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89.決着
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アレク団長に続いて黒騎士団の騎士達が、魔王の両手、両足に杭を打ち込んでいます。
レリック様が切り落とした筈が、いつの間にか再生している魔王の片手にも、杭が打ち込まれました。
杭で陣に固定された魔王の体に、縦は正中線、横はへそを通るように、レリック様が剣で斬りつけました。
更に、右肩からへそを通って左鼠径部、左肩からへそを通って右鼠径部と米印のような傷が出来るように斬り付けています。
理由は分からないそうですが、そうする事で魔王の力が弱まり、私達が魔に囚われるのを防げるそうです。
「我は、お前達人間の望みを、ただ解放してやっているというのに、何故このような仕打ちを受けねばならぬ。」
魔王は眉間に杭を打ち込まれても、剣で斬られても痛みは無いようで、平然としています。
「何が人間の望みだ。人が不幸になるのを見て、楽しみたいだけだろう。」
レリック様は、無駄だと分かっていながらも、魔王のへそ辺りに、勢いよく剣を突き立てました。
体の強度が下がったのか、剣は最初よりも深く魔王の腹部に刺さっています。
レリック様が剣を抜くと、その切り口から、何か黒い物が出てきました。
錠前です!頑丈そうな黒い錠前が二つも。
思わず大きな声を出しそうになって、グッとこらえました。
レリック様の袖をクイクイと引っ張ると、何かを察したレリック様が、私に顔を近づけました。
「どうした?」
「レリック様、錠前が……。」
なるべく小声で、魔王の腹部を指差しました。
レリック様は頷くと、アレク団長とエド団長に目配せして、魔王から距離を取るよう、エスコートしてくださいました。
レリック様の意図を察したらしいアレク団長とエド団長も合流しました。
「セシル。確認だが、魔王に錠前が現れたのか?」
「はい、今、レリック様が剣を抜いた所から、大きな黒い錠前が二つも出て来ました。解錠は……出来ます。どうしましょう?」
「魔溜まりで出現した錠前を解錠すると、魔を吸引出来た。だから、解錠しても問題ないと考えているが、二人は、どう思う?」
レリック様に視線を向けられて、先に答えたのは、アレク団長でした。
「解錠して良いと思うよ。僕たちに出来る事はもう無いし。ね、エド。」
「そうだな。我々では魔王を葬れないから、代々青騎士団は箱を作り続け、魔王を封印してきた。封印の箱が無い今、出来る事は、永遠にこの部屋に魔王を固定して、弱体化させるくらいだろう。解錠して魔を吸引し、魔王が弱れば儲けものだ。」
「では、誰かが魔王の気を逸らしている間に、セシルが解錠を……ん?」
レリック様が足元を見て、何か拾い上げました。
「鈴?」
「レリック様!それ、私が落とした鈴です。見失って分からなくなっていたのです。まさかレリック様に見つけて貰えるなんて。」
「私とセシル。ペアの鈴だから、縁があるようだ。」
レリック様は柔らかく微笑んで、鈴を一度チリンと鳴らしてから、私に渡してくださいました。
「なんて耳障りな音だ。」
魔王が忌々しそうに呟きました。
私には小さな可愛らしい音にしか聞こえませんが、魔王には違うようです。
祓いの陣が描かれているからかもしれません。
「エド、耳障りだって。」
「ああ、それは是非、永遠に聞かせてやらねばな。」
アレク団長が満面の笑みを浮かべています。
エド団長もニヤリと悪い嗤いを浮かべながら、魔王の頭部周辺に近付くと、新たな陣を展開しました。
すると、リンリンと同じ調子で鈴が鳴り続ける音がし始めました。
この陣は、時計塔で魔を祓う時に使われていた、鈴の音を永遠に流し続ける陣でしょう。
「うるさい、うるさい、止めろ!耳障りだ!」
そんなに大きくない音ですが、魔王には効果があるようで、今までに無い不快感を露にしています。
「セシル嬢、今のうちに。」
アレク団長に手招きされて、黙って頷きました。
レリック様に付き添われて、上蓋が開いた箱を持ったまま、そっと魔王に近付きます。
腹部に現れた錠前に触れて解錠すると、錠前は二つとも崩れて消えました。
すると、筋肉質だった腹部が黒いモヤへと変化して渦を巻き、持っている箱に勢いよく吸引され始めました。
「ぐああぁぁぁぁっ!娘ぇぇぇ!何をぉぉ、何をしたぁぁぁぁ!魔がぁぁ、魔がぁぁぁぁっ!」
魔王が突然、叫び、苦しみ始めました。
「止めろおおぉぉぉぉぉ!」
杭で四肢と頭部を固定されて身動きの取れない魔王は、混沌とした漆黒の瞳を限界まで見開いて、視線だけこちらに向けて叫んでいます。
怖いので、なるべく目を合わせないように、そっぽを向きました。
ヒト型でも、モヤの量は今までの比ではないようです。
かなりの量らしく、手のひらサイズの箱は一回りずつ、どんどん大きくなります。
箱を持ちきれないので、床に置いて、手だけ添えました。
レリック様の手が私の手に重ねられて、一緒に箱を持って下さいました。
やっぱり心強いです。
「これは、魔溜まりと全く同じ状況だ。となると、魔王領のアレは、残滓ではなく、前者が壊し損ねた核が魔を引き寄せていたと考える方がしっくり来る。つまり、一体の魔王には、核が複数存在する可能性が高い。」
「では、魔溜まりの任務で、私達は魔王の核とは知らずに、吸引して、魔王を討伐していたと?」
「その可能性はある。あれは完全体ではなかったが、このモヤを全て吸引して魔王の存在を消せれば、それが証明となる。どうなるか見物だ。」
レリック様と成り行きを見守ります。
モヤは魔王の体全体に広がって、勢いよく箱に吸引され続けています。
「我を消しても、人の心から魔は消えはしないぃぃ。魔がある限り、我は何度でも甦る。何度でもだぁぁぁぁ!」
最後に魔王は捨て台詞を吐くと、全てがモヤになって箱に吸引されました。
魔王の姿は跡形もなく消え去り、陣には杭だけが残っています。
魔王を封印する為に作られた箱よりも、ずっと大きくなった箱の上蓋が、とうとう自然に閉まって、カチャッと鍵のかかる音がしました。
そして、魔王を吸引した箱は、みるみると片手サイズの大きさに戻りました。
その様子を部屋にいる全員が、注視していました。
室内は、陣から流れる鈴の音だけが鳴り響いています。
小箱を手にして、レリック様と顔を見合せました。
「これは、魔王、完全吸引、ですね。」
「ああ、まさか消し去れるとは思わなかった。二人もそう思っていただろう?」
レリック様がアレク団長とエド団長に視線を向けた時でした。
バタン……
エド団長がその場で倒れました。
「エド――――」
「……っしゃあ!!終わった!やっと寝れる。俺は寝るぞ!もう寝る。ここで寝る!」
エド団長は声高に宣言して、目を閉じると、本当に眠ってしまいました。
徹夜続きと言っていましたから、限界だったのでしょう。
アレク団長が両手を腰に当てて、エド団長を見下ろしながら、苦笑しています。
「エド、全騎士団に結果報告するのを完全に忘れてるね。寝るならせめて騎士棟に戻ってから寝れば良いのに。」
「仕方ない。魔王討伐終了と、教会封鎖解除宣言は私がしよう。」
レリック様は腕輪のボタン全部を押して、全騎士団に魔王討伐終了と教会封鎖解除宣言を伝えると、続けて赤いボタンを押しました。
「レリックだ。赤騎士団に告ぐ。私とクリス副団は午後から出勤する。緊急以外の報告は午後から頼む。以上。」
レリック様は通信を終えると、クリス副団に目を向けました。
「そういうことだから、午前中はゆっくり休め。」
「レリック団長、有り難うございます。」
レリック様が、腕輪で赤騎士団に指示を出している間、アレク団長は、黒騎士団の部下に杭の回収を指示していました。
青騎士団は、陣を消した後、誰がエド団長を運ぶか、それとも放置するか、使用不能になった箱を誰が持つか等、話し合っています。
あら?厳しい表情をしたセルリアンが、クリス副団の胸ぐらを掴んでいます。
何かトラブルみたいです。
レリック様の袖をクイクイと引っ張って、二人を指差しました。
「ねぇ、かの令嬢に言い寄られて迷惑しているって言ったのは、本当なの?」
「そんな話いつしました?」
セルリアンに胸ぐらを掴まれたクリス副団は、キョトンとしています。
「クリス副団が見張りの仲間に睡眠の陣を貼って、最後に僕が残された時だよ。」
「済みません、覚えていません。それに、言い寄って来る令嬢をいちいち覚えていません。君の想い人に興味もありませんので、ご安心を。」
「はあ?くそっ!ムカつく!」
セルリアンは乱暴にクリス副団の胸ぐらから手を離すと、苛つきながらも青騎士団に合流して、話し合いに参加していました。
「どうやら、セルリアンの記憶が途切れたのは、クリス副団に睡眠の陣を貼られる直前だったらしい。いやあ、今回は本当に失態続きだった。」
いつの間にか傍に来ていたアレク団長の呟きに、レリック様が頷きました。
「全くだ。全てが後手に回った。早急に対策せねばならないだろう。」
「だね。とりあえず僕も眠いし、騎士棟へ戻るよ。」
アレク団長は部下と共に部屋を退室して行きました。
「セシル、私達も私室へ戻ろうか。」
「はい。」
やっと、やっと戻れます。
レリック様が切り落とした筈が、いつの間にか再生している魔王の片手にも、杭が打ち込まれました。
杭で陣に固定された魔王の体に、縦は正中線、横はへそを通るように、レリック様が剣で斬りつけました。
更に、右肩からへそを通って左鼠径部、左肩からへそを通って右鼠径部と米印のような傷が出来るように斬り付けています。
理由は分からないそうですが、そうする事で魔王の力が弱まり、私達が魔に囚われるのを防げるそうです。
「我は、お前達人間の望みを、ただ解放してやっているというのに、何故このような仕打ちを受けねばならぬ。」
魔王は眉間に杭を打ち込まれても、剣で斬られても痛みは無いようで、平然としています。
「何が人間の望みだ。人が不幸になるのを見て、楽しみたいだけだろう。」
レリック様は、無駄だと分かっていながらも、魔王のへそ辺りに、勢いよく剣を突き立てました。
体の強度が下がったのか、剣は最初よりも深く魔王の腹部に刺さっています。
レリック様が剣を抜くと、その切り口から、何か黒い物が出てきました。
錠前です!頑丈そうな黒い錠前が二つも。
思わず大きな声を出しそうになって、グッとこらえました。
レリック様の袖をクイクイと引っ張ると、何かを察したレリック様が、私に顔を近づけました。
「どうした?」
「レリック様、錠前が……。」
なるべく小声で、魔王の腹部を指差しました。
レリック様は頷くと、アレク団長とエド団長に目配せして、魔王から距離を取るよう、エスコートしてくださいました。
レリック様の意図を察したらしいアレク団長とエド団長も合流しました。
「セシル。確認だが、魔王に錠前が現れたのか?」
「はい、今、レリック様が剣を抜いた所から、大きな黒い錠前が二つも出て来ました。解錠は……出来ます。どうしましょう?」
「魔溜まりで出現した錠前を解錠すると、魔を吸引出来た。だから、解錠しても問題ないと考えているが、二人は、どう思う?」
レリック様に視線を向けられて、先に答えたのは、アレク団長でした。
「解錠して良いと思うよ。僕たちに出来る事はもう無いし。ね、エド。」
「そうだな。我々では魔王を葬れないから、代々青騎士団は箱を作り続け、魔王を封印してきた。封印の箱が無い今、出来る事は、永遠にこの部屋に魔王を固定して、弱体化させるくらいだろう。解錠して魔を吸引し、魔王が弱れば儲けものだ。」
「では、誰かが魔王の気を逸らしている間に、セシルが解錠を……ん?」
レリック様が足元を見て、何か拾い上げました。
「鈴?」
「レリック様!それ、私が落とした鈴です。見失って分からなくなっていたのです。まさかレリック様に見つけて貰えるなんて。」
「私とセシル。ペアの鈴だから、縁があるようだ。」
レリック様は柔らかく微笑んで、鈴を一度チリンと鳴らしてから、私に渡してくださいました。
「なんて耳障りな音だ。」
魔王が忌々しそうに呟きました。
私には小さな可愛らしい音にしか聞こえませんが、魔王には違うようです。
祓いの陣が描かれているからかもしれません。
「エド、耳障りだって。」
「ああ、それは是非、永遠に聞かせてやらねばな。」
アレク団長が満面の笑みを浮かべています。
エド団長もニヤリと悪い嗤いを浮かべながら、魔王の頭部周辺に近付くと、新たな陣を展開しました。
すると、リンリンと同じ調子で鈴が鳴り続ける音がし始めました。
この陣は、時計塔で魔を祓う時に使われていた、鈴の音を永遠に流し続ける陣でしょう。
「うるさい、うるさい、止めろ!耳障りだ!」
そんなに大きくない音ですが、魔王には効果があるようで、今までに無い不快感を露にしています。
「セシル嬢、今のうちに。」
アレク団長に手招きされて、黙って頷きました。
レリック様に付き添われて、上蓋が開いた箱を持ったまま、そっと魔王に近付きます。
腹部に現れた錠前に触れて解錠すると、錠前は二つとも崩れて消えました。
すると、筋肉質だった腹部が黒いモヤへと変化して渦を巻き、持っている箱に勢いよく吸引され始めました。
「ぐああぁぁぁぁっ!娘ぇぇぇ!何をぉぉ、何をしたぁぁぁぁ!魔がぁぁ、魔がぁぁぁぁっ!」
魔王が突然、叫び、苦しみ始めました。
「止めろおおぉぉぉぉぉ!」
杭で四肢と頭部を固定されて身動きの取れない魔王は、混沌とした漆黒の瞳を限界まで見開いて、視線だけこちらに向けて叫んでいます。
怖いので、なるべく目を合わせないように、そっぽを向きました。
ヒト型でも、モヤの量は今までの比ではないようです。
かなりの量らしく、手のひらサイズの箱は一回りずつ、どんどん大きくなります。
箱を持ちきれないので、床に置いて、手だけ添えました。
レリック様の手が私の手に重ねられて、一緒に箱を持って下さいました。
やっぱり心強いです。
「これは、魔溜まりと全く同じ状況だ。となると、魔王領のアレは、残滓ではなく、前者が壊し損ねた核が魔を引き寄せていたと考える方がしっくり来る。つまり、一体の魔王には、核が複数存在する可能性が高い。」
「では、魔溜まりの任務で、私達は魔王の核とは知らずに、吸引して、魔王を討伐していたと?」
「その可能性はある。あれは完全体ではなかったが、このモヤを全て吸引して魔王の存在を消せれば、それが証明となる。どうなるか見物だ。」
レリック様と成り行きを見守ります。
モヤは魔王の体全体に広がって、勢いよく箱に吸引され続けています。
「我を消しても、人の心から魔は消えはしないぃぃ。魔がある限り、我は何度でも甦る。何度でもだぁぁぁぁ!」
最後に魔王は捨て台詞を吐くと、全てがモヤになって箱に吸引されました。
魔王の姿は跡形もなく消え去り、陣には杭だけが残っています。
魔王を封印する為に作られた箱よりも、ずっと大きくなった箱の上蓋が、とうとう自然に閉まって、カチャッと鍵のかかる音がしました。
そして、魔王を吸引した箱は、みるみると片手サイズの大きさに戻りました。
その様子を部屋にいる全員が、注視していました。
室内は、陣から流れる鈴の音だけが鳴り響いています。
小箱を手にして、レリック様と顔を見合せました。
「これは、魔王、完全吸引、ですね。」
「ああ、まさか消し去れるとは思わなかった。二人もそう思っていただろう?」
レリック様がアレク団長とエド団長に視線を向けた時でした。
バタン……
エド団長がその場で倒れました。
「エド――――」
「……っしゃあ!!終わった!やっと寝れる。俺は寝るぞ!もう寝る。ここで寝る!」
エド団長は声高に宣言して、目を閉じると、本当に眠ってしまいました。
徹夜続きと言っていましたから、限界だったのでしょう。
アレク団長が両手を腰に当てて、エド団長を見下ろしながら、苦笑しています。
「エド、全騎士団に結果報告するのを完全に忘れてるね。寝るならせめて騎士棟に戻ってから寝れば良いのに。」
「仕方ない。魔王討伐終了と、教会封鎖解除宣言は私がしよう。」
レリック様は腕輪のボタン全部を押して、全騎士団に魔王討伐終了と教会封鎖解除宣言を伝えると、続けて赤いボタンを押しました。
「レリックだ。赤騎士団に告ぐ。私とクリス副団は午後から出勤する。緊急以外の報告は午後から頼む。以上。」
レリック様は通信を終えると、クリス副団に目を向けました。
「そういうことだから、午前中はゆっくり休め。」
「レリック団長、有り難うございます。」
レリック様が、腕輪で赤騎士団に指示を出している間、アレク団長は、黒騎士団の部下に杭の回収を指示していました。
青騎士団は、陣を消した後、誰がエド団長を運ぶか、それとも放置するか、使用不能になった箱を誰が持つか等、話し合っています。
あら?厳しい表情をしたセルリアンが、クリス副団の胸ぐらを掴んでいます。
何かトラブルみたいです。
レリック様の袖をクイクイと引っ張って、二人を指差しました。
「ねぇ、かの令嬢に言い寄られて迷惑しているって言ったのは、本当なの?」
「そんな話いつしました?」
セルリアンに胸ぐらを掴まれたクリス副団は、キョトンとしています。
「クリス副団が見張りの仲間に睡眠の陣を貼って、最後に僕が残された時だよ。」
「済みません、覚えていません。それに、言い寄って来る令嬢をいちいち覚えていません。君の想い人に興味もありませんので、ご安心を。」
「はあ?くそっ!ムカつく!」
セルリアンは乱暴にクリス副団の胸ぐらから手を離すと、苛つきながらも青騎士団に合流して、話し合いに参加していました。
「どうやら、セルリアンの記憶が途切れたのは、クリス副団に睡眠の陣を貼られる直前だったらしい。いやあ、今回は本当に失態続きだった。」
いつの間にか傍に来ていたアレク団長の呟きに、レリック様が頷きました。
「全くだ。全てが後手に回った。早急に対策せねばならないだろう。」
「だね。とりあえず僕も眠いし、騎士棟へ戻るよ。」
アレク団長は部下と共に部屋を退室して行きました。
「セシル、私達も私室へ戻ろうか。」
「はい。」
やっと、やっと戻れます。
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