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「先ほどの防衛時(=第2波攻撃)に魔法で迎撃は?」
「魔術士隊からオーガに向けて魔法が放たれたが、マジックシールドを張られて防がれてしまった」
「この砦の魔術士隊は新魔法は……」
「もちろん習得済みだ」
回転系でもマジックシールドで阻まれてしまったのか。
この世界に来た初期の頃の威力でも、俺の土槍(回転)はマジックシールドを貫通したが……
魔法の威力はどうしても使い手の魔力に左右される。(※この場合の魔力はMPではなくステータスのほう)
銃や大砲のように誰が撃っても威力は同じ、ということにはならない。
しかしこのレグザール砦は俺が守るとしてもだ、イズフール川沿いの他の防御ラインは大丈夫だろうか?
ここを守ったところで他の防御ラインが突破されでもしたら意味ないし、ワナークにいるルルカの家族たちにまで危険が及んでしまうことになる。
「あの、オーガによる投石攻撃に対して有効な対処方法がないのでしたら、イズフール川下流の他の防御陣地の守りは大丈夫でしょうか?」
「それは大丈夫だろう。
あちらは河川の幅自体が天然の堀となっているので、防御拠点の防壁は言ってしまえばおまけに過ぎない。
出撃しやすいように防壁を築いてない拠点もあるぐらいだ」
「そうですか……」
レグザール砦だって山と峡谷に挟まれた攻められるルートが限定される守りやすい地形にあるが、イズフール川を利用した防御はここよりもかなり強固なものらしい。
ジェラード隊長代理の話しぶりも自信満々といった感じで、下流の防御ラインの難攻不落さには絶大な信頼を置いてるようだ。
戦記モノなんかだと奇策を用いられて陥落するパターンだが、人同士の戦いではなく攻め手は魔物なのでその心配はない…………のか?
大岩を大量に使って川をせき止める水攻めなんかが有効そうだが……
「ここが救護所だ」
救護所は砦東門のすぐそばにある建物だった。
先ほど話した門番に軽く会釈をして中へと入る。
救護所の中には20人近い兵士が治療の順番を待っていた。
パッと見軽傷の人ばかりで一番重くても骨が折れてる程度だろう。
「現在の負傷者の数は?」
ジェラード隊長代理が治療中の医者の男性に聞く。
「重傷者12名、軽傷者が30人ほどです」
治療と言っても当然回復魔法を行っているのではなく、傷口を消毒したり布を巻いたり骨折箇所に添え木をしたりと簡単なものだ。
医者というより衛生兵に近いのかもしれない。
重傷者が12名いるとのことだが見当たらない。上の階だろうか?
「こちらはベルガーナ王国から来られた魔術士で回復魔法が使えるそうだ。
ツトム殿、さっそくお願いできるか?」
「わかりました」
救護所全体に対して範囲回復を発動させる。
「えっ?!」
「折れた腕が!」
「傷が治ってる!!」
「呼吸が楽に!!」
「君、2階の重傷者の様子を見て来てくれ」
「ハ、ハイ!」
医者の指示で看護婦が2階へ上がっていく。
「き、君は範囲回復が使えるのか?」
「ええ、そうです……けど……」
何かマズかったか?
「いや、範囲回復は教会でも高位の司祭クラスでしか使えないと聞いたことがあるが……」
そんな高度な魔法に分類されているのか。魔法の才能スキルのおかげで割と初期から使っているけど。
しかしこう大っぴらに回復魔法を使ったら、もう教会の耳に入ることは覚悟しないといけないだろうなぁ。
バルーカからの援軍としてきちんと実績を残さないといけないから、隠れて魔法を使うわけにもいかない。
…………いや、まだ諦めるには早いか?
コートダール軍の上層部が評価してくれればそれでいいわけで、口外しないようお願いするのはアリなのかもしれない。
どれだけ効果があるかわからないが、それをやって俺に何か不都合があるわけでもないし。
「もう1度範囲回復を使うことは可能か?
できるなら既に治療を終えて宿舎に帰った軽傷者も治したい」
「可能ですので集めてください」
「オイ! 手分けして連れて来てくれ!」
完治した軽傷者が救護所から出て行く。
「ジェラードさん、自分が回復魔法を使えることは秘密にしてもらえますか?
普段は冒険者として活動してますので、教会に知られると色々と厄介で」
「っ!? こちらも配慮が足りなかったな、申し訳ない。
ここにいた兵達にも秘匿するよう徹底させよう」
「よろしくお願いします」
援軍が到着したら一度商都に戻って回復魔法の秘匿のことを命令書に追加してもらおう。
その後、治療済みで宿舎に帰っていた軽傷者が集まったところで再度範囲回復を行った。
2階の重傷者も2度にわたる範囲回復で完治したものの、回復魔法では失った血液や体力を戻すことはできないので即実戦復帰は無理だ。
なので重傷者……元重傷者の12名はワナークに移送することとなった。
本来なら定期的に砦に物資を届ける輸送隊の帰りの便に乗せることになるのだが、明日の夜に到着するであろう商都からの援軍が使用した馬車に乗せるようだ。
…
……
…………
ジェラード隊長代理に深夜に叩き起こされて飛んで来た事情を伝えて、中央広場に隣接する宿舎に部屋を用意してもらいそこで仮眠をとることにした。
初めての事態、初めての場所、ということで睡眠不足も手伝って自分が思うよりも疲れていたらしい。もっとも前日までの怠惰なエロ生活の影響が最も大きい気もするが。
一般兵士用の質素なベッドだったが、ぐっすりと眠ることができた。
カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン!
敵襲を告げる鐘の音に起こされるまでは……
「魔術士隊からオーガに向けて魔法が放たれたが、マジックシールドを張られて防がれてしまった」
「この砦の魔術士隊は新魔法は……」
「もちろん習得済みだ」
回転系でもマジックシールドで阻まれてしまったのか。
この世界に来た初期の頃の威力でも、俺の土槍(回転)はマジックシールドを貫通したが……
魔法の威力はどうしても使い手の魔力に左右される。(※この場合の魔力はMPではなくステータスのほう)
銃や大砲のように誰が撃っても威力は同じ、ということにはならない。
しかしこのレグザール砦は俺が守るとしてもだ、イズフール川沿いの他の防御ラインは大丈夫だろうか?
ここを守ったところで他の防御ラインが突破されでもしたら意味ないし、ワナークにいるルルカの家族たちにまで危険が及んでしまうことになる。
「あの、オーガによる投石攻撃に対して有効な対処方法がないのでしたら、イズフール川下流の他の防御陣地の守りは大丈夫でしょうか?」
「それは大丈夫だろう。
あちらは河川の幅自体が天然の堀となっているので、防御拠点の防壁は言ってしまえばおまけに過ぎない。
出撃しやすいように防壁を築いてない拠点もあるぐらいだ」
「そうですか……」
レグザール砦だって山と峡谷に挟まれた攻められるルートが限定される守りやすい地形にあるが、イズフール川を利用した防御はここよりもかなり強固なものらしい。
ジェラード隊長代理の話しぶりも自信満々といった感じで、下流の防御ラインの難攻不落さには絶大な信頼を置いてるようだ。
戦記モノなんかだと奇策を用いられて陥落するパターンだが、人同士の戦いではなく攻め手は魔物なのでその心配はない…………のか?
大岩を大量に使って川をせき止める水攻めなんかが有効そうだが……
「ここが救護所だ」
救護所は砦東門のすぐそばにある建物だった。
先ほど話した門番に軽く会釈をして中へと入る。
救護所の中には20人近い兵士が治療の順番を待っていた。
パッと見軽傷の人ばかりで一番重くても骨が折れてる程度だろう。
「現在の負傷者の数は?」
ジェラード隊長代理が治療中の医者の男性に聞く。
「重傷者12名、軽傷者が30人ほどです」
治療と言っても当然回復魔法を行っているのではなく、傷口を消毒したり布を巻いたり骨折箇所に添え木をしたりと簡単なものだ。
医者というより衛生兵に近いのかもしれない。
重傷者が12名いるとのことだが見当たらない。上の階だろうか?
「こちらはベルガーナ王国から来られた魔術士で回復魔法が使えるそうだ。
ツトム殿、さっそくお願いできるか?」
「わかりました」
救護所全体に対して範囲回復を発動させる。
「えっ?!」
「折れた腕が!」
「傷が治ってる!!」
「呼吸が楽に!!」
「君、2階の重傷者の様子を見て来てくれ」
「ハ、ハイ!」
医者の指示で看護婦が2階へ上がっていく。
「き、君は範囲回復が使えるのか?」
「ええ、そうです……けど……」
何かマズかったか?
「いや、範囲回復は教会でも高位の司祭クラスでしか使えないと聞いたことがあるが……」
そんな高度な魔法に分類されているのか。魔法の才能スキルのおかげで割と初期から使っているけど。
しかしこう大っぴらに回復魔法を使ったら、もう教会の耳に入ることは覚悟しないといけないだろうなぁ。
バルーカからの援軍としてきちんと実績を残さないといけないから、隠れて魔法を使うわけにもいかない。
…………いや、まだ諦めるには早いか?
コートダール軍の上層部が評価してくれればそれでいいわけで、口外しないようお願いするのはアリなのかもしれない。
どれだけ効果があるかわからないが、それをやって俺に何か不都合があるわけでもないし。
「もう1度範囲回復を使うことは可能か?
できるなら既に治療を終えて宿舎に帰った軽傷者も治したい」
「可能ですので集めてください」
「オイ! 手分けして連れて来てくれ!」
完治した軽傷者が救護所から出て行く。
「ジェラードさん、自分が回復魔法を使えることは秘密にしてもらえますか?
普段は冒険者として活動してますので、教会に知られると色々と厄介で」
「っ!? こちらも配慮が足りなかったな、申し訳ない。
ここにいた兵達にも秘匿するよう徹底させよう」
「よろしくお願いします」
援軍が到着したら一度商都に戻って回復魔法の秘匿のことを命令書に追加してもらおう。
その後、治療済みで宿舎に帰っていた軽傷者が集まったところで再度範囲回復を行った。
2階の重傷者も2度にわたる範囲回復で完治したものの、回復魔法では失った血液や体力を戻すことはできないので即実戦復帰は無理だ。
なので重傷者……元重傷者の12名はワナークに移送することとなった。
本来なら定期的に砦に物資を届ける輸送隊の帰りの便に乗せることになるのだが、明日の夜に到着するであろう商都からの援軍が使用した馬車に乗せるようだ。
…
……
…………
ジェラード隊長代理に深夜に叩き起こされて飛んで来た事情を伝えて、中央広場に隣接する宿舎に部屋を用意してもらいそこで仮眠をとることにした。
初めての事態、初めての場所、ということで睡眠不足も手伝って自分が思うよりも疲れていたらしい。もっとも前日までの怠惰なエロ生活の影響が最も大きい気もするが。
一般兵士用の質素なベッドだったが、ぐっすりと眠ることができた。
カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン! カン!
敵襲を告げる鐘の音に起こされるまでは……
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