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「閣下、それではこの者の独自行動をお認めになるので?」

「う~む…………」

 コートダール軍司令クリュネガーは腕組みをして思案する。
 非常に難しく厄介な問題だ。
 ベルガーナ王国との繋がりを思えばあからさまに断ることはできない。かと言って好き勝手に動かれては帝国軍から不満の声が出てくるだろう。
 グラバラス帝国から派遣されている戦力は、イズフール川沿いの防御線に配置されている全兵力の2割を優に超えている。

「思い出しましたよ、閣下!」

 何やら若手の参謀が興奮気味に発言してきた。

「そのツトムなる者は、先の武闘大会で魔術士ながら本選まで勝ち進んでおります。
 1回戦での敗退ながら本選進出した年少の魔術士として、冊子等で大きく取り上げられていました。
 確か冒険者と記載されていたはずですが……」

「先ほど本人も本業は冒険者と言っていました」

「でしたら間違いないはずです!」

「つまりは相応の実力者を派遣して来た、というのは確定したわけだ。
 だがいくら実力があるとしても、たった1人の魔術士が戦局に影響を及ぼすと思うか?」

「あり得ませんね。
 案外独自行動というのも魔術士が年少者なのをおもんばかって、いつでも帰還できるように配慮したのではありますまいか?」

 それはそれで大問題だ。
 勝手に撤退でもされたら味方の士気へ悪影響を与えるだろう。たった1人とは言えベルガーナ軍であることは紛れもない事実なのだ。
 それに……

「それほど大事な人材ならどうして最前線に送ってくるんだ? しかも他国の最前線にだ」

「実戦経験を積ませるのが目的ではないでしょうか?」

「バカな?! 帝国ならともかく、ベルガーナはわざわざ他国に派遣しなくとも魔族との戦闘に事欠くことはあるまい」

「その者に閣下直筆の書状を持たせて最初に現場指揮官の了解を得る、という形式ならいかがでしょうか?
 現場の指揮官が了承済みであれば兵達もそれほど不満には思わないかと」

「誰かを同行させるわけにはいかんか?」

「今後の戦局は予断を許しませんので、伝令に従事している飛行魔術士から人員を割く余裕はありません。
 冒険者ギルドに依頼したとしても時間が掛かりますし、何よりギルドは今緊急招集でそれどころではないかと」

「…………わかった。書状を書いてこの者に会いに行くとしよう」




-商都の軍司令部・応接室にて-

「よく来て頂いた。
 軍の指揮を拝命しているクリュネガーです」

「ツトムと申します。
 微力ながら貴国の防衛をお手伝いしたく参上致しました」

 目の前にいるのは本当にただの少年だった。さすがに成人はしているのだろうが。

「グレドール伯爵の要望は承りました。
 私からの命令書を渡しますので、前線に着いたらまず現地の指揮官に見せてください」

「わかりました」

「それとこれはあくまでも"お願い"なのですが、現場ではなるべく指揮官の意向に沿うよう動いてもらますか?」

「もちろんです。自分も現地の指揮系統を乱すようなことをするつもりはありませんので」

「それは助かります」

 随分と落ち着いた受け答えだ。
 戦場に赴くにあたって怯えのようなものは一切感じられない。見た目と違って豪胆さを内包している感じさえ見受けられる。

 ……当然のことなのかもしれない。
 バルーカはベルガーナ王国において対魔族最前線の要衝だ。
 幾度か城内に特殊な方法で魔物の侵入を許したとの情報提供を受けてるし、南方に出兵して砦を奪還したとの戦勝報告もされている。
 この者もそんな激戦をくぐり抜けてきたのかもしれない。
 少なくともバルーカの領主であるグレドール伯がこの少年魔術士の戦闘力に絶大な信頼を置いていることだけは確かだ。
 これだけ他国をも巻き込む事態にして結果役立たずでしたでは、ベルガーナ国内における伯爵の立場も危うくなるのだから。

「最新の戦況を教えて頂きたいのですが……」

「戦況はこちらのレイチェル補佐官に説明させましょう。
 頼んだぞ」

「かしこまりましたわ」

 状況説明は補佐官に丸投げして作戦室へと戻った。

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 応接室には戦況を説明するために補佐官の女性だけが残った。
 レイチェルと呼ばれた女性はロザリナよりも背が高く、茶髪のショートカットでお胸は普通ぐらい、補佐官とのことだがナナイさんのような政治もできるマルチタイプではなく、キリッとした所作はモロ軍人って感じだ。

「失礼しますね」

 レイチェルさんは向かいに座り、テーブルの上に地図を広げた。

「それでは最新の戦況をご説明させて頂きます」

「よろしくお願いします」

「昨日、イズフール川沿いの防御陣地に対して魔物による大攻勢が開始されました。防御ラインは激しい攻撃を受けていますが、現在のところどの陣地も防衛そのものは成功している状況です。
 一方イズフール川上流の山すそにあるレグザール砦に本日未明、魔物の襲撃があり撃退したとの報告を受けています」

 あれ?
 これ、俺の出番はなくないか?







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今回の投稿は明日加筆修正します
午前中に行う予定です

※話数のところに加筆予定であることを表記するようにしました
 加筆完了後に表記は消します
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追記)加筆修正済
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