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「それと君は収納魔法は使えるな?」
「はい」
「ならついでに表にある特殊個体の死体を司令部に運んでほしい」
「……了解……です」
くっ?!
黒オーガの死体! 2体も! しかも二本角!! 欲しいっ!!
…………でもダメだろうなぁ。
冒険者として来てたなら2体の所有権を主張できたかもだけど、正規軍として来てる以上は品位に欠けるような言動はできない。まぁ実際魔物の死体を要求しても意地汚くはないだろうが、がめついとは思われるだろうからな。
「ジェラードさん、それでは……」
「君が来てくれて助かった。今後の武運を祈ろう」
「守備隊の奮戦に感謝します」
ジェラードさんの右手を両手でがっちり掴んで握手を交わして砦を発った。
現在の時刻は22時過ぎ。
満天の星空の中を商都に向けて飛行している。
商都へはワナークを経由してではなく、レグザール砦から直接向かっている。
星明かりだけの飛行は心もとないが、いくらなんでも商都の明かりを見逃すことはないだろう。
※この世界では月が見えるのは1年の内の3ヵ月間だけで、現在は見えない期間である。ちなみに、月が見えなくなることを月閉まいと言う。
夜間の飛行だったものの問題なく商都に到着し、司令部入り口の歩哨にレイチェルさんを呼ぶよう伝えた。
「ツトム殿! 中々戻られないので心配していたのですよっ!」
そんなに心配してたのなら抱きしめるぐらいしてくれてもよさそうだが、言葉の割には態度はいたって普通だ。
当たり前か。ここを出る前に少し話した程度の関係でしかないしな。
レイチェルさんは補佐官で、茶髪ショートカットのキリッとした軍人だ。歳は30ぐらいだろうか。
「最初に訪れたレグザール砦に滞在していました」
「レグザール砦に…………夕刻に一報が届いて以降、既に支援のための第1陣が商都を出ておりますが……」
「砦の守備隊長ジェラード殿から報告書を預かっています。こちらです」
「確かに」
「それと砦での戦闘で討ち取った特殊個体を司令部に届けるよう言われてるのですが……」
「と、特殊個体?! 討ち取った?」
「はい。それでどこに出せば……?」
こんな建物の入り口に死体を出すわけにもいかないだろう。
「あ、案内します、こちらへ」
レイチェルさんに従って司令部建物の奥へと入って行く。
「先ほど砦への派遣を第1陣と言っていましたが、この後さらに援軍を送る予定があるのですか?」
「はい。明朝冒険者を主体とした戦力をレグザール砦に送る予定です。
既に冒険者ギルドには依頼済みですので掲示されてると思います」
「依頼……なんですか?」
こういうケースって緊急招集するんじゃ……
「明朝砦へ派遣される第2陣は、戦力を絞って編成されることになっています。
魔族側が陽動を仕掛けてきている可能性も考慮しないといけませんので」
なるほど。緊急招集による冒険者の全戦力投入は避けるので、通常の依頼で募集するわけか。
魔族側が陽動を仕掛ける可能性はバルーカにおける戦闘経験が共有されてるのだろう。
南部三国(ベルガーナ王国・アルタナ王国・商業国家コートダール)は同盟関係にあって情報交換も活発に行われてるらしいし。
「こちらです」
廊下の突き当りのやたら立派な扉の部屋の脇にある小部屋へと入る。
中には男性が2人いた。
補佐官って感じではないから司令部のスタッフみたいな人達だろうか?
「ここに出してください」
言われるままに特殊個体を2体並べた。
「これが特殊個体…………
この2体はツトム殿が倒されたのですか?」
「ええ。砦守備隊の奮戦のおかげでなんとか」
「通常のオーガより少し大きいぐらいなんですね」
「大きさ的には三本角のほうがデカいですね。一本角は別格として」
「一本角は通常のオーガの倍近い大きさとの情報がありますが」
「らしいですね。自分は遭遇したことがないので聞いた話ですけど」
一本角か…………
二本角にこれだけ苦戦してるのだから、一本角と戦うのはまだ無理……というより危険だよなぁ。
もっとも二本角に勝てたってだけでも凄いことのはずだ。守備隊のおかげとは言え。
「それではクリュネガー閣下(=コートダール軍司令)に報告してきます。失礼」
レイチェルさんが部屋を出て行く。
今晩泊まる場所とか聞きたかったのだけど……、もう深夜だしこんな時間から宿屋を探すのもちょっとなぁ。
「あの~、ここ仮眠できる場所とかありませんか?」
部屋にいた男性に聞いてみる。
「士官用の個室があります。ベッド付ですから休むことも可能です。案内しましょう」
「お願いします」
案内されたのは建物2階にある個室で、机と椅子とベッドがあるだけの小さな部屋だった。
レグザール砦の宿舎のほうが部屋の広さ的には大きかった。
同じ家賃でも都市部のほうが間取りが狭い的なことなのだろうか?
その代わりと言ってはなんだが、ベッドの質はこちらのほうが上で机と椅子に関しては砦の宿舎には置いてなかった。
お腹が減ったので収納からビーフシチューもどきと王都のパンを出して食べる。
商都と言うからには深夜でも開いてる店があるのかもしれないが、さすがにこれから探しに行く気力はなかった。
「はい」
「ならついでに表にある特殊個体の死体を司令部に運んでほしい」
「……了解……です」
くっ?!
黒オーガの死体! 2体も! しかも二本角!! 欲しいっ!!
…………でもダメだろうなぁ。
冒険者として来てたなら2体の所有権を主張できたかもだけど、正規軍として来てる以上は品位に欠けるような言動はできない。まぁ実際魔物の死体を要求しても意地汚くはないだろうが、がめついとは思われるだろうからな。
「ジェラードさん、それでは……」
「君が来てくれて助かった。今後の武運を祈ろう」
「守備隊の奮戦に感謝します」
ジェラードさんの右手を両手でがっちり掴んで握手を交わして砦を発った。
現在の時刻は22時過ぎ。
満天の星空の中を商都に向けて飛行している。
商都へはワナークを経由してではなく、レグザール砦から直接向かっている。
星明かりだけの飛行は心もとないが、いくらなんでも商都の明かりを見逃すことはないだろう。
※この世界では月が見えるのは1年の内の3ヵ月間だけで、現在は見えない期間である。ちなみに、月が見えなくなることを月閉まいと言う。
夜間の飛行だったものの問題なく商都に到着し、司令部入り口の歩哨にレイチェルさんを呼ぶよう伝えた。
「ツトム殿! 中々戻られないので心配していたのですよっ!」
そんなに心配してたのなら抱きしめるぐらいしてくれてもよさそうだが、言葉の割には態度はいたって普通だ。
当たり前か。ここを出る前に少し話した程度の関係でしかないしな。
レイチェルさんは補佐官で、茶髪ショートカットのキリッとした軍人だ。歳は30ぐらいだろうか。
「最初に訪れたレグザール砦に滞在していました」
「レグザール砦に…………夕刻に一報が届いて以降、既に支援のための第1陣が商都を出ておりますが……」
「砦の守備隊長ジェラード殿から報告書を預かっています。こちらです」
「確かに」
「それと砦での戦闘で討ち取った特殊個体を司令部に届けるよう言われてるのですが……」
「と、特殊個体?! 討ち取った?」
「はい。それでどこに出せば……?」
こんな建物の入り口に死体を出すわけにもいかないだろう。
「あ、案内します、こちらへ」
レイチェルさんに従って司令部建物の奥へと入って行く。
「先ほど砦への派遣を第1陣と言っていましたが、この後さらに援軍を送る予定があるのですか?」
「はい。明朝冒険者を主体とした戦力をレグザール砦に送る予定です。
既に冒険者ギルドには依頼済みですので掲示されてると思います」
「依頼……なんですか?」
こういうケースって緊急招集するんじゃ……
「明朝砦へ派遣される第2陣は、戦力を絞って編成されることになっています。
魔族側が陽動を仕掛けてきている可能性も考慮しないといけませんので」
なるほど。緊急招集による冒険者の全戦力投入は避けるので、通常の依頼で募集するわけか。
魔族側が陽動を仕掛ける可能性はバルーカにおける戦闘経験が共有されてるのだろう。
南部三国(ベルガーナ王国・アルタナ王国・商業国家コートダール)は同盟関係にあって情報交換も活発に行われてるらしいし。
「こちらです」
廊下の突き当りのやたら立派な扉の部屋の脇にある小部屋へと入る。
中には男性が2人いた。
補佐官って感じではないから司令部のスタッフみたいな人達だろうか?
「ここに出してください」
言われるままに特殊個体を2体並べた。
「これが特殊個体…………
この2体はツトム殿が倒されたのですか?」
「ええ。砦守備隊の奮戦のおかげでなんとか」
「通常のオーガより少し大きいぐらいなんですね」
「大きさ的には三本角のほうがデカいですね。一本角は別格として」
「一本角は通常のオーガの倍近い大きさとの情報がありますが」
「らしいですね。自分は遭遇したことがないので聞いた話ですけど」
一本角か…………
二本角にこれだけ苦戦してるのだから、一本角と戦うのはまだ無理……というより危険だよなぁ。
もっとも二本角に勝てたってだけでも凄いことのはずだ。守備隊のおかげとは言え。
「それではクリュネガー閣下(=コートダール軍司令)に報告してきます。失礼」
レイチェルさんが部屋を出て行く。
今晩泊まる場所とか聞きたかったのだけど……、もう深夜だしこんな時間から宿屋を探すのもちょっとなぁ。
「あの~、ここ仮眠できる場所とかありませんか?」
部屋にいた男性に聞いてみる。
「士官用の個室があります。ベッド付ですから休むことも可能です。案内しましょう」
「お願いします」
案内されたのは建物2階にある個室で、机と椅子とベッドがあるだけの小さな部屋だった。
レグザール砦の宿舎のほうが部屋の広さ的には大きかった。
同じ家賃でも都市部のほうが間取りが狭い的なことなのだろうか?
その代わりと言ってはなんだが、ベッドの質はこちらのほうが上で机と椅子に関しては砦の宿舎には置いてなかった。
お腹が減ったので収納からビーフシチューもどきと王都のパンを出して食べる。
商都と言うからには深夜でも開いてる店があるのかもしれないが、さすがにこれから探しに行く気力はなかった。
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