえば……」
「クリス副団、何か思い出したのか?」
「一瞬ですが、セシル嬢に頬を包まれて、何度も名前を呼ばれた気が……」
「は?」
何故、そんな幸せそうな事だけ思い出す。
思わず、聞き取りでメモしていた紙を、グシャッと握り潰しそうになった。
そう言えば、一瞬だけクリス副団の後頭部にある錠前を解錠したが、再び現れてしまったと、セシルが言っていた。
恐らく、セシルが錠前を解錠した時、一瞬我に返ったのだろう。
操られていたので、仕方ないと言えば仕方ないのだが、分かっていてもやるせない。
私はクリス副団が操られている間、何をしたのか、自分が知る全てを話して聞かせた。
「記憶がないとは言え、とんでもない事を。ただ、セルリアンが魔に囚われたのは、セルリアンのせいだと思いますが。」
男爵家次男のセルリアンは、自分より家格が上の令嬢に恋をして、その令嬢と結婚したいが為に、武勲を立てようと努力している。
そして、その令嬢に言い寄る男が現れると、影ながら排除しているらしい。
騎士団内では、有名な話だ。
ただ、その令嬢が、セルリアンに好意があるのか、誰も知らない。と言うか、そこまで興味がないので知ろうともしていない。
「クリス副団も知っていたのだろう?セルリアンが、ある令嬢に片想いしていると。」
「はい、ストーカー並みに重いと団員達の間では有名でしたから。」
「魔王はクリス副団を使って、セルリアンの弱い部分をついたのだろう。まあ、言われても記憶がないのだから困るだろうが。」
「そうですね。ただ、仕出かした事の責任は取ります。やはり極刑、でしょうか?」
クリス副団は真面目な男だ。追い詰めてしまったらしい。
「済まない、八つ当たりをしてしまった。魔は誰にでも囚われる可能性がある。そうならないよう対策する為に、話を聞くのが目的だ。追い詰めたい訳ではなかった。」
「しかし、許されない事をしたのは事実です。エド団長のように首輪を着けて、一生王家に仕えます。」
恐らく我々が魔王と戦っている間、そんなことを考えていたのだろう。
「首輪は着けなくても良いが、一生王家に仕えて貰えるのは有難い。総長にも話しておこう。」
その日の午後四時。
団長会議が行われた。
メンバーは、四人。
白騎士団の代表として総長のピューリッツ兄上、青騎士団団長のエド、黒騎士団団長のアレク、そして、赤騎士団団長の私だ。
私は、セシルとクリス副団の聞き取りについて報告し、クリス副団の希望について伝えた。
「魔に囚われた事について罰するつもりはないが、王家の犬になりたいなら、大歓迎だ。首輪をしないまでも、気が変わらない内に、一生王家に仕えると、誓約書に一筆書いて貰おうか。」
総長のピューリッツ兄上が、キラリと目を光らせている。
有能な人材を決して逃さないとでも言いたげだ。
「それ、いいね。僕達のように、一生王家に縛られる仲間が、また一人増えるわけだ。ね、エド。」
アレクが嬉しそうに、エドの肩を叩いている。
「喜ばしい限りだな。それに比べて、我が部下のセルリアンは、クリス副団のせいだと言いはっている。が、何も無かった事にするつもりはない。」
いつかまた生まれるかもしれない魔王に備えて、エドはセルリアンと教会の地下へ同行していた部下達に、連帯責任として、魔王封印の箱を一年で修復するよう、命じたらしい。
「俺はもうやらない。手を出せば、俺が一人でやる羽目になるしな。俺が一人で出来たんだ。一から部下にやらせれば、人数いるし、一年もあれば出来るだろう。多分。」
エドは簡単に言うが、セルリアンや部下達は、エドのような天才ではない。
任務をしながらの作業に、これから一年、いや、もっとかもしれない。
連日徹夜必至だと悟って、肩を落としたに違いない。
「それにしても、今回は全てが後手になったよね。仲間が魔に囚われて、魔王に操られていると気付けずに、魔王の復活を許してしまった。拐われたセシル嬢が無事で、箱が魔王を吸引したから事なきを得たけれど、こんな幸運、なかなか無いよ。」
「確かに、アレクの言う通り、今回は本当に運が良かった。」
総長の言葉に、私やエドも頷いた。
今回の反省点を踏まえて、今後の対策が話し合われた。
その結果、騎士棟では、団員が魔に囚われていないかチェックするため、扉がある全ての床に、魔を感知する陣を設置するとなった。
また、セシルが二度と利用されないよう、護衛を一人増やし、護衛当番に錠前が着いていないかを毎回、セシルに確認して貰うと決定した。
これで会議も終わりかと思ったら、兄上が口を開いた。
まだ何かあるのか。
「次は外交の話だ。先日の魔溜まり任務について、ホワーズ魔法王国には既に報告しているが、魔王吸引についても報告する。数日の間に返事が来て、使者の訪問日程が決定するだろう。対応は王家と白騎士以外の騎士団長で行うから、そのつもりでいて欲しい。」
魔王の脅威が無くなり、安心して結婚式を迎えられると思ったら、次は外交か。
「レリック、詳しい事が決まったら、セシルにも伝えてくれ。」
「はい。」
ホワーズ魔法王国は、魔王討伐協会の本拠地がある国だ。
大昔、魔王討伐のアイテムを発明した国であり、魔王の情報を世界の国々と共有するため、世界を代表して情報を集めている。
従って、魔王討伐した国は、世界平和の為にも、聞き取り調査の協力が義務となっている。
貴重なアイテムを使えるセシルも、聞き取り調査の対象だ。
二日後の午後四時。
団長会議で、兄上から報告があった。
「早速、ホワーズ魔法王国から返事が来た。使者の訪問は六月二十四日。丁度、レリックの挙式一週間前に決定した。滞在予定は三日だ。」
面倒事が挙式前に終わるなら何よりだが、事前に届いた調査協力書に目を通して、思わず顔をしかめた。
「アイテムを使える者と、二人きりでの聞き取り調査だと?」
二人きりで調査を行う理由は全うで、先方はアイテムを使える者を『勇者』と表現して、男女の区別をしていない。
ただ、使者が私より年下の男……。
「この要求を全て受け入れなければならないのか……。三日も。」
嫌だ、嫌すぎる。本来なら、絶対に断る内容だ。
だが、調査協力書の内容は、協力する義務があり、基本的に拒否権はない。
拒否したら、逆に面倒な事態になると分かっているだけに、我慢するしかない。
結婚はもうすぐなのに、本当に面倒事ばかり起こる。
セシル成分を補給しなければやっていられない。
私室に戻って、私の帰りを待っていたセシルを見た瞬間、抱き締めた。
「あの……レリック様、夕食が……。」
「もう少しだけ。」
この後、セシルに外交の話をする。
私にも心の準備が必要だ。
ハグする時間が、回数を重ねる度に長くなってしまうのは、私の精神衛生上、仕方がない。
シーナが、これ見よがしに咳払いをしている……。
が、聞こえない振りをしておいた。
0
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
なんでそんなに婚約者が嫌いなのかと問われた殿下が、婚約者である私にわざわざ理由を聞きに来たんですけど。
下菊みこと
恋愛
侍従くんの一言でさくっと全部解決に向かうお話。
ご都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる